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大学数学基礎解説
文献あり

ランダムな関数に対する平均値の定理について

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はじめに

本記事は, ランダムな関数に対する平均値の定理に関する備忘録です. もし間違い等があればコメントいただけますと幸いです.

ランダムな関数に対する平均値の定理

ランダムな関数に対する平均値の定理は, M-推定の漸近理論において必須の道具です.

記法
  • 位相空間Xに対してB(X)XのBorel集合族を表す.
  • θ=[/θ1,,/θp]とする. 例えば, f:RpRに対して
    θf(θ)=[f(θ)θ1,,f(θ)θp].
設定
  • (Ω,F)は可測空間.
  • ΘRpの部分集合 (パラメータ空間).
  • QΩ×Rp上の実数値関数.

定理の証明には次の事実を用います.

可測選択定理 (Jennrichpaper2, Lemma 2)

次の3つの条件を仮定する.

  • Θはコンパクト.
  • θΘに対してΩωQ(ω,θ)RF/B(R)-可測.
  • ωΩに対してΘθQ(ω,θ)Rは連続.

このとき, F/B(Θ)-可測写像θ^:ΩΘが存在して, 任意のωΩに対して,
Q(ω,θ^(ω))=maxθΘQ(ω,θ)
が成り立つ.

prop:1の証明は記事「 M-推定量の可測性について 」を参照してください.

ランダムな関数に対する平均値の定理 (Gourieroux and Monfortbook1, Mean Value Theorem 24.1)

次の3つの条件を仮定する.

  • Θは凸かつコンパクト.
  • θΘに対してΩωQ(ω,θ)RF/B(R)-可測.
  • ΘΘを含む開集合とするとき, 各ωΩに対してΘθQ(ω,θ)RC1級.

このとき, 相異なるθ^1,θ^2:ΩΘがともにF/B(Θ)-可測ならば, 次の2つの条件を満たすようなF/B(Θ)-可測写像θ:ΩΘが存在する.

  • 任意のωΩに対して
    Q(ω,θ^1(ω))Q(ω,θ^2(ω))=θQ(ω,θ(ω))(θ^1(ω)θ^2(ω))
    が成り立つ.
  • 任意のωΩに対して, θ(ω)θ^1(ω)θ^2(ω)を結ぶ線分上にある.

関数Q:Ω×ΘRを次のように定める :
Q(ω,θ)=|Q(ω,θ^1(ω))Q(ω,θ^2(ω))θQ(ω,θ)(θ^1(ω)θ^2(ω))|D(ω,θ).
ここで, D:Ω×ΘR
D(ω,θ)=θθ^1(ω)+θθ^2(ω)θ^1(ω)θ^2(ω)(0)
であり, θ=αθ^1(ω)+(1α)θ^2(ω), 0α1のとき, かつそのときに限りD(ω,θ)=0となる.

さて, prop:1 (可測選択定理) より任意のωΩに対して
 Q(ω,θ(ω))=maxθΘQ(ω,θ)
を満たすようなF/B(Θ)-可測写像θ:ΩΘが存在する. ところが, 任意にωΩを固定するとき, θQ(ω,θ)に通常の非確率的な関数に対する平均値の定理を適用することにより
 maxθΘQ(ω,θ)=0
となることが分かるから, このθに対して
 Q(ω,θ^1(ω))Q(ω,θ^2(ω))=θQ(ω,θ(ω))(θ^1(ω)θ^2(ω)),D(ω,θ(ω))=0
が成り立つ. (証明終)

参考文献

[1]
Gourieroux, C. and Monfort, A., Statistics and Econometric Models Volume 2: Testing, Confidence Regions, Model Selection and Asymptotic Theory, Themes in Modern Econometrics , Cambridge University Press, 1995
[2]
Jennrich, R. I., Asymptotic properties of non-linear least squares estimators, The Annals of Mathematical Statistics, 1969, 633 - 643
投稿日:126
更新日:21
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  2. ランダムな関数に対する平均値の定理
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