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現代数学解説
文献あり

超幾何数列の基礎9:超指数関数

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0
$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{A}[0]{\mathcal{A}} \newcommand{Aut}[0]{\operatorname{Aut}} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{c}[0]{\cdot} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{F}[4]{{}_2F_1\left(\begin{matrix}#1,#2\\#3\end{matrix};#4\right)} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{FF}[6]{{}_3F_2\left(\begin{matrix}#1,#2,#3\\#4,#5\end{matrix};#6\right)} \newcommand{G}[0]{\Gamma} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\operatorname{Gal}} \newcommand{H}[0]{\mathcal{H}} \newcommand{id}[0]{\operatorname{id}} \newcommand{Im}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{l}[0]{\left} \newcommand{L}[0]{\Lambda} \newcommand{L}[0]{\mathcal{L}} \newcommand{la}[0]{\lambda} \newcommand{La}[0]{\Lambda} \newcommand{Li}[0]{\operatorname{Li}} \newcommand{li}[0]{\operatorname{li}} \newcommand{M}[4]{\begin{pmatrix}#1& #2\\#3& #4\end{pmatrix}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{o}[0]{\omega} \newcommand{O}[0]{\Omega} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{ord}} \newcommand{P}[0]{\mathfrak{P}} \newcommand{p}[0]{\partial} \newcommand{q}[0]{\mathfrak{q}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\right} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\operatorname{Re}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{t}[0]{\theta} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{vp}[0]{\varphi} \newcommand{vt}[0]{\vartheta} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/#1\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/#1\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

 この記事では 前回の記事 に引き続き超幾何数列の基本事項についてまとめていきます。
 前回までの記事では
$$\frac{A(n+1)}{A(n)}$$
が有理関数となるような数列:超幾何数列について考えてきましたが、今回の記事ではこの類似として
$$\frac{f'(t)}{f(t)}$$
が有理関数となるような関数:超指数関数について考えていきます。
 やることとしては超幾何数列の場合と大して変わらないので、主要な命題だけ紹介して細かい説明についてはすっ飛ばしていきます。

定義と基本性質

hyperexponential term

 $0$でない関数$f(t)$超指数関数であるとは、その対数微分
$$\frac{f'(t)}{f(t)}$$
$t$についての有理関数となることを言う。

 任意の超指数関数$f(t)$に対し、ある有理関数$R(t)$およびある定数$t_j,\a_j$が存在して
$$f(t)=e^{R(t)}\prod^J_{j=1}(t-t_j)^{\a_j}$$
が成り立つ。

証明

 部分分数分解によって
$$\frac{f'(t)}{f(t)}=g(t)+\sum^J_{j=1}\sum^{e_j}_{k=1}\frac{\a_{j,k}}{(t-t_j)^k}\qquad(g(t):\mbox{多項式})$$
のように表せるのでこれを積分することで
$$\log f(t)=G(t)+\sum^J_{j=1}\l(\a_{j,1}\log(t-t_j)-\sum^{e_j-1}_{k=1}\frac{\a_{j,k+1}}{k(t-t_j)^k}\r)\qquad(G'(t)=g(t))$$
つまり
$$f(t)=e^{R(t)}\prod^J_{j=1}(t-t_j)^{\a_{j,1}}\qquad \l(R(t)=G(t)-\sum^J_{j=1}\sum^{e_j-1}_{k=1}\frac{\a_{j,k+1}}{k(t-t_j)^k}\r)$$
を得る。

 超指数関数$f(t)$に対し$f^{(n)}(t)$も超指数関数となる。また$f(t)$$f^{(n)}(t)$は相似(後述)である。

証明

 $f'(t)$が超指数関数となることを示せば十分である。そのことについては
$$\l(\frac{f'(t)}{f(t)}\r)'=\frac{f''(t)}{f(t)}-\frac{f'(t)^2}{f(t)^2}$$
つまり$f'(t)$の対数微分が
$$\frac{f''(t)}{f'(t)}=\frac{f(t)}{f'(t)}(\l(\frac{f'(t)}{f(t)}\r)'+\frac{f'(t)^2}{f(t)^2})$$
と表せることからわかる。
 また
$$\frac{f^{(n)}(t)}{f(t)}=\frac{f^{(n)}(t)}{f^{(n-1)}(t)}\cdots\frac{f''(t)}{f'(t)}\c\frac{f'(t)}{f(t)}$$
に注意すると$f(t)$$f^{(n)}(t)$は相似であることがわかる。

閉形式

 大まかな流れは 第一回の記事 と同様なので証明は省略します。

 超指数関数全体のなす集合を$\H$$\H$によって生成される線形空間を$\L(\H)$とおく。

 関数$f(t)$閉形式であるとは$f(t)\in\L(\H)$であることを言う。

相似関係

 超指数関数$f(t),g(t)$相似であるとは、その比$f(t)/g(t)$$t$についての有理関数となることを言う。

 $0$でない任意の$F(t)\in\L(\H)$に対し、ある相似でない超指数関数$f_1(t),\ldots,f_r(t)$が存在して
$$F(t)=\sum^r_{k=1}f_k(t)$$
が成り立つ。またこのような表示は一意的である。

微分方程式

 関数$f(t)$D-finiteであるとは$f(t)$が多項式係数の線形微分方程式を満たす、つまりある多項式$p_0(t),\ldots,p_I(t)\quad(p_I(t)\neq0)$が存在して
$$\sum^I_{i=0}p_i(t)f^{(i)}(t)=0$$
が成り立つことを言う。

 任意の$f(t)\in\L(\H)$はD-finiteである。

 $F(t)\in\L(\H)$が微分方程式
$$\sum^I_{i=0}p_i(t)F^{(i)}(t)=0$$
を満たすとき、命題3のような分解
$$F(t)=\sum^r_{k=1}f_k(t)$$
における各因子$f_k(t)$も微分方程式
$$\sum^I_{i=0}p_i(t)f_k^{(i)}(t)=0$$
を満たす。

逆微分の求め方

 第二回の記事では「差分して$A(n)$になる超幾何数列$T(n)$」を求めるアルゴリズムについて解説しましたが、この類似を考えることで「微分して$f(t)$になる超指数関数$F(t)$」を求めることができます(より強力な手法としてRisch-Bronstein Algorithmというものも知られているそうですが、ここでは特に紹介しません)。

 超指数関数$f(t),F(t)$
$$F'(t)=f(t)$$
を満たすとき
$$r(t)=\frac{f'(t)}{f(t)},\quad y(t)=\frac{F(t)}{f(t)}$$
とおくと
$$y'(t)+r(t)y(t)=1$$
が成り立つ。

 $0$でない有理関数$r(t)$に対して
$$r(t)=\frac{a(t)}{b(t)}+\frac{c'(t)}{c(t)}$$
なる多項式$a(t),b(t),c(t)$であって以下を満たすようなものが存在する。
(R1) 任意の非負整数$h$に対し$b(t)$$a(t)-hb'(t)$は互いに素である。

証明

 互いに素な多項式$p(t),q(t)$を用いて
$$r(t)=\frac{p(t)}{q(t)}$$
と表したとき、ある正整数$h$に対し
$$u(t)=\gcd(q(t),p(t)-hq'(t))\neq1$$
が成り立つとすると
\begin{align} p(t) &=u(t)\tilde p(t)+hq'(t)\\ &=u(t)\ol p(t)+hu'(t)\ol q(t)\\ q(t)&=u(t)\ol q(t)\\ U(t)&=u(t)^h \end{align}
とおけば
$$r(t)=\frac{\ol p(t)}{\ol q(t)}+h\frac{u'(t)}{u(t)} =\frac{\ol p(t)}{\ol q(t)}+\frac{U'(t)}{U(t)}$$
が成り立つ。
 このように各$h=1,2,\ldots$に対し$q(t),p(t)-hq'(t)$の共通因子を掃き出していくことで所望の多項式$a(t),b(t),c(t)$を構成できることがわかる。

アルゴリズム
  1. 互いに素な多項式$p(t),q(t)$であって
    $$r(t)=\frac{p(t)}{q(t)}$$
    を満たすようなものを求める。
  2. 非負整数$h$であって終結式
    $$R(h)=\operatorname{Res}(q(t),p(t)-hq'(t))$$
    $h$とするようなものを全て求め、それらを小さい順に
    $$h=h_1,h_2,\ldots,h_N$$
    とおく。
  3. 多項式列$p_j(t),q_j(t),u_j(t)$
    $$p_0(t)=p(t),\quad q_0(t)=q(t)$$
    および漸化式
    \begin{align} u_j(t)&=\gcd(q_{j-1}(t),q_{j-1}(t)-h_jq'_j(t))\\ q_j(t)&=\frac{q_{j-1}(t)}{u_j(t)}\\ p_j(t)&=\frac{p_{j-1}(t)-hu_j'(t)q_j(t)}{u_j(t)} \end{align}
    によって定める。このとき
    \begin{array}{l} a(n)=f_N(n)\\ b(n)=g_N(n)\\ c(n)=\prod^N_{j=1}u_j(t)^{h_j} \end{array}
    が求める多項式となる。

 いま
$$y(t)=\frac{b(t)}{c(t)}x(t)$$
とおくと件の方程式
$$y'(t)+r(t)y(t)=1$$

$$b(t)x'(t)+(a(t)+b'(t))x(t)=c(t)$$
と変形できることに注意する。

 上の条件を満たすような多項式$a(t),b(t),c(t)$に対し
$$b(t)x'(t)+(a(t)+b'(t))x(t)=c(t)$$
なる有理関数$x(t)$が存在すれば$x(t)$は多項式となる。

証明

 $x(t)$を互いに素な多項式$p(t),q(t)$を用いて
$$x(t)=\frac{p(t)}{q(t)}$$
と表したとき$q(t)$が定数でないものと仮定し矛盾を導く。
 いま$q(t)$の既約因子$u(t)$を任意に取り
$$x(t)=\frac{\ol p(t)}{\ol q(t)}+\frac\a{u(t)^h}\qquad(u(t)^h\nmid\ol q(t))$$
と部分分数分解する。またこの一、二項目をそれぞれ$x_1(t),x_2(t)$とおく。
 このとき
\begin{align} b(t)x'_2(t)+(a(t)+b'(t))x_2(t) &=\l(a(t)+b'(t)-h\frac{b(t)}{u(t)}u'(t)\r)\frac\a{u(t)^h}\\ &=c(t)-(b(t)x'_1(t)+(a(t)+b'(t))x_1(t)) \end{align}
より、この分母に注目すると
$$u(t)\mid b(t)\quad\mbox{かつ}\quad u(t)\mid\l(a(t)+b'(t)-h\frac{b(t)}{u(t)}u'(t)\r)$$
が成り立たなければならないが
$$b'(t)=\l(\frac{b(t)}{u(t)}u(t)\r)'=\frac{b(t)}{u(t)}u'(t)+\l(\frac{b(t)}{u(t)}\r)'u(t)$$
に注意すると
$$u(t)\mid(a(t)-(h-1)b'(t))$$
となって$a(t),b(t)$の取り方に矛盾。
 よって$q(t)$は定数でなければならないことが示された。

方程式の解き方

 $k=\max\{\deg a,\deg b-1\}$とし$a(t),b(t)$の最高次の係数をそれぞれ$A,B$とおく。

  1. $\deg a\neq\deg b-1$または$\frac AB\not\in\Z$のとき
    $$d=\deg c-k$$
    $\deg a=\deg b-1$かつ$\frac AB\in\Z$のときのとき
    $$d=\max\{\deg c-k,\ -\tfrac AB-k\}$$
    とおく。
  2. このとき$d<0$であれば求めるような多項式$x(t)$は存在せず、そうでなければ
    $$x(t)=\sum^d_{k=0}C_kt^k$$
    と展開し
    $$b(t)x'(t)+(a(t)+b'(t))x(t)=c(t)$$
    の両辺を係数比較することによって得られる$C_0,\ldots,C_d$についての方程式を解く。
    もしその方程式が解を持たなければ求めるような多項式$x(t)$は存在しない。

連続版Gosper's Algorithm

 以上の議論をまとめると超指数関数$f(t)$に対し
$$F'(t)=f(t)$$
なる超指数関数$F(t)$は次のようなステップによって求めることができます。

  1. 多項式$a(t),b(t),c(t)$であって
    $$\frac{f'(t)}{f(t)}=\frac{a(t)}{b(t)}+\frac{c'(t)}{c(t)}$$
    かつ、任意の非負整数$h$に対して
    $$\gcd(b(t),a(t)-hb'(t))=1$$
    となるようなものを求める。
  2. 微分方程式
    $$b(t)x'(t)+(a(t)+b'(t))x(t)=c(t)$$
    を満たすような多項式$x(t)$を求める。
  3. $x(t)$が求まらなければ所望の関数は存在せず、$x(t)$が求まれば
    $$F(t)=\frac{b(t)}{c(t)}x(t)f(t)$$
    が求める超指数関数となる。

計算例

$$F'(t)=(1-2t^2)e^{-t^2}$$
なる超指数関数$F(t)$を求めよ。

解説

 $f(t)=(1-2t^2)e^{-t^2}$に対し
$$\frac{f'(t)}{f(t)}=\frac{(1-2t^2)'}{1-2t^2}-2t$$
より
$$a(t)=-2t,\quad b(t)=1,\quad c(t)=1-2t^2$$
とおくとよい。このとき微分方程式
$$x'(t)-2tx(t)=1-2t^2$$
の解は$x(t)=t$と求まるので
$$F(t)=te^{-t^2}$$
が求める超指数関数となる。

$$F'(t)=\frac{4t^2+1}{\sqrt t}e^{t^2}$$
なる超指数関数$F(t)$を求めよ。

解説

 $f(t)=(4t^2+1)e^{t^2}/\sqrt t$に対し
$$\frac{f'(t)}{f(t)}=\frac{(4t^2+1)'}{4t^2+1}+\frac{4t^2-1}{2t}$$
より
$$a(t)=4t^2-1,\quad b(t)=2t,\quad c(t)=4t^2+1$$
とおくとよい。このとき微分方程式
$$2tx'(t)+(4t^2+1)x(t)=4t^2+1$$
の解は$x(t)=1$と求まるので
$$F(t)=\frac{2t}{\sqrt t}e^{t^2}=2\sqrt te^{t^2}$$
が求める超指数関数となる。

$$F'(t)=\frac{(1+t)^\a}{(1-t)^{\a+2}}$$
なる超指数関数$F(t)$を求めよ。

解説

 $f(t)=(1+t)^\a/(1-t)^{\a+2}$に対し
$$\frac{f'(t)}{f(t)}=\frac{2(\a+1+t)}{1-t^2}$$
より
$$a(t)=2(\a+1+t),\quad b(t)=1-t^2,\quad c(t)=1$$
とおくとよい。このとき微分方程式
$$(1-t^2)x'(t)+2(\a+1)x(t)=1$$
の解は$x(t)=1/2(\a+1)$と求まるので
$$F(t)=\frac1{2(\a+1)}\l(\frac{1+t}{1-t}\r)^{\a+1}$$
が求める超指数関数となる。

級数・積分と漸化式・微分方程式

 第四回の記事では各変数に関して超幾何的である数列$F(x,y)$に対して
$$f(x)=\sum^\infty_{y=-\infty}F(x,y)$$
が満たす漸化式を求めるアルゴリズムについて解説しましたが、$F(x,y)$を片方、あるいは両方の変数に関して超指数的な関数に置き換えてその類似を考えることで
$$f(x)=\sum^\infty_{y=-\infty}F(x,y),\quad\int^\infty_{-\infty}F(x,y)dy$$
の満たす漸化式や微分方程式を求めることができます。

Almkvist-Zeilberger Algorithm

 いま$\s_x,\s_y$をそれぞれ
$$\s_xF(x,y)=\l\{\begin{array}{l} F(x+1,y)\\\frac{\partial}{\partial x}F(x,y) \end{array}\r.\qquad \s_yF(x,y)=\l\{\begin{array}{l} F(x,y+1)-F(x,y)\\\frac{\partial}{\partial y}F(x,y) \end{array}\r.$$
のいずれかを満たすような作用素とし、$F(x,y)$
$$\frac{\s_xF(x,y)}{F(x,y)},\quad\frac{\s_yF(x,y)}{F(x,y)}$$
をそれぞれ$x,y$についての有理関数とするような関数とします。
 このとき次のようなアルゴリズムによって
$$\sum^I_{i=0}A_i(x)(\s_x^iF)(x,y)=\s_yG(x,y)$$
を満たすような多項式$A_i(x)$および$G(x,y)/F(x,y)$$x,y$についての有理関数とするような関数$G(x,y)$を求めることができます。

  1. $I$を任意に取り、未知数$A_i(x)$を伴う関数
    $$\A(y)=\sum^I_{i=0}A_i(x)(\s_x^iF)(x,y)$$
    を考える。
  2. $\A(y)$に対し離散版/連続版Gosper's Algorithmを考えることで$A_0(x),\ldots,A_I(x)$およびある多項式$X(y)$に関する線形方程式
    $$\a(y)(\s_yX)(y)+\b(y)X(y)=c(y)$$
    に帰着させる($i=0,\ldots,I$に対し
    $$\frac{\s_x^iF(x,y)}{H(x,y)}$$
    $y$についての多項式となるような関数$H(x,y)$を考えることで$c(y)$
    $$\frac{\A(y)}{H(x,y)}=\sum^I_{i=0}A_i(x)\frac{\s_x^iF(x,y)}{H(x,y)}$$
    を因数に持つ、特に$\a(y),\b(y)$$A_i(x)$に依らないことがわかる)。
  3. もし非自明な解が得られれば
    $$G(x,k)=\frac{b(k-1)}{c(k)}X(k)\A(k)$$
    だか
    $$G(x,t)=\frac{b(t)}{c(t)}X(t)\A(t)$$
    だかが求める関数となる。
    もし非自明な解が得られなければ$I$をより大きく取り直して同様の試行を繰り返す。

 そして適当な条件下でこの等式
$$\sum^I_{i=0}A_i(x)(\s_x^iF)(x,y)=\s_yG(x,y)$$
$y$について和分/積分することで
$$f(x)=\sum^\infty_{y=-\infty}F(x,y),\quad\int^\infty_{-\infty}F(x,y)dy$$
は漸化式/微分方程式
$$\sum^I_{i=0}A_i(x)(\s_x^if)(x)=0$$
を満たすことがわかります。

計算例

級数×漸化式

  第四回の記事 にて紹介した通り。

級数×微分方程式

(ルジャンドル多項式)

$$f(x)=\sum^n_{k=0}\frac{(n+k)!}{(n-k)!(k!)^2}\l(\frac{x-1}2\r)^k$$
の満たす微分方程式を求めよ。

解説

$$F(x,k)=\frac{(n+k)!}{(n-k)!(k!)^2}\l(\frac{x-1}2\r)^k$$
に対し
\begin{align} \A(k) &=A_0(x)F(x,k)+A_1(x)F'(x,k)+A_2(x)F''(x,k)\\ &=(A_0\c(x-1)^2+2A_1\c(x-1)k+4A_2\c k(k-1))\frac{F(x,k)}{(x-1)^2} \end{align}
とおくと
$$\frac{F(x,k+1)}{F(x,k)}=\frac{(n-k)(n+k+1)}{(k+1)^2}\frac{x-1}2$$
より
\begin{align} a(k)&=(x-1)(n-k)(n+k+1)\\ b(k)&=2(k+1)^2\\ c(k)&=A_0(x-1)^2+2A_1(x-1)k+4A_2k(k-1) \end{align}
とおくとよい。
 このとき$A_0,A_1,A_2,X(k)$についての方程式
$$(x-1)(n-k)(n+k+1)X(k+1)-2k^2X(k)=A_0(x-1)^2+2A_1(x-1)k+4A_2k(k-1)$$

$$X(k)=x-1,\quad A_0=n(n+1),\quad A_1=-2x,\quad A_2=1-x^2$$
と解けるので
$$G(x,k)=\frac{2k^2}{x-1}F(x,k)=\frac{(n+k)!}{(n-k)!((k-1)!)^2}\l(\frac{x-1}2\r)^{k-1}$$
とおくと
$$(1-x^2)F''(x,k)-2xF'(x,k)+n(n+1)F(x,k)=G(x,k+1)-G(x,k)$$
が成り立つ、つまり$f(x)$は微分方程式
$$(1-x^2)f''(x)-2xf'(x)+n(n+1)f(x)=0$$
を満たすことがわかる。

積分×漸化式

$$\G(n)=\int^\infty_0t^{n-1}e^{-t}dt$$
の満たす漸化式を求めよ。

解説

 $F(n,t)=t^{n-1}e^{-t}$に対し
\begin{align} \A(t)&=A_0(n)F(n,t)+A_1(n)F(n+1,t)\\ &=(A_0+A_1t)t^{n-1}e^{-t} \end{align}
とおくと
$$\frac{\A'(t)}{\A(t)}=\frac{((A_0+A_1t)t^{n-1})'}{(A_0+A_1t)t^{n-1}}-1$$
より
$$a(t)=-1,\quad b(t)=1,\quad c(t)=(A_0+A_1t)t^{n-1}$$
とおくとよい。
 このとき$A_0,A_1,x(t)$についての方程式
$$x'(t)-x(t)=(A_0+A_1t)t^{n-1}$$

$$x(t)=t^n,\quad A_0=n,\quad A_1=-1$$
と解けるので
$$nf(n,t)-f(n+1,t)=(t^ne^{-t})'$$
つまり
$$n\G(n)-\G(n+1)=0$$
を得る。

積分×微分方程式

$$f(x)=\int^\infty_0e^{-\frac{x^2}{t^2}-t^2}dt$$
をclosed formに表せ。

解説

 $F(x,t)=e^{-\frac{x^2}{t^2}-t^2}$に対し
\begin{align} \A(t) &=A_0(x)F(x,t)+A_1(x)F_x(x,t)+A_2(x)F_{xx}(x,t)\\ &=\frac{A_0t^4-2A_1xt^2-2A_2(t^2-2x^2)}{t^4}e^{-\frac{x^2}{t^2}-t^2} \end{align}
とおくと
\begin{align} \frac{\A'(t)}{\A(t)} &=\frac{(A_0t^4-2A_1xt^2-2A_2(t^2-2x^2))'}{A_0t^4-2A_1xt^2-2A_2(t^2-2x^2)}-\frac4t+\frac{2x^2}{t^3}-2t\\ &=\frac{(A_0t^4-2A_1xt^2-2A_2(t^2-2x^2))'}{A_0t^4-2A_1xt^2-2A_2(t^2-2x^2)}-\frac{2(t^4+2t^2-x^2)}{t^3} \end{align}
より
$$a(t)=-2(t^4+2t^2-x^2),\quad b(t)=t^3,\quad c(t)=A_0t^4-2A_1xt^2-2A_2(t^2-2x^2)$$
とおくとよい。
 このとき$A_0,A_1,A_2,X(t)$についての方程式
$$t^3X'(t)-(2t^4+t^2-2x^2)X(t)=A_0t^4-2A_1xt^2-2A_2(t^2-2x^2)$$

$$X(t)=2,\quad A_0=-4,\quad A_1=1,\quad A_2=1$$
と解けるので
$$F_{xx}(x,t)-4F(x,t)=\l(\frac4te^{-\frac{x^2}{t^2}-t^2}\r)'$$
つまり$f(x)$は微分方程式
$$f''(x)-4f(x)=0$$
を満たすことがわかる。
 これは
$$f(x)=\a e^{2x}+\b e^{-2x}$$
と解けるので、$x\to\infty$における挙動および$x=0$における値に注意すると
$$f(x)=\frac{\sqrt\pi}2e^{-2|x|}$$
を得る。

参考文献

[1]
W. Koepf, Hypergeometric Summation: An Algorithmic Approach to Summation and Special Function Identities, Springer, 2014
投稿日:55

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子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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