大森英樹氏の書籍『量子的な微積分』において、Moyal積と呼ばれる謎の積が定義されていた。計算方法もいまいちわかりにくいが、この著書において種々の謎現象を引き起こす中心人物となっている。google検索を書けると出くわすのは、Wittenの開弦の場の理論において、”Wittenの*積”としてMoyal積が導入されたというものである。A型の量子群のmodule algebraの考察において勝手にmoyal積の構造が出現していたことに気づいたので、記事を書くことにした。その辺の物理をよく知らないので、キーワードしか掴めていないが、変形量子化とつながりが深いのは、量子群がそもそもリー代数の普遍包絡環の量子化であることから自明である。
本題に入る。記号や議論は
A型量子群の表現とmodule algebra
の続きとなっているので、まずそちらを参照してほしい。そこにあるとおり、多項式環
それに応じて、module algebraの積は
(誤植があったので以下の項目は24/10/6に編集した)
([1]p26参照)
変数変換
正規順序表示:
正規順序表示:
Weyl順序表示:Moyal積公式
ただし
となる。右は大森氏の著書にあるような、物理学者流の記法である(直感的な記法だが、導入としては好きではない)
著書においては、非可換なWeyl代数の元を(反)正規/Weyl順序表示で計算する際の表示の違いとして導入されているが、module algebraとしては対応する余積の違いによってこのような積が変化している。module algebraとしては(つまり多項式環内の演算としては)
以下、
真空元
共役真空元
[1]p37真空
これはいかにも奇妙な見た目である。
module algebraとして多項式を考えている分には素直な振る舞いをするが、この元を追加することで奇妙な振る舞いを観察できる。
ここでnotationをガラッと変えてWeyl代数やτ積との関係性について見る。あまりにも変わりすぎて記号を統一するのが不可能になってしまった。
大森
DO積公式
(ただし
にたいして次のようなWeyl代数の表現を考える
演算子の等式として次が成立する。
これは交換子の公式で次のように計算できる。
DO積公式の
ただし、うえの計算において
(ただし
となる。これはPBWの定理などで
τ積に関する考察も書いておこう。
と定義される。余積(準同型)
という関係性を持つので、
という計算公式を得る。
ここで、
なので
つまり、
と考えられるのである!
適当に
という発見を今日したので心が平穏である。