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【Spin幾何】スピン接続

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スピノルの基本事項

 スピン接続の定義を解説します。一言でいうとスピン接続はLie環の同型$\mathfrak{so}(p,q)\simeq\mathfrak{spin}(p,q)$を利用して、リーマン接続を引き戻して(スピン構造の)主スピン束の接続としたもののことです。

$\mathfrak{so}(p,q)\simeq\mathfrak{spin}(p,q)$

 擬Euclid空間$(\mathbb{E}^{(p,q)},g)$の正規直交基底を$\{e_a\}$とします。線形写像
$$ e_a\wedge e_b:\mathbb{E}^{(p,q)}\to\mathbb{E}^{(p,q)} $$

$$ (e_c\wedge e_b)e_a:=g(e_c,e_a)e_b-g(e_b,e_a)e_c $$
で定義すると、$\{e_a\wedge e_b\}$$\mathfrak{so}(p,q)$の基底となります。

 例えば、$\mathbb{E}^{(1,2)}$の正規直交基底を$\{e_0,e_1,e_2\}$とすると、
\begin{align} e_0\wedge e_1&=\begin{pmatrix}0 & -1 & 0 \\ -1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0\end{pmatrix}\\ e_1\wedge e_2&=\begin{pmatrix}0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & -1 \\ 0 & 1 & 0\end{pmatrix} \end{align}
となります。

 次に$\mathfrak{spin}(p,q)={\rm Span}_\mathbb{R}\{vw\in Cl_{(p,q)};\ v,w\in\mathbb{R}^{p+q}\}$なので同型$Ad:\mathfrak{spin}(p,q)\to\mathfrak{so}(p,q)$
$$ Ad(vw)x:=[vw,x],\ v,w,x\in\mathbb{E}^{(p,q)} $$
と定義されたことを思い出してください。$[vw,x]$を詳しく計算すると
\begin{align} [vw,x]&=vwx-xvw=v(-xw-2g(w,x))-xvw\\ &=-(-xv-2g(x,v))w-2g(w,x)v-xvw\\ &=(xv+2g(x,v))w-2g(w,x)v-xvw=2g(x,v)w-2g(w,x)v\\ &=2(v\wedge w)x \end{align}
となります。よって

Lie環の同型$Ad:\mathfrak{spin}(p,q)\to\mathfrak{so}(p,q)$
$$ Ad\left(\frac{1}{2}vw\right)=v\wedge w $$
で与えられる。

となります。

接ベクトルのスピノルへのClifford積

 Spin多様体上の接ベクトルはスピノルへClifford積として作用します。これは以下のように定義されます。

 正規直交基底を$\{e_a\}$とし、$Cl_{(p,q)}(T_pM)$の既約表現の生成子を$\{\gamma^a\}$とします(いわゆるGamma行列)。このとき、Clifford積を
$$ e_a\cdot\psi:=\eta_{ab}\gamma^b\psi $$
と定義します。つまり$\gamma^a=\eta^{ab}e_b$という関係だと覚えておけばよいです。

スピン接続

 スピン接続を定義します。リーマン接続$\nabla$は接続形式$\omega^a_{~b}$により
$$ \nabla e_a=e_b\omega^b_{~a} $$
で与えらえます。$\omega^a_{~b}$は(局所的には)$\mathfrak{so}(p,q)$に値を持つ1形式です。そのことを明確にするように書き直すと次のようになります。

$$ \nabla e_\lambda=\frac{1}{2}\eta^{\mu \rho}\eta^{\nu \sigma}g(\nabla e_{\mu}, e_{\nu})(e_{\rho} \wedge e_{\sigma})e_{\lambda} $$

\begin{align} &\frac{1}{2}\eta^{\mu \rho}\eta^{\nu \sigma}g(\nabla e_{\mu}, e_{\nu})(e_{\rho} \wedge e_{\sigma})e_{\lambda}\\ &=\frac{1}{2}||e_\mu||^2||e_\nu||^2g(\nabla e_{\mu}, e_{\nu})(e_{\mu} \wedge e_{\nu})e_{\lambda}\\ &=\frac{1}{2}||e_\rho||^2\omega^\sigma_\rho(e_{\rho} \wedge e_{\sigma})e_{\lambda}\\ &=\frac{1}{2}||e_\rho||^2\omega^\sigma_\rho(\eta_{\rho \lambda}e_{\sigma}-\eta_{\sigma \lambda}e_{\rho})\\ &=\frac{1}{2}(\omega^\sigma_\lambda e_\sigma-||e_\rho||^2||e_\lambda||^2\omega^\lambda_\rho e_\rho)=\frac{1}{2}(\omega^{\sigma}_{\lambda}e_{\sigma}+\omega^{\sigma}_{\lambda}e_{\sigma})=\omega^\sigma_\lambda e_\sigma \end{align}

公式1より
$$ Ad\left(\frac{1}{4}\eta^{\mu \rho}\eta^{\nu \sigma}g(\nabla e_{\mu}, e_{\nu})e_{\rho}e_{\sigma}\right)=\frac{1}{2}\eta^{\mu \rho}\eta^{\nu \sigma}g(\nabla e_{\mu}, e_{\nu})(e_{\rho} \wedge e_{\sigma}) $$
なので、リーマン接続の接続形式を$Ad$で引き戻して定義される$\mathfrak{spin}(p,q)$に値を持つ1形式は
$$ \frac{1}{4}\eta^{\mu \rho}\eta^{\nu \sigma}g(\nabla e_{\mu}, e_{\nu})e_{\rho}e_{\sigma}=\frac{1}{4}g(\nabla e_{\mu}, e_{\nu})\gamma^\mu\gamma^\nu $$
となります。これよりスピン接続は以下のように定義されます。

スピン接続

擬リーマンSpin多様体において、リーマン接続を$\nabla$、正規直交基底を$\{e_\mu\}$$Cl_{(p,q)}$の既約表現の生成子を$\{\gamma^\mu\}$とするとき、スピン構造のスピノル束にはリーマン接続からスピン接続が一意的に定義され、局所的に以下で与えられる。
$$ \nabla\psi=d\psi+\frac{1}{4}g(\nabla e_{\mu}, e_{\nu})\gamma^\mu\gamma^\nu\psi $$

投稿日:2023511

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投稿者

Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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