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嘘か真か?位数2の元からなる可換群の位数は2の累乗!? 《問題編》

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はじめに

実は、こちらの記事は『前編』『後編』でいうところの『後編』にあたります。

『前編』にあたる記事をまだ読んでいない方は、下の記事を先に読むことをおすすめします!

 『前編』
嘘か真か?位数2の元からなる可換群の位数は2の累乗!? 《設定編》

≪設定編≫に登場したルール一覧

前編のラストに登場した【合成テーブル】の規則の一覧がこちらにあります。
(必要な時にタブを開いて確認してください。)

定義1 合成を表す記号

A,B,Cをそれぞれ素材カードとする。
〈素材置き場〉に、左からA,B,Cの順にカードが置かれ、左から順に合成し、素材カードDが生成されることを、

A + B + C = D

と表す。

また、〈素材置き場〉に先ほどと同じようにカードが置かれ、B,Cを初めに合成して、生成したカードをAに合成する操作を、次のように表す。

A + ( B + C ) = D
定義2 2通りの合成
素材カードA,B,Cを合成することで生成されるカードと、素材カードD,E,Fを合成することで生成されるカードが同じものになることを次のようにあらわす

A + B + C = D + E + F
定義3 二つのカードの合成
素材カードA,Bの合成について、次の式が成り立つ。

A + B = B + A
定義4 『ごみ』というカード
素材カード『ごみ』というカードをgで表すと、このカードの合成は次の式が成り立つ。

A + A = g

A + g = A

g + g = g
定義5 合成の順番を表す記号
素材カードA,B,Cの合成について、B,Cの合成を先に行い、生成されたカードとAを合成するという順番で合成することを、次の式で表す。

A + ( B + C )

またこの定義に合わせて、A,Bの合成を先に行い、生成されたカードとCを合成することを次の式で表す。

( A + B ) + C

定義6 三つのカードの合成の順番
A,B,Cをそれぞれ素材カードとするとき、
( A + B ) + C = A + ( B + C )

「それで、《問題》というのはなんだい?」

「うん、今は【合成テーブル】を実際に作成する段階なんだけど、ここで一つ問題があった。至急答えを出してほしい。
簡単に言うと、この表に載せられる素材カードの数が限られているみたい。」

「ん?表を縦横に広げていけば、表に載せられカードの種類をいくらでも増やせるじゃないか。」

「いや、カードの種類自体はいくらでも増やせる、と思う。ただ、その表にのせられない種類の個数がある…らしい。」

「たとえば?」

「例えば…、3枚のカードのみの【合成テーブル】とか。」

実際に、3種類の素材カードのみを載せた【合成テーブル】を作ってみましょう。

3種の素材カードの合成テーブル 3種の素材カードの合成テーブル

上の用紙が、3種類の素材カードのみが登場するゲームを想定して作られた【合成テーブル】です。
しかしまだ、素材カードが書かれていません。こちらを今から加えていきましょう。

合成結果を作ってみる

今回登場する素材カードは『青草』、『凡水』、『ごみ』の3種類です。

3種類の素材カード 3種類の素材カード

ここで、あらかじめこの3つの素材カードを記号で表しておきます。

『青草』: A  ( Aokusa )
『凡水』: B  ( Bon water )
『ごみ』: g ( gomi )

そして、【合成テーブル】の上一列と左一列にこれらを並べておきましょう。

合成テーブルの台ができた! 合成テーブルの台ができた!

初めに、合成結果が確定しているところから表を埋めていきましょう。

素材カード達の中でも、『ごみ』は表の規則の中で特別な振る舞いをするカードでした。というのも、【定義5】より『ごみ』が関わる合成は、結果が決まったものになるからです。

まず、同じ素材カード同士の合成は『ごみ』を生成するので、

A + A = g
B + B = g
g + g = g

となります。
この合成結果を表に加えると、下の図のようになります。

ダブル合成の結果を入れた。 ダブル合成の結果を入れた。

次に、ごみを合成する時の規則より、

A + g = A
B + g = B

g + A = A
g + B = B

となります。
先程の表にこれらの合成結果をさらに加えると、下の図のようになります。

空いているところはあと二つ!(〇があるところ。) 空いているところはあと二つ!(〇があるところ。)

これで、【合成テーブル】の空きマスは残り二個になりました。ここまでは問題ありません。
しかし、ここからは結果が一通りとは限らない合成が登場します。残った二個の合成はそれぞれ次のような式で表されます。

A + B = ?
B + A = ?

2枚のカードを合成するときに、『順番を逆にしても合成結果は変わらない』という決まり( A + B = B + A )があったので、上の二つの式の結果は同じものにしなければなりません。

さて、これらの式の合成結果は今回登場している3種類のカードA,b,gのうちの1つです。どれでも一つ自由に選んで当てはめればいいような気がしますが、ここで三枚のカードを合成する際の規則(定義6)が自由をきつく縛ってきます。

まずは、合成結果がgになる場合で考えてみましょう。
A + B = g
B + A = g

(この二つの式の結果は必ず同じものになる。)

これらの式自体には問題がなさそうです。
これで一旦表が完成しますが、この表はしっかり【合成テーブル】の規則を守れているのでしょうか。

これで完成か・・・? これで完成か・・・?

次のように合成する場合を見てみましょう。

A + B + B = ?

この時、前から順に合成していくと、

( A + B ) + B
= g + B
= B

一方、後ろから合成をしていくと、

A + ( B + B )
= A + g
= A

となり、二つの合成の答えは違うものになってしまいました!
つまり、
( A + B ) + B $ \neq $ A + ( B + B )
となります。
この合成の式は【合成テーブル】の規則(定義6)に反しているので、この表はゲームに使うことができません。

さて、ここでルール違反が起きてしまったのは、先程決めたこの合成が原因とみてよいでしょう。

A + B = g
B + A = g

では、この二つの合成の結果を別のカードにした場合はどうなるでしょうか。

A + B = A
B + A = A

とおくと、どうなるか。

実は今回の場合でも、先程と同じような違反が起きてしまいます。
次の合成を使って示してみましょう。

A + A + B = ?

( A + A ) + B = A + ( A + B )
が成立するかどうかを確認してみると、

( A + A ) + B
= g + B
= B

A + ( A + B )
= A + A
=g

よって
( A + A ) + B $\neq$ A + ( A + B )
となり、今回の場合も【合成テーブル】の規則に反してしまいます。

最後に、次の式を受け入れるとしたら、どうでしょう?

A + B = B
B + A = B

この式も、【合成テーブル】の規則に反する式が作れてしまいます。
(上で示したことを参考に、ぜひ考えてみてください!)

ということで、式の答えになりうる三通りの場合をすべて見ていきましたが、どの場合も表の規則に対して違反が起きてしまいました。そして、作った三通りの表の他に考えられるものはないので、3種類の素材カードのみが書かれた【合成テーブル】はどうやっても作れない!と、いうことが言えます。

★問題★

先程は3種類の素材カードが載っている【合成テーブル】を作ろうとしてうまくいきませんでした。では、これが4種類のカードが載っているものになるとどうなるでしょう。

先程の問題点を踏まえて、4種類の素材カードのみが載っている【合成テーブル】を作ることができるでしょうか?

HINT! : 3種類のカードの【合成テーブル】の時は、合成結果を選択できた式は2つしかありませんでした。

この場合は2ヶ所だけ空いていた この場合は2ヶ所だけ空いていた

4種類のカードの【合成テーブル】の場合だと、合成結果を選択できる式が6つあります。

4種類のカードの場合では6ヶ所も空いている! 4種類のカードの場合では6ヶ所も空いている!

まずはこれらの内から1つの式を選んで、合成結果を決めてみてください。すると、残りの5つのうち、実は合成の結果が1つに決まるものがいくつか登場するので、それを表に書き込んでみましょう。

.
.
.

4種類の素材カードの【合成テーブル】

完成!! 完成!!

上の表が、4種類の素材カードの【合成テーブル】、つまり先程の問題の答えになります。
この表に沿って素材カードの合成を行えば、合成の規則に矛盾せず全ての合成を行うことができます。特に、三つの素材カードの合成の全通り( 4×3×2 通り!)が規則を満たしていることが確認できます。

予想の登場

ここまでの話をまとめると、3種類のカードで構成された【合成テーブル】は作ることが出来ませんが、4種類のカードがあるものは作ることが出来る、ということでした。

「……というわけで、作れない【合成テーブル】がある。」

「3種類のカードだけだと表が出来ないけど、4種類のカードだと表が出来る。どうやっても規則に沿う表が出来ないカードの枚数があるのか……。出来るものと出来ないものを分けるような、何か法則はないのか?」

「……。実は、『予想』あり。ちょっとだけ調べたんだけど、表が出来るカードの種類の数に法則がありそう。表が出来るカードの枚数で、僕が見つけたものは小さい方から、

2、4、8、16

だったんだ。つまり……」

「つまり、カードの枚数が2の累乗なら、【合成テーブル】が作れる。

「ん。で、カードの枚数がそれ以外なら、作れない...かも。きちんと確認はできてない。」

「ふーん。でも、大体答えが分かってるんじゃないか。もうそれを正解にしてさ、さっさと表を作っていけばいいと思うよ。カードの方はもうイラスト原案を書いてもらっているんだろ?」

「そう、そこ、そこが問題!素材カードのイラストをある高名な方に描いてもらった。多少値は張るが、うちの会社の一大プロジェクトとして頑張った。んで、カードのイラストを25枚描いてもらった。これくらいの枚数でゲームバランスが良さそうだった。」

「……だけど、先程の『予想』によると25枚のカードすべてを使った【合成テーブル】は作れない(25は2の累乗じゃ表せないからね)。25に近い数字で、表が作れるものは『予想』によると 16 か 32 になってしまう。」

「せっかく描いてもらったのに、9枚も消すのは悲しいし、ゲームバランスが心配。でも7枚追加して描いてもらうのは申し訳ないし、うちの費用が心配。」

「どうにか、25枚ちょうどを使って表を作りたいわけだ。」

「ここまでくれば、君に解いて欲しい問題も分かるだろう。25枚のカードで、合成のルールを守っている【合成テーブル】を作ることは可能か調査して欲しい。無理なら、その理由を見つけて欲しい!」

「心得た!私にお任せあれ!」

.
.
.

(さて、25枚のカードで出来た表を実際に作るか、それが不可能ということを証明するか。はたまたさっきの『予想』の方を証明してしまうか……。)

この会話に登場した【合成テーブル】についての『予想』を、取り出してみましょう。

『予想』

【合成テーブル】が作れる条件

合成の規則を満たす【合成テーブル】に使われる素材カードの枚数は、2の負でない整数の巾になり、それ以外にはならない。
つまり、カードの枚数は小さい順に並べると、

1 , 2 , 4 , 8 , 16 , 32 , 64 , 128 , ……

となる。

カードの枚数が1枚または2枚の時にも表が作れる、と言っていましたが、実際に作ってみると下の図のようになります。
(カードの枚数が1枚の時には、『ごみ』(表では「 g 」)の一枚のみになります。)

カードの枚数が1枚、2枚の場合の合成表 カードの枚数が1枚、2枚の場合の合成表

そして先程、カードの枚数が3枚の時と4枚の時を見ていきました。
まとめると、合成の規則を満たす【合成テーブル】は、カードの枚数が1枚、2枚、4枚の時に実際に正しい表を作れますが、3枚の時には作れないということになります。

確かに、ここまでは予想通りのようですが、カードの枚数がもっと多い場合もこの予想が成り立つのでしょうか?

一応、今回あなたが最低限解かなければならない問題は、

登場する素材カードの枚数がちょうど25枚であるような、合成の規則を満たす【合成テーブル】は作成可能か、または不可能か。

となります。
しかし、この問題を直接解くか、はたまた【予想】の方を解いてしまうかはあなたの自由です。

会社の命運がかかっている『アトリエ』の、小さいけれど重要な問題を、すっぱり解決してみせてください!!

エピローグ

錬金術師ならだれでも、『賢者の石』の生成に憧れるもの。でもその前に、目の前の問題を解決しなくちゃ。

【『ニュートンのアトリエ リンカーシャンの錬金術師』ー プロローグ。 より】

ここまでの設定は全てフィクションです。ですが、登場した予想や問題は実際に私がまだ分かっていないものです。

もし今回の予想や問題に興味をもって、なにか分かったことなどがありましたら、まだまだ勉強の足りない私に教えては頂けないでしょうか。
また、この問題はもう解決済なのに、まだ何も分からないのか!という方がいらっしゃれば、そんな私に一つ助言でも頂けないでしょうか。

ここまで【設定編】・【問題編】と記事を読んでくださり、ありがとうございました。

投稿日:202362

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投稿者

aikiu
aikiu
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座右の銘:『我々は知らねばならない。我々は知るだろう』 どこにでもいて、どこにもいない、ちょっといる人間!

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