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大学数学基礎解説
文献あり

『新訂版における超関数の定義について』の誤りと訂正

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$$\newcommand{supp}[0]{\mathop{\mathrm{supp}}} $$

ごあいさつ

こんにちは!はっぴーたーんです!

この記事では、こちらのページ Ohrui に画像で投稿されている説明内の数々の誤りと、正しい証明について解説していきたいと思います〜

ちなみに、Ohrui はとある本 Kitada のAmazonレビュー reviewer_amzn_m として投稿されていた画像の一部になっていたもので、このAmazonレビューは Ohrui の投稿者が『序文の人』と自称するきっかけになった由緒あるレビューとなっております〜(Kitada の著者の先生が、この誤りだらけのレビューを見て、新訂版の序文に皮肉を書いた、という経緯になります)

それでは、やっていきましょ〜

本文の文字起こし

419頁(旧版と新訂版第1刷)[$\mathcal D(\Omega) = \varinjlim \mathcal D_K(\Omega)$が集合としては$C_0^\infty(\Omega)$に一致することの証明] 2017.1.20 1.25 改増
まず409頁から410頁にかけて述べられている位相空間の帰納系$\{S_\alpha\}_{\alpha \in A}$の帰納的極限の定義において, $S_\alpha$の和$S = \bigcup_{\alpha \in A}S_\alpha$は直和でなくても問題ない(直和としなくても定義可能であり後に直和である仮定は使われていない)ので, 以下から帰納的極限の定義では$S$が直和であることを仮定しない. それを利用して証明する.
$K$を添え字とする位相空間の帰納系$\{\mathcal D_K(\Omega)\}_{K \in A}$を有向集合(順序集合)$A = \{K \in \mathscr P(\mathbb R^n) \mid \text{$K$は$\Omega$に含まれる$\Omega$のコンパクトな部分集合}, [K_1 \le K_2 :\Leftrightarrow K_1 \subseteq K_2]\}$として定義する.$\forall \varphi \in \mathcal D_{K_1}(\Omega), \forall \psi \in \mathcal D_{K_2}(\Omega), \exists K_3 \in A, K_3 \supseteq K_1, K_3 \supseteq K_2, f_{K_3 K_1}(\varphi) = f_{K_3 K_2}(\psi) \in \mathcal D_{K_3}(\Omega).$
$\varphi$$\psi$の台は$\Omega$でコンパクトだから$\varphi$$\psi$$\Omega$で解析的ではない. そこで連続写像$f_{K_3 K_1}, f_{K_3 K_2}$を, $\varphi$$\psi$の台を$\subseteq K_3$であるように拡げて$\varphi \in \mathcal D_{K_3}(\Omega), \psi \in \mathcal D_{K_3}(\Omega)$とするものとみなすと, $f_{K_3 K_1}(\varphi) = f_{K_3 K_2}(\psi)$より$\varphi = \psi\ \mathrm{in}\ K_3$と解釈することができる.${}^{(\ast)}$
ゆえに$\mathcal D(\Omega) = \varinjlim \mathcal D_K(\Omega) \ni [\varphi] = \{\psi \in C_0^\infty(\Omega) \mid \forall K \in A, \varphi = \psi\ \mathrm{in}\ K\} = \{\varphi\}$であるから$\mathcal D(\Omega) = \{\{\varphi\} \mid \varphi \in C_0^\infty(\Omega)\}$となる.${}^{(\ast \ast)}$
$\forall \varphi, \psi \in C_0^\infty(\Omega), \varphi \neq \psi \Leftrightarrow \{\varphi\} = \{\psi\},$かつ$\forall a, b \in \mathbb C, a\{\varphi\} + b\{\psi\} = \{a\varphi + b \psi\}$と定義すると$\mathcal D(\Omega)$は線型空間になるから$\{\varphi\}$$\varphi$を同一視して集合としての等式(線型空間としての同型)$\mathcal D(\Omega) = C_0^\infty(\Omega)$を得る.${}^{(\ast \ast \ast)}$
$(\ast)$ 解析的であれば多変数正則関数に対して成り立つ一致の定理により$K_1^\circ \cap K_2^\circ$より台を拡げられない.($K_1^\circ \cap K_2^\circ$が連結な場合)
$(\ast \ast)$ $\Omega$に含まれる任意のコンパクト集合で値が等しいから.
$(\ast \ast \ast)$ $\{0\}$が零ベクトル,に対してが逆ベクトル.


「新訂版 数理解析学概論」( https://www.amazon.co.jp/dp/476870462X/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_P7RK86VMMZSND9BBWJAP?_encoding=UTF8&psc=1)では , 試験関数の成す線型位相空間$\mathcal D(\Omega)$$(\mathcal D_K)(\Omega) = \mathcal D(K)$の帰納的極限として定義している. そうすると$\mathcal D(\Omega)$が集合としては$C_0^\infty(\Omega)$に一致することは自明ではない. 正確な証明ではないが,「直観的な証明」を掲げておく. 一般には直和という仮定は普遍射の存在証明に使われる.
(Amazonに掲載できなくなったので移動)

問題点の解説

元記事の議論には数多くの誤りがあるので、これからそれを解説していきたいと思います〜

帰納極限の定義に関して

Ohrui では、帰納(的)極限の定義に関して次のような説明が行われています。

まず409頁から410頁にかけて述べられている位相空間の帰納系$\{S_\alpha\}_{\alpha \in A}$の帰納的極限の定義において, $S_\alpha$の和$S = \bigcup_{\alpha \in A}S_\alpha$は直和でなくても問題ない(直和としなくても定義可能であり後に直和である仮定は使われていない)ので, 以下から帰納的極限の定義では$S$が直和であることを仮定しない. それを利用して証明する.

一般には直和という仮定は普遍射の存在証明に使われる.

しかし、実際には$S = \bigcup_{\alpha \in A}S_\alpha$直和でないと問題がある(従って、直和でないことを利用したその後の証明は全て的外れである)ので、まずはそのことについて説明していきたいと思います〜

集合と位相空間の帰納極限の定義

帰納極限についてはレビュー元の書籍 Kitada にも説明があるのですが、ここではイチから解説しておこうと思います〜

有向集合

集合$A$とその上の二項関係$\le$が次の条件を満たすとき, 有向集合 という:

  • (反射律): $\forall a \in A, a \le a$,
  • (推移律): $\forall a, b, c \in A, (a \le b \land b \le c \Rightarrow a \le c)$,
  • (有向性): $\forall a, v \in A, \exists c \in A, (a \le c \land b \le c)$.
帰納系

有向集合$(A, \le)$に関する(集合の)帰納系 とは, 集合族$(S_a)_{a \in A}$と関数族$(f_{b,a} : S_a \to S_b)_{b \ge a}$の組であって, 次の条件を満たすもののことをいう:

  • $f_{a,a} = \mathrm{id}_{S_a}\ (a \in A)$,
  • $f_{c,a} = f_{c,b} \circ f_{b,a} \ (c \ge b \ge a)$.

(つまり, $(A, \le)$を前順序集合として小圏$\mathbb A$と見なしたときの関手$\mathbb A \to \mathrm{Set}$のことである)

さらに, 各$S_a$が位相空間であり, $f_{b,a}$が連続写像となっているとき, 位相空間の帰納系 という. (これは関手$\mathbb A \to \mathbb{Top}$に相当している)

帰納極限

$S = \left((S_a)_{a \in A}, (f_{b,a} : S_a \to S_b)_{b \ge a}\right)$を(有向集合$(A, \le)$に関する, 集合あるいは位相空間の)帰納系とする.

このとき, $S$帰納極限 とは, 次で定まる集合(あるいは位相空間)$\overline{S}$と(連続)写像の族$f_a : S_a \to \overline S\ (a \in A)$の組のことをいう:

  • $S' := \bigsqcup_{a \in A} S_a = \bigcup_{a \in A} \{a\} \times S_a$とし, $S'$上の同値関係$\sim$を次で定める.
  • $(a, x) \sim (b, y) :\Leftrightarrow \exists c \in A, (c \ge a,b \land f_{c,a}(x) = f_{c,b}(y))$.
  • そこで, $\overline S := S'/{\sim}$とし, $f_a(x) := [(a, x)]\ (x \in S_a)$と定める.

$S$が位相空間の帰納系のときは, $\overline S$に直和位相 direct_sum_top_wiki と商位相 quotient_top_wiki によって位相を定める.(このとき, 各$f_a$は直和位相と商位相の普遍性によって連続写像になる)

この帰納極限$(\overline S, (f_a : S_a \to \overline S)_{a \in A})$のこと$\varinjlim S_a$と表す.

以上が(集合及び位相空間の)帰納極限の定義になります!

本当は、帰納極限は 普遍性 と呼ばれる性質によって(圏論的に)定義される概念なのですが、この説明を始めてしまうと話が脱線してしまうので、ここでは省略します〜

和集合にすると何が起こるのか

Ohrui によると、この帰納極限の定義において$S'$として$(S_a)_{a \in A}$の直和$\bigsqcup_{a \in A} S_a$ではなく(通常の)和集合$\bigcup_{a \in A} S_a$を考えても問題ないかのような説明が行われています〜(その後の補足でも、$S'$を直和にする理由は普遍射の存在証明の為だけかのように書かれています〜)

しかし、実際には直和にしないと定義内の二項関係$\sim$が同値関係にすらならないです!ということで、$\sim$が同値関係にならないことを反例によって見ていきたい思います〜

まず、そもそも$\sim$の定義には添字の情報が必要なので、$S'$を和集合にしてしまうと、そのままでは二項関係を定義することすら出来ないです。なので、ここでは次のように二項関係$\sim$の定義を解釈することにします〜

$x \sim y :\Leftrightarrow \exists a, b \in A, \exists c \ge a, b\ \text{s.t.}\ x \in S_a \land y \in S_b \land f_{c,a}(x) = f_{c,b}(y) \quad (x, y \in \bigcup_{a \in A}S_a).$

反例

$A := \{1, 2, 2', 3, \ast\}$とし, $A$上の二項関係$\le$

$$a \le b :\Leftrightarrow a = b \lor b = \ast \quad (a, b \in A)$$

と定める. このとき, $S_a := \{a\}\ (a \in \{1,2,3\}), S_{2'} := \{2\}, S_{\ast} := \{1,3\}$とし, 写像$f_{\ast,a} : S_{a} \to S_{\ast}\ (a \in \{1, 2, 2', 3\})$を次で定める:

  • $f_{\ast,a}(a) := a\ (a = 1, 3)$,
  • $f_{\ast,2}(2) := 1$,
  • $f_{\ast,2'}(2) := 3$.

このとき, $1 \sim 2$かつ$2 \sim 3$だが$1 \sim 3$ではない.

このように、本来は構成すら正当化出来ていない状況なのに、Ohrui では普遍射の存在証明のみ直和にしないと正当化出来ないかのような説明が行われていることから、帰納極限の定義に関して二重に嘘を述べていることが分かります〜

Ohrui の投稿者は一度でもちゃんと帰納極限の定義の正当性や普遍性の証明を追った上で書いているのでしょうか?

$\mathcal D_K(\Omega)$$f_{K, K'}$の定義に関して

帰納極限の定義に関する誤解は、(実は)レビュー元の書籍 Kitada ではこの部分の証明が省略されているので、行間を埋めたフリをしたんだな〜とまだ推測することが出来ます。

しかし、その後の$\mathcal D_K(\Omega)$$f_{K, K'}$に関する説明は、議論以前の大きな誤りがいくつも述べられています。ということで、次はそれを見ていきましょ〜

関数の台と定義域に関する誤解

まず、$\mathcal D_K(\Omega)$を定義する際に必要になる関数の台(support)という概念について説明したいと思います〜

(関数の)台

$\Omega$をユークリッド空間$\mathbb R^n$上の開集合(あるいは一般の位相空間)とする. このとき, $\Omega$上の(実数値)関数$u : \Omega \to \mathbb R$の台とは$u$の非零点集合の閉包, つまり次で定義される集合のことである:

$$\supp(u) := \overline{\{x \in \Omega : u(x) \neq 0\}}^{\text{in}\ \Omega}.$$

台がコンパクト集合になる滑らかな関数全体のことを$C_0^\infty(\Omega)$と表します。OhruiKitada では、この$C_0^\infty(\Omega)$が(これから定義する$\mathcal D_K(\Omega)$を用いて定義される)帰納極限$\mathcal D(\Omega)$に『集合として等しくなる』ことを述べている訳ですね〜

この定義から分かるように、台は定義域のことではありません。なので、元記事に書かれているような『台を拡げる』などといった操作は考えられません。元記事の投稿者は台のことを定義域だと思い込んでいたんですかね?

$\mathcal D_K(\Omega)$$f_{K, K'}$の定義

それでは、$\mathcal D_K(\Omega)$の定義を見ていきましょ〜

$\mathcal D_K(\Omega)$

$K$$\Omega$上のコンパクト集合とする. このとき, $\mathcal D_K(\Omega)$$C_0^\infty(\Omega)$の部分集合であって, 台が$K$に含まれるもの全体, つまり次の集合として定める:

$$\mathcal D_K(\Omega) := \{u \in C_0^\infty(\Omega) : \supp(u) \subseteq K\}.$$

定義から明らかに『$K \subseteq K'$ならば$\mathcal D_{K}(\Omega) \subseteq \mathcal D_{K'}(\Omega)$』となっています。なので、写像$f_{K, K'}$は『台を拡げる写像』などという奇怪なものではなく、普通に包含写像を考えれば良い訳ですね〜レビュー元の書籍 Kitada でも、$f_{K, K'}$ことはちゃんと『埋め込み』と書かれています。

ちなみに、本当は$\mathcal D_K(\Omega)$を位相空間と見なして位相空間の帰納極限として$\mathcal D(\Omega)$を定義するのですが、その際$\mathcal D_K(\Omega)$には可算個のセミノルム

$$p_{K, \ell}(u) := \sup_{x \in K, |\alpha| \le \ell} |\partial^{\alpha} u(x)| \quad (\ell \in \mathbb N)$$

によって局所凸位相 lcs_wiki を定めます〜この記事では$\mathcal D_K(\Omega)$の位相に関してはこれ以上詳しくは触れませんので、もし気になる人は包含写像$f_{K, K'}$が連続写像になっていることだけ事実として認めて読み進めて下さい〜

正しい説明

以上の設定から分かるように、Ohrui の以下の部分の議論は次のように簡潔に説明することが出来ます〜

$\forall \varphi \in \mathcal D_{K_1}(\Omega), \forall \psi \in \mathcal D_{K_2}(\Omega), \exists K_3 \in A, K_3 \supseteq K_1, K_3 \supseteq K_2, f_{K_3 K_1}(\varphi) = f_{K_3 K_2}(\psi) \in \mathcal D_{K_3}(\Omega).$
$\varphi$$\psi$の台は$\Omega$でコンパクトだから$\varphi$$\psi$$\Omega$で解析的ではない. そこで連続写像$f_{K_3 K_1}, f_{K_3 K_2}$を, $\varphi$$\psi$の台を$\subseteq K_3$であるように拡げて$\varphi \in \mathcal D_{K_3}(\Omega), \psi \in \mathcal D_{K_3}(\Omega)$とするものとみなすと, $f_{K_3 K_1}(\varphi) = f_{K_3 K_2}(\psi)$より$\varphi = \psi\ \mathrm{in}\ K_3$と解釈することができる.

正しい説明

$\varphi \in \mathcal D_{K_1}(\Omega)$$\psi \in \mathcal D_{K_2}(\Omega)$がある$K_3 \supseteq K_1, K_2$について

$$f_{K_3, K_1}(\varphi) = f_{K_3, K_2}(\psi)$$

となるとき, $f_{K_3, K_1}, f_{K_3, K_2}$は包含写像なので$\varphi = \psi\ \text{in}\ \textcolor{red}{\Omega}$である.

『集合としての等式(線型空間としての同型)』について

ここまでの話を読んできた人であれば容易に想像がつくと思いますが、Kitada における集合としての一致とは線型空間としての同型のことではありません〜(もちろん、後から線型空間の構造を定めて同型だと思うこと自体は可能ですが)

位相空間の帰納極限は集合の帰納極限に適切に位相を定めた空間のことでした。ここで、現在の設定を思い出すと$C_0^\infty(\Omega)$は台がコンパクトな滑らかな関数全体という「集合」として定義しており、その上の位相については特に考えていませんでした。そこで、$\mathcal D(\Omega) = \varinjlim \mathcal D_K(\Omega)$を集合の帰納極限だと思うと$C_0^\infty(\Omega)$と(埋め込みを可換にする)全単射が(一意に)存在するので、それを用いて$C_0^\infty(\Omega)$上の位相を$\mathcal D(\Omega)$の位相によって定義する、という話が本来の Kitada における文脈となっています〜

$(\ast)$について

そもそも台がコンパクトな解析関数は存在しない(本文にもそう書いています)訳ですから何だって成り立ちますけど、この部分は何が言いたいんでしょうね?

正しい証明

それでは、正しい証明を確認していきましょう!

(実は)元画像では主張が明確に述べられていないのですが、証明したいのは次の主張になります〜

$\Omega$$\mathbb R^n$上の(空でない)開集合とし, $A$$\Omega$上のコンパクト部分集合全体とする.

このとき, $f_{K', K} : \mathcal D_K(\Omega) \to \mathcal D_{K'}(\Omega)\ (K' \supseteq K)$を包含写像とする集合の帰納系$((\mathcal D_K(\Omega))_{K \in A}, (f_{K', K})_{K' \supseteq K})$の(集合の)帰納極限は$C_0^\infty(\Omega)$との間に全単射をもつ.

Kitada (の序文)にも書かれていますように、$A$は包含関係に関して有向集合にっています。

それでは、この命題を示していきたいのですが、実はこの主張は次のような一般的な設定で証明することが出来ます!

$f_{b, a} : S_a \to S_b\ (b \ge a)$を包含写像とする集合の帰納系$S = ((S_a)_{a \in A}, (f_{b, a} : S_a \to S_b)_{b \ge a})$を考える.
(ここで, $a \le b$ならば$S_a \subseteq S_b$を仮定していることに注意する)このとき, $S$の帰納極限は(通常の)和集合$\bigcup_{a \in A}S_a$との間に全単射をもつ.

それでは、この命題を示していきましょ〜

先ほど具体的に構成した帰納極限を$\bar S$とし, $\tilde S = \bigcup_{a \in A}S_a$とおく.

このとき, 各$f_{a, b}$は包含写像なので, 任意の$(a, x), (b, y) \in \bigsqcup_{a \in A} S_a$について, $(a, x) \sim (b, y)$ならば$x = y$が成り立つ. 従って, 次で定義される写像$F : \bar S \to \tilde S$はwell-definedである.

$$F : \bar S \to \tilde S; [(a, x)] \mapsto x \quad ([(a, x)] \in \bar S)$$

あとは, この$F$が全単射であることを確かめれば良い. 全射性は$S$$S_a$の和集合としていたことから直ちに分かる. 単射性を示す. $[(a, x)], [(b, y)] \in \bar S$$x = F([(a, x)]) = F([(b, y)]) = y$を満たしているとする. このとき, このとき, $A$の有向性から$c \ge a, b$なる$c \in A$を取ると, $f_{c,a}, f_{c, b}$は包含写像であったことから$f_{c, a}(x) = x = y = f_{c, b}(y)$となる. よって, $(a, x) \sim (b, y)$即ち$[(a, x)] = [(b, y)]$であることが得られた.

(証明終)

おわりに

いかがでしたか?みなさんも、巷に転がっている怪しい証明にはくれぐれもご注意下さい!

それでは、平和で楽しいMathlogライフを〜

参考文献

投稿日:20231026
更新日:20231221

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投稿者

北田均・現代数学社『数理解析学概論』新訂版序文の「ほぼ独学と思われる熱心な読者」(通称:序文の人)こと、大類昌俊 (おおるい まさとし, Masatoshi OHRUI) さんと彼のサイト「序文とあとがきの人のブログ」に関する話題をメインに記事を投稿しています! 誹謗中傷や低評価による嫌がらせはお止め下さい。 🍺類憐憫令

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