有限完備圏$\C$は次の2条件をみたすとき正則圏(regular category)であるという:
(R1) 任意の$\C$の射の核対の余等化子が存在する.
(R2) 正則エピは引き戻しにより保たれる.
$\C$を正則圏とする.
(イ) 任意の$\C$の射$f$は(正則エピ,モノ)分解を持つ; 正則エピ射$e$とモノ射$m$が存在して,$f=e\circ m$が成り立つ.
(ロ) 上記の分解は(同型を除いて)一意である.
(イ) $\langle\kp(f),f_1,f_2\rangle$を$f\colon a\to b$の核対とし,$e\colon a\to c$を$f_1,f_2$の余等化子とする((R1)により存在する).$f\circ f_1=f\circ f_2$であるから,$f=m\circ e$なる$m\colon c\to b$が存在する.$m$がモノであることを示すため,$m$の核対が等しいことを示す.そのため引き戻しからなる図式
\begin{xy}\xymatrix{
\kp(f) \ar[r]^\beta\ar[d]_\alpha \ar `u[r] `r[rr]^{f_2} [rr] \ar `l[d] `[dd]_{f_1} [dd] &\kp(m)\times_ca \ar[r]^{\pi_2}\ar[d]_{\pi_1} &a \ar[d]^e\\
a\times_c\kp(m) \ar[r]_{\tau_2}\ar[d]_{\tau_1} &\kp(m) \ar[r]_{p_2}\ar[d]_{p_1} &c \ar[d]^m\\
a \ar[r]_e &c \ar[r]_m &b
}\end{xy}
を考える.貼り合わせ原理から,左上は$\kp(f)$であり,$\pi_2\circ\beta=f_2$, $\tau_1\circ\alpha=f_1$としてよい.また(R2)により$\pi_1,\alpha,\tau_2,\beta$は正則エピであるから,$\varphi:=\pi_1\circ\beta=\tau_2\circ\alpha$はエピである.このとき
\begin{align}
p_1\circ\varphi=e\circ\tau_1\circ\alpha=e\circ f_1=e\circ f_2=p_2\circ\varphi
\end{align}
が成り立つ.従って$p_1=p_2$を得,$m$がモノと分かった.
(ロ) 一意性のため,別の(正則エピ,モノ)分解$f=m'\circ e'$を考える.このとき可換四角形
\begin{xy}\xymatrix{
a \ar[r]^e\ar[d]_{e'} &c \ar[d]^m\ar@{.>}[ld]^t\\
c' \ar[r]_{m'} &b
}\end{xy}
を得るが,正則エピは強エピ(epis, 命題6)であるから充填$t\colon c\to c'$を得る.$m=m'\circ t$から$t$はモノであり,$e'$は極大エピであるから$t$は同型である.よって(ロ)が示された.
任意の射$f$は正則余像と像を持ち,一致する.
$f$の(正則エピ,モノ)分解を
\begin{xy}\tag{1}\label{em}\xymatrix{
a \ar[r]^e &c \ar[r]^m &b
}\end{xy}
とし,別の任意の分解$a\xrightarrow{e'}c'\xrightarrow{m'}b$をとる.
\begin{xy}\xymatrix{
a \ar[r]^e\ar[d]_{e'} &c \ar[d]^m\ar@<2pt>@{.>}[ld]^t\\
c' \ar[r]_{m'}\ar@<2pt>@{.>}[ru]^s &b
}\end{xy}
$m'$がモノのとき,$e$が強エピであるから充填$t\colon c\to c'$が存在し,\eqref{em}が像分解を与えることがわかる.$e'$が正則エピのとき,$m$がモノであるから充填$s\colon c'\to c$が存在して,\eqref{em}が正則余像分解を与えることがわかる.
このため正則圏の射の(正則エピ,モノ)分解を単に像(分解)あるいは正則余像(分解)と呼び,中間の対象を$\im f$で表すことにする.
正則圏において,極大エピ,強エピ,正則エピは一致する.
$\C$は引き戻しを持つので,epis, 命題6により極大エピと強エピは一致する.$f$を強エピとし,その像分解$f=m\circ e$を考える.$m$はモノで$f$は極大エピであるから,$m$は同型であり,$f$は正則エピである.
正則圏$\C$において,次が成り立つ.
(イ) 正則エピ射の合成は正則エピである.
(ロ) $g\circ f$が正則エピのとき,$g$も正則エピである.
(ハ) $f\colon a\to x$, $g\colon b\to y$が正則エピのとき,$f\times g\colon a\times b\to x\times y$も正則エピである.
(イ),(ロ)は定理1系2とepis, 命題5により成り立つ.
(ハ)
\begin{xy}\xymatrix{
a\times b \ar[r]^{f\times b}\ar[d]_{\mathsf{pr}_1} &x\times b \ar[d]^{\mathsf{pr}_1}\\
a \ar[r]_f &x
}\end{xy}
が引き戻しであり,正則エピは引き戻しで保たれる(R2)から,$f\times b$は正則エピである.同様に$x\times g$も正則エピであるから,(イ)により合成
\begin{align}
f\times g=(x\times g)\circ(f\times b)
\end{align}
も正則エピである.
$\C^\mathsf{op}$が正則圏であるとき,$\C$は余正則圏であるという.