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【スピン幾何】Clifford代数の構造と周期性

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スピノルの基本事項

 Clifford代数は行列環として実現させることができますが、一般にどのような行列環になるかを見ましょう。複素Clifford代数と実Clifford代数で様子が違いますが、今後スピン表現に関係するのが複素Clifford代数なのでそちらだけ論じます。

複素Clifford代数と構造定理

複素Clifford代数

$s+t=n$に対して、$\mathbb{C}l(n)=Cl(s,t)\otimes_\mathbb{C}\mathbb{C}$$n$複素Clifford代数と呼ぶ。

複素化しているので計量の符号はどうでもよくなります。

 複素Clifford代数の構造にとって基本になるのが次の周期性です。

$$ \mathbb{C}l(n+2)\simeq \mathbb{C}l(n)\otimes_\mathbb{C} \mathbb{C}l(2)\simeq \mathbb{C}l(n)\otimes_\mathbb{C} End(\mathbb{C}^2) $$

$\mathbb{C}^2$の正規直交基底を$e_1,e_2$とし、$\omega=-ie_1e_2$をchiral作用素とする。
分解$\mathbb{C}^{n+2}=\mathbb{C}^{n}\oplus\mathbb{C}^{2}$に関して、$\mathbb{C}^{n+2}\in u=(x,y)$と表示するとき、$\delta:\mathbb{C}^{n+2}\to \mathbb{C}l(n)\otimes_\mathbb{C} \mathbb{C}l(2)$
$$ \delta(u):=x\otimes\omega+1\otimes y $$
と定義する。
\begin{align} \delta(u)^2&=(x\otimes\omega+1\otimes y)(x\otimes\omega+1\otimes y)\\ &=x^2\otimes1+x\otimes\omega y+x\otimes y\omega+1\otimes y^2\\ &=x^2\otimes1+1\otimes y^2=-g(u,u) \end{align}
となる。ただし$g$$\mathbb{C}^{n+2}$の標準計量である。
よって$\mathbb{C}l(n+2)\simeq \mathbb{C}l(n)\otimes_\mathbb{C} \mathbb{C}l(2)$が従う。

 よって次の定理を得ます。

複素Clifford代数の構造定理1

複素Clifford代数は以下のようになる。

$n$$N$$\mathbb{C}l(n)$
偶数$2^{n/2}$$End(\mathbb{C}^N)$
奇数$2^{(n-1)/2}$$End(\mathbb{C}^N)\oplus End(\mathbb{C}^N)$

(i) $n$が奇数のときに帰納的に示す。
$n=1$のとき、$\mathbb{C}l(1)=\mathbb{C}\otimes\mathbb{C}$であり、$\mathbb{C}\oplus \mathbb{C}\to \mathbb{C}\otimes\mathbb{C}$
\begin{align} (1,0)\mapsto \frac{1}{2}(1\otimes1+i\otimes i),\ \ (i,0)\mapsto \frac{1}{2}(i\otimes1-1\otimes i)\\ (0,1)\mapsto \frac{1}{2}(1\otimes1-i\otimes i),\ \ (0,i)\mapsto \frac{1}{2}(i\otimes1+1\otimes i) \end{align}
と定義すれば、環同型$\mathbb{C}l(1)=\mathbb{C}\otimes\mathbb{C}\simeq\mathbb{C}\oplus \mathbb{C}$が成り立つ。
$n=2k-1$のとき、$\mathbb{C}l(2k-1)=End(\mathbb{C}^{2^{k-1}})\oplus End(\mathbb{C}^{2^{k-1}})$が成り立つと仮定すると、命題1より$n=2k+1$のときも成り立つ。

(ii) $n$が偶数のときも、$\mathbb{C}l(2)=End(\mathbb{C}^2)$に注意すると帰納的に成り立つ。

 次にスピン群を定義するために重要な$\mathbb{C}l(n)$の部分集合$\mathbb{C}l_0(n)$の定義は以下です。

$\mathbb{C}l_0(n)$

$\mathbb{C}l(n)$の部分集合$\{v_1\cdots v_{2k};\ v_1,\cdots,v_{2k}\in\mathbb{C}^{n-1},\ k\in\mathbb{N}\}$で生成される部分環を$\mathbb{C}l_0(n)$と書く。

 $\mathbb{C}l_0(n)$の基本性質は以下です。

$\mathbb{C}l_0(n)$の基本性質

$\mathbb{C}l_0(n)\simeq \mathbb{C}l(n-1)$

$\mathbb{C}^{n-1}\subset\mathbb{C}^n$であるから、$\delta:\mathbb{C}^{n-1}\to \mathbb{C}l(n-1)$
$$ \delta(x):=x\cdot e_n $$
と定義すれば、$\delta(x)^2=-g(x,x)$であるから、Clifford代数の同型$\mathbb{C}l_0(n)\simeq \mathbb{C}l(n-1)$が成り立つ。

 定理2と命題3を合わせると次の定理を得る。

複素Clifford代数の構造定理2

複素Clifford代数は以下のようになる。

$n$$N$$\mathbb{C}l_0(n)$
偶数$2^{n/2}$$End(\mathbb{C}^{N/2})\oplus End(\mathbb{C}^{N/2})$
奇数$2^{(n-1)/2}$$End(\mathbb{C}^N) $

複素Clifford代数の構造まとめ

$n$$N$$\mathbb{C}l(n)$$\mathbb{C}l_0(n)$
偶数$2^{[n/2]}$$End(\mathbb{C}^N)$$End(\mathbb{C}^{N/2})\oplus End(\mathbb{C}^{N/2})$
奇数$2^{[n/2]}$$End(\mathbb{C}^N)\oplus End(\mathbb{C}^N)$$End(\mathbb{C}^N) $
投稿日:202372

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投稿者

Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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