内部Homと内部テンソル積
この節からは層に対する様々な演算について説明したいと思います.これらの演算はGrothendieckの六演算と呼ばれるものの一部で,これらを組み合わせることで層をいろいろな形に変形して様々な結果を引き出すことができます.
まず内部演算と呼ばれる位相空間上の層たちから上の層を作る操作を説明します.以下ではを位相空間とします.
内部Hom
まずは内部Homと呼ばれるに関する層を考えます.
Homの対応は層
とする.開集合に対してを対応させる対応は層である.
開集合の組とに対して,内の開集合だけに対して射を考えることによりが定まるので,これを制限写像とする.これらが前層の条件を満たすことはよい.
貼り合わせ条件を調べる.開集合とその開被覆およびなる族でを満たす族を任意に取る.であってとなるものを定めたいが,これにはの任意の開部分集合に対してを定めなければならない.に対してはの開被覆であり,たちはを満たす.は層だからが一意的に存在してを満たす.としてを定めるとは制限写像たちと可換になるので層の射である.作り方から任意のに対してを満たしている.作り方をたどればこのように作る必要があることも分かるが,一意性を直接見よう.もこの条件を満たすならば,任意のに対してであるから,任意のの開部分集合とに対して
である.が層であることからであり,とは任意だったので結局である.
層の内部Hom
に対しての対応で定まる層をと書く.を内部Hom函手とも呼ぶ.
のことをsheaf Homと呼んだりもしますが,日本語で適切な訳語があるかは筆者は知りません.上のsheaf Homであることを強調したいときにはと書くことにします.証明をよく見るとが層であることしか使っていないのでは前層でも層が定まることが分かりますが,それは使いません.定義から
となります.これはうれしいことで,層の射の集合を調べるにはまずという層を調べればよいからです.層にしてしまうと様々な強力な道具を使って調べることができます.
に対して,である.連結な開部分集合とに対してを対応させる射が同形を引き起こす.
内部テンソル積
次にテンソル積について考えます.として,開集合に対してを対応させることを考えてみましょう.すると,との制限写像により開集合の組に対してが定まり,これで前層になることが分かります.残念ながらこの対応は一般には層ではありません.
層の開集合ごとのテンソルの対応が層にならない例
に離散位相を入れて,を定数層とする.とすると
となるので貼り合わせ条件が成り立たない.
そこでこの対応の層化としてテンソル積を定めます.
層のテンソル積
に対しての対応で定まる前層の層化をと書き,とのテンソル積と呼ぶ.を内部テンソル積函手とも呼ぶ.
加群のテンソルと同様に層のテンソル積についても結合法則や(可換環上では)交換法則が成り立ちます.
層化が茎を保つことと帰納極限がテンソル積と交換する(両方帰納極限をとっても交換する)ことから次が分かります.
内部テンソル積と内部Homとの随伴
上で定義した層のテンソル積とsheaf Homは随伴の関係になっています.今後は記号を簡単にするために,明らかな場合はを単にと書いたりを単にと書いてしまいます.
各開集合に対して
が成り立つ.よって,の対応で定まる前層をと書くと,同形
が成り立つことが分かる.ゆえに結論は層化の普遍性から従う.
随伴の性質を使うと次が得られます.
層のテンソル積の右完全性とsheaf Homの左完全性
内部テンソル積函手は右完全であり,内部Hom函手は左完全である.
まとめ
この節では
について説明しました.