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超微分
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で超積分を定義した.この記事では超積分の意味を考え,通常の積分との関係を調べていく.
関数$f:\mathbb{R}_{>0}\supset [a,b] \rightarrow \mathbb{R}_{>0}$に対し,関数$F:[\log(a), \log(b) ]\rightarrow \mathbb{R}$を$F(x):=\log(f(e^x))$と定義する.
変換$E:(x,y)\in \mathbb{R}\times\mathbb{R}\rightarrow(e^x,e^y)\in\mathbb{R}_{>0}\times\mathbb{R}_{>0}$を考えたとき,$f$と$F$のグラフ
$\Gamma(f):=\{(x,y)\in \mathbb{R}_{>0}\times\mathbb{R}_{>0}|y=f(x)\}$
$\Gamma(F):=\{(x,y)\in \mathbb{R}\times\mathbb{R}|y=F(x)\}$
の間には$\Gamma(F)=E^{-1}(\Gamma(f))$という関係があることは過去の記事でも述べた.
では,集合$A=\{(x,y) \in \mathbb{R}^2\mid a\leq x\leq b \ ,\ 0\leq y\leq f(x) \}$の像$E(A)$の(通常の意味での)面積は$f$の超定積分の値になっているかというとそうではない.
長方形$D=[a,b]\times [0,c]$を考えてみよう.$D$の面積$|D|$は$c(b-a)$で得られ,これは定数の積分の値になる.しかし,像$E(D)$の面積は$(e^b-e^a)(e-c)$となるため定数の超積分の値にはならない.
一方$e^{|D|}= \left( \frac{e^b}{e^a} \right)^c=\qinteg^{e^b}_{e^a}c \ \mathrm{q}x$という関係がある.
さて,7777777氏の記事『 超積分の簡単な定義・レベルとオーダーの関係 』には次の公式が乗っている.
$\mathscr{P}f(x)^{dx}=e^{\int\frac{f(x)}{x}dx} $
定積分では以下のようになる.
どのようにして導出されたかを述べたのちにこれを証明する.Ideaは変換$E$を用いるものである.
積分
$$ \int^{b}_{a} f(x)\ \mathrm{d}x $$
を考える.$x$軸を$e^x$に変換すると,
$$ \int^{b}_{a} f(e^x)\ \mathrm{d}x $$
となる.変数変換の意味ではない.さらに変換$E$のグラフの関係を思い出すと,$y$軸を$e^y$に変換すればよさそうだ.
つまり,
$$ \exp \left( \int^{b}_{a} f(e^x)\ \mathrm{d}x \right) $$
が超定積分の値になりそうだ.あとは範囲を適切に変更し,変数変換を施すと,
$\qinteg^b_a f(x) \ \mathrm{q}x =\exp \left( \int^{\log(b)}_{\log(a)} f(e^x)\ \mathrm{d}x \right) $
となる.つまり指数グラフの等間隔での面積ともいえそうだ.比の連続化ともいえそうだが大きな意味があるかはわからない.
さて,(i)を証明していこう.
関数$f:\mathbb{R}_{>0}\supset [a,b] \rightarrow \mathbb{R}_{>0}$が$[a,b]$上超可積分なら,$[a,b]$上積分可能であり,次が成り立つ.
$\qinteg^b_a f(x) \ \mathrm{q}x =\exp \left( \int^{b}_{a} \frac{f(x)}{x} \ \mathrm{d}x \right) $
記号は前の記事を参照.
まず,$f$が$[a,b]$上積分可能であることを示す.$f(e^x)$が$[\log(a),\log(b)]$上積分可能であることを示せば十分である.
$P=\qinteg^b_a f(x) \ \mathrm{q}x$とおく.任意に$ \varepsilon>0 $をとる.
対数関数の連続性よりある$\delta>0$が存在して$|x-P|<\delta$ならば$|\log(x)-\log(P)|<\varepsilon$を満たす.
次に,$f$は$[a,b]$上超積分可能なのである$\delta'>0$が存在して$[a,b]$の分割$\Delta'$が$\delta(\Delta')<\delta'$を満たすならば$\Delta'$のどの代表系$\xi$をとっても$|P(f,\Delta',\xi)-P|<\delta$が成り立つ.また,指数関数の一様連続性より,$|x-y|<\delta''$ならば$|e^x-e^y|<\delta'$を満たすある$\delta''>0$が存在する.
さてこの$\delta''$に対し,$[\log(a),\log(b)]$の分割$\Delta=\{a_0,a_1,\cdots,a_n\}$は$\delta(\Delta)<\delta''$を満たすとする.$\hat{ \Delta }=\{e^{a_0},e^{a_1},\cdots,e^{a_n}\}$とおくと,これは$[a,b]$の分割であり,指数関数の一様連続性より$\delta(\hat{ \Delta })<\delta'$である.よって,$\Delta $の代表系$\xi$を任意に取ると,$\hat{ \xi}=(e^{\xi_0},e^{\xi_1},\cdots,e^{\xi_n})$は$\hat{ \Delta }$の代表系であり,$|P(f,\hat{ \Delta },\hat{ \xi})-P|<\delta$が成り立つ.
最後に対数関数の連続性から,
$$ \left| \log \left( P(f,\hat{ \Delta },\hat{ \xi}) \right)-\log(P) \right|= \left| \sum_{i=1}^{n}f(e^{\xi_i})(a_i-a_{i-1})-\log(P) \right|< \varepsilon $$
が言える.以上より$f(e^x)$は$[\log(a),\log(b)]$上積分可能である.
そして上の結果から$\int^{\log(b)}_{\log(a)} f(e^x)\ \mathrm{d}x=\log(P)$ゆえ,変数変換をすれば求めたい式を得る.
このことは逆も言える.すなわち,
関数$f:\mathbb{R}_{>0}\supset [a,b] \rightarrow \mathbb{R}_{>0}$が$[a,b]$上可積分なら,$[a,b]$上超積分可能である.
証明は定理2と同様にしてできる.
最後に原始関数の超積分バージョンを定義しよう.
$(a,b)$上で微分可能な関数$F:\mathbb{R}_{>0}\supset [a,b] \rightarrow \mathbb{R}_{>0}$が関数$f:\mathbb{R}_{>0}\supset (a,b) \rightarrow \mathbb{R}_{>0}$の超原始関数であるとは,$(a,b)$上$ F^`(x)=f(x)$を満たすことである.
$f(x)$の超原始関数を$\qinteg f(x) \ \mathrm{q}x$と書く.
初等関数の原始関数がよく表としてまとめられているが,それの超原始関数バージョンは読者に任せたい.
超積分を一通り厳密に定義し,定理を証明して来た.超積分が加法を乗法に送る指数的な演算であり,超微分は乗法を加法に送る対数的な演算となっている.微分積分に指数,対数のような性質が組み込まれていると言っていいだろうが,代数的に意味があるかは未知数である.一方,演算のレベルを一つ上げるという簡単な操作で従来の微分積分のような展開ができるのは面白いと感じた.