Ricci曲率と1st Betti数の関係を論じるBochnerの定理を証明します。証明には Hodgeの定理 と Bochner-Weitzenböck公式 を使います。
k-th Betti数を$b_k(M)={\rm dim}_\mathbb{R}H^k_{dR}(M)$と定義されます。Hodgeの定理よりこれは調和$k$形式の作るベクトル空間の次元となります。またBochner-Weitzenböck公式より1形式$\alpha$に対して、
$$
\Delta^{dR}\alpha=\Delta^{Bel}\alpha+Ric(\alpha),\ \ \Delta^{dR}=dd^\dagger+d^\dagger d,\ \Delta^{Bel}=\nabla^\dagger\nabla
$$
が成り立ちます。
$(M,g)$を連結コンパクトリーマン多様体とする。
(i) $Ric>0$のとき、$b_1(M)=0$
(ii) $Ric\geq0$のとき、$b_1(M)\le {\rm dim}M=n$
$\alpha$を調和形式とすると、
\begin{align}
0=(\Delta^{dR}\alpha,\alpha)=(\Delta^{Bel}\alpha,\alpha)+(Ric(\alpha),\alpha)=||\nabla\alpha||^2_{L^2}+(Ric(\alpha),\alpha)
\end{align}
である。
(i) $c>0$があり、$(Ric(\alpha),\alpha)\geq c||\alpha||^2_{L^2}$なので
$$
0\geq ||\nabla\alpha||^2_{L^2}+c||\alpha||^2_{L^2}\geq c||\alpha||^2_{L^2}
$$
となり、$\alpha=0$である。
(ii)
$$
0=||\nabla\alpha||^2_{L^2}+(Ric(\alpha),\alpha)\geq ||\nabla\alpha||^2_{L^2}
$$
であるから、$\nabla\alpha=0$である。$\alpha_1,\cdots,\alpha_{n+1}$を調和形式とすると、ある$p\in M$において、$\sum_{i=1}^{n+1}c_i\alpha_i(p)=0$となる。$\sum_{i=1}^{n+1}c_i\alpha_i$は至る所平行であるから、任意の点$q\in M$への曲線に沿う平行移動を考えれば、$\sum_{i=1}^{n+1}c_i\alpha_i(q)=0$である。
(i)は仮定を$Ric\geq0$かつある点で$Ric>0$にしても成り立ちます。また(ii)の等号が成り立つ例としてはFlat Torusがあります。