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積分botの数式

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以下の等式について考える.

0πsin2nx(12rcosx+r2)n+1dx=π22n(1r2)(2nn),|r|<1

この等式は, 積分botの問題を解いてみた2 積分botの数式を漸化式で解く議論 などで示されているが, ここでは別の角度から考えてみる. まず, 以下のような多項式を定義する.

n=0Cn(x;α)tn:=1(12tx+t2)α

これはGegenbauer多項式と呼ばれている直交多項式になっており, 直交性

11Cn(x;α)Cm(x;α)(1x2)α12dx=0(nm)

を満たす. また, 等式

tddt1(12tx+t2)α=α(1t2(12tx+t2)α+11(12tx+t2)α)

の係数を比較することによって, (α1n+1)Cn(x;α)=Cn(x;α+1)Cn2(x;α+1)を得る. これを変形すると,

Cn(x;α+1)=(α1n+1)Cn(x;α)+(α1(n2)+1)Cn2(x;α)++{C0(x;α),n2Z(α1+1)C1(x;α),n2Z+1

という表示が得られる. これらを用いて最初の式を示す. |r|<1,u=cosxとして,

0πsin2nx(12rcosx+r2)n+1dx=11(1u2)n12(12ru+u2)n+1du=0krk11Ck(u;n+1)(1u2)n12du=0kr2k11C2k(u;n+1)(1u2)n12du,(Ck(u)=(1)kCk(u))=0kr2k11((n12k+1)C2k(u;n)++C0(u;n))(1u2)n12du=0kr2k11C0(u;n)(1u2)n12du=π0kr2k(2nn)22n=π22n(1r2)(2nn)

途中の変形で直交性によってC0以外の項が全て消えることによって計算が上手くいっていることが分かる. (C0=1であることに注意).

このように, 直交多項式を用いることによって, 比較的見通しの良い計算で積分の等式を示すことができることもある.

投稿日:20231026
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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