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現代数学解説
文献あり

Rogers, SlaterのBailey対

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Bailey対 は以下のように定義される. 

数列の組(αn,βn)aに関するBailey対であるとは, 任意の0nに対して
βn=k=0nαk(q;q)nk(aq;q)n+k
を満たしていることをいう.

以下のBailey対はRogersによって扱われたもので, SlaterによってBailey対として整理されたものである.

Slater(1951)

α0:=1とする.
α3n1:=q6n25n+1,n1α3n:=q6n2n+q6n2+n,n1α3n+1:=q6n2+5n+1,n0βn:=1(q;q)2n,n0
とすると, (αn,βn)1に関するBailey対である.

Slater(1951)

α3n1:=q6n2n,n1α3n:=q6n2+n,n0α3n+1:=q6n2+5n+1q6n2+7n+2,n0βn:=1(q2;q)2n,n0
とすると, (αn,βn)qに関するBailey対である.

Slater(1951)

α0:=1とする.
α3n1:=q6n22n,n1α3n:=q6n22n+q6n2+2n,n1α3n+1:=q6n2+2n,n0βn:=qn(q;q)2n,n0
とすると, (αn,βn)1に関するBailey対である.

Slater(1951)

α3n1:=q6n24n,n1α3n:=q6n2+4n,n0α3n+1:=q6n2+8n+2q6n2+4n,n0βn:=qn(q2;q)2n,n0
とすると, (αn,βn)qに関するBailey対である.

Slater(1951)

α0:=1とする.
α3n1:=q3n2n,n1α3n:=q3n2n+q3n2+n,n1α3n+1:=q3n2+n,n0βn:=qn2(q;q)2n,n0
とすると, (αn,βn)1に関するBailey対である.

Slater(1951)

α3n1:=q3n2+n,n1α3n:=q3n2n,n0α3n+1:=q3n2+nq3n2+5n+2,n0βn:=qn2(q2;q)2n,n0
とすると, (αn,βn)qに関するBailey対である.

Slater(1951)

α0:=1とする.
α3n1:=q3n24n+1,n1α3n:=q3n22n+q3n2+2n,n1α3n+1:=q3n2+4n+1,n0βn:=qn2n(q;q)2n,n0
とすると, (αn,βn)1に関するBailey対である.

Slater(1951)

α3n1:=q3n22n,n1α3n:=q3n2+2n,n0α3n+1:=q3n2+4n+1q3n2+2n,n0βn:=qn2+n(q2;q)2n,n0
とすると, (αn,βn)qに関するBailey対である.

Baileyの6ψ6和公式
kZ(1aq2k)(b,c,d,e;q)k(1a)(aq/b,aq/c,aq/d,aq/e;q)k(a2qbcde)k=(q,q/a,aq,aq/bc,aq/bd,aq/be,aq/cd,aq/ce,aq/de;q)(q/b,q/c,q/d,q/e,aq/b,aq/c,aq/d,aq/e,a2q/bcde;q)
において, qq3,c=qn,d=q1n,e=q2nとすると,
kZ1aq6k1a(qn;q)3k(b;q3)k(aqn+1;q)3k(aq3/b;q3)k(a2q3nb)k=(q3,q3/a,aq3,aqn+3/b,aqn+2/b,aqn+1/b,aq2n+2,aq2n+1,aq2n;q3)(q3/b,qn+3,qn+2,qn+1,aq3/b,aqn+3,aqn+2,aqn+1,a2q3n/b;q3)=(aqn+1/b,aq2n;q)(q3,q3/a,aq3;q3)(qn+1,aqn+1;q)(q3/b,aq3/b,a2q3n/b;q3)=(aq/b,a;q)(q3,q3/a,aq3;q3)(q,aq;q)(q3/b,aq3/b,a2/b;q3)(q,aq;q)n(a2/b;q3)n(aq/b;q)n(a;q)2n=(a,q3/a,aq/b,aq2/b;q3)(q,q2,q3/b,a2/b;q3)(q,aq;q)n(a2/b;q3)n(aq/b;q)n(a;q)2n
を得る. ここで, a=qとすると,
k=n3n3(1q6k+1)(1)k(b;q3)kq12(9k2+k)(q;q)n+3k+1(q;q)n3k(q4/b;q3)kbk=(q2/b;q3)n(q;q)2n(q2/b;q)n
を得る. ここで, bとすると,
k=n3n3(1q6k+1)q6k2k(q;q)n+3k+1(q;q)n3k=1(q;q)2n
である. q6k2k(1q6k+1)=q6k2k(1qn+3k+1)q6k2+5k+1(1qn3k)であることを用いてこれを書き換えると,
k=n3n3(q6k2k(q;q)n+3k(q;q)n3kq6k2+5k+1(q;q)n+3k+1(q;q)n3k1)=1(q;q)2n
つまり,
1(q;q)n2q(q;q)n+1(q;q)n1+k=1n3(q6k2k+q6k2+k(q;q)n+3k(q;q)n3kq6k2+5k+1(q;q)n+3k+1(q;q)n3k1q6k25k+1(q;q)n3k+1(q;q)n+3k1)=1(q;q)2n
を得る. よって定理1が示された. 次に,
k=n3n3(1q6k+1)q6k2k(q;q)n+3k+1(q;q)n3k=1(q;q)2n
において, q6k2k(1q6k+1)=q6k2+2kn((1qn+3k+1)(1qn3k))を用いて書き換えると,
k=n3n3(q6k2+2k(q;q)n+3k(q;q)n3kq6k2+2k(q;q)n+3k+1(q;q)n3k1)=qn(q;q)2n
つまり,
1(q;q)n21(q;q)n+1(q;q)n1+k=1n3(q6k2+2k+q6k22k(q;q)n+3k(q;q)n3kq6k2+2k(q;q)n+3k+1(q;q)n3k1q6k22k(q;q)n+3k1(q;q)n3k+1)=qn(q;q)2n
を得る. よって定理3が示された. 次に,
k=n3n3(1q6k+1)(1)k(b;q3)kq12(9k2+k)(q;q)n+3k+1(q;q)n3k(q4/b;q3)kbk=(q2/b;q3)n(q;q)2n(q2/b;q)n
において, b0とすると,
k=n3n3(1q6k+1)q3k22k(q;q)n+3k+1(q;q)n3k=qn2n(q;q)2n
を得る. q3k22k(1q6k+1)=q3k22k(1qn+3k+1)q3k2+4k+1(1qn3k)を用いて書き換えると,
k=n3n3(q3k22k(q;q)n+3k(q;q)n3kq3k2+4k+1(q;q)n+3k+1(q;q)n3k1)=qn2n(q;q)2n
つまり,
1(q;q)n2q(q;q)n+1(q;q)n1+k=1n3(q3k22k(q;q)n+3k(q;q)n3kq3k2+4k+1(q;q)n+3k+1(q;q)n3k1q3k24k+1(q;q)n+3k1(q;q)n3k+1)=qn2n(q;q)2n
を得る. よって定理7が示された. 次に,
k=n3n3(1q6k+1)q3k22k(q;q)n+3k+1(q;q)n3k=qn2n(q;q)2n
において, q3k22k(1q6k+1)=q3k2+kn((1qn+3k+1)(1qn3k))を用いて書き換えると,
k=n3n3(q3k2+k(q;q)n+3k(q;q)n3kq3k2+k(q;q)n+3k+1(q;q)n3k1)=qn2(q;q)2n
つまり,
1(q;q)n21(q;q)n+1(q;q)n1+k=1n3(q3k2+k+q3k2k(q;q)n+3k(q;q)n3kq3k2+k(q;q)n+3k+1(q;q)n3k1q3k2k(q;q)n+3k1(q;q)n3k+1)=qn2(q;q)2n
を得る. よって定理5が示された. 次に,
kZ1aq6k1a(qn;q)3k(b;q3)k(aqn+1;q)3k(aq3/b;q3)k(a2q3nb)k=(a,q3/a,aq/b,aq2/b;q3)(q,q2,q3/b,a2/b;q3)(q,aq;q)n(a2/b;q3)n(aq/b;q)n(a;q)2n
において, a=q2とすると,
kZ(1q6k+2)(b;q3)k(1)kq12(9k2+5k)(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k(q5/b;q3)kbk=(q4/b;q3)n(q3/b;q)n(q2;q)2n
を得る. bとすると,

k=n3n3(1q6k+2)q6k2+k(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k=1(q2;q)2n
ここで, q6k2+k(1q6k+2)=q6k2+k(1qn+3k+2)q6k2+7k+2(1qn3k)を用いて書き換えると,
k=n3n3(q6k2+k(q2;q)n+3k(q;q)n3kq6k2+7k+2(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k1)=1(q2;q)2n
つまり,
1(q2;q)n(q;q)nq2(q2;q)n+1(q;q)n+k=1n3(q6k2+k(q2;q)n+3k(q;q)n3k+q6k2+k(q;q)n3k+1(q2;q)n+3k1q6k2+7k+2(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k1q6k27k+2(q;q)n3k+2(q2;q)n+3k2)=1(q2;q)2n
が得られる. よって定理2が示された. 次に,
k=n3n3(1q6k+2)q6k2+k(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k=1(q2;q)2n
q6k2+k(1q6k+2)=q6k2+4kn((1qn+3k+2)(1qn3k))を用いて書き換えると,
k=n3n3(q6k2+4k(q2;q)n+3k(q;q)n3kq6k2+4k(q;q)n3k1(q2;q)n+3k+1)=qn(q2;q)2n
つまり,
1(q;q)n21(q;q)n1(q;q)n+1+k=1n3(q6k2+4k(q2;q)n+3k(q;q)n3k+q6k24k(q;q)n3k+1(q2;q)n+3k1q6k2+4k(q;q)n3k1(q2;q)n+3k+1q6k24k(q2;q)n+3k2(q;q)n3k+2)=qn(q2;q)2n
を得る. よって定理4が示された. 次に,
kZ(1q6k+2)(b;q3)k(1)kq12(9k2+5k)(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k(q5/b;q3)kbk=(q4/b;q3)n(q3/b;q)n(q2;q)2n
において, b0とすると,
k=n3n3(1q6k+2)q3k2k(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k=qn2(q2;q)2n
を得る. q3k2k(1q6k+2)=q3k2k(1qn+3k+2)q3k2+5k+2(1qn3k)を用いて書き換えると,
k=n3n3(q3k2k(q2;q)n+3k(q;q)n3kq3k2+5k+2(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k1)=qn2(q2;q)2n
つまり,
1(q2;q)n(q;q)nq2(q2;q)n+1(q;q)n1+k=1n3(q3k2k(q2;q)n+3k(q;q)n3k+q3k2+k(q;q)n3k+1(q2;q)n+3k1q3k2+5k+2(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k1q3k25k+2(q;q)n3k+2(q2;q)n+3k2)=qn2(q2;q)2n
となるから定理6を得る. また,
k=n3n3(1q6k+2)q3k2k(q2;q)n+3k+1(q;q)n3k=qn2(q2;q)2n
q3k2k(1q6k+2)=q3k2+2k((1qn+3k+2)(1qn3k))を用いて書き換えると,
k=n3n3(q3k2+2k(q2;q)n+3k(q;q)n3kq3k2+2k(q;q)n3k1(q2;q)n+3k+1)=qn2+n(q2;q)2n
つまり,
1(q;q)n(q2;q)n1(q;q)n1(q2;q)n+1+k=1n3(q3k2+2k(q2;q)n+3k(q;q)n3k+q3k22k(q;q)n3k+1(q2;q)n+3k1q3k2+2k(q;q)n3k1(q2;q)n+3k+1q3k22k(q;q)n3k+2(q2;q)n+3k2)=qn2+n(q2;q)2n
となる. よって定理8を得る.

このように, Baileyの6ψ6和公式を特殊化することによって全ての定理を示すことができることが分かった.

参考文献

[1]
L. J. Slater, A new proof of Rogers's transformations of infinite series, Proc. London Math. Soc. (2), 1951, 460-475
投稿日:17日前
更新日:16日前
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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