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アルティン・シュライアー理論

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はじめに

 この記事ではアルティン・シュライアー理論について簡単に解説していきます。
 なお内容としてはほぼ クンマー理論の記事 のコピペとなっています(実はクンマー理論とアルティン・シュライアー理論は適当な抽象化によって統一的に議論することができますがそれはまた別のお話)。

アルティン・シュライアー拡大

 標数p>0の体kに対して写像:kk(x)=xpxによって定める。
 このときは加法に関する準同型を定め、その核はFpとなる、特に
(x)(b)=i=0p1(xbi)
が成り立つことに注意する。

 標数p>0の体の拡大L/Kにおいて以下は同値となる。

  1. L/Kp次巡回拡大である。
  2. あるaK(K)が存在してL=K(1(a))が成り立つ。
証明

(i)(ii)

 Gal(L/K)の生成元をσとおくとL/Kの分離性からトレース
TrL/K=i=0p1σi:LK
は全射なのでTrL/K(x)=1なるxLが取れる。このとき
b=i=0p1iσi(x)
とおくと
σ(b)=i=0p1iσi+1(x)=i=0p1(i1)σi(x)=bTrL/K(x)=b+1
が成り立ち、特に
σi(b)=b+i(i=0,1,,p1)
はそれぞれ異なる値を取るので[K(b):K]=p=[L:K]、つまりL=K(b)となる。
 またa=(b)とおくと
σ(a)=(σ(b))=(b+1)=(b)=a
よりこれはGal(L/K)の作用に対して不変なのでaKとなりL=K(1(a))を得る。

(ii)(i)

 b1(a)を根に持つK上の多項式
f(x)=xpxa=i=0p1(xbi)
の他の根は全てLに含まれるのでL/Kは正規拡大であり、また
f(x)=10
が成り立つのでfは分離多項式であり、したがってL/Kはガロア拡大となる。
 またa(K)に注意すると
Gal(L/K)={σi:bb+ii=0,1,2,,p1}
となることがわかるのでL/Kp次巡回拡大となる。

指数

 群Gに対し
xn=1(xG)
を満たすような正整数nであって最小のものをG指数と言う。

アルティン・シュライアー拡大

 標数p>0の体の拡大L/Kにおいて以下は同値となる。

  1. L/Kは有限次アーベル拡大であり、そのガロア群の指数はpである。
  2. あるa1,a2,,arK(K)が存在してL=K(1({a1,a2,,ar}))が成り立つ。

またこのような拡大L/Kのことを(有限次)アルティン・シュライアー拡大と言う。

証明

(i)(ii)

 有限アーベル群の基本定理より同型
Gal(L/K)(Z/pZ)×(Z/pZ)××(Z/pZ)r
が存在する。このとき
Hi(Z/pZ)××(Z/pZ)i1×{0}×(Z/pZ)××(Z/pZ)ri
なる部分群Hiを取り、その固定体をMiとおくと
Gal(Mi/L)Gal(L/K)/HiZ/pZ
が成り立つので命題2よりあるaiKが存在してMi=K(1(ai))と表せる。
 また
K(1({a1,a2,,ar}))
の固定群はi=1rHi0となるので
L=K(1({a1,a2,,ar}))
を得る。

(ii)(i)

 Lはガロア群の指数がpのアーベル拡大K(1(ai))/Kの合成体であるので、L/Kもガロア群の指数がpのアーベル拡大となる。

アルティン・シュライアーペアリング

指標とペアリング

指標

 アーベル群Gから乗法群C×への準同型χ:GC×のことをG指標と言い、またGの指標全体のなす群Hom(G,C×)指標群と言いG^と表す。

 Gの指数がpであるとき、1p乗根全体のなす群をμpとおくと
Hom(G,C×)=Hom(G,μp)=Hom(G,Fp)
が成り立つことに注意する。

 有限アーベル群Gに対しGG^が成り立つ。

  この記事 の定理2として示した。

ペアリング

 群G1,G2,G3に対し、写像e:G1×G2G3であって双線形性
e(x1x2,y)=e(x1,y)e(x2,y)e(x,y1y2)=e(x,y1)e(x,y2)
を満たすようなものをペアリングと言う。
 またペアリングeが誘導する準同型
G1Hom(G2,G3),xe(x,)G2Hom(G1,G3),ye(,y)
がそれぞれ単射/全単射となることをe非退化/完全であると言う。

 有限アーベル群G1,G2からC×へのペアリングe:G1×G2C×に対し、eが非退化であることと完全であることは同値である。

証明

 完全であれば非退化であることは明らか。
 またeが非退化であるとき
G1G^2,G2G^1
の単射性から
|G1||G^2|,|G2||G^1|
が成り立ち、また上の補題より
|G1|=|G^1|,|G2|=|G^2|
が成り立つことに注意すると|G1|=|G2|、つまり全射性
|G1|=|G^2|,|G2|=|G^1|
を得る。

アルティン・シュライアー理論の基本定理

アルティン・シュライアーペアリング

 標数p>0の体Kとその加法部分群(K)RKに対し
(a+(K),σ)σ(b)b(b1(a))
によって定まる写像
R/(K)×Gal(K(1(R))/K)Fp
アルティン・シュライアーペアリングと言う。

 K(1(R))/Kが有限次拡大であるとき、アルティン・シュライアーペアリングは完全ペアリングとなる。

証明

 簡単のためL=K(1(R)), G=Gal(L/K)とおく。

ペアリングであること

 第一変数に関する線形性
e(a1+a2,σ)=e(a1,σ)+e(a2,σ)
は明らか。また第二変数に関してはGFpの元を固定することから
e(a,σ)+e(a,τ)=σ(b+e(a,τ))b=σ(τ(b))b=e(c,στ)
とわかる。

完全であること

 eが非退化性であることを示せばよい。実際そうであればGの有限性とR/(K)G^の単射性からR/(K)は有限であることがわかるので補題5より完全性がわかる。
 いまσGが任意のaRに対し
σ(b)b=0
を満たすならばσLの元を固定するのでσ=1でなければならない、つまりGR/(K)^は単射となる。
 またaRが任意のσGに対し
σ(b)b=0
を満たすならばbKつまりa(K)となるのでR/(K)G^は単射となる。

アルティン・シュライアー理論の基本定理
  • K上の有限次アルティン・シュライアー拡大L/K
  • (K)RKなる加法群RであってR/(K)を有限群とするもの
    (あるいは単にK/(K)の有限部分群R/(K)を考えてもよい)

の間には一対一対応
LK(L)K(1(R))R
が成り立ち、特に
Gal(L/K)R/(K)
が成り立つ。

証明

 アルティン・シュライアー拡大L/Kに対し
R=K(L)
とおくと命題2よりL=K(1(R))が成り立つので命題5より
R/(K)Gal(L/K)^
特にR/(K)は有限群となる。
 またあるRに対しL=K(1(R))が成り立つとすると命題5より
R/(K)Gal(L/K)^R/(K)
が成り立ち、また明らかにRRなのでR=Rを得る。
 したがって上の対応は互いに逆対応を与えることがわかり、また補題3より
R/(K)Gal(L/K)^Gal(L/K)
を得る。

投稿日:119
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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