このシリーズでは超幾何数列という対象の基本事項についてまとめていきます。
内容としては"A=B"という書籍の第II章から要点を抜き出してまとめていくので、より詳しい話が知りたい人は同書などを参照してください。ちなみに"A=B"は
公式のpdf
が公開されているので誰でも閲覧することができます。
が
隣り合う項の比が一定であるような数列、つまり等比数列のことを時に幾何数列(geometric sequence)と言うことがあり、超幾何数列(hypergeometric sequence)はその一般化として考えられた概念となります。
超幾何数列はその階比を
と因数分解すると、その一般項はポッホハマー記号
を用いて
と表せます(
hypergeometric "sequence"はしばしばhypergeometric "term"と呼ばれますが、それはこのように超幾何級数
の
また呼称としてはhypergeometric "term"の方が一般的であり、直訳するなら超幾何"項"と言うのが適当ですが、個人的な好みによりこのシリーズでは超幾何"数列"という呼称を採用することにしています。
我々が超幾何数列を考える上で関心が高いのはその総和、例えば
などが"閉じた形"に表せるか、ということにあります。
次回以降の記事でこのような問題を考えていくために、今回の記事ではまず"閉じた形"とは具体的にどのような表示のことを指すのか、そして与えられた数列が"閉じた形"に表せるかどうかはどのように判別できるのか、ということについて解説していきます。
超幾何数列全体のなす集合を
を満たすことを言う。
また
数列
と表せることを言う。
例えば幾何数列の部分和
は二つの超幾何数列
の和として表せているので、これは閉形式となります。
まず超幾何数列の和を考える上で重要となる相似という関係について紹介しておきましょう。
超幾何数列
超幾何数列
とおく。このとき
そのことは
およびこれを
が成り立つことに注意するとわかる。
超幾何数列
を満たすとき、ある
いま
とおくと命題の仮定より
および
が成り立つのでこの差を取ることで
が得られる。
このときある
つまり
また全ての
が成り立ち、
が成り立つ。またこのような表示は一意的である。
と表せる。このときある
いま二通りの表示
が得られたとき、適当に順番を入れ替え相似なもの同士をまとめることで
は互いに相似でない超幾何数列の和となる。したがって命題2よりこの左辺は空和、つまり
でなければならないことがわかる。
この命題から互いに相似でない超幾何数列は
では与えられた数列
結論から言うとこの問題は
数列
が成り立つことを言う。
ちなみに定数係数の線形漸化式を満たすことはC-再帰的であると言い、このPやCは多項式(Polynomial)や定数(Constant)の頭文字を取っています。
任意の
明らかに各
P-再帰的な数列
この事実については昔に こんな記事 を書いたことがあります。一応その記事と同じ証明を下においておきます。
を満たすとする。このとき
とし
を縦に並べたベクトルを
を適当に整列させて縦に並べたベクトルを
このとき
と表せ、
が成り立つので
を満たすことがわかる。
を満たすとき、命題3のような分解
における各因子
を満たす。
は有理関数となることに注意するとある有理関数
と表せる。このとき
が成り立つので、命題3より
となることがわかる。
一般に
の解空間は高々
上で紹介した事実をまとめると数列
ステップ1については一般的な方法があるわけではありませんが、
第二回の記事
や
第四回の記事
で扱うような特定の対象を考える場合は
ステップ2については一般的な方法、つまり与えられた漸化式に対してそれを満たす超幾何数列を網羅的に求めるアルゴリズムが確立されています。詳しい方法については
第三回の記事
にて解説していきます。
ステップ3については線形漸化式の一般論から連続する
が成り立つような線型結合