任意の次元の実および複素Clifford代数は行列環の部分代数として実現させることができます。後でわかるようにこの表現は次元に関して周期性があるのでまずは低次元のClifford代数の表現を見てみます。またこれらの表現が既約表現であることものちに分かります。
Clifford代数の既約表現の生成子をGamma行列と呼ぶことが多いです。数学と物理ではGamma行列がi倍違うことがあります。これは物理では表現をHermite行列に取りたいという理由があるようです(たぶん)。
Clifford代数の既約表現を$\rho:Cl_{(s,t)}\to End(\mathbb{C}^N)$とする。$(s,t)$型の擬Euclid空間の正規直交基底を$\{e_1,\cdots,e_{s},e_{s+1},\cdots,e_{s+t}\}$とするとき、mathematical Gamma行列を
$$
\gamma_i:=\rho(e_i)
$$
と定義する。またphysical Gamma行列を
$$
\Gamma_i:=-\sqrt{-1}\gamma_i
$$
と定義する。
また
$$
\gamma_{ij}=\gamma_{[i}\gamma_{j]},\ \Gamma_{ij}=\Gamma_{[i}\Gamma_{j]}
$$
と定義する。
低次元のClifford代数の既約表現を具体的に与えます。Pauli行列は
$$
\sigma_1=\begin{pmatrix}0 & 1 \\ 1 & 0\end{pmatrix},\ \sigma_2=\begin{pmatrix}0 & -i \\ i & 0\end{pmatrix},\ \sigma_3=\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & -1\end{pmatrix}
$$
で与えられます。Pauli行列は
$$
\sigma_j^2=1,\ \sigma_j\sigma_k=i\sum_l \epsilon_{ljk}\sigma_l
$$
を満たします。各Clifford代数の既約表現は以下です(ただし表現は一意的ではないので一例です)。
$\rho:Cl_{0,1}\to\mathbb{C}$であり、$\gamma_1=i$です。
$\rho:Cl_{1,0}\to\mathbb{R}^2$であり、$\gamma_1=(1,-1)$です。ただし、$(a,b)(c,d)=(ac,bd)$と積を定義します。
$\rho:Cl_{0,2}\to End(\mathbb{C}^2)$であり、$\gamma_1=i\sigma_1,\gamma_2=i\sigma_2$です。
$\rho:Cl_{1,1}\to End(\mathbb{C}^2)$であり、$\gamma_1=\sigma_1,\gamma_2=i\sigma_2$です。
$\rho:Cl_{0,3}\to End(\mathbb{C}^2)$であり、$\gamma_1=i\sigma_1,\gamma_2=i\sigma_2,\gamma_3=i\sigma_3$です。
$\rho:Cl_{1,2}\to End(\mathbb{C}^2)$であり、$\gamma_1=\sigma_1,\gamma_2=i\sigma_2,\gamma_3=i\sigma_3$です。
$\rho:Cl_{0,4}\to End(\mathbb{C}^4)$であり、
\begin{align}
\gamma_1&=\begin{pmatrix}0 & iI_2 \\ iI_2 & 0\end{pmatrix}\\
\gamma_i&=\begin{pmatrix}0 & \sigma_i \\ -\sigma_i & 0\end{pmatrix},\ (i=2,3,4)
\end{align}
です。
$\rho:Cl_{1,3}\to End(\mathbb{C}^4)$であり、
\begin{align}
\gamma_1&=\begin{pmatrix}0 & I_2 \\ I_2 & 0\end{pmatrix}\\
\gamma_i&=\begin{pmatrix}0 & \sigma_i \\ -\sigma_i & 0\end{pmatrix},\ (i=2,3,4)
\end{align}
です。この表現はWeyl表現またはChiral表現と呼ばれます。
これらの低次元のClifford代数の既約表現を元に周期性を使えば一般のCliffor代数の既約表現も得られます。またFermion表示という統一的に既約表現を構成する方法もあります。
ベクトルと同様にGamma行列に対しても擬Euclid計量による添え字の上げ下げを行います。このようなnotationを準備しておくと、Lorentz多様体上のスピン幾何の公式などをリーマンの場合と同様に書くことができて便利です。
\begin{align}
\gamma^a=\eta^{ab}\gamma_b\\
\Gamma^a=\eta^{ab}\Gamma_b
\end{align}