本稿では、初等トポスを寓圏との間の随伴関手で特徴づける。
なお長くなるので本稿では扱わないが、初等トポスならば正則圏であることが一般に成立する。よって、初等トポスとは、正則圏であり、かつ関係の寓圏への埋め込みが右随伴を持つものであると言える。
正則圏であれば任意の二項関係の合成が定義され、かつ合成は結合的であることを以前の記事で示した。
https://mathlog.info/articles/N4rEfnxknQPT80mVF4XD
https://mathlog.info/articles/ZZYgzAaIMtviHVbyEFF3
このことから次の定義が可能である。
正則圏$\mathcal{A}$が任意に与えられたとき、$\mathcal{A}$の対象全体のクラス$|\mathcal{A}|$をそのまま対象のクラスとし、$\mathcal{A}$の二項関係全体を射とした圏が定義できる。
この圏を$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})$と書き、$\mathcal{A}$の関係の圏と呼ぶことにする。
前々回の記事で、射の合成は射のグラフの関係合成と整合性を保つことを示した。また、恒等射のグラフは、関係合成に関して恒等射のように振る舞うことも示した。
https://mathlog.info/articles/ZZYgzAaIMtviHVbyEFF3
軽く内容をおさらいしておく。
射$f\colon A \to B,g\colon B \to C$が与えられたとき、それぞれのグラフ$G_f,G_g$の関係合成は、合成した射$g \circ f$のグラフに一致する。
また、任意の恒等射$1_A$と任意の二項関係$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(X,A),S \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,Y)$に対し、関係合成の方程式$G_{1_A} \circ R = R$かつ$S \circ G_{1_A} = S$が常に成り立つ。
関係合成の図式からそれぞれ直ちに読み取れる。
射のグラフの合成
恒等射のグラフと関係合成
graph-composition-identityを正則圏$\mathcal{A}$で考えた場合、$\mathcal{A}$から$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})$への関手を次のように与えられる。
正則圏$\mathcal{A}$が与えられ、関係の圏$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})$を構成したとする。
このとき標準的な関手$G \colon \mathcal{A} \to \mathrm{Rel}(\mathcal{A})$が次のように常に定義できる。
$$ G \colon \mathcal{A} \to \mathrm{Rel}(\mathcal{A}),\quad GA = A,\quad Gf = G_f $$
則ち、$G$は対象のクラス上で恒等写像として振る舞い、かつ$\mathcal{A}$の射$f\colon A \to B$を$f$のグラフ$G_f = [(A;1_A,f)]$へと写す。
$G$が関手の公理を満たすことは、graph-composition-identityが示している。
次の命題は初等トポスの議論で地味に役に立つ。
射のグラフを二項関係の前に合成することは像を取らずに可能である。
つまり、$(T;g_1,g_2)$を$B,C$上のjointly monic spanとして、射$f \colon A \to B$と$g_1$で引き戻し$(P;l,r)$を取ったとき、$(P;l,g_2 \circ r)$はjointly monic familyである。
射のグラフと二項関係の合成
単純計算で直ちに求まる。$x,y \colon X \to P$を任意に取り、$l \circ x = l \circ y$かつ$g_2 \circ r \circ x = g_2 \circ r \circ y$と仮定すると、
$f \circ l \circ x = f \circ l \circ y$より、$g_1 \circ r \circ x = g_1 \circ r \circ y$が従う。$(T;g_1,g_2)$はjointly monic spanと仮定したから、$r \circ x = r \circ y$、引き戻しの普遍性より、$x = y$が従う。
よって$(P;l,g_2 \circ r)$はjointly monic familyの定義を満たす。
部分対象とは1-table(つまりmonic)の同型類のことを言った。
一部の圏では、この部分対象を普遍性で特徴づけることができる。
有限完備な圏に於いて、対象$\Omega$と射$t \colon 1 \to \Omega$が部分対象分類子であるとは、
この圏の任意のmonicが、$t$の引き戻しとして一意に与えられることをいう。具体的には次の図式言語で描ける。
部分対象分類子の普遍性
なお$1$から出る射は常にmonicであるため、$t$もmonicである。
次の命題は部分対象分類子の定義から直ちに従う。
有限完備かつ部分対象分類子を有する圏$\mathcal{A}$では、次が成り立つ。
$$ \mathcal{A}(A,\Omega) \simeq \mathrm{Sub}(A) $$
引き戻しはmonicを引き戻すことから、$t \colon 1 \to \Omega$を$\chi\colon A \to \Omega$で引き戻せばmonicを得られるので、
そのmonicが表示する$A$の部分対象を$\chi$と対応づければ良い。引き戻しのpasting lemmaより同型$\mathrm{Sub}(B) \simeq \mathcal{A}(B,\Omega)$の自然性が従う。
部分対象分類子による同型の自然性
なお、$A$の部分対象とは$A$に向かうmonicの同型類のことであったが、$(M;m)$と同型なmonic$(M';m')$、則ちある同型射$\theta \colon M \to M'$が存在して$m = m' \circ \theta$が成り立つような$(M';m')$を任意に取るとき、
$(M';m')$と$(M;m)$が同一の射$x \colon A \to \Omega$と対応することは次の図式から明らかである。
同型な1-tableと分類射
上の正方形図式が引き戻しであることは、向かい合う$\theta,1_A$がどちらも同型射であることから直ちに分かる。
引き戻しのpasting lemmaより、$m,m'$はいずれも$t$と$x$の引き戻しである。
圏の中には、トポスと呼ばれる特別なものがある。
次の定義は、Sheaves in Geometry and Logicという教科書で与えられた初等トポスの定義である。
圏$\mathcal{E}$が初等トポスであるとは、$\mathcal{E}$は引き戻しと終対象及び部分対象分類子$\Omega,t\colon 1 \to \Omega$を持ち、さらに任意の対象$B$に対し、power objectという対象$PB$と射$\in_B \colon B \times PB \to \Omega$が割り当てられていて、
任意の$f \colon B \times A \to \Omega$に対し、ある一意的な射$\lambda f \colon A \to PB$が存在して、$f = \in_B \circ (1 \times \lambda f)$が成り立つことをいう。
図式言語で描くと次の通りである。
Power objectの普遍性
引き戻しと終対象を持つ圏が有限完備であることを示すのは容易い。
さて、圏論的な二項関係とはjointly monic spanによって表示されるspanの同型類であり、
二項積を持つ圏では、積の普遍性によって二項積の部分対象と同一視できるのであった。
omega-subより、一般に次の自然同型が成り立つ。
初等トポス$\mathcal{A}$では、対象$B$を固定したとき、任意の$A \in |\mathcal{A}|$で次が自然に成り立つ。
$$ \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B) \simeq \mathrm{Sub}(A \times B) \simeq \mathcal{A}(A\times B,\Omega) \simeq \mathcal{A}(A,PB) $$
ただしここで$\mathrm{Sub}$は、対象を部分対象系に割り当てて、射を逆像に割り当てる関手と見做している。
rel-sub-naturalisomの自然同型を以て、power object$\ PB$と$\in_B$の定義は、二項関係に関する言葉で書き換えられる。
$\mathcal{A}$を初等トポスとするとき、rel-sub-naturalisomより次が従う。
$$ \mathcal{A}(B\times PB,\Omega) \simeq \mathrm{Sub}(B \times PB) \simeq \mathrm{Sub}(PB \times B) \simeq \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(PB,B) $$
これにより、$\in_B \colon B \times PB \to \Omega$は、ある二項関係$R \colon PB \to B$と標準的に一対一に対応する。この$R$を$\mathcal{A}$の$B$に於ける普遍関係(universal relation)と呼び、$\ni_B$と書くことにする。
定義から次が直ちに従う。
射$x \colon B \times PB \to \Omega$が、$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})(PB,B) \simeq \mathcal{A}(B \times PB,\Omega)$によって$\ni_B$と対応するならば、$x = \in_B$である。
逆に二項関係$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(PB,B)$が同じ同型で$\in_B$と対応するならば、$R = \ni_B$である。
仮定を満たすような$x,R$は、いずれも$1_{PB}$と自然同型で一対一になる。
$\ni_B$も$\in_B$も、自然同型$\mathcal{A}(B\times PB,\Omega) \simeq \mathrm{Sub}(B \times PB) \simeq \mathrm{Sub}(PB \times B) \simeq \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(PB,B) \simeq \mathcal{A}(PB,PB)$で$1_{PB} \in \mathcal{A}(PB,PB)$と一対一に対応することから主張が成り立つ。
$PB,B$上の普遍関係$\ni_B$の表示を$(U;u_1,u_2)$と書くとき、これは次の普遍性を満たす。
普遍関係の普遍性
ただし図中の$T$は$A,B$上のjointly monic spanの頂点を表す。
部分対象分類子とpower object及び$\in_B$の普遍性を組み合わせると次が成り立つ。
部分対象分類子とpower objectのタッグ
部分対象分類子の普遍性より、部分対象$[(T;\langle f_2,f_1 \rangle)] \in \mathrm{Sub}(B \times A)$は$f \colon B \times A \to \Omega$と一対一である。
同時にpower object及び$\in_B$の普遍性より、$f$と$\lambda f \colon A \to PB$は一対一であるから、したがって$\lambda f$は$B \times A$の部分対象$[(T;\langle f_2,f_1 \rangle)]$と一対一に対応している。
ここで$\langle f_2,f_1 \rangle,\langle u_2,u_1 \rangle$をjointly monic span$(T;f_2,f_1),(U;u_2,u_1)$と同一視することで、上の図式言語は次の図式言語を導くので、主張成立である。
普遍関係の普遍性と対応する射
composition-map-relで確認した通り、射のグラフを二項関係の前に合成する計算は引き戻しのみで事足りる。
$A$の左側には$1_A$が省略されており、この図式言語は関係合成$\ni_B \circ G_{\lambda f}$の計算に関する主張である。
universalrel_universalityで見たように、自然同型$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B) \simeq \mathcal{A}(A,PB)$より、$A,B$上の二項関係$R$は$A$から$PB$への射と標準的に一対一になる。
そこで、$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B)$と対応する射を$\Lambda R \colon A \to PB$と書くことにする。
自然同型$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B) \simeq \mathrm{Sub}(A \times B) \simeq \mathrm{Sub}(B \times A)\simeq \mathcal{A}(B \times A,\Omega) \simeq \mathcal{A}(A,PB)$に基づいて、
$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B)$と自然に一対一に対応する$\mathcal{A}(A,PB)$の射を$\Lambda R$と書くことにする。
定義より、$1_{PB} = \Lambda \ni_B$が従う。
普遍関係の性質から次が直ちに従う。
二項関係$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal A)(A,B)$が任意に与えられたとき、$\Lambda R \colon A \to PB$は関係合成の方程式$R =\ \ni_B \circ G_{\Lambda R}$を満たす。
ただし$G_{\Lambda R}$は、グラフ関手$G \colon \mathcal{A} \to \mathrm{Rel}(\mathcal{A})$による$\Lambda R$の像。
対象$B$の普遍関係$\ni_B$の表示として$(U_B;u_1,u_2)$を選ぶものとする。このとき、$\ni_B \circ G_{\Lambda R}$の様子は次のように描かれる。
普遍関係と射のグラフの合成の恒等式
universalrel-universalityより、図中の$(C;l,u_2 \circ r)$は$R$の表示である。
univrel-counitより、自然同型$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B)$と$\mathcal{A}(A,PB)$の全単射による対応は次のように表記できる。
$$ \begin{aligned} \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B) \quad&\simeq\quad \mathcal{A}(A,PB)\\ R \quad&\leftrightarrow\quad \Lambda R\\ \ni_B \circ G_f \quad&\leftrightarrow\quad f \end{aligned} $$
ついでに自然同型$\mathcal{A}(B \times A,\Omega) \simeq \mathcal{A}(A,PB)$の全単射の対応もここに書いておく。
$$ \begin{aligned} \mathcal{A}(B \times A,\Omega)\quad &\simeq \quad \mathcal{A}(A,PB)\\ g \quad &\leftrightarrow \quad \lambda g\\ \in_B \circ (1_B \times f)\quad &\leftrightarrow \quad f \end{aligned} $$
二項積を持つ任意の圏$\mathcal{A}$では、任意の対象$A$に対し、対角射(diagonal map)$\langle 1_A,1_A \rangle \colon A \to A \times A$が標準的に定義できる。
対角射がmonicであることは直ちに分かる:$\langle 1_A,1_A \rangle\circ x = \langle 1_A,1_A \rangle \circ y$のとき、$\pi_A \circ \langle 1_A,1_A \rangle \circ x = \pi_A \circ \langle 1_A,1_A \rangle \circ y$であるから、$x = y$が従う。
さらに$\mathcal{A}$がトポスの場合には、power objectの普遍性からさらに得られるものがある。
$\mathcal{A}$をトポスとするとき、任意の対象$A$に関する対角射$\langle 1_A,1_A \rangle\colon A \to A \times A$が表示する部分対象と対応する$\chi \colon A \times A \to \Omega$が一意に存在する。
power objectの普遍性より、$\mathcal{A}(A \times A,\Omega)\simeq \mathcal{A}(A , PA)$であるから、$\chi$と対応する射$\lambda \chi \colon A \to PA$が一意に定まる。
singleton mapの構成
この$\lambda\chi$を、$A$のsingleton mapといい、文献によっては$\{\cdot\}_A$などと書き表す。
一般に、対角射$\langle 1_A,1_A \rangle\colon A \to A \times A$は、恒等射$1_A$のグラフ$G_{1_A}$を表示する。
このことから、$\{\cdot\}_A = \Lambda G_{1_A}$が従う。
本稿では示さないが、一般に初等トポスならば正則圏であることが示せるので、初等トポスでは二項関係の結合的な合成が定義可能である。
つまり、次の命題の「正則圏である」という仮定は本当は除去できる。
初等トポスが正則圏であるとき、任意の$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B)$に対し、$\Lambda(R \circ \ni_A) \circ \{\cdot\}_A = \Lambda R$が成り立つ。
univrel-counitより、$G_{1_A} = \ni_A \circ G_{\Lambda G_{1_A}} = \ni_A \circ G_{\{\cdot\}_A}$である。
いま正則圏で考えているから、二項関係の合成は結合律を満たす。よって次の式変形が成り立つ(第2の等号はunivrel-counitによる)。
$$ \begin{aligned} \ni_B \circ G_{\Lambda (R \circ \ni_A) \circ \{\cdot\}_A} &= \ni_B \circ G_{\Lambda (R \circ \ni_A)} \circ G_{\{\cdot\}_A} &&(G\text{は関手})\\ &= (R \circ \ni_A) \circ G_{\{\cdot\}_A}\\ &= R \circ G_{1_A}\\ &= R \end{aligned} $$
対応$f \mapsto \ni_B \circ G_f$は全単射であるから、$\Lambda(R \circ \ni_A)\circ \{\cdot\}_A = \Lambda R$が従う。
singleton mapは次の特徴付けを持つ。
射$\eta_A \colon A \to PA$が任意の$B \in |\mathcal{A}|$および任意の$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B)$に対して$\Lambda(R \circ \ni_A)\circ \eta_A = \Lambda R$を満たすならば、$\eta_A = \{\cdot\}_A$が成立。
$\Lambda(R \circ \ni_A) \circ \eta_A = \Lambda R$で$R = G_{1_A}$の場合を考えることにより、$\Lambda(G_{1_A}\circ \ni_A)\circ \eta_A = 1_{PA}\circ \eta_A = \Lambda G_{1_A}$が成立。一方定義より$\{\cdot\}_A = \Lambda G_{1_A}$であったから、$\eta_A = \{\cdot\}_A$が従う。
関手の組$G \colon \mathcal{A} \to \mathcal{B},H \colon \mathcal{B} \to \mathcal{A}$が随伴$G \dashv H$であるとは、
任意の$A \in |\mathcal{A}|,B \in |\mathcal{B}|$で自然同型$\mathcal{A}(A,HB) \simeq \mathcal{B}(GA,B)$が成り立つことをいう。
($A,B$のそれぞれに関して自然同型が成り立つことを課している。)
随伴関手の組$G \colon \mathcal{A} \to \mathcal{B},H \colon \mathcal{B} \to \mathcal{A},G \dashv H$が与えられたとする。
このとき、自然同型は任意の$A \in |\mathcal{A}|$に対し次の同型を与える。
$$ \mathcal{A}(A,HGA) \simeq \mathcal{B} (GA,GA) $$
これにより、$GA$上の恒等射$1_{GA}$と随伴の自然同型により一対一に対応する$\mathcal{A}$の射$\eta_A \colon A \to HGA$が得られる。
この射を集めた族$(\eta_A)_{A \in |\mathcal{A}|}$を、随伴の単位射(unit)という。同様に、随伴の自然同型は任意の$B \in |\mathcal{B}|$に対し次の同型を与える。
$$ \mathcal{A}(HB,HB) \simeq \mathcal{B}(GHB,B) $$
これにより、$HB$上の恒等射$1_{HB}$と一対一に対応する$\mathcal{B}$の射$\varepsilon_B \colon GHB \to B$が得られる。
この射を集めた族$(\varepsilon_B)_{B \in |\mathcal{B}|}$を、随伴の余単位射(counit)という。
関手$G\colon \mathcal{A} \to \mathcal{B},H\colon \mathcal{B} \to \mathcal{A}$は随伴$G \dashv H$で$(\eta_A)_{A \in |\mathcal{A}|},(\varepsilon_B)_{B \in |\mathcal{B}|}$はそれぞれ単位射と余単位射、$(\Phi_{A,B})_{A \in |\mathcal{A}|,B \in |\mathcal{B}|}$は自然同型$\mathcal{B}(GA,B) \simeq \mathcal{A}(A,HB)$を与える全単射の族だとする。
このとき、任意の$f \colon GA \to B \in \mathcal{B},g \colon A \to HB \in \mathcal{A}$に対し、
$$ \Phi_{A,B}(f) = Hf \circ \eta_A,\quad \Phi_{A,B}^{-1}(g) = \varepsilon_B \circ Gg $$
が成り立つ。
定義より任意の$f \in \mathcal{B}(GA,B),g \in \mathcal{A}(A,HB)$に対して次の図式が成り立つ。
単位射と余単位射による随伴の同型
よって以下が従う。
$$ \Phi_{A,B}(f) = Hf \circ \eta_A,\quad \Phi_{A,B}^{-1}(g) = \varepsilon_B \circ Gg $$
次の命題は次の節で使う。
(共変)関手$G \colon \mathcal{A} \to \mathcal{B}$と、対象のクラス間の写像$H \colon |\mathcal{B}| \to |\mathcal{A}|$が与えられたとする。
$B \in |\mathcal{B}|$を任意に固定したときに、これらが任意の$A \in |\mathcal{A}|$に関して自然同型$\mathcal{B}(GA,B) \simeq \mathcal{A}(A,HB)$を満たすならば、$H$は(共変)関手$\mathcal{B} \to \mathcal{A}$に自然に拡張されて$G \dashv H$に出来る。
$G,H$が仮定のように与えられたとする。このとき、自然同型$\mathcal{B}(G-,B)\simeq \mathcal{A}(-,HB)$を与える全単射の族を$(\Phi_{A,B} \colon \mathcal{B}(GA,B) \to \mathcal{A}(A,HB))_{A \in |\mathcal{A}|}$と書くことにして、
$\eta_A \overset{\mathrm{def}}{=} \Phi_{A,GA}(1_{GA}),\varepsilon_B \overset{\mathrm{def}}{=} \Phi_{HB,B}^{-1}(1_{HB})$と表記を定める。
そして任意の$f\colon B \to B'$に対し、$Hf \overset{\mathrm{def}}{=} \Phi_{HB,B'}(f \circ \varepsilon_B)$と定義する。
右随伴の射への作用の定義
まず、任意の$f \colon A \to HB$に対し、$\Phi_{A,B}^{-1}(f) = \varepsilon_B \circ Gf$が成り立つ:これは第一変数に関する自然同型$\mathcal{A}(-,HB)\simeq \mathcal{B}(G-,B)$より、
$$ \Phi_{A,B}(\varepsilon_B \circ Gf) = \Phi_{HB,B}(\varepsilon_B) \circ f = 1_{HB} \circ f = f $$
が成り立つこと、および$\Phi_{A,B}$は全単射であることから従う。よって特に$f = \eta_A$の場合を考えて、$\varepsilon_{GA} \circ G\eta_A = 1_{GA}$が成り立つ。
次に$(\varepsilon_B)_{B \in |\mathcal{B}|}$は、任意の$f \colon B \to B'$に対し、$\varepsilon_{B'}\circ GHf = f \circ \varepsilon_B$を満たす:
第一変数に関する自然同型より
$$ \Phi_{HB,B'}(\varepsilon_{B'}\circ GHf) = \Phi_{HB',B'}(\varepsilon_{B'}) \circ Hf = 1_{HB'}\circ Hf = Hf $$
であるから、先に定義した$Hf = \Phi_{HB,B'}(f \circ \varepsilon_B)$および$\Phi_{HB,B'}$が全単射であることから、$\varepsilon_{B'} \circ GHf= f \circ \varepsilon_B$でなければならない。
特に、$\varepsilon_{B'}\circ GHf = f \circ \varepsilon_B$を満たす$Hf$は$f$に対して一意に定まる。
$Hf$の定義が関手の公理を満たすことを確かめよう。
まず$H1_B = 1_{HB}$については、$H1_B = \Phi_{HB,B}(1_B \circ \varepsilon_B) = \Phi_{HB,B}(\varepsilon_B) = 1_{HB}$が$\varepsilon_B$の定義から従う。
次に$H(g \circ f) = Hg \circ Hf$については、任意の$f_1\colon B_1\to B_2,f_2 \colon B_2 \to B_3 \in \mathcal{B}$に対し、
$$ \begin{aligned} \Phi_{HB_1,B_3}^{-1}(Hf_2 \circ Hf_1) &= \varepsilon_{B_3} \circ G(Hf_2 \circ Hf_1)\\ &= \varepsilon_{B_3} \circ (GHf_2) \circ (GHf_1) \\ &= f_2 \circ \varepsilon_{B_2} \circ GHf_1 \\ &= f_2 \circ f_1 \circ \varepsilon_{B_1} \\ &= \Phi_{HB_1,B_3}^{-1}(H(f_2 \circ f_1)) \end{aligned} $$
であるから、$\Phi_{HB_1,B_3}$が全単射であることにより$H(f_2 \circ f_1) = Hf_2 \circ Hf_1$が一般に成立する。
合成射に関する関手の公理の成立
したがって$H$は関手の定義を満たすので、$A \in |\mathcal{A}|$を任意に固定したとき、任意の$f \colon B \to B',x \colon A \to HB$に対し
$$ \begin{aligned} \Phi_{A,B'}^{-1}(Hf \circ x) &= \varepsilon_{B'} \circ G(Hf \circ x)\\ &= \varepsilon_{B'} \circ GHf \circ Gx\\ &= f \circ \varepsilon_B \circ Gx\\ &= f \circ \Phi_{A,B}^{-1}(x) \end{aligned} $$
が成立する。これは任意に$A \in |\mathcal{A}|$を固定したときに自然同型$\mathcal{A}(A,H-) \simeq \mathcal{B}(GA,-)$が成り立つことを示しており、$G \dashv H$が帰結する。
正則圏$\mathcal{A}$では、対象のクラス$|\mathcal{A}|$をそのままに、二項関係を射とした圏$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})$を構成することができて、グラフ関手$G \colon \mathcal{A} \to \mathrm{Rel}(\mathcal{A})$を標準的に備えるのだった。
このグラフ関手が右随伴を持つとしたら、どんなときだろうか?という話は、これまでの議論から既に明らかになっている。
正則圏$\mathcal{A}$のグラフ関手$G \colon \mathcal{A} \to \mathrm{Rel}(\mathcal{A})$が右随伴$P \colon \mathrm{Rel}(\mathcal{A}) \to \mathcal{A}$を持つとする。
このとき$\mathcal{A}$は初等トポスである。
$\mathcal{A}$は正則圏なので引き戻しと終対象を持つ。
$G \dashv P$の単位射を$\eta$、余単位射を$\varepsilon$で書くことにする。
また随伴の自然同型$\mathcal{A}(A,PB) \simeq \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(GA,B) = \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B)$の全単射を次のように表記する。
$$ \begin{aligned} \mathcal{A}(A,PB) &\simeq \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B)\\ f &\leftrightarrow \overline f\\ \Lambda R &\leftrightarrow R \end{aligned} $$
naturality-conditionより、任意の$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B)$に対し$R = \varepsilon_B \circ G_{\Lambda R}$が成り立つ。
これは$\varepsilon_B$が普遍関係$\ni_B$の普遍性を満たすことを表している。実際、二項関係$\varepsilon_B$の表示を$(E_B;e_1,e_2)$と書くとき、次が成り立つ。
余単位射は普遍関係の特徴を持つ
このとき$\varepsilon_1 \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(P1,1)$の表示$(E_1;e_1,e_2)$は、部分対象分類子$P1,e_1$を与える。
実際、任意の対象$A$に対し、任意に$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,1)$を取り、その表示を$(M;m,p_M)$とする。これはjointly monic spanであるから、任意の$x,y$に対し$m \circ x = m \circ y$かつ$p_M \circ x = p_M \circ y$ならば$x = y$であるが、
終対象の普遍性より、この主張は$m \circ x = m \circ y$ならば$x = y$と同値である。よって$m$はmonicでなければならない。
これにより、$e_1 \colon E_1 \to P1$はmonicである。
終対象上の普遍関係になる
そして特に、任意の$A \in |\mathcal{A}|$に対して$[(A;1_A,p_A)] \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,1)$を考えたとき、射$A \to E_1$は一意に存在する:
存在性は普遍関係の普遍性から従う。一意性について、次の二つの図式はいずれも引き戻し図式である。
$f \circ p = g \circ q$で$g$がmonic、$p$が同型ならば引き戻し図式
よって普遍関係$\ni_1$の普遍性より、任意の$x,y \colon A \to E_1$に対し、$e_1 \circ x = e_1 \circ y$でなければならない。
$e_1$はmonicであったから、$x=y$。よって$E_1$は終対象の定義を満たす。
部分対象分類子の存在より、$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})(GA,B) = \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B) \simeq \mathrm{Sub}_{\mathcal{A}}(A \times B) \simeq \mathrm{Sub}_{\mathcal{A}}(B \times A) \simeq \mathcal{A}(B \times A,P1) \simeq \mathcal{A}(A,PB)$が従い、
この自然同型で$\ni_B(=\varepsilon_B)$と対応する射$x \colon B \times PB \to \Omega(\Omega = P1)$が$\in_B$の定義を満たすことは、universalrel-universalityの証明の逆を辿れば分かる。
以上より、$\mathcal{A}$は初等トポスの定義を満たす。
無論、逆の命題も成り立つ。
正則圏$\mathcal{A}$が初等トポスであるとき、グラフ関手$G$は右随伴$P$を持ち、随伴の単位射はsingleton mapの族で、余単位射は普遍関係の族で、それぞれ与えられる。
対象$A$にpower object$PA$を割り当てる操作を、対象のクラス間写像$P \colon |\mathcal{A}| \to |\mathcal{A}|$と見做す。
初等トポスの定義より、対象$B$を固定したとき、任意の$A \in |\mathcal{A}|$に対し$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})(GA,B) \simeq \mathcal{A}(A,PB)$が自然に成り立つことから、map-becomes-functorより$P$は共変関手へと自然に拡張できる:任意の$R \in \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(GA,B) = \mathrm{Rel}(\mathcal{A})(A,B)$に対し、$PR \overset{\mathrm{def}}{=} \Lambda(R \circ \ni_A)$と定めることで、$G\dashv P$となる関手を得る。
singleton-unit、univrel-counitより、singleton mapの族と普遍関係の族がそれぞれ単位射、余単位射となることが分かる。
以上より、正則圏$\mathcal{A}$が初等トポスであることは、関係の圏$\mathrm{Rel}(\mathcal{A})$へのグラフ関手が右随伴を持つことと同値になる。
実はこの主張はさらに強めることができて、初等トポスならば正則圏であることが示せるので、実際には圏$\mathcal{A}$が初等トポスであることと、$\mathcal{A}$が正則圏かつグラフ関手が右随伴を持つこととが同値になる。
初等トポスが正則圏であることの証明は別の機会に。