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現代数学解説
文献あり

『代数函数論』定理1.9(前半)

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準備

トレースとノルム

L/Kを体の有限次拡大とする.LK上のベクトル空間とみなしておく.するとaLについて,a倍写像は線形写像なので,trace・determinant・特性多項式の概念がある.a倍写像を線形写像と見たときに得られるこれらの概念をaKに関する,trace・determinant・特性多項式という.
 aKに関する特性多項式について,以下の補題が成り立ちます.

Kの有限次拡大体Lの元aについての特性多項式Pa(x)aKに関する最小多項式f(x)との間には
Pa(x)=f(x)[L:K(a)]
という関係がある.

基底を固定する.Aa倍写像の行列表現とする.f(a)=0より,f(A)=O.[よって,f(x)の既約性よりf(x)Aの最小多項式である.(追記)]ゆえにPa(x)の根はf(x)の根に等しい.ゆえに,Pa(x)|f(x)nn=[L:K]).f(x)の既約性によりPa(x)=f(x)rと書ける.最後に,[L:K]=degPa(x)=rdegf(x)=r[K(a):K]
であることから補題を得る.

L/Kを体の拡大,νKの付値νLにおける任意の拡張とする.Lの元c
cm+a1cm1++am=0,aiK,ν(ai)0,(i=1,,m)
なる方程式を満足するならば,ν(c)0である.

ν(ai)=ν(ai)0より,
mν(c)=ν(cm)=ν(a1cm1++am)min((mi)ν(c);i=1,m)
よってν(c)0である.

本題

参考文献[1]の定理1.9の一部を示します.残りは別の記事でやります.

Kを素因子Pに関する完備体,LKの任意の有限次拡大体とすれば,PLにおける拡張がただ一つ存在する.

L/KのノルムをNとし,Pに属する正規付値をνとおく.
ν(a)=ν(N(a))
として得られるL上の関数を考察する.a0ならばN(a)0より,ν(a)は有理整数.また,明らかにν(0)=.次にN(ab)=N(a)N(b)より,ν(ab)=ν(a)+ν(b)が分かる.次に,ν(c)0ならばν(1+c)0を示せば,νが付値を与えることが分かる.
 ν(c)0と仮定する.cKに関して満足する既約多項式を
(1)f(x)=xm+a1xm1++am,f(c)=0,aiK
とすれば,補題1より,cKに関する特性多項式F(x)(f(x))nmに等しいので,二つの多項式の定数項を比べて,N(c)=±(am)nm(ここで,n=[L:K]である).よって
ν(am)=mnν(N(c))=mnν(c)0
今完備体を考えているので,参考文献[1]の補題1.7より(以前の記事[3]も参照)ν(ai)0i=1,,m).
 さて,1+cKに関する特性多項式はF(x1)=(f(x1))nmとなるので,F(x1)の定数項であるN(1+c)
N(1+c)=±(f(1))nm=±((1)m+a1(1)m1+am)nm
となるので,ν(1+c)0
 次に一意性を示す.PPLにおける任意の拡張とし,νPに属するνの拡張とする.ν(c)0となるcLKに関して満足する既約方程式を(1)とすれば,すでに証明したようにν(ai)0i=1,,m)であるから補題2より,ν(c)0である.よって参考文献[1]の補題1.3より(あるいは以前の記事[4]の補題3より),ννである.よってP=P.QED

おわりに

最後の方はほぼ丸写しになっちゃいましたね.出版社の方ごめんなさい.

参考文献

投稿日:20241119
更新日:20241122
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数理物理に関心がありつつ、現在はセキュリティ分野の資格取得・業務経験の獲得を通じて、将来的には研究と実務の両立を目指しています。

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