本記事は 競技科学people Advent Calendar 2025 のDay14です.
証明など,忙しすぎてかなり略しているため,追って追記していきます.
ども,Weskです.2日連続の記事ですね.
本記事にて,幾何を解く際に留意しておくと便利な格言を幾つかまとめようと思います.
余談なんですが,そもそも数学に格言ってあるんですかね.僕もいまいち全貌を把握していないんですが,中1の幾何の担当であった某先生によるとあるらしいです.凄いですね.
閑話休題.ここからは,記事の形式について,簡単に補足して行きます.
重要度:(黒星が多ければ多いほど頻出かつ有用性が高いです.なお僕調べ)
一口コメント:(簡単なコメントがここにくっついていることがあります)
(問題文.OMCや自作問題を除き,リンクのみ掲載している場合は省略)
(問題文.OMCや自作問題を除き,リンクのみ掲載している場合は省略)
重要度:★★★★☆
一口コメント:こっそり隠れていることが多い構図です.
まずは例題を解いてみましょう.
省略(著作権に配慮し,リンクのみの掲載)
JJMOyoの高難易度幾何枠ですね,本番なら,よっぽど幾何に自信がない限り取り組まない人が多いに違いないです.
$AM$をどのように求めるのか,その手法から逆算して考えてみましょう.
三平方の定理は刺さらなそうだし,めぼしい相似も見つからないし,うーん.
スチュワートの定理を知っていれば多少見通しは良くなるのですが,まぁまぁマイナーなので……中線定理くらいかなぁとなります(なるんです).
ここで格言「中線は2倍に延長せよ」.
$PM$は$BC$の中線ですから,試しに$M$について$P$と対称な点$P'$を取ってみます.こうすれば中線定理が刺さりそうですね.後は$AP'$を求めれば終いです.
四角形$PBP’C$は平行四辺形なので,$∠DPE=∠CP’B$です.
四角形$ADPE$∽四角形$ACP'B$が角度追跡などから容易にわかるので,$AP:AP'=DE:CB$ですね,後は与えられている長さを代入すれば,答えを得られます.
……と,あっという間に解くことができてしまいました.
この手法のいい所は,平行四辺形が必ず登場してくれる,という点.
平行四辺形は対辺の長さが等しいかつ平行となる,など中々嬉しい性質を持っているので,特に求値幾何で刺さりやすいテクニックです.
JMOyoからも一問,例題を置いておきます.
省略(著作権に配慮し,リンクのみの掲載2)
重要度:★★★☆☆
一口コメント:回転相似,舐められすぎでは???(魂の叫び)
$∠A=∠B=∠C<90°$なる凸四角形$ABCD$において, 直線$AB$と直線$CD$の交点を$E$とします.
$AD=20,DE=22$のとき,$AE$の長さを求めてください.
とりあえず図を書いてみましょう.
……うーん,補助点を取らないと解けなさそうですね.
このように,同じ角度を上手いこと扱いたい……という時,たまに使えるかもしれません.
「回転相似を忘れずに」.
$ED$が$EC$にくっつくように三角形$EDA$を相似拡大してみます.
$A$の相似拡大先を$A'$とすると,$B,C,A'$は一直線上にあります.
以下,$EB=EC=k$,$BC$の中点を$M$と置きます.
$∠BEC=∠A’EC$から,$EC:EA’=BC:CA’,BC=\dfrac{10}{11}k$ですね.
$\cos∠AED=\cos∠BEC=2(\cos∠MEC)^2-1=2(\dfrac{\sqrt{96}}{11})^2-1=\dfrac{71}{121}$ですから,$△AED$で余弦定理を用いることで答えを得ます.
……この場合の格言は所謂,"図形をくっつける"というものです.
nmoonさんが記事を出しているので,深堀りしたい方は参照ください.
小学生でもわかる!初等幾何のテクニック/図形と図形を“くっつける”-nmoon
問題もそちらに多数あります.僕からも三問載せておきます.
三角形$ABC$について,$∠BAC$の二等分線と線分$BC$の交点を$D$とし,線分$AB,AC$上にそれぞれ点$E,F$を$∠ADE=∠ACB,∠ADF=∠ABC$となるように取ったところ,$BC=8,EF=5,AD=2\sqrt{6}$が成立しました.
この時三角形$ABC$の面積を求めてください.
正方形$ABCD$において,対角線$BD$上の点$E,F$が$∠EAF=45°$をみたしており,$B,E,F,D$の順に並んでいます.三角形$AEF$の外接円と辺$AB,AD$の交点をそれぞれ$P,Q$としたとき,$PB=12,QD=5$が成立しました.
この時$ABCD$の一辺の長さを求めてください.
$Ω$を外接円に持つ三角形$ABC$は$∠BAC=120°$を満たしています.また円$γ$は$Ω$に$A$で内接し,さらに辺$BC$に接しています.$Ω$の半径が$121$,$γ$の半径が$21$である時三角形$ABC$の内接円の半径を求めてください.
重要度:★★★★★
一口コメント:超基本テクニック.
省略(著作権に配慮し,リンクのみの掲載3)
このままだと中々解きにくいので,どこかしらに補助点が欲しいです.
どこに取りましょうか.
正五角形なので,$AF:FC$は既知の値です.これを踏まえて,次の格言.
「平行線に相似比を移せ」
$CD$と平行な直線で$A$を通るものを考えてみます.
これと$GH$の交点$I$を取ると,三角形$AFI$と三角形$CFH$は相似で,その相似比は既知です.
また$BF//CHかつBF=CH$より,三角形$AGI$と三角形$BGF$も相似です.
よってあとは,三角形の相似比と既知の長さを用いれば答えを出せます.
実際,$BF=a,FE=b$とすると,$AI:CH=AF:FC=a:b,AI=\dfrac{5a}{b}$となります.
また,$AI:BF=AG:GB,AG=\dfrac{20}{b}$となります.
$AG+GB=EF$より$\dfrac{20}{b}+4=b$,これを解いて$b=2+2\sqrt{6}$とわかるので,$AG=\dfrac{20}{2+2\sqrt{6}}=2\sqrt{6}-2$です.
このテクニックは典型ですが,かなり強いので覚えておきましょう.
問題は置きません.問題のfirststepとして使っていけば覚えられると思います.
問題云々というよりかは公式を羅列したほうが早いと思うので,羅列します.
先輩の記事で,これに関するものがあったので,どうぞ.
・三角形$ABC$について頂点$A,B,C$の対辺の長さを$a,b,c$で表し,角$BAC=A……$としています.
・面積を$S$,$\dfrac{a+b+c}{2}=s$.外接円,内接円,A-傍接円の半径をそれぞれ$R,r,r_A$とします.
・内心,外心,A-傍心をそれぞれ$I,O,I_A$とします.
・A,B,Cから対辺へ下ろした垂足をD,E,Fとしていることがあります.
・$cos(\dfrac{A}{2})=\sqrt{\dfrac{s(s-a)}{bc}},sin(\dfrac{A}{2})=\sqrt{\dfrac{(s-b)(s-c)}{bc}}$
角の二等分線を引き余弦定理を用いることで示せる.
・$S=2R^2sinAsinBsinC=\dfrac{abc}{4R}$
後者のみ示す.
前者は後者に正弦定理を用いれば得られる.
正弦定理から$sinA=\dfrac{a}{2R}$,$S=\dfrac{bc\times sinA}{2}$より,代入すれば示せた.
・内接四角形$ABCD$で,$sinBAD:sinCAD=sinB\times BD:sinC\times CD$
工事中.
・内接四角形$ABCD$で,$AB\times sinBAC+AD\times sinCAD=AC\times sin BAD$(Trigonometric Ptolemy)
船旅を参照せよ.
・点$A$と共線である点$B,C,D$で,$\dfrac{sinBAC}{AD}+\dfrac{sinCAD}{AB}=\dfrac{sinBAD}{BD}$(Trigonometric Colinearity)
三角形の面積公式より容易に示せる.
・$BC$上の点$P$,弧$BC$上の点$Q$で$∠CAQ=∠BAP$なら$AP\times AQ=bc$(Isogonal Lines Lemma)
$∠BAP=∠CAQ$より,$∠ABP=∠AQC=∠B$であるから,$△ABP∽△AQC⇒\dfrac{b}{AP}=\dfrac{AQ}{c}⇒AP\times AQ=bc$.
・$AI\times AI_{A}=bc$(Isogonal Lines Lemmaの系)
上とほぼ似た議論をすればよい.
・A-medianの長さは$\sqrt{\dfrac{2b^2+2c^2-a^2}{4}}$
中線定理を変形するだけである.
・$A$から下ろした垂線の長さは$c\times sinB=\dfrac{bc\times sinA}{a}=\dfrac{bc}{2R}$,垂線の足を$D$として,$BD=\dfrac{a^2+c^2-b^2}{2a}$
前者から示す.求める値を$h$と置く.
正弦定理より,$\dfrac{sinB}{h}=\dfrac{sin90°}{c}⇒h=c\times sinB$
また,三角形$ABC$の面積に着目して,$\dfrac{ah}{2}=\dfrac{bc\times sinA}{2}⇒h=\dfrac{bc\times sinA}{a}$
また上について,正弦定理より$\dfrac{a}{sinA}=R$から,$h=\dfrac{bc}{2R}$.
続いて後者.
$\dfrac{sin(90°-B)}{BD}=\dfrac{sinB}{c}$より$BD=c\times cosB$
余弦定理より$cosB=\dfrac{a^2+c^2-b^2}{2ac}$ゆえ,$BD=\dfrac{a^2+c^2-b^2}{2a}$.
・$AH=2R\times cosA,HD=2R\times cosB\times cosC$
前者から示す.
$HECD$は内接四角形より,$AH\times AD=AE\times AC$
$AD=b\times sinC,AE=c\times cosA$から,$AH=a\times cotA$
ゆえに正弦定理より,$AH=2R\times cosA$である.
続いて後者.
$HECD$は内接四角形より,$∠BHD=∠C$である.
三角形$BHD$について正弦定理を用い,かつ$BH=b\times cotB$から,$HD=b\times cotB\times cosC$.
よって正弦定理より,所望の式を得る.
・$EF=a\times cosA$
簡単な角度追跡から$△ADE∽△ABC$より,$\dfrac{DE}{a}=\dfrac{AE}{c}=cos A⇒DE=a\times cosA$.
・内角の二等分線の長さは,$\dfrac{2bc}{b+c}\times cos(\dfrac{A}{2})$,外角だと$\dfrac{2bc}{|b-c|}\times sin(\dfrac{A}{2})$
スチュワートの定理より容易に示せる.
・$AI=\dfrac{bc\times cos(\dfrac{A}{2})}{s}=\dfrac{r}{sin(\dfrac{A}{2})}=\dfrac{s-a}{cos(\dfrac{A}{2})}$
角の二等分線定理を変形することで1つ目は容易に示せる.
内接円と$AB$の接点$U$を取ると,$IU⊥BC$かつ$IU=r$であるので,$r$でまとめれば2つ目も示せる.
ところで$AU=s-a$であったので,これを用いて変形すれば3つ目も示せる.
・弧$BAC$の中点を$M'$,弧$BC$の中点を$M$とすると$AM=\dfrac{b+c}{2bc\times cos(\dfrac{A}{2})},AM'=\dfrac{|b-c|}{2bc\times sin(\dfrac{A}{2})}$
Isogonal Lines Lemma より,$AU\times AM=bc$から$AM$は求められる.
$AM'$も同様に,外角の二等分線と$BC$の交点を取りIsogonal Lines Lemmaを用いれば求められる.
・$MB=MC=MI=\dfrac{a}{2cos(\dfrac{A}{2})}$
上の結果と,トリリウムの定理・トレミーの定理より示せる.
・$AI_{A}=\dfrac{bc\times cos(\dfrac{A}{2})}{s-a}=\dfrac{r_{A}}{sin(\dfrac{A}{2})}=\dfrac{s}{cos(\dfrac{A}{2})},AI_{B}=\dfrac{r_{B}}{cos(\dfrac{A}{2})}$
内心時と似た議論をすればよい.
・$r_{A}=\dfrac{S}{s-a}$
船旅を参照せよ.相似拡大を考えれば終わりである.
・$sin BIC=\dfrac{BC}{II_A}$
工事中.
・任意の点$A,B,C,D$で$\dfrac{\sin BAD}{\sin CAD}=\dfrac{\sin ABD}{\sin ACD}\times \dfrac{BD}{CD}=\dfrac{\sin ABD}{\sin ACD}\times\dfrac{\sin BCD}{\sin CBD}$(Quadrilateral Ratio Formula)
工事中.
・$A$からの垂足を$D$,同様に$E,F$を定め,$AO$と$BC$の交点を$K$とすると,$DE:DF=KC:KB$
工事中.
もっと式はあるので,ぜひ自分で作ったり探したりしてみてください.
問題を二つほど置いておきます.
三角形$ABC$の外心,内心をそれぞれ$O,I$とします.この時,$IO⊥AO,AB・AC=777,OI=11$が成り立ちました.
$AO^2$を求めてください.
$AB< AC$なる鋭角三角形$ABC$において,$A$から辺$BC$に下ろした垂線の足を$D$とします.また線分$DC$上に点$E$を取り,$B$から線分$AE$に下ろした垂線の足を$F$とすると,直線$CF$は辺$AB$の中点を通りました.
$BD=CE,DF=24,AF-EF=42$が成り立つ時,$\dfrac{AB}{BC}$を求めてください.
まず,ちょっと消化不良ぎみになってしまい,ごめんなさい.
幾何が苦手だというそこの貴方.青diff程度なら,簡単な手法を覚えていれば解けるはずです.絶対に解けます.絶対に.
詰まったらぜひ,この記事の内容を思い出してもらえると嬉しいです.
誤植があれば,教えてください.
ではまた,どこかで.