$$$$
順序集合における有向性、任意の2元は必ず何かの元に同時に抑えられるという定義だが、これはしばしば「向きつけられている」と表現される。
非空有向前順序集合
非空集合$I$上の二項関係$\lesssim_I\subseteq I\times I$が有向前順序であるとは
反射的 | 各$i\in I$に対して $ i\lesssim_I i$ |
|
推移的 | 各$i,j,k\in I$に対して $ (i\lesssim_I j$かつ$ j\lesssim_Ik)$ならば$ i\lesssim_Ik$ |
|
上に有向 | 各$i_0,i\in I$に対して $\exists j\in I$ s.t.$i_0,i\lesssim_I j$ |
|
を満たすこと。非空集合と有向前順序の組$(I,\lesssim_I)$を非空有向前順序集合(または有向集合)という。
これがどういうことかは
この記事
の冒頭に書いた。適当に言うと十分先が2通り以上解釈できるケースを排除するという制約だ。だけどなんだか釈然としない。。そんな人のために、以下の変形ができるという規約だと思ってしまおう!という方法があるのでメモ。
前順序集合$(I,\lesssim_I)$が上に有向であることは以下と同値:
上に有向' | $I$上の主張$P,Q$に対して $ \big(\text{十分先で全部 }P$ かつ $ \text{十分先で全部 }Q\big)$ $\Longleftrightarrow\text{十分先で全部}P\text{かつ}Q$ |
一つずつ順番に見ていこう。
十分先で全部
十分先で全部$P$が成り立つとは、
\begin{equation} (\exists i_0\in I)(\forall i\in I)[i\gtrsim_I i_0\Longrightarrow P(i)]
\end{equation}
何か以上が全部$P$を満たすということ。さらに、$P(i)\Longleftrightarrow i\in P$と同一視して集合論表記にしよう。すると、さっきの条件はこのように言い換えられる
上に有向' | 各$P,Q\subseteq I$に対して $ \big((\exists i_0\in I)(\forall i\gtrsim_I i_0)[ i\in P]$ かつ$ (\exists i_0\in I)(\forall i\gtrsim_I i_0)[ i\in Q]\big)$ $\Longleftrightarrow$ $(\exists i_0\in I)(\forall i\gtrsim_I i_0)[i\in P\cap Q]$ |
$(\Longleftarrow)$は必ず成り立つので、$(\Longrightarrow)$だけにしても同値。
ということで、定理1を証明してみよう!
定理1の証明
上に有向$\Longrightarrow$上に有向'
$i_1$以上で$P$に、$i_2$以上で$Q$に入るとする。上に有向なので、$i_1,i_2\lesssim_I i_3$となる$i_3$が存在する。$i_3$以上で$P$にも$Q$にも入るのでOK。
上に有向$\Longleftarrow$上に有向'
任意に$i_1,i_2\in I$をとる。$P=\{i\in I\mid i\gtrsim_I i_1\},$ $Q=\{i\in I\mid i\gtrsim_I i_2\}$と置くと、$i_0$をそれぞれ$i_1,i_2$と選べば上に有向'の仮定を満たすことが確認できる。よって、
\begin{eqnarray}
&(\exists i_0\in I)(\forall i\gtrsim_I i_0)[i\in P\cap Q]\\
\Longleftrightarrow&(\exists i_0\in I)(\forall i\gtrsim_I i_0)[i\gtrsim_I i_1,i_2]&
\end{eqnarray}を得る。
*1 十分先で全部$P$に入るとは、$\text{id}:I\rightarrow I$というネットのeventuallyフィルターを用いて$P\in\mathcal{E}_\text{id}$と書ける。ということは、上に有向'は「$\mathcal{E}_\text{id}$が共通部分について閉じている」ことと同値になる。eventuallyフィルターはフィルターなんだから当たり前なんじゃないか?と思うかもしれないが、それは添字が上に有向だから。添字の有向性を排せばeventuallyフィルターはフィルターになるとは限らない。