LTEの補題なるものを聞いたことがある人は多いかもしれない。
残念ながらこんな書き出しをしているけれども筆者もLTEに詳しいわけではない。
そこで自分が知っている限りの「p-進付値」についての考え方をこの記事に記していく。
数学オリンピックに照準をあわせた話をするので、受験数学の話はしないです。
さっそく、「p-進付値」まわりの用語や記号を整理する。
$a,\ b$を正の整数とし、$p$を素数とする。
...
また、「$v_p(a)$」のことを、「$a$の$p$-進付値」という。
また、定義どおり、$a$は$a=2^{v_2(a)}\cdot3^{v_3(a)}\cdot5^{v_5(a)}\cdot7^{v_7(a)}\cdots$と素因数分解される。
$\sqrt{2}$は無理数か。
$\sqrt[3]{2}$は無理数か。
$\sqrt[n]{2}$が有理数となるような$2$以上の整数$n$はあるか。
(一般的な証明)
正の整数$p,\ q$を用いて$\sqrt{2}=\frac{q}{p}$とかけたとする。両辺$p$倍し$2$乗することで$2p^2=q^2$
ここで、
$v_2(2p^2)=v_2(2)+v_2(p^2)=1+2v_2(p)$
$v_2(q^2)=2v_2(q)$
となるから、素因数分解の一意性を考えると$1+2v_2(p)=2v_2(q)$である必要があり、この式は左右で偶奇が不一致だから不成立。故に$\sqrt{2}$は無理数。
正の整数$p,\ q$を用いて$\sqrt[3]{2}=\frac{q}{p}$とかけたとする。両辺$p$倍し$3$乗することで$2p^3=q^3$
ここで、
$v_2(2p^3)=v_2(2)+v_2(p^3)=1+3v_2(p)$
$v_2(q^3)=3v_2(q)$
となるから、素因数分解の一意性を考えると$1+3v_2(p)=3v_2(q)$である必要があり、この式は$\text{mod}\ 3$を考えると不成立。故に$\sqrt[3]{2}$は無理数。
正の整数$p,\ q$を用いて$\sqrt[n]{2}=\frac{q}{p}$とかけたとする。両辺$p$倍し$n$乗することで$2p^n=q^n$
ここで、
$v_2(2p^n)=v_2(2)+v_2(p^n)=1+nv_2(p)$
$v_2(q^n)=nv_2(q)$
となるから、素因数分解の一意性を考えると$1+nv_2(p)=nv_2(q)$である必要があり、この式は$\text{mod}\ n$を考えると不成立。故に$\sqrt[n]{2}$は無理数。
(変な証明:参考「えびまラボ」氏)
正の整数$p,\ q$を用いて$\sqrt[n]{2}=\frac{q}{p}$とかけたとする。両辺$p$倍し$n$乗することで$p^n+p^n=q^n$
$n\geq3$のとき、これはフェルマーの最終定理に反する。
この話の前に、ちょっとだけ平方剰余について触れておく。
$\text{mod}\ 3$の世界において、$x^2$は$0$か$1$にしかならない。
$0^2\equiv0\ (\text{mod}\ 3)$
$1^2\equiv1\ (\text{mod}\ 3)$
$2^2\equiv1\ (\text{mod}\ 3)$
こんな感じで、$\text{mod}\ 4$や$\text{mod}\ 5$も見ていく。
$0^2\equiv0\ (\text{mod}\ 4)$
$1^2\equiv1\ (\text{mod}\ 4)$
$2^2\equiv0\ (\text{mod}\ 4)$
$3^2\equiv1\ (\text{mod}\ 4)$ $0$か$1$にしかならない
$0^2\equiv0\ (\text{mod}\ 5)$
$1^2\equiv1\ (\text{mod}\ 5)$
$2^2\equiv4\ (\text{mod}\ 5)$
$3^2\equiv4\ (\text{mod}\ 5)$
$4^2\equiv1\ (\text{mod}\ 5)$ $0$か$1$か$4$にしかならない
いっぱんに、素数$p$の平方剰余は、$0$を除いて$\frac{p-1}{2}$個存在する。( この記事 の「オイラーの規準」あたりの補題5を読むとよい。)
こんな感じで、合同式の世界は$2$乗すると一気に条件が厳しくなる。
かの有名な京大の問題も解ける。
$p^q+q^p$が素数となる素数の組$(p,\ q)$を求めよ。ただし$p\leq q$とする。
(略解)
$p$と$q$がどちらも奇数なら$2$より大きい偶数となってよくない。よって$p=2$
「$2^q+q^2$が素数」となればいいが、京大が大好きな$\text{mod}\ 3$をしてあげると$(-1)^q+q^2$になる。$q=2$は明らかに不適だから$q$は奇数。よって$q^2-1$を考える。
$q=3$で成立。$q>3$で$q^2=1$となるしかないから$q^2-1$は$3$の倍数。不適。
よって$(p,\ q)=(2,\ 3)$のみ。
こんなかんじで、平方剰余はつよい。
では、難しい問題を解いてみる。
(
この記事
です)
$1\leq x\leq2\cdot10^{2025}$のとき、$x^{x^2}=2y^3$を満たす自然数の組$(x,\ y)$の個数を求めよ。
(解答)
両辺のp-進付値は、
(左辺)$=x^2v_p(x)$
(右辺)$=v_p(2)+3v_p(y)$
となり、$x^2v_p(x)=v_p(2)+3v_p(y)$がすべての$p$について成立することと必要十分。
$x\equiv0\ (\text{mod}\ 3)$だと$p=2$で不成立だから$x\not\equiv0\ (\text{mod}\ 3)$である。よって$x^2\equiv1\ (\text{mod}\ 3)$。だから、
だから$x=2t^3$という形でないといけない(ただし$t$は$3$で割り切れない)。
逆にこのとき、$x^{x^2}$は、ちょっと計算すると$2y^3$という形になるとわかる。
よって$t$の範囲は$1\leq 2t^3\leq2\cdot10^{2025}$から$1\leq t\leq10^{675}$。この中に$3$の倍数は$\frac{10^{675}-1}{3}$個あるため、答えは「$10^{675}-\frac{10^{675}-1}{3}=\frac{2\cdot10^{675}+1}{3}$個」である。
難しいですね。
ちょっと簡単な問題を考えてみる。
$v_2(100!)$を求めよ
(解答)
$100$までの自然数のうち$2$の倍数は$50$個あるから少なくとも$100!$は$2$で$50$回割れる。
$4$の倍数は$25$個あるため、まだ割れるやつが$25$個ある。
$8$の倍数は$12$個あるため、さらに割れるやつが$12$個ある...
とすると、求まるものは「$50+25+12+6+3+1=97$」である。
こんな感じで、階乗のp-進付値は簡単に求めることができる。一般化するとラグランジュの定理になる。
$${v_p(n!)=\lfloor\frac{n}{p}\rfloor+\lfloor\frac{n}{p^2}\rfloor+\lfloor\frac{n}{p^3}\rfloor+\cdots= \sum_{i=1}^{\infty}\lfloor\frac{n}{p^i}\rfloor}$$
ただし、$\lfloor x\rfloor$で、$x$以下の最大の整数を表す。
$v_5(200!)=40+8+1=49$
では、階乗がうまく計算できるなら二項係数「${}_n \mathrm{ C }_k$」もうまく計算できるのではないだろうか。
$v_p({}_n \mathrm{C}_k)$は、「$p$進法に直したときの$k\rightarrow n$の繰り上がりの回数」に等しい
$v_2({}_{50}\mathrm{C}_{25})$を求めたい。二進法で表すと
$50$は$110010$
$25$は$011001$
だから、下を上にダイヤルを回して合わせようとすると、
$1$の位で繰り上げる
$1000$の位で繰り上げる(すると勝手に$10000$の位で繰り上がる)
よって、合計$3$回繰り上がるから求まるものは$3$。
繰り上がりが不安な人は、$25+25$の筆算をするほうがいい。
もしくは引き算の「繰り下がりの回数」でもよい。
クンマーの定理レベルになると、いよいよ入試で使えなくなる。でも筆者は東進の京大本レでこれを使って1分で整数満点を取った。
$A=3^{1000000}-1$とする。$1\leq k\leq A$の範囲を整数$k$が動くとき、${}_A\mathrm{C}_k$は、$3$の倍数でないことを示せ。
(解答)
$A$は$3$進法で$2222222\cdots222$であるため、$3$進法で$k$から$A$に繰り上がりが生じない。
よってクンマーの定理より${}_A\mathrm{C}_k$は$3$でちょうど$0$回割れ、これは$3$で割り切れないことを意味する。
意外と楽しくなってきたのではないでしょうか。
Lifting the Exponentのイニシャルを取ってLTEである。読んで字のごとく、指数を上げる補題だ。
$4-1$は$3$で$1$回割れ、
$4^2-1^2$は$3$で$1$回割れ、
$4^3-1^3$は$3$で$2$回割れ、
$4^4-1^4$は$3$で$1$回割れ、
$4^5-1^5$は$3$で$1$回割れ、
$4^6-1^6$は$3$で$2$回割れ、
$4^7-1^7$は$3$で$1$回割れ、
$4^8-1^8$は$3$で$1$回割れ、
$4^9-1^9$は$3$で$3$回割れ、
$4^{10}-1^{10}$は$3$で$1$回割れる。
$1$回しか割れないとき、指数は$1,\ 2,\ 4,\ 5,\ 7,\ 8,\ 10$。
$2$回割れるとき、指数は$3,\ 6$。
$3$回割れるとき、指数は$9$。
実は、こんなものが成立する。
$p$を$3$以上の素数とする。$x\equiv y\not\equiv0\ (\text{mod}\ p)$のとき以下が成立:
$${v_p(x^n-y^n)}=v_p(x-y)+v_p(n)$$
この補題を用いると、$4^n-1^n$は$3$で$1+v_p(n)$回割れることがわかる。
LTEの補題は「$p$で割れる回数」の話だから、「(ある分数)が整数となる(a,b)をすべて求めよ」において分母が$p$で割れる回数と分子が$p$で割り切れる回数を求めて、ある条件下では分母のほうがたくさん割れてしまう、みたいな議論をするときにつかえるのだろうか。
$\frac{2^n+1}{n^2}$が整数となる$2$以上の整数$n$をすべて求めよ。
(解答)
分子は奇数だから$n$は奇数。
このとき、$2^n+1=1^n-(-2)^n$とかけるからLTEを使う、となると$3\equiv0$となる法$p$でのLTEになるから$\text{mod}\ 3$を考えそう。
分子の3-進付値は$1+v_3(n)$であり、分母は$2v_3(n)$になる。十分大きい$n$に対して$v_3(n)>1$となってくれれば調べる$n$が有限個になって嬉しい。つまり、最終的には「$n$が大きいとき、$n$は$9$の倍数」となることを示せば良さそうだ。
まず、$n$が$3$を素因数に含むことを示す。$n$のもつ最小の素因数を$p$として、これが$3$になっていてほしい。(奇数なので$2$は素因数に含まれないからこの証明でいい。)
まず、少なくとも$2^{n}\equiv-1\ (\text{mod}\ p)$が成立している必要がある。
似た条件として、$2^{p-1}\equiv1\ (\text{mod}\ p)$がある。
このあたりからうまいこと$2\equiv-1$が言えないか。
(ここから思考過程)
$n$を$p-1$で割った余りを$r$とすると、$2^{n}\equiv2^{r}\equiv-1$になる。$r=1$になってはくれないか。
実は、$p-1$は$2^{x}\equiv1$となる最小の$x$ではないな。そのような$x$は少なくとも$p-1$の約数になるのだが、具体的な$x$は$p$によって異なってくるな...
じゃあ、$2^x\equiv-1$となるような$x$の最小値を直接求めることができないか...?
ここで$x=1$がすべての$p$について言えたら$p=3$が確定するな。
$x$を、$2^x\equiv-1\ (\text{mod}\ p)$なる最小の$x$とする。このとき、$x\mid n$であることを示す。
$n$を$x$で割った商を$a$、余りを$b$とすると、$(-1)^a\cdot 2^b\equiv-1$。ここで$b\neq0$と仮定する。
$a$が偶数のとき、$x$の最小性に$b$が反する。
$a$が奇数のとき、$2^b\equiv1$であり、これで$2^x\equiv-1$を割ると$x$の最小性に$x-b$が反する。
よって$x\mid n$。$x\geq p$のときフェル小で両辺を割って$x-(p-1)$が$x$の最小性に反するため$x< p$。$p$は$n$の最小の素因数だったから$x=1$となるしかない。
よって$p=3$。
ここで$n=3m$とおくと条件は$8^m+1\equiv0\ (\text{mod}\ 9m^2)$。
ここで$m=1$は条件を満たす。以降、$m\geq2$とする。
少なくとも$8^m+1\equiv0\ (\text{mod}\ 9)$だから$m$は奇数。
$m>1$のもつ最小の素因数を$q$とし、これが$3$であれば$n$が$9$の倍数となって嬉しい。
必要条件として、$8^m\equiv-1\ (\text{mod}\ q)$が必要。さっきと同様にして$9\equiv0$だから$q=3$が必要。
よって$m=1$つまり$n=3$のみが解になる。
$a^p=b!+p$を満たす素数$p$、自然数$a,\ b$をすべて求めよ。
(解答)
$a>b$のとき
左辺が大きくなりそう。
($b\leq p$のとき $a^p\geq (b+1)^p>b^p+pb^{p-1}>b!+p$ より不適)
($b>p$のとき)
$\text{mod}\ p$より$a=kp$。$\text{mod}\ k$より$k\geq p$よって$a\geq p^2$。また、両辺の$p$-進付値より$p< b<2p$が必要。
ここで、$b!+p\leq(2p-1)!+p\leq p^{2p-1}+p< p^{2p}\leq a^p$より不適。
ただし、途中、$\sqrt[2p-1]{(2p-1)!}\leq p$(相加相乗平均)を用いた。
よって、$a\leq b$。
$\text{mod}\ p$より$a=p$。よって$p^p-p=b!$。
$p=2$のとき$b=2$
$p=3$のとき$b=4$
$p\geq5$のとき、$b\geq p+1$であり、両辺の3-進付値を考えると、
$v_3(p^p-p)=v_3(p^{p-1}-1)=v_3((p^2)^{\frac{p-1}{2}}-1)=v_3(p^2-1)+v_3(\frac{p-1}{2})=v_3(p-1)+v_3(p+1)+v_3(\frac{p-1}{2})$
これが$v_3(b!)$に等しい必要があるが、
$v_3(b!)\geq v_3((p+1)!)>v_3(p-1)+v_3(p+1)+v_3(\frac{p-1}{2})$
だから矛盾。
よって求まるものは$(a,\ b,\ p)=(2,\ 2,\ 2),\ (3,\ 4,\ 3)$である。
LTEの補題は、そもそもありえない難易度の問題にしか出てこない。
しかも、「知らないと無理。知ってたらジャブ程度。」といった厄介なやつ。
「$p$でたくさん割れそう」と思ったときにLTEを使ってみる。
「$n$乗が絡んだ分数が整数になるとき」にLTEを使ってみる、
というのがよさそう。
ラグランジュの定理とクンマーの定理は使えるようになること。結構役に立つからいい。
特に、クンマーの定理を知っている人は一般人にそう多くいないと思われるため、積極的に使ってイキってほしい。