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現代数学
文献あり

層に対する演算1(内部演算)

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内部Homと内部テンソル積

この節からは層に対する様々な演算について説明したいと思います.これらの演算はGrothendieckの六演算と呼ばれるものの一部で,これらを組み合わせることで層をいろいろな形に変形して様々な結果を引き出すことができます.

まず内部演算と呼ばれる位相空間X上の層たちからX上の層を作る操作を説明します.以下ではXを位相空間とします.

内部Hom

まずは内部Homと呼ばれるHomに関する層を考えます.

Homの対応は層

F,GSh(X)とする.開集合Uに対してHomSh(U)(F|U,G|U)を対応させる対応は層である.

開集合の組UVφHomSh(V)(F|V,G|V)に対して,U内の開集合だけに対して射を考えることによりφ|UHomSh(U)(F|U,G|U)が定まるので,これを制限写像とする.これらが前層の条件を満たすことはよい.

貼り合わせ条件を調べる.開集合Uとその開被覆{Ui}iIおよびφiHomSh(Ui)(F|Ui,G|Ui)なる族でφi|UiUj=φj|UiUjを満たす族を任意に取る.φHomSh(U)(F|U,G|U)であってφ|Ui=φiとなるものを定めたいが,これにはUの任意の開部分集合Vに対してφV:F(V)G(V)を定めなければならない.sF(V)に対して{VUi}iIVの開被覆であり,ti:=φi,VUi(s|VUi)G(VUi)たちはti|VUiUj=tj|VUiUjを満たす.Gは層だからtG(V)が一意的に存在してtVUi=tiを満たす.φV(s):=tとしてφV:F(V)G(V)を定めるとφ={φV}VU:F|UG|Uは制限写像たちと可換になるので層の射φHomSh(U)(F|U,G|U)である.作り方から任意のiIに対してφ|Ui=φiを満たしている.作り方をたどればこのように作る必要があることも分かるが,一意性を直接見よう.ψHomSh(U)(F|U,G|U)もこの条件を満たすならば,任意のiに対してφ|Ui=ψ|Uiであるから,任意のUの開部分集合VsF(V)に対して
φV(s)|VUi=φVUi(s)=ψVUi(s)=ψV(s)|VUi
である.Gが層であることからφV(s)=ψV(s)であり,sVは任意だったので結局φ=ψである.

層の内部Hom

F,GSh(X)に対してUHomSh(U)(F|U,G|U)の対応で定まる層をHom(F,G)Sh(X)と書く.Hom:Sh(X)op×Sh(X)Sh(X)内部Hom函手とも呼ぶ.

Homのことをsheaf Homと呼んだりもしますが,日本語で適切な訳語があるかは筆者は知りません.X上のsheaf Homであることを強調したいときにはHomXと書くことにします.証明をよく見るとGが層であることしか使っていないのでFは前層でも層Hom(F,G)が定まることが分かりますが,それは使いません.定義から
Γ(X;Hom(F,G))=HomSh(X)(F,G)
となります.これはうれしいことで,層の射の集合を調べるにはまずHomという層を調べればよいからです.層にしてしまうと様々な強力な道具を使って調べることができます.

FSh(X)に対して,Hom(ZX,F)Fである.連結な開部分集合UφU:ZX(U)=ZF(U)に対してφU(1)F(U)を対応させる射が同形を引き起こす.

内部テンソル積

次にテンソル積について考えます.F,GSh(X)として,開集合Uに対してF(U)ZG(U)を対応させることを考えてみましょう.すると,FGの制限写像により開集合の組UVに対してF(V)ZG(V)F(U)ZG(U)が定まり,これで前層になることが分かります.残念ながらこの対応は一般には層ではありません.

層の開集合ごとのテンソルの対応が層にならない例

X={0,1}に離散位相を入れて,F=G=ZXを定数層とする.U=X,U0={0},U1={1}とすると
F(U)ZG(U)=Z4,F(U0)ZG(U0)=Z=F(U1)ZG(U1)
となるので貼り合わせ条件が成り立たない.

そこでこの対応の層化としてテンソル積を定めます.

層のテンソル積

F,GSh(X)に対してUF(U)ZG(U)の対応で定まる前層の層化をFZGと書き,FGテンソル積と呼ぶ.Z:Sh(X)op×Sh(X)Sh(X)内部テンソル積函手とも呼ぶ.

加群のテンソルと同様に層のテンソル積についても結合法則や(可換環上では)交換法則が成り立ちます.
層化が茎を保つことと帰納極限がテンソル積と交換する(両方帰納極限をとっても交換する)ことから次が分かります.

層のテンソル積の茎は茎のテンソル積

F,GSh(X)xXに対して同形(FZG)xFxZGxが成り立つ.

FSh(X)に対して,ZXZFFである.

内部テンソル積と内部Homとの随伴

上で定義した層のテンソル積とsheaf Homは随伴の関係になっています.今後は記号を簡単にするために,明らかな場合はHomSh(X)を単にHomと書いたりZを単にと書いてしまいます.

層のテンソル積とsheaf Homは随伴

F,G,HSh(X)に対して自然な同形
Hom(FG,H)Hom(F,Hom(G,H))
が成り立つ.

各開集合Uに対して
HomAb(F(U)G(U),H(U))HomAb(F(U),HomAb(G(U),H(U)))
が成り立つ.よって,UF(U)G(U)の対応で定まる前層をFˇGと書くと,同形
HomPSh(X)(FˇG,H)Hom(F,Hom(G,H))
が成り立つことが分かる.ゆえに結論は層化の普遍性から従う.

随伴の性質を使うと次が得られます.

層のテンソル積の右完全性とsheaf Homの左完全性

内部テンソル積函手:Sh(X)×Sh(X)Sh(X)は右完全であり,内部Hom函手Hom:Sh(X)op×Sh(X)Sh(X)は左完全である.

まとめ

この節では

  • 層のテンソル積とsheaf Hom・それらの随伴

について説明しました.

参考文献

[1]
Masaki Kashiwara and Pierre Schapira, Sheaves on Manifolds, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften, Springer, 1990
[2]
Birger Iversen(著),前田博信(訳), 層のコホモロジー, 丸善出版, 1995
[3]
廣中平祐(講義),森重文(記録), 代数幾何学, 京都大学学術出版会, 2004
[4]
上野健爾, 代数幾何, 岩波書店, 2005
[5]
Masaki Kashiwara and Pierre Schapira, Categories and Sheaves, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften, Springer, 2006
[6]
Alexandru Dimca, Sheaves in Topology, Universitext, Springer, 2013
[7]
Sergei I. Gelfand and Yuri I. Manin, Methods of Homological Algebra, Springer Monographs in Mathematics, Springer, 1997
[8]
Joseph Bernstein and Valery Lunts, Equivariant Sheaves and Functors, Lecture Notes in Mathematics, Springer, 1994
[9]
Jean-Pierre Schneiders, Introduction to characteristic classes and index theory, Textos de Matemática, Faculdade de Ciências da Universidade de Lisboa, 2000
[10]
Alexander Grothendieck, Sur quelques points d'algèbre homologique, Tohoku Math. J., 1957, pp. 119--221
投稿日:2021522

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  1. 内部Homと内部テンソル積
  2. 内部Hom
  3. 内部テンソル積
  4. 内部テンソル積と内部Homとの随伴
  5. まとめ
  6. 参考文献
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