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積分botの数式を漸化式で解く議論

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はじめまして!まぐな氏という者です。(`・∀・´)
まったり数学部屋(LINE OC)にて、面白い議論が出たので紹介します。

発端

ことの発端は、積分botの数式を数楽が解いた 記事 であった。

積分botにあったらしい数式

|r|<1のとき、
0πsin2nx(12rcosx+r2)n+1dx=π22n(1r2)(2nn)

数楽はこれを超幾何級数を用いて解いている。
今回の議論は、これを漸化式で初等的に解けないか?というものである。

昼頃、 Sillpherth が面白い漸化式を弾き出した。
後に、本人が覚書を書いていたので一応 コチラ から読めます。
(しかし、到底読めたもんじゃねぇので、以下に解説する。)

Sillpherthが弾き出した漸化式

In=0πsin2nx(12rcosx+r2)n+1dx と定めるとき、
r2In+2=2n+32(n+2)(r2+1)In+12n+32(n+2)2n+12(n+1)In

まずは、これを証明して行く。
如何せんゴチャゴチャするので、何個かに分けて証明し、後に纏めるという形式にする。
証明を閉じておけばゴチャゴチャ感は減る、、はず。
は流れのまとめの際に式の引用として用いる。

1:部分積分(1回目)

0πsin2n+4x(12rcosx+r2)n+3dx=2n+32r(n+2)0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx

    証明In+2=0πsin2n+4x(12rcosx+r2)n+3dx=0πsinx(12rcosx+r2)n+3sin2n+3xdx=12r(n+2)[sin2n+3x(12rcosx+r2)n+2]0π+2n+32r(n+2)0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx=2n+32r(n+2)0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx

この後ろの積分について更に部分積分を行う。

2:部分積分(2回目)

0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx =12r(n+1)0πsin2nx((2n+1)cos2xsin2x)(12rcosx+r2)n+1dx

    証明0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx=0πsinx(12rcosx+r2)n+2sin2n+1xcosxdx=12r(n+1)[sin2n+1xcosx(12rcosx+r2)n+1]0π+12r(n+1)0πsin2nx((2n+1)cos2xsin2x)(12rcosx+r2)n+1dx=12r(n+1)0πsin2nx((2n+1)cos2xsin2x)(12rcosx+r2)n+1dx
3簡単な変形

積分の分子について変形する
sin2nx((2n+1)cos2xsin2x)=sin2nx((2n+1)(1sin2x)sin2x)=sin2nx(2n+1(2n+2)sin2x)=(2n+1)sin2nx2(n+1)sin2n+2x

これを用いて、
0πsin2nx((2n+1)cos2xsin2x)(12rcosx+r2)n+1dx=(2n+1)0πsin2nx(12rcosx+r2)n+1dx2(n+1)0πsin2n+2x(12rcosx+r2)n+1dx
前者はInに他ならない。
=(2n+1)In2(n+1)0πsin2n+2x(12rcosx+r2)n+1dx
考えるべきは最後の積分のみである。

4 同型の出現ッ!!

0πsin2n+2x(12rcosx+r2)n+1dx=(1+r2)In+12r0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx

    証明0πsin2n+2x(12rcosx+r2)n+1dx=0π12rcosx+r2(12rcosx+r2)n+2sin2n+2xdx=(1+r2)0πsin2n+2x(12rcosx+r2)n+2dx2r0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx
    前者はIn+1であるから、
    =(1+r2)In+12r0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx

残った積分は1で出てきた形であることに気が付く!!
そう!!ついに同型が出てきたのである!!
ここで、1を逆に用いて、
0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx=2r(n+2)2n+3In+2
と分かる。以上の流れをまとめ、漸化式を作る。

流れまとめ

In+2=0πsin2n+4x(12rcosx+r2)n+3dx=12n+32r(n+2)0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx=22n+32r(n+2)12r(n+1)0πsin2nx((2n+1)cos2xsin2x)(12rcosx+r2)n+1dx=32n+32r(n+2)2n+12r(n+1)0πsin2nx(12rcosx+r2)n+1dx2n+32r(n+2)2(n+1)2r(n+1)0πsin2n+2x(12rcosx+r2)n+1dx=42n+32r(n+2)2n+12r(n+1)In2n+32r(n+2)1r((1+r2)In+12r0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx)=2n+32r(n+2)2n+12r(n+1)In2n+32r(n+2)1+r2rIn+1+2n+3r(n+2)0πsin2n+2xcosx(12rcosx+r2)n+2dx=12n+32r(n+2)2n+12r(n+1)In2n+32r(n+2)1+r2rIn+1+2n+3r(n+2)2r(n+2)2n+3In+2=2n+32r(n+2)2n+12r(n+1)In2n+32r(n+2)1+r2rIn+1+2In+2
In+1をまとめて、
In+2=2n+32r(n+2)1+r2rIn+12n+32r(n+2)2n+12r(n+1)In
両辺をr2倍して、
r2In+2=2n+32(n+2)(1+r2)In+12n+32(n+2)2n+12(n+1)In
以上より、定理1が示された。

長くゴチャゴチャした証明が漸く終わりを告げた。
これを見せつけてきたSillpherthは、私にこれを解けと言ってきた。
このくらい解いてやらぁ!

三項間漸化式を二項間漸化式に!

In+12n+12(n+1)In=1(2r)2n(2n+1)!n!(n+1)!(I1I02)

これを証明して行く。

    証明r2In+2=2(n+1)+12(n+2)(r2+1)In+12(n+1)+12(n+2)2n+12(n+1)In

    ここで、an=2n+12(n+1)とすると、
    r2In+2=an+1(r2+1)In+1an+1anIn
    ここで、r2an+1In+1の項を左辺にもって行くと、
    r2(In+2an+1In+1)=an+1In+1an+1anIn
    これを括って、
    r2(In+2an+1In+1)=an+1(In+1anIn)
    ここで、Kn=In+1anInとすると、
    r2Kn+1=an+1Kn
    と、非常にシンプルな形になる。
    an=2n+12(n+1)であったから、
    r2Kn+1=2n+32(n+2)Kn
    これを解いて、
    Kn=1(2r)2n(2n+1)!n!(n+1)!(I1I02)
    Kn=In+1anInであったから、
    In+12n+12(n+1)In=1(2r)2n(2n+1)!n!(n+1)!(I1I02)
    QED!!証明終了!

I0I1を求める(Sillpherth)

ここで、I0I1がまだ分かっていないので、これを求める。

I0=π|1r2|I1=π4r2(1+r2|1r2|1)

I0は簡単に示せるので、まずはI0を計算する。

    I0の値ワイエルシュトラス置換ってヤツですね。
    I0=0π1r22rcost+1dt=01r2+12r1t21+t221+t2dt=201(r2+1)(1+t2)2r(1t2)dt=201(r2+2r+1)t2+(r22r+1)dt=201(1+r)2t2+(1r)2dt=2(1r)2011+(1+r1r)2t2dt=2(1r)2|1r1+r|0ds1+s2(s=|1+r1r|t)=2|1r|1|1+r|π2=π|1r2|

I1I0の関係式

4r2I1=(r2+1)I0π

    証明(部分積分するだけ)
    I1=0πsin2t(r22rcost+1)2dt=12r0πcostr22rcost+1dt=14r20π(r2+1r22rcost+11)dt=(r2+1)I0π4r2
    よって、両辺を4r2倍して、
    4r2I1=(r2+1)I0π

これを用いて、I1も求められる。
I1=14r2((1+r2)π|1r2|π)=π4r2(1+r2|1r2|1)
後のことを考えて、これを場合分けしておく。

|r|<1のとき、つまり、1r2>0のとき、
I1=π4r2(1+r21r21)=π4r2(1+r2+r211r2)=π211r2


|r|>1のとき、つまり、1r2<0のとき、
I1=π4r2(1+r21r21)=π4r2(1+r21r2+1)=π4r2(1+r2+1r21r2)=π2r211r2

この二つに場合分けして、漸化式を解いていく。

|r|<1のとき(MAGNA)

|r|<1のとき、I1I02=0

|r|<1のとき、
I1I02=π211r212π1r2=0

つまり|r|<1のとき、定理2の右辺が0になるということである。
In+12n+12(n+1)In=0
つまり、
In+1=2n+12(n+1)In
これは簡単に解くことができて、
In=(2n1)!!(2n)!!I0=(2n)!22nn!2π1r2=π22n(1r2)(2nn)

|r|>1のとき。(砂消しゴムさん)

|r|>1のとき、
I1I02=π2r2

     一応示す。上に書いた|r|>1におけるI1I0を用いて、
    I1I02=π2r211r212π1r2=π211r2(1r21)=π211r2(1r2r2)=π2r2

もうとっくに忘れたであろう定理2を引用して、
In+12n+12(n+1)In=1(2r)2n(2n+1)!n!(n+1)!(I1I02)
このI1I02に上の値を入れると、
In+12n+12(n+1)In=2π(2r)2n+2(2n+1)!n!(n+1)!
これを具体的に書き出して、発見法的に解は得られていた。(深夜2:30)
しかし、具体的にどのように漸化式を解けば良いのか分からなかった。

この漸化式の解き方は砂消しゴムさんに教えていただいた。
    砂消しゴムさんのツイート
砂消しゴムさんに教えていただいた数式 砂消しゴムさんに教えていただいた数式

解説のギャップが(私にとって)やや大きく、Inの一般項の部分を中々埋めれず困っていたらゴスロリ有給休暇さんが解説して下さった。
ゴスロリ有給休暇さんに書いていただいた解説 ゴスロリ有給休暇さんに書いていただいた解説
確かに書き出してみると分かりやすいですね。
私はI1から一般化しようとして事故ってたので今後の参考にしたい。

ついでにInからInを出すところも埋めておく。
!FORMULA[89][1099323059][0]から!FORMULA[90][35516240][0]を出すとこ InからInを出すとこ
ここで、I1=π2r211r2であるから、括弧の中を整理すると、
4I1+2πr22π(r2n1)r2n(r21)=2πr211r2+2πr22π(r2n1)r2n(r21)=2π1r2(1r21r2r2r2n1r2n)=2π1r2(1r21r2+11+1r2n)=2πr2n(r21)
よって、
In=14n(2n1n)(4I1+2πr22π(r2n1)r2n(r21))=14n(2n1)!n!(n1)!2πr2n(r21)=π(2r)2n1r21(2nn)
よって、|r|<1,|r|>1の両方のパターンについて、漸化式で積分Botの式を示すことができた。
0πsinx2n(12rcosx+r2)n+1dx={π22n11r2(2nn)|r|<1π(2r)2n1r21(2nn)|r|>1

あとがき

最初にSillpherthにもって来られた画像の酷さを紹介しておこう。

ゴミ ゴミ
これはかなり解読に苦労しました、。


|r|>1の場合の漸化式の解き方を考えて、深夜の2:30まで粘って、諦めて寝たら、朝起きたらゴスロリ有給休暇さんに3行で解かれてて笑いました。
思いつかんかった、、 思いつかんかった、、


この記事の編集がようやっと終わったころ、「これで良くないですか?」と、ゴスロリ有給休暇さんに漸化式で解かれてしまった。
つよすぎんよ、 つよすぎんよ、
若干、哀愁が漂い始めたところで、今回は終わりにしたいと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

気が向けば、またいつか記事を書きます。ほなまた。(*´∀`)ノシ

投稿日:20231026
更新日:2023113
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  1. 発端
  2. I0I1を求める(Sillpherth)
  3. |r|<1のとき(MAGNA)
  4. |r|>1のとき。(砂消しゴムさん)
  5. あとがき