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大学数学基礎解説
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クンマー理論

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はじめに

 この記事ではクンマー理論について簡単に解説していきます。

クンマー拡大

デデキントの補題

 群Gと体kに対し、集合Hom(G,k×)k-線形空間Map(G,k)の中で線形独立である。

証明

 相違なる任意の元χ1,χ2,,χnHom(G,k×)が線形独立であることをnに関する数学的帰納法によって示す。n=1のときは明らかであり、n1においてこれが成り立つとする。
 このときnにおいて
i=1naiχi=0(aik)
が成り立つとすると、任意のg,hGに対し
i=1naiχi(gh)=0χn(h)i=1naiχi(g)=0
が成り立つのでこの差を取ることで
i=1n1ai(χi(h)χn(h))χi(g)=0
が成り立つ。
 いまgGは任意であったので帰納法の仮定より
ai(χi(h)χn(h))=0(i=1,2,,n1)
が成り立つが、hGは任意であったこと、および各iに対しχi(h)χn(h)なるhGが存在することから
ai=0(i=1,2,,n1)
となり、したがってan=0となることもわかるのでχ1,χ2,,χnは線形独立であることが示された。

 K1の原始n乗根ζ(nKの標数で割り切れないような正整数)を持つとき、体の拡大L/Kに対し以下は同値となる。

  1. L/Kは巡回拡大であり、その次数はnの約数である。
  2. あるaKが存在してL=K(an)が成り立つ。
証明

(i)(ii)

d=[L:K],η=ζn/d,Gal(L/K)=σ
とおくとデデキントの補題(G=L×,k=L)より写像
f=i=0d1ηiσiMap(L×,L)
0でないのであるxLが存在してf(x)0が成り立つ。
 このときb=f(x)とおくとσ(η)=ηより
σ(b)=i=0d1ηiσi+1(x)=ηi=0d1η(i+1)σi+1(x)=ηb
が成り立ち、特に
σi(b)=ηib(i=0,1,,d1)
はそれぞれ異なる値を取るので[K(b):K]=d=[L:K]、つまりL=K(b)となる。
 またa=bdとおくとσ(bd)=(ηb)n=bdよりこれはGal(L/K)の作用に対して不変なのでaKとなりL=K(ad)=K(adn)を得る。

(ii)(i)

 anを根に持つK上の多項式
f(x)=xna=i=0n1(xζian)
の他の根は全てLに含まれるのでL/Kは正規拡大であり、またKの標数はnを割り切らないことからx0に対し
f(x)=nxn10
が成り立つのでfは分離多項式であり、したがってL/Kはガロア拡大となる。
 また
I={mZσGal(L/K), σ(an)=ζman}
とおくとある正整数dが存在しI=dZが成り立ち、このときGal(L/K)
σ(an)=ζdan
なる元σによって生成される位数n/dの巡回群となる。

指数

 群Gに対し
xn=1(xG)
を満たすような正整数nであって最小のものをG指数(exponent)と言う。

 群Gとその部分群Hに対し定まる指数(index)|G:H|とは異なる概念であることに注意する。なおindexとの混同を避けるためexponentを冪数と呼ぶこともある(らしい)。

クンマー拡大

 K1の原始n乗根ζ(nKの標数で割り切れないような正整数)を持つとき、体の拡大L/Kに対し以下は同値となる。

  1. L/Kは有限次アーベル拡大であり、そのガロア群の指数はnの約数である。
  2. あるa1,a2,,arKが存在してL=K(a1n,a2n,,arn)が成り立つ。

またこのような拡大L/Kのことを(有限次)クンマー拡大と言う。

 一般に無限次のクンマー拡大も考えることができるが、ここでは詳しくは触れない。

証明

(i)(ii)

 有限アーベル群の基本定理より同型
Gal(L/K)(Z/n1Z)×(Z/n2Z)××(Z/nrZ)
が存在する(両辺の指数を考えると各ninの約数となることに注意する)。
 このとき
Hi(Z/n1Z)××(Z/ni1Z)×(Z/ni+1Z)××(Z/nrZ)
なる部分群Hiを取り、その固定体をMiとおくと
Gal(Mi/L)Gal(L/K)/HiZ/niZ
が成り立つので命題2よりあるaiKが存在してMi=K(ain)と表せる。
 また
K(a1n,a2n,,arn)
の固定群はi=1rHi0となるので
L=K(a1n,a2n,,arn)
を得る。

(ii)(i)

 命題2の証明で見たようにLの生成元anは分離的であり、またLはその共役元を全て含むのでL/Kはガロア拡大である。
 また任意のσ,τGal(L/K)に対し
σ(ain)=ζeiain,τ(ain)=ζfiain(i=1,2,,r)
とおくと
σn(ain)=ain
よりGal(L/K)の指数は高々nであり、また
στ(ain)=τσ(ain)=ζei+fiain
よりGal(L/K)はアーベルである。

クンマーペアリング

指標とペアリング

指標

 アーベル群Gから乗法群C×への準同型χ:GC×のことをG指標と言い、またGの指標全体のなす群Hom(G,C×)指標群と言いG^と表す。

 Gの指数がnの約数であるとき、1n乗根全体のなす群をμnとおくと
Hom(G,C×)=Hom(G,μn)
が成り立つことに注意する。

 有限アーベル群Gに対しGG^が成り立つ。

  この記事 の定理2として示した。

ペアリング

 群G1,G2,G3に対し、写像e:G1×G2G3であって双線形性
e(x1x2,y)=e(x1,y)e(x2,y)e(x,y1y2)=e(x,y1)e(x,y2)
を満たすようなものをペアリングと言う。
 またペアリングeが誘導する準同型
G1Hom(G2,G3),xe(x,)G2Hom(G1,G3),ye(,y)
がそれぞれ単射/全単射となることをe非退化/完全であると言う。

 有限アーベル群G1,G2からC×へのペアリングe:G1×G2C×に対し、eが非退化であることと完全であることは同値である。

証明

 完全であれば非退化であることは明らか。
 またeが非退化であるとき
G1G^2,G2G^1
の単射性から
|G1||G^2|,|G2||G^1|
が成り立ち、また上の補題より
|G1|=|G^1|,|G2|=|G^2|
が成り立つことに注意すると|G1|=|G2|、つまり全射性
|G1|=|G^2|,|G2|=|G^1|
を得る。

クンマー理論の基本定理

クンマーペアリング

 1の原始n乗根を持つ体Kとその乗法部分群(K×)nRK×に対し
(c(K×)n,σ)σ(cn)cn
によって定まる写像
R/(K×)n×Gal(K(Rn)/K)μn
クンマーペアリングと言う。

 K(Rn)/Kが有限次拡大であるとき、クンマーペアリングは完全ペアリングとなる。

証明

 簡単のためL=K(Rn), G=Gal(L/K)とおく。

ペアリングであること

 第一変数に関する線形性
e(c1c2,σ)=e(c1,σ)e(c2,σ)
は明らか。また第二変数に関してはGμnの元を固定することから
e(c,σ)e(c,τ)=σ(e(c,τ)cn)cn=σ(τ(cn))cn=e(c,στ)
とわかる。

完全であること

 eが非退化性であることを示せばよい。実際そうであればGの有限性とR/(K×)nG^の単射性からR/(K×)nは有限であることがわかるので補題5より完全性がわかる。
 いまσGが任意のaRに対し
σ(an)an=1
を満たすならばσLの元を固定するのでσ=1でなければならない、つまりGR/(K×)n^は単射となる。
 またaRが任意のσGに対し
σ(an)an=1
を満たすならばanK×つまりa(K×)nとなるのでR/(K×)nG^は単射となる。

クンマー理論の基本定理
  • K上の有限次クンマー拡大L/K
  • (K×)nRK×なる乗法群RであってR/(K×)nを有限群とするもの
    (あるいは単にK×/(K×)nの有限部分群R/(K×)nを考えてもよい)

の間には一対一対応
LK×(L×)nK(Rn)R
が成り立ち、特に
Gal(L/K)R/(K×)n
が成り立つ。

証明

 クンマー拡大L/Kに対し
R=K×(L×)n
とおくと命題3よりL=K(Rn)が成り立つので命題6より
R/(K×)nGal(L/K)^
特にR/(K×)nは有限群となる。
 またあるRに対しL=K(Rn)が成り立つとすると命題6より
R/(K×)nGal(L/K)^R/(K×)n
が成り立ち、また明らかにRRなのでR=Rを得る。
 したがって上の対応は互いに逆対応を与えることがわかり、また補題4より
R/(K×)nGal(L/K)^Gal(L/K)
を得る。

応用例

 クンマー理論の基本定理は「集合Sn乗根によって生成される体は、Sのなす群R=Sに含まれない元のn乗根を持たない」ことを示唆している。
 例えばQ上のクンマー拡大体Q(2,3)に含まれる平方根は2,3,6(とその有理数倍)に限り、したがって
5Q(2,3)
のような事実が即座に従うのである。
 また次のような事実も興味深い。

 K×/(K×)nの有限部分群R/(K×)nとその完全代表系{a1,a2,,ar}に対し
a1n,a2n,,arn
K-線形独立である。

 R/(K×)nは積について閉じていることに注意するとK-線形空間
L=K(Rn)=K(a1n,a2n,,arn)=K[a1n,a2n,,arn]=Ka1n+Ka2n++Karn
の次元[L:K]r以下であり、また
[L:K]=|Gal(L/K)|=|R/(K×)n|=r
であったことからa1n,a2n,,arnK-線形独立でなければならないことがわかる。

 特に1R/(K×)nよりar=arn=1としてよく、このとき非自明な線型結合
x0+x1a1n+x2a2n++xr1ar1n(xiK)
0でないことから
x1a1n+x2a2n++xr1ar1nx0
特にx0Kは任意であることから
x1a1n+x2a2n++xr1ar1nK
が言える。
 これはa1n,a2n,,ar1nの線型結合は全てK上の無理数となることを示唆している。
 例えば2,3,5,7/(Q×)2において2,3,5,7は互いに異なる剰余類を定めることから、2,3,5,7の線型結合、例えば
2+3+5+7
は無理数となることが即座に従うのである。

n乗根の無理性

 同様にQ(ζn)上のクンマー拡大を考えることで一般に有理数のn乗根に関する無理性を議論することもできるが、有理数のQ×/(Q×)nにおける振る舞いとQ(ζn)×/(Q(ζn)×)nにおける振る舞いは微妙に異なること、つまりQ(ζn)にはいくつかの冪根rn (rQ)が含まれていることには注意しなければならない。
 例えばn=12のとき
ζ12=3+12,ζ12+ζ121=3
から36(Q(ζ12)×)12が成り立つので
2,3/(Q×)12={2l3m0l<12, 0m<12}2,3/(Q(ζ12)×)12={2l3m0l<12, 0m<6}
のような違いが生じる。
 しかし
2l3m12(0l<12, 0m<6)
Q(ζ12)-線形独立性、ひいてはQ(3)-線形独立性が言えることとQ(3)=QQ3から結局
2l3m12(0l<12, 0m<12)
Q-線形独立性は導くことができる。
 実は同様にして一般に[Q(Rn):Q]=|R/(Q×)n|という主張が示せることに気付いたので この記事 に簡単にまとめておいた。

参考文献

[1]
雪江 明彦 , 代数学2 環と体とガロア理論, 日本評論社, 2010
投稿日:202477
更新日:2024810
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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  3. クンマーペアリング
  4. 指標とペアリング
  5. クンマー理論の基本定理
  6. 応用例
  7. $n$乗根の無理性
  8. 参考文献