東大数理の院試(
前の記事
と同じ年の専門問2)の解答です.
自分が作った解答は
ここ
に置いてあります.
(i) ちょうど$4$個の共役類を持つ有限群の同型類は有限個しかないことを示せ.
(ii) そのような有限群のうち,位数が$3$の倍数でないものの同型類を全て求めよ.
(i)
群$G$の位数を$N$とし,共役類を$O_i \, (i = 1, \dots, 4)$とおく.$O_i$の代表元を$x_i$(ただし$x_4 = 1$)とし,$|O_1| \geq |O_2| \geq |O_3|$としておく.$Z_G(x_i) = \{ g \in G \, ; \, x_i g = gx_i\}$を$x_i$の中心化群とし,$|Z_G(x_i)| = n_i$とおく.$|O_i| = [G : Z_G(x_i)] = N / n_i, n_4 = N$だから,類等式より
$$
\frac{1}{n_1} + \frac{1}{n_2} + \frac{1}{n_3} + \frac{1}{N} = 1
$$
である.$n_1 \leq n_2 \leq n_3 \leq N$より$1 \leq \frac{4}{n_1}$なので$n_1 = 2, 3, 4$である.$n_1$を固定すると$1 \leq \frac{1}{n_1} + \frac{3}{n_2}$より$n_2 \leq 3(1 - \frac{1}{n_1})^{-1}.$同様にして$n_3 \leq 2(1 - \frac{1}{n_1} - \frac{1}{n_2})^{-1}$だから$N$の取りうる範囲は有限.ここで$N$を固定した時,任意に$g \in G$を取ると全単射$G \to G, x \mapsto gx$は$N!$通りあり得るから,$G$に入る積は高々$N \cdot N!$通り.よって$G$も有限個である.
(ii)
$\bullet$ $n_1 = 4$の時:
$\frac{3}{4} = \frac{1}{n_2} + \frac{1}{n_3} + \frac{1}{N}
\leq \frac{1}{4} + \frac{1}{4} + \frac{1}{4} = \frac{3}{4}$だから$n_2 = n_3 = N = 4.$よって$G$は位数が素数の平方だからAbel群.従って$G \cong \ZZ / 4\ZZ, (\ZZ / 2\ZZ)^2.$
$\bullet$ $n_1 = 3$ の時:
$n_2 \leq \frac{9}{2}$だから$n_2 = 3, 4$である.$n_2 = 4$なら$n_3 \leq \frac{24}{5}$より$n_3 = 4.$この時$N = 6$だから不適.
$n_2 = 3$なら$\frac{1}{n_3} + \frac{1}{N} = \frac{1}{3}$より$(n_3 - 3)(N - 3) = 9$だから$(n_3 - 3, N - 3) = (1, 9), (3, 3).$いずれも$3 \mid N$なので不適.
$\bullet$ $n_1 = 2$ の時:
$n_2 \leq 6$ である.
(a) $n_2 = 6$の時:
$\frac{1}{3} = \frac{1}{n_3} + \frac{1}{N} \leq \frac{1}{6} + \frac{1}{6} = \frac{1}{3}$より$n_3 = N = 6$となり不適.
(b) $n_2 = 5$の時:
$n_3 \leq \frac{20}{3}$より$n_3 = 5, 6$である.$\frac{1}{2} + \frac{1}{5} + \frac{1}{6} = \frac{13}{15}$だから$n_3 = 6$は不適で$n_3 = 5.$この時$N = 10$でSylowの定理より$G$は位数$5$の正規部分群$H = \braket{x}$を唯一つ持つ.$y \in G \setminus H$は位数$2$だから,$K = \braket{y}$とおくと$H \cap K = \{ 1\}, G = HK$である.よって$\sigma : K \to \Aut(H)$があって$G = H \rtimes_\sigma K$となる.$\Aut(H) \cong (\ZZ / 5\ZZ)^\times \cong \ZZ / 4\ZZ$だから$\sigma$は$y \mapsto (x \mapsto x), y \mapsto (x \mapsto x^2)$の$2$通りあるが,前者は$G \cong H \times K \cong \ZZ / 10\ZZ$で共役類が$10$個なので不適.後者は$G = \braket{x, y \, | \, x^5 = y^2 = 1, yxy = x^2} \cong D_5$となる.
(c) $n_2 = 4$の時:
$\frac{1}{n_3} + \frac{1}{N} = \frac{1}{4}$より$(n_3 - 4)(N - 4) = 16$だから$(n_3, N) = (5, 20), (6, 12), (8, 8)$である.$(6, 12)$は$3 \mid N$なので不適.$(8, 8)$の時は$G$の既約複素指標$\chi_i \, (i = 1, \dots, 4)$の次数を$d_i$とすると$\sum_{i = 1}^4 d_i^2 = |G| = 8$となるが,そのような$d_i$は存在しないから不適.$(5, 20)$の時は$|Z_G(x_3)| = 5$だが,Sylowの定理より$G$のSylow-$5$部分群は唯一つだから$G \rhd Z_G(x_3).$よって$|G / Z_G(x_3)| = 4$だから$G / Z_G(x_3)$はAbel群であり,共役類の個数は$4$個.これは$G$の共役類の個数に等しいから矛盾.
(d) $n_2 = 3$の時:
$\frac{1}{n_3} + \frac{1}{N} = \frac{1}{6}$より$(n_3 - 6)(N - 6) = 36.$$3 \nmid N$より$n_3 - 6 = 9, 18, 36$となるが,いずれも$n_3 > N$なので不適.
以上から答えは$\ZZ / 4\ZZ, (\ZZ / 2\ZZ)^2, D_5$の$3$個.
大昔に似た問題が出題されている.場合分けはこれよりずっと少なく簡単.
共役類の個数が$3$であるような有限群を全て求めよ.
答えは$\ZZ / 3\ZZ, S_3$の$2$個.