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現代数学解説
文献あり

超幾何数列の基礎4:二重数列の総和

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はじめに

 この記事では 前回の記事 に引き続き超幾何数列の基本事項についてまとめていきます。
 前回までの記事では一変数の超幾何数列に注目して閉形式の求め方や漸化式の解き方について解説してきましたが、今回からは二変数の超幾何数列に焦点を当てていきます。

二変数の超幾何数列

超幾何数列

 二重数列F(n,k)が超幾何数列であるとは
F(n+1,k)F(n,k),F(n,k+1)F(n,k)
がそれぞれn,kについての有理関数となることを言う。

proper

 超幾何数列F(n,k)properであるとは、ある多項式P(n,k)およびある定数
aj,bj,aj,bjZ,cj,cj,x,yC
が存在して
F(n,k)=P(n,k)j=1sΓ(ajn+bjk+cj)j=1tΓ(ajn+bjk+cj)xnyk
と表せることを言う。

 なおあるjに対しajn+bjk+cj0以下の整数となるような(n,k)に対してF(n,k)は定義されない(ill-definedである)ものとし、またあるjに対しajn+bjk+cj0以下の整数となるような(n,k)に対してはF(n,k)=0と定めます。例えば二項係数
(nk)=n!k!(nk)!=Γ(n+1)Γ(k+1)Γ(nk+1)
n<0に対しては定義されず、k<0またはn<kにおいては0と定まります。
 ちなみに(x)mをポッホハマー記号
(x)m=Γ(x+m)Γ(x)={x(x+1)(x+m1)(m0)1(x1)(x|m|)(m<0)
とするとproperな超幾何数列は
F(n,k)=Q(n,k)j=1s(cj)ajn+bjkj=1t(cj)ajn+bjkxnyk
のようにも表せます。

基本定理

 本題に入っていく前にまずはproperな超幾何数列が満たす漸化的性質について紹介しておきましょう。

Sister Celine's Method

 properな超幾何数列F(n,k)kに依らない漸化式を満たす。
 つまりある(どれか一つは0ではない)多項式ai,j(n)が存在して
i=0Ij=0Jai,j(n)F(n+i,k+j)=0
が成り立つ。さらにこのI,J(の上界)として
I=j=1s|bj|+j=1t|bj|J=1+degP+I(j=1s|aj|+j=1t|aj|1)
と取れる(ただしdegkについての次数を考えるものとした)。

証明

方針

 I,Jを任意に取りai,j(n)C[n]を未知数とする線形方程式
i=0Ij=0Jai,j(n)F(n+i,k+j)=0
を考えたとき、両辺をF(n,k)で割ることでこの方程式はある多項式νi,j(n,k),δi,j(n,k)を用いて
i=0Ij=0Jai,j(n)νi,j(n,k)δi,j(n,k)=0
と表せ、またδi,j(n,k)の最小公倍多項式をΔ(n,k)とおくと
i=0Ij=0Jai,j(n)νi,j(n,k)Δ(n,k)δi,j(n,k)=0
という多項式の恒等式に帰着できる。
 ここでこの左辺のkについての次数をdとおくと係数比較によってこれはd+1本の方程式に分解でき、またこの方程式の未知数の個数は(I+1)(J+1)個であるので十分大きいI,Jに対し
d+1<(I+1)(J+1)
が成り立つことを示せばよい(一般に方程式の本数より未知数の個数の方が多い線形方程式は非自明な解を持つことが知られている)。

最小公倍多項式

 以下簡単のためm0に対し
rf(x,m)=(x)m=x(x+1)(x+m1)ff(x,m)=1(x)m=(x1)(xm)
と定める(rf,ffは上昇階乗(rising factorial)と下降階乗(falling factorial)の頭文字を取っている)。
 このとき
F(n+i,k+j)F(n,k)=νi,j(n,k)δi,j(n,k)
と置いていたのでνi,j,δi,j
νi,j(n,k)=P(n+i,k+j)xiyj×l=1ali+blj>0srf(aln+blk+cl,ali+blj)×l=1ali+blj<0tff(aln+blk+cl,|ali+blj|)δi,j(n,k)=P(n,k)×l=1ali+blj<0sff(aln+blk+cl,|ali+blj|)×l=1ali+blj>0trf(aln+blk+cl,ali+blj)
のように表せる(ただしνi,j/δi,jは既約分数とは限らない)。ここで実数Xに対し
X+=max{X,0},X=max{X,0}
と定めたとき
max{αi+βj0iI,0jJ}=α+I+β+Jmin{αi+βj0iI,0jJ}=(αI+βJ)
が成り立つことに注意するとδi,jの最小公倍多項式は
Δ(n,k)=P(n,k)×l=1sff(aln+blk+cl,ali+blj)×l=1trf(aln+blk+cl,(al)+i+(bl)+j)
と求まる。

次数の評価

 このとき
degνi,j(n,k)degP+l=1s(al+I+bl+J)+l=1t((al)I+(bl)J)deg(Δ(n,k)δi,j(n,k))l=1s(alI+blJ)+l=1t((al)+I+(bl)+J)
およびX++X=|X|に注意すると
deg(νi,j(n,k)Δ(n,k)δi,j(n,k))degP+l=1s(|al|I+|bl|J)+l=1t(|al|I+|bl|J)
が成り立つことがわかる。
 したがってdI,Jについての一次関数程度の大きさであり、I,Jが十分大きいときこれは(I+1)(J+1)1より小さいことがわかる。特に
A=l=1s|al|+l=1t|al|,B=l=1s|bl|+l=1t|bl|
とおき
I=B,J=1+degP+(A1)I
とすると
d+11+degP+AI+BJ=I+J+IJ=(I+1)(J+1)1<(I+1)(J+1)
と所望の不等式が満たされることがわかる。

 なおproperという条件は
F(n+i,n+j)F(n,k)=νi,j(n,k)δi,j(n,k)
とおいたときδi,jの最小公倍多項式Δに対し
νi,j(n,k)Δ(n,k)δi,j(n,k)
kについての次数を推定するためにのみ利用しており、一般の超幾何数列に対しても上と同様の方針で
d+1<(I+1)(J+1)
を満たすようなI,Jの取り方があれば
i=0Ij=0Jai,j(n)F(n+i,k+j)=0
という漸化式が存在することがわかります。
 ちなみにI,Jの上界について次のような事実も知られています(証明は気が向いたら書きます)。

 properな超幾何数列F(n,k)が多項式部分を持たない、つまり
F(n,k)=j=1sΓ(ajn+bjk+cj)j=1tΓ(ajn+bjk+cj)xnyk
と表されるとき、定理1におけるI,Jの上界として
I=j=1t(bj)+j=1sbj++(j=1tbjj=1sbj)+J=1+I(j=1t(aj)+j=1saj++(j=1tajj=1saj)+1)
と取れる。ただし実数Xに対して
X+=max{X,0},X=max{X,0}
と定めるものとした。

Zeilberger's Method

 properな超幾何数列F(n,k)に対して、ある(どれか一つは0でない)多項式Ai(n)およびG(n,k)/F(n,k)n,kについての有理関数とするような数列G(n,k)が存在して
i=0IAi(n)F(n+i,k)=G(n,k+1)G(n,k)
が成り立つ。

証明

構成法

 Fがproperであることから
i=0Ij=0Jai,j(n)F(n+i,k+j)=0
なる多項式ai,j(n)が取れ、これに対し多項式P
P(x,y,z)=i=0Ij=0Jai,j(x)yizj
によって定める。またN,Kをそれぞれn,kについての前進作用素、つまり数列f(n,k)に対して
Nf(n,k)=f(n+1,k),Kf(n,k)=f(n,k+1)
と定めると
P(n,N,K)F(n,k)=0
が成り立つことに注意する。
 いまPzの多項式として(1z)で割ることで
P(x,y,z)=P(x,y,1)+(1z)Q(x,y,z)
と表すと
P(n,N,1)F(n,k)=(K1)Q(n,N,K)F(n,k)
が成り立つので
G(n,k)=Q(n,N,K)F(n,k),Ai(n)=j=0Jai,j(n)
とおくと
i=0IAi(n)F(n+i,k)=G(n,k+1)G(n,k)
を得る。またGの取り方からG(n,k)/F(n,k)n,kについての有理関数となる。

非自明性

 次にP(x,y,1)1を満たすような多項式P(x,y,z)が存在することを示す。
 いまP(n,N,K)F(n,k)=0を満たすような多項式P(x,y,z)0であってzについての次数が最小となるようなものを取る。このときP(x,y,1)=0が成り立つとすると
P(n,N,1)F(n,k)=0=G(n,k+1)G(n,k)
よりGkに依らない数列となり、またこれは超幾何数列であったことからある0でない多項式B0(n),B1(n)が存在して
B1(n)G(n+1,k)B0(n)G(n,k)=0
が成り立つ。
 したがってR(n,N)=B1(n)NB0(n)とおくと
R(n,N)G(n,k)=R(n,N)Q(n,N,K)F(n,k)=0
つまり
P(x,y,z)=R(x,y)Q(x,y,z)
P(n,N,K)F(n,k)=0を満たす多項式となるが
P(x,y,z)=(1z)Q(x,y,z)
であったことからPzについてPよりも次数が低い多項式であり、これはPの取り方に矛盾。よってP(x,y,1)0を得る。

 この結果もproperという条件は定理1のような漸化式
i=0Ij=0Jai,j(n)F(n+i,k+j)=0
の存在を保証するためにのみ利用しており、一般の超幾何数列に対してもこのような漸化式が存在すれば
i=0IAi(n)F(n+i,k)=G(n,k+1)G(n,k)
を満たすような数列Gを構成することができます。

二重数列の総和

 さて 第一回の記事 でも言及したように我々が(proper) 超幾何数列を考える上で関心が高いのはその総和
f(n)=kF(n,k)
が閉形式で表せるか、ということにあります。
 ここで注目したいこととして 第二回の記事 (問題4)にて紹介したように
k=0n0(nk)
という和はn0を用いた閉形式に表せないのに対し
k=0n(nk)=2n
という和はnについての閉形式に表せるという現象があります。
 このように二重数列の総和を考える上で興味深いのは"不定和分"ではなく"定和分"を求めることにあります(そもそも前者については Gosper's algorithm によって解決できます)。したがって以下では
f(n)=k=F(n,k)
という和の持つ性質について考えていきましょう。

和の範囲について

 ちなみにF(n,k)が分母にΓ(an+bk)のような因子を持つときはk=abnを境にその前か後ろでF(n,k)は常に0となるので、いま考えている和は多くの場合ある有理数p,qを用いて
f(n)=pnkqnF(n,k)

f(n)=pnkF(n,k)
のように表せます(無限和の場合は収束級数を考えるものとします)。
 また各nに対しF(n,k)kについてill-definedな点を持つ場合もありますが、少なくともこのような範囲pnkqnにおいてwell-definedであれば気にしないものとします。

基本定理

 この問題において重要なのは、驚くべきことに、f(n)はP-再帰的であるという事実が成り立つことにあります。

 properな超幾何数列F(n,k)に対しf(n)=kF(n,k)とおくと、ある(どれか一つは0でない)多項式Ai(n)が存在して
i=0IAi(n)f(n+i)=0
が成り立つ。

 定理1によりF(n,k)kに依らない漸化式
i=0Ij=0Jai,j(n)F(n+i,k+j)=0
を満たすので、この左辺をkについて足し合わせることで
i=0I(j=0Jai,j(n))f(n+i)=0
という漸化式を得る。

 f(n)がP-再帰的であるということはその閉形式を考えることができるということになります。
 またf(n)の漸化式が得られればその閉形式は 第一回の記事 にて説明したようなステップによって求めることができるので、以下ではその「f(n)の満たす漸化式をどうやって求めるのか」という問題について考えていくこととしましょう。

Sister Celine's Algorithm

 素朴には上で説明したように定理1のような漸化式
i=0Ij=0Jai,j(n)F(n+i,k+j)=0
を求め、これをkについて足し合わせることで
i=0I(j=0Jai,j(n))f(n+i)=0
という漸化式を得るという方法があります。
 また定理1のような漸化式はその導出をそのまま辿る、つまり以下のようなステップによって求めることができます。

  1. I,Jを任意に取り、未知数ai,j(n)についての方程式
    i=0Ij=0Jai,j(n)F(n+i,k+j)=0
    を考える。
  2. i,jに対し
    F(n+i,k+j)F(n,k)=νi,j(n,k)δi,j(n,k)
    なる多項式νi,j(n,k),δi,j(n,k)を求める。
  3. δi,j(n)の公倍多項式Δ(n,k)を求め
    i=0Ij=0Jai,j(n)νi,j(n,k)Δ(n,k)δi,j(n,k)=0
    という多項式の恒等式に帰着させる。
  4. この両辺をkについて係数比較することによって得られるai,j(n)についての線型方程式を解く。
  5. もしその方程式が非自明な解を持たなければI,Jをより大きく取り直して同様の試行を繰り返す。

Zeilberger's Algorithm

 しかし我々が求めたいのは
Ai(n)=j=0Jai,j(n)
という多項式であり、この個々のai,j(n)まで求める必要はありません。そこでai,j(n)を経由せず直接Ai(n)を求めるために定理2のような漸化式
i=0IAi(n)F(n+i,k)=G(n,k+1)G(n,k)
を考えてみましょう。
 なおある有理関数R(n,k)が存在してG(n,k)=R(n,k)F(n,k)と書けるとのことだったので、適当なkに対してF(n,k)=0なりF(n,k)0なりが成り立てばG(n,k)にも同様の事実が成り立ち、したがって上の漸化式をkについて足し合わせることで
i=0IAi(n)f(n+i)=0
というf(n)についての漸化式が得られることとなります。

問題の帰着

 いま考えている等式の左辺
A(k)=i=0IAi(n)F(n+i,k)
kについての超幾何数列とみなすと
A(k)=G(n,k+1)G(n,k)
よりA(k)はGosper総和可能ということになります。したがってこの問題には Gosper's algorithm の考え方が応用できることになります。

ステップ1

 まず
A(k+1)A(k)=a(k)b(k)c(k+1)c(k)
なる多項式a(k),b(k),c(k)を構成してみましょう。
 いま
F(n+1,k)F(n,k)=r1(n,k)s1(n,k),F(n,k+1)F(n,k)=r2(n,k)s2(n,k)
とおくと
A(k+1)A(k)=i=0IAi(n)F(n+i,k+1)F(n,k+1)i=0IAi(n)F(n+i,k)F(n,k)F(n,k+1)F(n,k)=i=0IAi(n)j=0i1r1(n+j,k+1)s1(n+j,k+1)i=0IAi(n)j=0i1r1(n+j,k)s1(n+j,k)r2(n,k)s2(n,k)=c0(k+1)c0(k)a0(k)b0(k)
ただし
a0(k)=r2(n,k)j=0I1s1(n+j,k)b0(k)=s2(n,k)j=0I1s1(n+j,k+1)c0(k)=i=0IAi(n)(j=0i1r1(n+j,k)j=iI1s1(n+j,k))
と表せます(ここでa0(k),b0(k)Ai(n)の取り方に依らず定まる多項式であることに注意しましょう)。
 また Gosper's algorithm のステップ1によって
a0(k)b0(k)=a(k)b(k)c1(k+1)c1(k)
なる多項式a(k),b(k),c1(k)であって任意の非負整数hに対し
gcd(a(k),b(k+h))=1
を満たすようなものを取り、c(k)=c0(k)c1(k)とおくと
A(k+1)A(k)=a(k)b(k)c(k+1)c(k)
と表せることとなります。

ステップ2

 このとき
G(n,k)=b(k1)c(k)x(k)A(k)
とおくとx(k)は多項式であり
a(k)x(k+1)b(k1)x(k)=c(k)
を満たすのでした。
 ここでa(k),b(k1)Ai(n)の取り方に依らず定まる多項式であったことに注意すると Gosper's algorithm のステップ2によってx(n)の次数の上界dを求めることができます。このとき
x(n)=j=0dBj(n)kj
とおくと方程式
a(k)x(k+1)b(k1)x(k)=c(k)
kについての係数比較によりI+d+2の未知数
A0(n),,AI(n),B0(n),,Bd(n)
についての線型方程式に帰着でき、あとはこれを解くことで万事解決となります。

まとめ

 以上の議論をまとめると
i=0IAi(n)F(n+i,k)=G(n,k+1)G(n,k)
を満たすような多項式Ai(n)および超幾何数列G(n,k)は以下のようなステップによって求めることができます。

  1. Iを任意に取り、未知数Ai(n)および未知の超幾何数列G(n,k)についての方程式
    i=0IAi(n)F(n+i,k)=G(n,k+1)G(n,k)
    を考える。
  2. 多項式r1,r2,s1,s2
    F(n+1,k)F(n,k)=r1(n,k)s1(n,k),F(n,k+1)F(n,k)=r2(n,k)s2(n,k)
    によって定め
    a0(k)=r2(n,k)j=0I1s1(n+j,k)b0(k)=s2(n,k)j=0I1s1(n+j,k+1)c0(k)=i=0IAi(n)(j=0i1r1(n+j,k)j=iI1s1(n+j,k))
    とおく。
  3. Gosper's algorithm のステップ1によって
    a0(k)b0(k)=a(k)b(k)c1(k+1)c1(k)
    なる多項式a(k),b(k),c1(k)であって任意の非負整数hに対し
    gcd(a(k),b(k+h))=1
    を満たすようなものを取り、c(k)=c0(k)c1(k)とおく。
  4. Gosper's algorithm のステップ2によって
    a(k)x(k+1)b(k1)x(k)=c(k)
    を満たすような多項式x(k)の次数の上界dを求め
    x(k)=j=0dBj(n)kj
    と展開し、kについての係数比較によって得られる
    A0(n),,AI(n),B0(n),,Bd(n)
    についての線形方程式を解く。
  5. もし非自明な解が得られれば
    G(n,k)=b(k1)c(k)x(k)i=0IAi(n)F(n+i,k)=b(k1)c1(k)j=0I1s1(n+j,k)x(k)F(n,k)
    が求める超幾何数列となる。
    もし非自明な解が得られなければIをより大きく取り直して同様の試行を繰り返す。

計算例

 以下で簡単な計算例について紹介しておきますが、流石に二重数列の計算ともなると手計算が地獄となるので基本的には機械計算に頼った方がいいと思います。

k=0n(nk)xk=(1+x)n
を示せ。

解説

F(n,k)=(nk)xk,f(n)=kF(n,k)=k=0n(nk)xk
とおく。これは二項係数の漸化式
(n+1k)=(nk)+(nk1)
の両辺にxkを掛けることで
F(n+1,k)=F(n,k)+F(n,k1)x
という漸化式を満たすことがわかる。
 したがってこれをkについて足し合わせることで
f(n+1)=(1+x)f(n)
という漸化式が得られ、またf(0)=1に注意すると
f(n)=(1+x)n
と求まる。

n=k(nk)yn=yk(1y)k+1
を示せ。

解説

F(n,k)=(nk)yn,g(k)=nF(n,k)=n=k(nk)yn
とおくと、これも二項係数の漸化式から
F(n+1,k)=F(n,k)y+F(n,k1)y
という漸化式を満たすことがわかる。
 したがってこれをnについて足し合わせることで
g(k)=g(k)y+g(k1)y
つまり
g(k)=y1yg(k1)
という漸化式が得られ、また
g(0)=n=0yn=11y
に注意すると
g(k)=yk(1y)k+1
と求まる。

k=0n(nk)2=(2nn)
を示せ。

解説

F(n,k)=(nk)2,f(n)=k=0n(nk)2
とおきZeilberger's algorithmを実行する。
 とりあえずI=1とし
A(k)=A0(n)(nk)2+A1(n)(n+1k)2
とおく。このとき
A(k+1)A(k)=A0(n)(nkk+1)2+A1(n)(n+1k+1)2A0(n)+A1(n)(n+1n+1k)2=A0(n)(nk)2+A1(n)(n+1)2A0(n)(n+1k)2+A1(n)(n+1)2(n+1kk+1)2
が成り立つので
a(k)=(n+1k)2,b(k)=(k+1)2,c(k)=A0(n)(n+1k)2+A1(n)(n+1)2
とおくとよい。
 このとき
(n+1k)2x(k+1)k2x(k)=A0(n)(n+1k)2+A1(n)(n+1)2
なる多項式x(n)が存在すればその次数は高々1であることがわかるので
x(n)=B0(n)+B1(n)k
とおくとkについての係数比較によって
(B0+B1)2(n+1)B1B0=A02(n+1)(B0+B1)+(n+1)2B1=2(n+1)A0(n+1)2(B0+B1)=(n+1)2(A0+A1)
つまり
(1002n+1202n11111)(A0A1B0B1)=(0000)
という方程式が得られるので、これを解くことでその解の一つとして
A0=2(2n+1),A1=n+1,B0=3(n+1),B1=2
と求まる。
 以上より
A1(n)f(n+1)+A0(n)f(n)=(n+1)f(n+1)2(2n+1)f(n)=0
という漸化式が得られ、またf(0)=1に注意すると
f(n)=2n(2n1)n2f(n1)=(2n)!(n!)2f(0)=(2nn)
と求まる。
 ちなみにこのとき
x(k)=B1k+B0=2k3n3
であったのでこれによってG(n,k)
G(n,k)=k2(2k3n3)(nk+1)2F(n,k)
と求まる。またこの問題をSister Celine's algorithmによって解く場合は
nF(n,k)(2n1)(F(n1,k)+F(n1,k1))+(n1)(F(n2,k)2F(n2,k1)+F(n2,k2))=0
という漸化式が得られる。

参考文献

[1]
M. Petkovšek, H. Wilf, D. Zeilberger, A=B, 1997
投稿日:2024316
更新日:19
OptHub AI Competition

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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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  1. はじめに
  2. 二変数の超幾何数列
  3. 基本定理
  4. Sister Celine's Method
  5. Zeilberger's Method
  6. 二重数列の総和
  7. 基本定理
  8. Sister Celine's Algorithm
  9. Zeilberger's Algorithm
  10. 問題の帰着
  11. ステップ1
  12. ステップ2
  13. まとめ
  14. 計算例
  15. 参考文献