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現代数学解説
文献あり

広義超積分の定義と収束条件

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この記事は, 7777777 氏によるタグ 超微分 に関連しています.
前回 前々回 の記事で超積分を定義し,その定理を見た.今回は広義積分の超積分バージョンを定義したい.

広義超積分の定義

広義超積分

関数f:R>0(a,b)R>0(a,b)上連続とする.このときa<α<β<bに対する有界閉区間[α,β]上のfの超積分値は定まる.αaに, βbに近づいたときの極限である

  1. limαa, βbαβf(x) qx

が有限な値として存在するとき,f(a,b)上で広義超積分可能,または広義超積分が収束するといい,その極限値をabf(x) qxと表す.極限値が収束しないとき,f(a,b)上での広義超積分は発散する,または収束しないという.特に極限値がに発散するとき,広義超積分はに発散するという.

(i)を正確に書くと,任意のε>0に対してあるδ>0が存在してbδ<β<ba<α<a+δならば
|abf(x) qxαβf(x) qx|<ε
となることである.
f(a,b)での超原始関数をFとすると,F(a,b)上で連続で,
abf(x) qx=limαa, βb(F(β)F(α))
であることに注意する.つまりanaなる単調減少な列{an}と,bnbなる単調増加な列{bn}に対して,
abf(x) qx=limnanbnf(x) qx
となることである.
通常の広義積分と同様に次が言える.

  1. 関数f:R>0(a,b)R>0(a,b)上連続とする.このときanaなる単調減少な列{an}と,bnbなる単調増加な列{bn}が存在して
    Qn=anbnf(x) qx
    で定まる列{Qn}が上に有界ならば,f(a,b)上で広義超積分可能であり,fの超広義積分の値は極限値limnQnに等しい.
  2. 関数f,g:R>0(a,b)R>0(a,b)上連続で,fgとする.g(a,b)上で広義超積分可能ならば,f(a,b)上で広義超積分可能で,
    abf(x) qxabg(x) qx
    を満たす.

f(a,b)上で広義超積分可能であっても広義積分が収束しない場合や,逆に広義積分可能であっても広義超積分可能でない場合がある.

f=1(log(x))2[2,)で広義超積分可能だが,広義積分可能でない.

f=sin(x)xx(0,1]で広義積分可能だが,広義超積分可能でない.

超定積分の変換公式から以下のような発散する条件が分かる.

関数f:R>0(0,b]R>0(0,b]上連続で,f(x)1とする.また,limx0f(x)の値が定まり,その極限値が1以上ならば,f(0,b]上での広義超積分はに発散する.

an0なる単調減少な列{an}をとる.このとき,
Qn=anbf(x) qx=exp(anbf(x)x dx)exp(anb1x dx)=ban
となる.よってQn

f:R>0(a,b)R>0(a,b)上で広義超積分可能なとき,その値は0を取らない.

最後に

広義超積分は上で見たように具体的な計算はあまり意味をなさないが,区間[a,)上で広義超積分可能である関数fと,そのオーダーには何かしらの関係がありそうだ.しかし,筆者はオーダーにはあまり縁がないため読者に任せる.
この記事では広義超積分の豊かさは見つけられなかった.

参考文献

[1]
鈴木紀明, 解析学の基礎 ―高校の数学から大学の数学へ―, 学術図書出版社, 2020
[2]
小平邦彦, 軽装版 解析入門 I, 岩波書店, 2020
投稿日:2024128
更新日:2024129
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  2. 最後に
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