はじめに
この記事では
前回の記事
に引き続き超幾何数列の基本事項についてまとめていきます。
前回までの記事では
が有理関数となるような数列:超幾何数列について考えてきましたが、今回の記事ではこの類似として
が有理関数となるような関数:超指数関数について考えていきます。
やることとしては超幾何数列の場合と大して変わらないので、主要な命題だけ紹介して細かい説明についてはすっ飛ばしていきます。
定義と基本性質
hyperexponential term
でない関数が超指数関数であるとは、その対数微分
がについての有理関数となることを言う。
任意の超指数関数に対し、ある有理関数およびある定数が存在して
が成り立つ。
証明
部分分数分解によって
のように表せるのでこれを積分することで
つまり
を得る。
超指数関数に対しも超指数関数となる。またとは相似(後述)である。
証明
が超指数関数となることを示せば十分である。そのことについては
つまりの対数微分が
と表せることからわかる。
また
に注意するととは相似であることがわかる。
閉形式
大まかな流れは
第一回の記事
と同様なので証明は省略します。
超指数関数全体のなす集合を、によって生成される線形空間をとおく。
相似関係
超指数関数が相似であるとは、その比がについての有理関数となることを言う。
でない任意のに対し、ある相似でない超指数関数が存在して
が成り立つ。またこのような表示は一意的である。
微分方程式
関数がD-finiteであるとはが多項式係数の線形微分方程式を満たす、つまりある多項式が存在して
が成り立つことを言う。
が微分方程式
を満たすとき、命題3のような分解
における各因子も微分方程式
を満たす。
逆微分の求め方
第二回の記事では「差分してになる超幾何数列」を求めるアルゴリズムについて解説しましたが、この類似を考えることで「微分してになる超指数関数」を求めることができます(より強力な手法としてRisch-Bronstein Algorithmというものも知られているそうですが、ここでは特に紹介しません)。
でない有理関数に対して
なる多項式であって以下を満たすようなものが存在する。
(R1) 任意の非負整数に対しとは互いに素である。
証明
互いに素な多項式を用いて
と表したとき、ある正整数に対し
が成り立つとすると
とおけば
が成り立つ。
このように各に対しの共通因子を掃き出していくことで所望の多項式を構成できることがわかる。
アルゴリズム
- 互いに素な多項式であって
を満たすようなものを求める。 - 非負整数であって終結式
をとするようなものを全て求め、それらを小さい順に
とおく。 - 多項式列を
および漸化式
によって定める。このとき
が求める多項式となる。
いま
とおくと件の方程式
は
と変形できることに注意する。
上の条件を満たすような多項式に対し
なる有理関数が存在すればは多項式となる。
証明
を互いに素な多項式を用いて
と表したときが定数でないものと仮定し矛盾を導く。
いまの既約因子を任意に取り
と部分分数分解する。またこの一、二項目をそれぞれとおく。
このとき
より、この分母に注目すると
が成り立たなければならないが
に注意すると
となっての取り方に矛盾。
よっては定数でなければならないことが示された。
方程式の解き方
としの最高次の係数をそれぞれとおく。
- またはのとき
かつのときのとき
とおく。 - このときであれば求めるような多項式は存在せず、そうでなければ
と展開し
の両辺を係数比較することによって得られるについての方程式を解く。
もしその方程式が解を持たなければ求めるような多項式は存在しない。
連続版Gosper's Algorithm
以上の議論をまとめると超指数関数に対し
なる超指数関数は次のようなステップによって求めることができます。
- 多項式であって
かつ、任意の非負整数に対して
となるようなものを求める。 - 微分方程式
を満たすような多項式を求める。 - が求まらなければ所望の関数は存在せず、が求まれば
が求める超指数関数となる。
計算例
解説
に対し
より
とおくとよい。このとき微分方程式
の解はと求まるので
が求める超指数関数となる。
解説
に対し
より
とおくとよい。このとき微分方程式
の解はと求まるので
が求める超指数関数となる。
解説
に対し
より
とおくとよい。このとき微分方程式
の解はと求まるので
が求める超指数関数となる。
級数・積分と漸化式・微分方程式
第四回の記事では各変数に関して超幾何的である数列に対して
が満たす漸化式を求めるアルゴリズムについて解説しましたが、を片方、あるいは両方の変数に関して超指数的な関数に置き換えてその類似を考えることで
の満たす漸化式や微分方程式を求めることができます。
Almkvist-Zeilberger Algorithm
いまをそれぞれ
のいずれかを満たすような作用素とし、は
をそれぞれについての有理関数とするような関数とします。
このとき次のようなアルゴリズムによって
を満たすような多項式およびをについての有理関数とするような関数を求めることができます。
- を任意に取り、未知数を伴う関数
を考える。 - に対し離散版/連続版Gosper's Algorithmを考えることでおよびある多項式に関する線形方程式
に帰着させる(に対し
がについての多項式となるような関数を考えることでは
を因数に持つ、特にはに依らないことがわかる)。 - もし非自明な解が得られれば
だか
だかが求める関数となる。
もし非自明な解が得られなければをより大きく取り直して同様の試行を繰り返す。
そして適当な条件下でこの等式
をについて和分/積分することで
は漸化式/微分方程式
を満たすことがわかります。
計算例
級数×漸化式
第四回の記事
にて紹介した通り。
級数×微分方程式
解説
に対し
とおくと
より
とおくとよい。
このときについての方程式
は
と解けるので
とおくと
が成り立つ、つまりは微分方程式
を満たすことがわかる。
積分×漸化式
解説
に対し
とおくと
より
とおくとよい。
このときについての方程式
は
と解けるので
つまり
を得る。
積分×微分方程式
解説
に対し
とおくと
より
とおくとよい。
このときについての方程式
は
と解けるので
つまりは微分方程式
を満たすことがわかる。
これは
と解けるので、における挙動およびにおける値に注意すると
を得る。