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テトリス代数の覚書2 ~フラクタル~

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こんにちはAAGです。
今回はテトリス代数の順序的な性質を取り出した「フラクタル順序」についてのまとめ書きです。主従関係は 前回 と同様です。

動機

前回定義したようにテトリス代数の整除関係は半順序となるが、
特に左a倍作用は順序を保つ単射となる。
言い方を変えれば、テトリス代数Tについて、
「任意の元aTについてaの上界全体UT(a)Tと順序同型」
である。
これは順序のみによる命題であり、しかもテトリス代数の性質で、特に順序に関する性質はこれから導けるものが多く見つかった。
すると、逆にこれを満たす順序集合はテトリス代数として表現できるかという疑問が自然と生まれる。
現在これは未解決であるがこれを考えるために生み出された概念や例についてまとめた。

順序集合

※ここでは順序集合といったら半順序集合のこととする。

順序集合の内部

特殊な部分集合

Xを順序集合とする。
a,bXに対して、
[a,b]X:={xXaxb}
(a,b)X:={xXa<x<b}
[a,b)X:={xXax<b}
(a,b]X:={xXa<x<b}
(,a)X:={xXx<a}
(,a]X:={xXxa}
(a,)X:={xXa<x}
[a,)X:={xXax}
UX(a):={xXax}
(明らかな場合は添え字のXは省略する。)

元の関係

順序集合(X,)について、
ab:⇔abba
ab:⇔a⋚̸b
a < b:⇔a<bxX (axbx=ax=b)
 このとき、「baの後者」、「abの前者」であるという
{(a,b)a < b}を含む最小の同値関係とする。
ab:⇔ab(ab)

証明は省略するが、は推移的・狭義反対称的であり、
abcd(adad)

特殊な元と構造

順序集合Xが最小元およびその後者をもつとき、
最小元の後者を(すべて)原子元という。
前者が存在しない元を極限元という。

すべての元が後者をもたない順序集合を稠密な順序集合という。
また、任意のa,bXについて、
abcX,a < cb
が成り立つとき、X後者的であるという。
また、任意のa,bXについて、
abcX,ac < b
が成り立つとき、X前者的であるという。

また、任意のa,bXについて、
aba=bとなるときX離散であるという。

ちなみに、稠密かつ後者的な順序集合は離散である。

順序集合同士の演算

順序集合XおよびXで添え字付けられた順序集合の族{Yx}xXについて、
辞書式順序集合xXYx
集合としてはxX{x}×Yxであって
(x,y)(x,y):⇔x<x(x=xyy)で定まる順序を入れるものとする。

特にXが二元集合であるとき、
x{0,1}Yx=Y0+Y1のように表す。
また、すべてのYxが(順序集合として)互いに等しいとき、
xXY=X×Yのように表す。

+,×は(同型の違いを除いて)結合的であるから、それぞれのみの結合に関する括弧は省略する。
 また、+より×を優先する。

特殊な演算

順序集合X,Yおよびテトリス代数Tについて、
[X,Y]T:={0}×X+(T{0})×Y, (X)Z:=Z×X
とする。
ただし、Zは通常の順序が入っているものとし、
T=Nのとき添え字は省略する。

全比較順序

順序集合の族{Xi}iIについて
その直積iIXi
集合としては直積であって、
(xi)iI(yi)iI:⇔iI,xiyi
とする。
特にIが二元集合のとき、
i{0,1}Xi=X×fYのように表す。
また、すべてのXiが(順序集合として)互いに等しいとき
iIX=XIのように表す。

直積に入る順序を全比較順序、直積順序という。

フラクタル順序集合とテトリス

テトリス代数の例について

前回の記事でテトリス代数の例が不足していたのでいくつかの例を挙げる

  1. 順序数αに対しωα(ωは最小の無限順序数)および通常の和
  2. 長い直線ω×[0,1)R
    (α,x)+(β,y)={(α+β,x+y) if x+y<1(α+β+1,x+y1) if x+y1
    による和(この順序は通常の順序となる)
  3. 左順序群Gの単位元以上の部分
  4. 自由モノイド
  5. テトリス代数どうしの自由積
  6. テトリス代数の部分モノイド

定義

順序集合(W,)が前フラクタル(順序集合)であるとは、
Wは非空であり、任意のa,bWについてU(a)U(b)が順序同型であることをいう。
順序集合(W,)がフラクタル(順序集合)であるとは、
Wは非空であり、任意のaWについてWU(a)が順序同型であることをいう。

前フラクタルWにおいてU(a)の順序構造はaの取り方によらないので、その代表元をc(W)のように表す。

名前はその自己同型性からである。
ちなみに、前フラクタルWに対しc(W)はフラクタルであり、
特に、Wがフラクタル c(W)Wである。
またフラクタルは必ず最小値をもつ。

フラクタルと前フラクタルは、
それぞれ、
有界フラクタル/フラクタル、局所フラクタル/大域フラクタル
などと呼び分けることもある。
この記事では定義7の記法で統一する

前フラクタル
  1. 左順序群
  2. 前フラクタルと離散順序の直積
  3. 前フラクタルの上方集合

(フラクタルの例は後述する)

前フラクタルは離散順序であるか無限個の元を持つ

a<bなる元a,bがあったとする。
順序同型ϕ:U(a)U(b)を一つ固定すると
a<ϕ(a)<ϕ2(a)<は無限上昇列であるから、元は無限に存在する

テトリス代数Tの(整除)順序はフラクタルである

aTに対してTU(a)を示す
U(a)=aT:={axxT}であるが
bcx,c=bx (定義より)
x,ac=abx (左簡約性より)
abac(定義より)
であるから、xaxが順序同型を与える

逆に、フラクタル順序集合Wに対して、Wと順序同型になるようなテトリス代数を与えることをテトリス積付け、あるいは単に積付けという。
ここで次の予想が考えられる。

任意のフラクタル代数に対してその積付けが存在するか?
(任意のフラクタル順序集合Wに対して、Wと順序同型になるようなテトリス代数が存在するか)

この予想は現時点で未解決であり、この予想を解決することが今のテトリス代数の目標となっている。

積付け可能な例
  1. 順序数αに対しωαの整除順序は通常の順序と一致する。
    また、整列なフラクタルの同型類はこれに限る。
  2. 最小値を持ち最大値をもたない稠密可算全順序集合

(2)の積付けは演習問題とする(カントールの同型定理を用いる)

積付けが見つかっていない例
  1. Qの有界閉集合全体

  2. A=Q0, B=Q(2)>0Qについて、
    A×NB×ZQ(2)×fZから誘導された順序)

様々な予想

任意のフラクタルがテトリス積付け可能を示すのは現時点で難しいため、弱めた予想がいくつかある。それを紹介する。

  1. 可算全順序後者的フラクタルは積付け可能か。
  2. Tをテトリス代数、Wを前フラクタルとするとき
    [c(W),W]Tは積付け可能か。
  3. 特にc(W)が積付け可能なとき[c(W),W]Tは積付け可能か。

ちなみに、全順序フラクタルについて、
「原子元をもつある元の後者が存在する後者的」
である。特に右の同値は一般の全順序前フラクタルについて成り立つ。

前フラクタルの階層

この節では順序集合で定義される「階層」および、それに付随する予想を挙げる。

順序集合Wに対し、べき集合P(W)上の順序
A<B:⇔aA,bB,a<b
により定める。(添え字は省略する)
以降{Pn(W)}nは互いに空とみなし、各Pn(W)の要素は上により帰納的に定まる順序を考えるものとする。

順序数αに対しWαを超限帰納法によって以下で定める。
Wα={F(x,α)xW}
ただし、F(x,0)={x}であって、α>0に対し
F(x,α):={yWβ<α,CWβ/,{x,y}C}
とする。

このとき、各αに対してWαWからのαと呼び、
F(x,α)α同値類と呼ぶことにする。

以下xについての同値類をxで表す。

α同値類の単調性

任意の順序数α,βおよびxWについて、
αβF(x,α)F(x,β)

α=0について、主張はxF(x,β)と同値
β=0のときは明らか。β>0について、
0<β,xF(x,0)であるから、
F(x,0)W0/,{x,x}F(x,0)からxF(x,β)

α>0について、
β0<α,CWβ0/,{x,y}Cとすると
β0<αβから、
β0<βCWβ0/,{x,y}C
よってF(x,α)F(x,β)

異なるα同値類が互いに素であること

順序数αおよびx,yWについて、
F(x,α)F(y,α)F(x,α)=F(y,α)

α=0のときは明らか。
α>0について示す。
超限帰納法より、β<αについての成立を仮定しても一般性を失わない。
共通部分の元zを一つとる。このとき、
β<α(CWβ/){x,z}C
β<α(CWβ/){y,z}C
となるβ,β,C,Cが存在する。
対称性からββとしても一般性を失わない。
仮定からC=F(z,β),C=F(z,β)であり、
β=βのときは明らかにxC=C
β<βのとき、
β<β(CWβ/){x,z}Cであるから、
xF(z,β)C
よって、β<α(CWβ/){x,y}C
すなわち{x,y}F(x,α)F(y,α)

以上より、任意のw0Wについて、
F(w0,α)={wWF(w,α)F(w0,α)}であり、
wF(x,α)
F(w,α)F(x,α)
xF(w,α)
F(w,α)F(y,α) (xF(y,α))
wF(y,a)

よって、F(x,α)F(y,α)
逆も同様よりF(x,α)=F(y,α) 

F(x,α+1)=F(x,α)が成り立ち、
順序同型(Wα/)Wα+1が対応CCによって与えられる。

yF(x,α+1)について、
定義から、あるβ<α+1が存在してCWβ/,{x,y}C
β=αのときは明らか。
β<αとするとyF(x,α)
よってF(x,α)の同値類F(x,α)Cとおくと、
CWα/{x,y}C
したがって、
F(x,α+1)={yWCWα/,{x,y}C}
補題5からxWに対してxCとなるCF(x,α)のみであるから、F(x,α+1)=F(x,α)

Wα/の元はF(x,α)と表せるものであるので、写像CCWα+1への全射。
また、C,CWα/,CCに対して
任意のF(x,α)C,F(y,α)Cは互いに素だから
よってCCつまり写像CCは単射。

C,CWα/に対してC<Cしたとき、
任意のxC,yCについて、
C=F(x,α),C=F(y,α)となり、
F(x,α)<F(y,α)から、
F(x,α)F(y,α)、特にx<yとなる。
よって、C<Cが言えるためこれは順序を保つ。
逆に、C<Cのとき、任意のxC,yCについて、
C=F(x,α),C=F(y,α)であってx<y
特に、F(x,α)C,F(y,α)CからF(x,α)<F(y,α)
また、F(x,α)F(y,β)とするとC=Cとなり、
C<Cに矛盾
よって、F(x,α)F(y,α)すなわちC<C

以上より、写像CCは順序同型を与える。

特に、
F(x,α)=β<αF(x,β+1)

前フラクタル順序集合Wおよび順序数αについて、Wαは前フラクタルである。

(この証明ではUW(X)U(W,X)と表すことにする。)
x,yWに対して順序同型ϕ:U(W,x)U(W,y)を1つとる。
このとき、
F(x,α)<F(z,α)となるzに関して、
ϕ|F(z,α)F(ϕ(z),α)への全単射となる」ということを示す。
特にϕの全単射性から、ϕ(F(z,α))F(ϕ(z),α)を示せば十分。

α=0の時は明らか。
任意のβ<αについて成立すると仮定したとき、

次に、zF(z,α)について定義から、
あるβ<αがあってzF(z,β)
つまり、zF(z,β)F(z,β)となるzが存在する。

F(z,β)F(z,α)

F(x,β)F(x,α)
から、

F(z,β)>F(x,β)
仮定からϕ(F(z,β))F(ϕ(z),β)
いま、{CWβF(x,β)<C}から自身への写像ϕ:Xϕ(X)(={ϕ(w)wX})は順序を保つ全単射であるから、後者関係を保つ。
特にF(z,β)F(z,β)から、F(ϕ(z),β)F(ϕ(z),β)
よって、ϕ(z)F(ϕ(z),β)F(ϕ(z),α)
以上より、ϕ(F(z,α))F(ϕ(z),α)

よって、写像ψ:U(Wα,F(x,α))U(Wα,F(y,α))
ψ(X)={F(y,α) if X=F(x,α)ϕ(X) if XF(x,α)
とすると、これは順序同型となる。
よって、Wαは前フラクタル

省略するがフラクタルについても同様に成り立つ

順序集合Wに対して、ある順序数αが存在してWαは稠密。

まず、「各xWについて、順序数αが存在して任意のβ>αについてF(x,α)=F(x,β)」であることを示す。
あるxWがこれを満たさないとすると、
任意の順序数αに対して、それより大きなβがあってF(x,α)F(x,β)
ここで、順序数λに対して帰納的にαλを以下で定める
αλ=min{μsup{aν}ν<λ<μF(x,sup{aν}ν<λ)F(x,μ)}

このときP(W){}の選択関数をfとおき、xλ=f(F(x,λ+1)F(x,λ))とおくとこれは単射であり、集合Wに順序数全体からの単射が存在することになり矛盾する。

よってxWに対しα(x)=min{αβ>α,F(x,α)=F(x,β)}とし、
α0=sup{α(x)xW}とすると、
F(x,α)=F(x,α)すなわち、F(x,α)={F(x,α)}
となる、つまり任意の元の後者が存在しない。
よってこれは求めていたαである。

階層

定理6,7により、任意の前フラクタルはα商が稠密になるようなものとして考えることができ、その途中で出てくる順序集合は前フラクタルである。
このため次の定義をする。

階層

順序集合WについてαWαが稠密になるような最小のαWの階数という。
また、稠密順序集合Xについて、階数がαであり、WαXとなるようなW全体をX上のα階層といい、|X|=1のとき単にα階層という。
特に、あるnNについてn階層に属するような順序集合全体を有限階層と呼ぶ。

(前)フラクタルに制限する場合は「階層」の前に書く。
e.g. αフラクタル階層
~階層(前)フラクタル」の語は「~階層」に属する(前)フラクタルを表す。

以下の予想がある。

  1. 有限階層前フラクタルは1(自明な順序集合)および[,],()Z(定義5を参照)で表せる。
  2. 有限階層フラクタルはテトリス積付け可能である。
  3. 順序集合の階数は有限か極限順序数である。

以下に階数の例を挙げる。

  • N,Z,N2の階数は1
  • ωnの階数はn(nは有限)
  • ωω,ωω+1の階数はω
  • Q,Q0の階数は0
  • (Z),[Z,N],[N,Z]の階層は2

テトリスと作用

この章では、テトリスからの「作用」による順序が前フラクタルとなり、それを用いてテトリス代数が構成できることを述べる。

テトリス代数Tおよび集合Xについて、写像f:X×TXが(TからXへの)(フラクタルな)作用であるとは、
f(f(x,t),u)=f(x,tu)
f(x,t)=f(x,u)t=u
を満たすことをいう。
このとき、f(x,t)xtあるいは単にxtと表す。

また、作用fが誘導する(X上の)順序を、
xy:⇔tT,y=xtと定義する。

テトリス代数Tの上方集合は積によりTからの作用が存在する。

任意の元が一意的な後者をもつ順序集合はn回後者を考えることによってNからの作用を定義できる。
また、この順序集合をで割ると単元集合になる場合、作用による順序と一致する。

ω2から[Z,N]への作用として、
n<ωについて(m0,m1)n=(m0,m1+n)
n0,n1<ω (n0>0)について(m0,m1)(n0ω+n1)=(m0+n0,n1)
と定義できる。

テトリス代数T,集合Xおよび作用:X×TXについて、
作用の誘導する順序はフラクタルである。

x,yXについて写像ϕ:U(x)U(y)ϕ(xt)=ytとするとこれは順序同型

以下順序は作用による順序とする。

TからX,Yへの作用および、X,Yの上方集合U,Vであって、
順序同型f:UVf(xt)=f(x)tとなるようなものをとる。
(X,Yは互いに空とする。)
このとき、X⨿Y/fXY
{(x,f(x))xU}を含む最小の同値類で割ったものとすると、
これはTからの作用をもち、X,Yから埋め込める。

zの同値類を[z]のように表すことにすると、
[z]t=[zt]と定義できる。
(zXUYVとすると[z]={z}から良い。
zUとすると[z]={z,ϕ(z)}だから、
[zt]={zt,ϕ(zt)},[ϕ(z)t]={ϕ(z)t,ϕ1(ϕ(z)t)}でありこれらは等しい)
そして、X,YX⨿Y/f;z[z]は順序単射。

T,Tをテトリス代数、Xに作用TXが誘導する順序が入るとき、
[T,X]Tはテトリス代数積付け可能。

(s,x),(t,y)[T,X]Tに対して
(s,x)(t,y)={(st,y) if t>0(st,xy) if t=0
と定義すると、これはテトリス代数を定める。

[結合性]
((s,x)(t,y))(u,z)
=({(st,y) if t>0(st,xy) if t=0)(u,z)
={(stu,z) if t>0,u>0(stu,yz) if t>u=0(stu,z) if u>t=0(stu,xyz) if u=t=0
(s,x)((t,y)(u,z))
=(s,x){(tu,z) if u>0(tu,yz) if u=0
={(stu,z) if u>0(stu,yz) if t>u=0(stu,xyz) if u=t=0
これらは等しい。
[単位性]
(0,0)=(0T,0T){0T}×Tについて
(s,x)(0,0)=(s0,x0)=(s,x)
(0,0)(t,y)=(t,y)
[左簡約性]
(s,x)(t,y)=(s,x)(u,z)
とする。st=suからt=u
t=u=0のとき、y=z
t=u>0のとき、xy=xzつまり、y=z
よって(t,y)=(u,z)
[0の既約性]
(s,x)(t,y)=(0,0)とすると、
st=0からs=t=0
よって、x,yTでありxy=0つまりx=y=0

特に[T,T]T=T×Tはテトリス積付け可能。

フラクタル代数

最後にテトリス代数を拡張した概念である、フラクタル代数について述べる。

左簡約モノイド(M,,0)およびその部分集合TMについて
ab:⇔tT,b=at
となる順序が存在することは、
TMの部分モノイドであってテトリス代数であることと必要十分。

[必要性]

  • a=a0からaa
  • abbaとするとb=ata=btと表せ、
    a=attからtt=0つまりt=t=0a=b
  • abbcとするとb=atc=btと表せ、
    c=attからca

[十分性]

  • 00であるから、tTがあって0=0t
    よって0T
  • t,tTについてtt=0とすると
    t=0t,0=ttからt=0よってt=0
  • t,tTについて
    t=0t,tt=ttから、あるuTがあってtt=0u
    よってttT

ここで次のように定義する。

左簡約モノイド(M,,0)およびその部分テトリス代数Tに対して
(M,,0,T)フラクタル代数と呼び、Tをその正錐という。
フラクタル代数(M,,0,T)の順序を、
ab:⇔tT,b=at
により定める。

フラクタル代数間の準同型f:(M,,0,T)(N,,0,T)
モノイド準同型(M,,0)(N,,0)であってf(T)Tであるものとする。

フラクタル代数のある元の上界全体はその正錐と同型だからもちろん積付け可能。

フラクタル代数Mが極限元をもつことは0が極限元であることと同値。

0に前者aが存在するとすると、任意のmMについてma < m

フラクタル代数Mの順序は前フラクタルである。

a,bTに対してU(a)U(b)を示す
U(a)=aT:={axxT},U(b)=bTであるが
acadxT,ad=acx (定義より)
xT,d=cx (左簡約性より)
xT,bd=bcx (左簡約性より)
bcbd(定義より)
であるから、axbxが順序同型を与える

前フラクタルはフラクタル代数に限らない

フラクタル代数は、[Z,N]と順序同型にならない。

背理法で示す

単位元をeとする。
前者を持たない元(例えば(1,0))が存在するので、eに前者は存在しない。
しかし、{(0,0)(0,n)}nZはつねに
(0,0)(0,n) < (0,0)(0,n+1)となるから、この像は{0}×Zと等しい
よって(0,0)(0,n)=(0,0)なる(0,n)が存在し左簡約性からこれはeと等しい。
ところがどっこい(0,n)は前者(0,n1)をもち矛盾する。

テトリス代数と同様に、順序集合Xに対し「その順序がXと同型となるようなフラクタル代数M」を与えることをフラクタル積付けという。
ちなみにZのフラクタル積付けは一意。

フラクタル代数とテトリス代数

テトリスとフラクタル

Tをテトリス代数,(M,T)をフラクタル代数とすると、
辞書式順序集合T×Mはフラクタル積付け可能。

演算を(t,m)(t,m)={(tt,m) if t0(tt,mm) if t=0
正錐をTMT:=[T,M]Tとすると、
これは辞書式順序T×Mを誘導する。

フラクタルと可逆

(M,T),(M,T)をフラクタル代数とし、Mは可逆であるとする
辞書式順序集合M×Mはフラクタル積付け可能。

演算を(m,n)(m,n)=(mm,nn)
正錐を(集合として)TMT:=[T,M]Tとすると、
これは辞書式順序T×Mを誘導する。

おわりに

一般のフラクタルに積付けが可能かどうかは、
残念ながら今回は判明しませんでした。いかがでしたか?
感想、指摘、質問などのコメント、ぜひお願いします!

投稿日:428
更新日:428
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投稿者

AAG
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抽象代数学とか好きなB1。気分屋です。 (元の名前:AGA) 厳密にテキトーにやってます。 基本検算しません。 間違いがあったら容赦なく指摘してください。

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  1. 動機
  2. 順序集合
  3. 順序集合の内部
  4. 順序集合同士の演算
  5. フラクタル順序集合とテトリス
  6. テトリス代数の例について
  7. 定義
  8. 様々な予想
  9. 前フラクタルの階層
  10. 階層
  11. テトリスと作用
  12. フラクタル代数
  13. フラクタル代数とテトリス代数
  14. おわりに