spinor空間には複素スカラー積が2つあります(他にもあるかもしれないが有名なものは2つ)。それがMajorana形式とDirac形式です。ここではMajorana形式を説明します。
$\Delta_n:\mathbb{C}l_{(t,s)}\to End(\Delta)$をClifford代数の既約表現とします。$\mu,\nu=\pm1$に対して、次を満たす非退化双線形形式$\Delta\times\Delta\to\mathbb{C}$をMajorana形式といいます。
Majorana形式は任意の$n=s+t$に対して存在しますが、$\mu,\nu$は次元に依存します。$\mu,\nu$は次の表のようになります。
$n$ mod 8 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$\mu$ | $\pm1$ | $1$ | $\pm1$ | $-1$ | $\pm1$ | $1$ | $\pm1$ | $-1$ |
$\nu$ | $1$ | $1$ | $\pm1$ | $-1$ | $-1$ | $-1$ | $\mp1$ | $1$ |
Majorana形式は$Spin(t,s)$不変となります。実際$g=X_1\cdots X_{2p}Y_1\cdots Y_{2q}$に対して、
$$
(g\psi,g\phi)=\mu^{2(p+q)}\eta(X_1,X_1)\cdots\eta(X_{2p},X_{2p})\eta(Y_1,Y_1)\cdots\eta(Y_{2q},Y_{2q})(\psi,\phi)=(\psi,\phi)
$$
となります。
複素行列$C$により、Majorana形式を
$$
(\psi,\phi)={}^t\psi C\phi
$$
と表すと、上の1,2の条件は
$$
{}^t\gamma_a C=\mu C\gamma_a,\ {}^tC=\nu C
$$
と表されます。$C$はcharge conjugate matrixとも呼ばれます(文脈依存のようです)。
Majorana形式が非退化なのでMajorana形式を用いてスピノルの双対を考えることができます。
$\psi\in\Delta$に対して、Majorana共役を$\tilde\psi=(\psi,\cdot)\in\Delta^*$と定義します。
Majorana共役は行列表示で書けば定義より、
$$
\tilde\psi={}^t\psi C
$$
となります。
文献によってはMajorana共役を表すとき$\bar\psi$を使うこともあるらしいので注意が必要です。Majorana共役はニュートリノを扱うときにMajorana mass termで登場します。
$t=1,s=3$の4次元Lorentzのとき、
$$
C=i\Gamma_0\Gamma_2=\begin{pmatrix}-i\sigma_2 & 0 \\ 0 & i\sigma_2\end{pmatrix}
$$
となり、$\mu=\nu=-1$となります。