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フック長公式を鏡映法で示す

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初めに

フック長公式については https://mathlog.info/articles/3114 を見てください.
上にあるように, フック長公式はカタラン数の一般化の文脈でよく言及されます. 一方で, カタラン数の綺麗な求め方として鏡映法が知られています. ( https://mathlog.info/articles/3097 など) じゃあ一般化したフック長公式も鏡映法で求められないのかというのは自然な発想ですね. ということで示します.

準備

以下nを非負整数とする. 格子点とは, Znに属する点のことを指す.

経路

u,vZnに対し, u,v間の経路とは, 以下の条件を満たすZnの元の列,(u0,u1,ul)のことを指す:

  • u0=uかつul=v.
  • 任意のiに対し, あるjが存在し, ui+1ui=ej. ここで, ejRnの基本ベクトル.

u,v間のパス全体をPath(u,v)で表す.

部屋

CRnを, C:={(x0,x1,xn1)x0x1xn1}で定める.

標準的経路

u,v間の経路(u0,u1,,ul)が標準的であるとは, 任意の0ilに対し, uiCが成立することを指す.
u,v間の標準的経路全体のなす集合をSPath(u,v)と表す.

主定理

δ:=(0,1,,n1)Znとする. Snが座標入れ替えとして自然にRnに作用することに注意せよ.

u,vCZnに対し,
#SPath(u,v)=σSnbinom(σ(vδ)+δu).
ここで, a=(a0,a1,an1)Znに対し, binom(a)
binom(a)=(i=0n1ai)!(i=0n1ai!)1
である. ただし, あるiに対してai<0のときはbinom(a)=0と定める.

S={(σ,p)|σSn,pPath(u,σ(vδ)+δ)}, S+={(σ,p)|σAn,pPath(u,σ(vδ)+δ)}, S=SS,S0={id}×SPath(u,v)Sと定める. 任意のa,bZnに対し, binom(ba)=#Path(a,b)なので示すべきは(#S+)(#S)=#S0. よって, SS0上の対合ιであって, ι(S+S0)S, ι(S)S+S0を満たすものを作ればよい.

p=(u0,u1,ul)SS0を任意にとる. Sの定義より, pPath(u,σ(vδ)+δ)となるσSnがuniqueにとれる. このとき, あるiが存在し, uiCを満たす. (σidならi=lとすればok. そうでない場合は, (id,p)SS0なのでS0の定義より従う) . このようなiの中で最小のものを再びiと置く. uCより, i>0なので, uiui1=ejjを置く. ここで, iの最小性より, j>0かつui,j=ui,j1+1である. よって, Snτ:=(j1,j)と置く.
uk(0kl)を次式で定める.
uk={ukkiτ(ukui)+uiki
(k=iのとき上下どちらで定義しても値が変わらないことに注意せよ.)
k<iのときuk+1uk=uk+1ukであり, kiのときはuk+1uk=τ(uk+1uk)である. よって, (u0,u1,,ul)はパスである. さらに, ui,j=ui,j1+1に注意すると, ul=τ(ul)τ(ui)+ui=τ(σ(vδ)+δ)+ejej1. τ(δ)δ=ej1ejなので, 結局ul=(τσ)(vδ)+δ.よって, ui=uiCと合わせ,(τσ,u)SS0. ι(σ,u)=(τσ,u)ιを定義すると, これが求める対合になることを示す. 対合であることは定義に従って計算すれば明らか. (τ2=idが効く. )sgn(τ)=1なので, ιS+S0Sに, SS+S0に送る. これが示したいことだった.

u=(0,0,,0)のときはこの式を積の形にすることができる. (ここからの話はSnの表現論周りでよくある式変形で, 例えば『古典群の表現論と組合せ論 下』のp173や『テンソル代数と表現論』p167に載っている. ただし前者の本の問10.1は間違っているので注意せよ.)

u=(0,0,,0),vZ0nCと仮定する. このとき, s=i=0n1vi,w=vδと置くと,
#SPath(u,v)=s!0i<j<n(wiwj)0i<n(wi+(n1))!1

以下, 負の整数nに対し(n!)1=0とする.
先の定理より,
#SPath(u,v)=s!σSnsgn(σ)i=0n1(wi+σ(i))!1
よって, n×n行列AAi,j=(wi+j)!1で定めると, s!det(A)=#SPath(u,v).
n未満の非負整数jに対して, 多項式fj(x)Z[x]を, fj(x)=(x+j)(x+j+1)(x+n1)と定めると, Ai,j=fj(wi)(wi+(n1))!1. (vi0より, wi+(n1)0なので, wi<0でもこの式は正しい. ) よって, n×n行列BBi,j=fj(wi)と定めると,
#SPath(u,v)=s!det(A)=s!0i<n(wi+(n1))!1det(B)
よって, 次の命題から主張は従う.

monicな多項式f0,f1fn1が, 任意のiに対しdeg(fi)=n1iを満たしたとする. このとき, n×n行列AAi,j=fi(xj)と定めると,
det(A)=0i<j<n(xixj).

行基本変形(の中で, 行のi行目の定数倍をj行目に足す操作)を繰り返し, fi=xn1iとしてよい. すると主張はヴァンデルモンドの行列式そのもの.

見なれたフック長公式を得るためにもうひと変形を行う.

vZ0nC,w=vδとする. このとき, 任意のn未満の非負整数iに対して, 次の式が成立する.
{0,1,2,,wi+(n1)}={wiwi,wiwi+1,wiwn1}{wi+v0t1,wi+v1t2,,wi+vvi1tvi}.
ただし, vjtとは, vをヤング図形とみなしたときのj列目の箱の個数. すなわち, vjt=#{kvk>j}.

ここでは図形的に示す.
次図はn=6,v=(8,6,3,3,2,1),i=1の場合の例である. 赤い線が{wiwi,wiwi+1,wiwn1}に, 青い線が{wi+v0t1,wi+v1t2,,wi+vvi1tvi}に対応する.

一般の場合も同様. (x座標-y座標を考えよ)

vZ0nCと仮定する. このとき, s=i=0n1viと置くと,
#SPath((0,0,0),v)=s!i=0n1j=0vi1((vij)+(vjti)1)1

上の補題より,
(wi+(n1))!1i<j<n(wiwj)=0j<vi(wi+vjt(j+1))=0j<vi(vi+vjtij1)
主張はこれと定理2から明らか.

終わりに

他のコセクター系への拡張や, 重み付けしてシューア関数との関係性などが気になります. また何か思いついたら追記します.

投稿日:2024522
更新日:2024827
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