7
大学数学基礎解説
文献あり

ガウス整数環の剰余環を考える

949
0

記事を開いていただきありがとうございます。
今回は以下の問題を証明していきます。

青雪江例題1.4.11

Z[1]/(4+1)F17
であることを証明せよ。

ガウス整数環の剰余環が体になる, という問題ですが, 初めてみたときはよくわかりませんでした。直感的な理解は,ごててんさんの記事( https://mathlog.info/articles/2088 ) が最強にわかりやすいので, こちらを参考にしてみてください。

(1)整数全体の集合Zは, 通常の加法と乗法に関して可換環になる。
(2) Z[1]={a+b1a, bZ}は複素数の加法と乗法に関して可換環になる。これを, 「ガウス整数環」という。
(3) Z[x]を, 整数係数の多項式全体と定めると, 多項式の加法と乗法に関して可換環になる。

使う定理や命題など

この節では, この記事で用いる定理や命題を列挙していきます。
一般に, イデアルの像はイデアルとは限りませんが, 次の命題が成り立ちます。

φ:ABが環の全射準同型ならば, イデアルIAに対して, φ(I)Bのイデアルである.

準同型定理です。証明は, お手持ちの本などでみてください。

準同型定理

φ:ABを環の準同型とするとき,
A/KerφImφ
が成り立つ。特に, φが全射なとき,
A/KerφB
が成り立つ。

次の命題がこの問題を解く際のポイントになります。

IAAのイデアル, φ:ABを環の全射準同型とする。このとき, Ker(φ)Iならば,
A/IB/φ(I)
が成り立つ。

Φ:AB/φ(I)を, Φ(a)=φ(a)+φ(I)で定めると, φが全射準同型であることから, Φも全射準同型になる。
aKer(Φ)とする。Φ(a)=φ(a)+φ(I)=φ(I)より,φ(a)φ(I)である。よって, xI, axKer(φ), すなわち, ax+Ker(φ)I
aIとする。Φ(a)=φ(a)+φ(I)=φ(I)であるから, aKer(Φ)
以上より,Ker(Φ)=Iである。準同型定理から,
A/IB/φ(I)

最初の問題の証明

それでは, 以上の命題を使って初めの同型を示してみましょう。

第一段階

φ:Z[x]Z[1], φ(f)=f(1)と定めると, φは全射準同型になります。また, Ker(φ)=(x2+1)です。
ここで, Z[1]のイデアル(4+1)を考えてみましょう。φ(I)=(4+1)となるZ[x]のイデアルIを見つければ, 上の命題3が適用できそうです。
I=(4+x)としたくなりますが, 命題3の仮定を見直すと, Ker(φ)Iならば, とあります。これをふまえると, I=(x+4, x2+1)とおくのが良さそうですね。

これらのイデアルとφに命題3を適用すれば,
Z[1]/(4+1)Z[x]/I
が得られます。

第二段階

次に, F17=Z/(17)であることから, 準同型ψ:Z[x]Zを考えます。ψ(f)=f(4)とすれば, ψは全射準同型, (x+4)=Ker(ψ)Iとなるので, 上の命題が適用できそうです。
実際, ψ(I)=(0, 17)=(17)となるので, 命題3より,
Z[x]/IZ/(17)=F17
となりますね。

第三段階

以上, 第一段階と第二段階を合わせると,
Z[1]/(4+1)F17
が言えました!

他のイデアルも見てみる

次は, Z[1]のイデアル(3+41)を見てみましょう。

第一段階

先ほどと同じように, φ:Z[x]Z[1], φ(f)=f(1)と定めると, φは全射準同型になります。また, Ker(φ)=(x2+1)です。
今度はIをどのように定めれば良いでしょうか。Ker(φ)を含み, φ(I)=(3+41)となるようにするには, I=(3+4x, x2+1)とすれば良さそうですね。命題3より,
Z[1]/(3+41)Z[x]/I
が得られます!

第二段階

次に, 準同型ψ:Z[x]Zを考えます。しかし, IKer(ψ)を含むような全射準同型はなかなか見つかりません。そこで, Iが次のようなイデアルを含むことに注目します。
(7+x)(3+4x, 7+x)(3+4x, 43x)(3+4x, x2+1)=I
すると, ψ(f)=f(7)と定めたくなりますよね!?その通りです。Ker(ψ)=(7+x)Iですから, このイデアルとψに命題3を適用しましょう。ψ(I)=(25, 50)=(25)ですから,
Z[x]/IZ/(25)
が得られます!

第三段階

以上, 第一段階と第二段階を合わせると,
Z[1]/(3+41)Z/(25)
が言えました!

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。この方法を使えば, Z[1]の素元が簡単に判別できますね。ノルムを考えるという方法もありますので, 気になる人は調べてみてください。
誤っている部分があれば, コメントで教えてくださると嬉しいです!

参考文献

[1]
雪江明彦, 代数学2 環と体とガロア理論
投稿日:2023720
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

ispc
ispc
24
3668
数学を頑張ります

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 使う定理や命題など
  2. 最初の問題の証明
  3. 他のイデアルも見てみる
  4. おわりに
  5. 参考文献