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現代数学解説
文献あり

任意の関数の関数的平方根を求めよ

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今回の問題

f(x)の不動点であり、f12(x)の不動点でないものは存在するか。

任意の関数の関数的平方根のテイラー展開をせよ。

ここでf1af1a(f1a(f1a(x)))a=f(x)となる関数です。

関数的平方根の定義については コチラ
sinxの関数的平方根については コチラ

問題1

とりあえず前導出した合成不動点定理を確認しましょう。

合成不動点定理

不動点が1つの場合は合成不動点定理ですでに判明しています。

合成不動点定理

方程式x=f(x)の唯一の解がαであるとき、f12(α)=α

f12(α)=β (αβ)と仮定する。
f12(f12(α))=f(α)f12(β)=α
さらに、f12(f12(β))=f(β)なので、
f12(f12(β))=f(β)f12(α)=f(β)β=f(β)
これはαx=f(x)の唯一の解であることに矛盾。
よってf12(α)=α

この証明は不動点が複数あるとき次のようにとらえられます。

f(α)=α,f12(α)=βであるとき、f(β)=β

そもそもf12(α)=β(αβ)となるものが存在するかわかりませんが...

周期点

とりあえず、f12(α)=β(αβ)となるものが存在すると仮定します。

周期点

関数fn回合成をfn(x) (nN)とする。
あるαにおいてfn(α)=αとなるとき、αn周期点とよぶ。

すると、次のようなことが分かります。

f(x)の不動点はf12(x)の不動点か2周期点である。

f(α)=αとする。f12(f12(α))=αを満たす必要があるから、

f12(α)=α{f12(α)=βf12(β)=α のどちらかである。(αβ)

さらに定理2より、f(β)=βである。

同じようにしてf(x)の不動点はf1a(x)の不動点か、a周期点であることが証明できます。

αf(x)の不動点の1つであるとする。

{f12(α)=βf12(β)=α ならば、f(α)=f(β)

f12(f12(x))=f(x)の両辺を微分すると、

f12(x)f12(f12(x))=f(x)

αを代入すると、

f12(α)f12(f12(α))=f(α)f12(α)f12(β)=f(α)

βを代入すると、
f12(α)f12(f12(β))=f(β)f12(β)f12(α)=f(β)
よって、f(α)=f(β)

つまり、f(x)の不動点がf12(x)2周期点になることは今のところほとんどないといえるでしょう。

問題2

sinxの分解の時のように、微分して求めます。f(x)の不動点をQとします。
とりあえずf12(Q)=Qを仮定します。
すると、次のようにテイラー展開されます。

不動点周りでf12(x)は次のようにテイラー展開される。

f12(x)=n=0Qnn!(xQ)n

Q10までを記します。とても見づらいですがご了承ください。

Q0QQ
Q1f(Q)f(Q)
Q2f(Q)f(Q)+Q1f(Q)f(Q)+f(Q)
Q3f(Q)3Q1Q22Q13+Q1f(Q)3f(Q)(f(Q)f(Q)+f(Q))2(f(Q))3+f(Q)
Q4f(Q)3Q236Q3Q12Q24Q3Q1Q2Q14+Q1f(Q)3(f(Q)f(Q)+f(Q))36(f(Q)3f(Q)(f(Q)f(Q)+f(Q))2(f(Q))3+f(Q))(f(Q))2f(Q)f(Q)+f(Q)4(f(Q)3f(Q)(f(Q)f(Q)+f(Q))2(f(Q))3+f(Q))f(Q)f(Q)f(Q)+f(Q)(f(Q))4+f(Q)
Q5(f′′′′′(Q)10Q3Q3Q125Q4Q1Q215Q3Q1Q2210Q2(Q4Q13+Q3Q2))Q15+Q1f′′′′′(Q)10(f(Q)3f(Q)(f(Q)f(Q)+f(Q))2(f(Q))3+f(Q))2f(Q)5(f(Q)3(f(Q)f(Q)+f(Q))36f(Q)3f(Q)(f(Q)f(Q)+f(Q))2(f(Q))3+f(Q)f(Q)f(Q)f(Q)+f(Q)4f(Q)3f(Q)(f(Q)f(Q)+f(Q))2(f(Q))3+f(Q)f(Q)f(Q)f(Q)+f(Q)f(Q)2+f(Q))f(Q)f(Q)f(Q)+f(Q)f(Q)5/2+f(Q)
Q6(f′′′′′′(Q)15Q3Q2320Q3Q4Q1315Q3Q4Q1245Q4Q12Q2215(Q5Q14+4Q3Q3Q1)Q2Q2(10Q32+6Q5Q1+15Q4Q2))Q16+Q1とても長い式
Q7f′′′′′′′(Q)35Q4Q4Q1335Q3Q5Q1421Q3Q5Q1235Q3Q4Q2105Q4Q1Q237Q1(10Q3Q32+Q6Q2)105(Q3Q3Q13+Q5Q13)Q2221Q2(Q6Q15+Q5Q2+10Q3Q4Q12+5Q3Q4Q1)Q17+Q1めっちゃ長い式
Q8f′′′′′′′′(Q)(35Q42Q2+105Q4Q24+56Q3Q6Q15+70Q4Q5Q14+56Q4Q5Q13+56Q3Q5Q2+420Q5Q12Q23+28(Q3Q6+10Q4Q32)Q12+8Q1(Q7Q2+35Q3Q3Q4)+210(Q6Q14+Q3Q4+4Q3Q4Q1)Q22+28Q2(10Q32Q3+Q7Q16+Q6Q2+15Q4Q4Q12+20Q3Q5Q13+6Q3Q5Q1))Q18+Q1ものすごく長い式
Q9f′′′′′′′′′(Q)(280Q34+36Q7Q22+126Q52Q14+36Q8Q17Q2+126Q4Q5Q2+378Q3Q5Q22)Q19+Q1126Q15(3Q7Q22+Q4Q6)+84Q13(Q4Q6+15Q6Q23+15Q4Q5Q2)Q19+Q1840Q32(Q5Q13+3Q4Q1Q2)+36Q12(Q3Q7+21Q4Q5Q2)Q19+Q19Q1(Q8Q2+105Q5Q24+210Q42Q22+7Q3(5Q42+4Q6Q2))Q19+Q184Q3(Q7Q16+Q6Q2+15Q4Q23+15Q42Q12+6Q3Q5Q1+45Q5Q12Q22+15(Q6Q14+Q3Q4)Q2)Q19+Q1想像できないぐらい長い式
Q10f′′′′′′′′′′(Q)126Q52Q2945Q5Q251575Q42Q4Q1210Q9Q1Q245Q3Q8Q12210Q4Q7Q16120Q4Q7Q13252Q5Q6Q15210Q5Q6Q14210Q4Q6Q24725Q6Q12Q242800Q33Q4Q13150(Q4Q4+Q7Q14)Q231260Q3Q4Q5Q12100Q32(Q6Q14+Q3Q4+3Q4Q22+6Q5Q12Q2)Q110+Q1とーっても長いんじゃない?多分。

はい。こんな感じです。もう二度と打ちたくありません。
意外と完全ランダムという感じではなく、分母には規則性があります。
これを使えば、大体の関数の関数的平方根を近似することができます。

次のグラフはx21に適用したものです。 !FORMULA[88][1114237592][0]に適用したもの x21に適用したもの
赤はx21、青は関数的平方根の近似(x>0)、緑はその合成、黒はx20.3です。
ちなみに不動点はx=φ(黄金数)です。

おまけ

次のサイトでは、任意の関数の関数的平方根を不動点の近くで近似することができます。
関数的平方根の近似 | Desmos
是非いろんな関数の関数的平方根を計算してみてください。

参考文献

投稿日:17日前
OptHub AI Competition

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cbrtx
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何の変哲もないただの学生。

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