はじめに
この記事では有理数体に有理数の乗根を添加した体
の振る舞いについて簡単に考察していきます。
なお以下での議論は完全に個人的な考察となるのでより良い方法などがあるかもしれませんが悪しからず。
以下の偏角の取り方については特に気にしないものとします(をどのように定めても以下の議論に影響はありません)。
冪根拡大の場合
まずのただ一つの冪根を添加した体の振る舞いについて考える。
拡大次数
正整数と有理数について、の(負の指数を認めた)素因数分解
において
が成り立つときは無理数となる。
が有理数であるとするとおよび素因数分解の一意性より
が成り立たなければならず矛盾。よって主張を得る。
の素因数分解において
が成り立つときの拡大次数はとなる。
がの上の最小多項式であることを示せばよい。
いまはの原始乗根を用いて
と因数分解できるので、を割り切るようなモニック多項式に対し
が成り立つが、補題1よりこれが有理数となるのはつまりまたはのときに限る。
したがっては上既約であることが示された。
正規性
以下は定理2の仮定を満たすものとする。
が正規拡大であるときが成り立つ。
特にはまたはと表せ
が成り立つ。
の上の最小多項式は、つまりの共役元は
で尽くされることに注意すると、が正規拡大であるとき
が成り立つ。
特に
は整数となければならず
が整数となる条件を考えると
- が以上の素因数を二つ以上持つとき、この分母はで割り切れることになり矛盾。
- が以上の素因数をただ一つ持つとき、この分子は高々であり、またとは互いに素であるので、つまりおよびでなければならない。
つまりはまたはと表せることがわかる。
が正規拡大であるとき、が成り立つ。
またの任意の約数に対しも正規拡大となり、が成り立つ。
はの有限部分群
に対応する
クンマー拡大
であり、また
が成り立つのでつまりを得る。
またはアーベル拡大なのでその部分拡大もアーベル拡大、特に正規拡大となる。
いまにおいてが正規拡大ならば
- のとき、も正規拡大となるがこれは補題3に矛盾。
- のとき、とならなければならないが、
クンマー理論
により
が成り立つことに注意するとこれはの取り方に矛盾。 - のとき、および
よりを得る。
逆にが成り立つとき、よりは正規拡大となる。
以上より主張を得る。
アーベル性
定理5からに対しが非アーベル拡大となることを示せばよい。
いま
によって定まるの元を取ると、より
つまり
が成り立つのでの非可換性
を得る。
一般の場合
次に複数の冪根を添加した体の振る舞いについて考える。
上の拡大
の振る舞いを直接考えるのは難しいので、にの冪根を全て添加した体上のクンマー拡大
を経由して考える(なお定理9を示すだけならとすれば十分であり、他のも添加したのはただのおまけである)。
円分体に含まれる有理数の冪根はの冪根(の有理数倍)と平方根に限る。
が冪根を持つときは定理2の仮定を満たすものとしてよく、このときはアーベル拡大なのでその部分拡大もアーベル拡大となることに注意すると定理6よりを得る。
補題7より
が成り立つのでが奇数のときは明らかであり、またが偶数のとき逆の包含
が成り立つことは
ルジャンドル記号のガウス和
から奇素数に対し
が成り立つこととに注意するとわかる。
なる乗法群であってを有限群とするものに対し
が成り立つ。
をの完全代表系とすると-線形空間として
が成り立つことから
がわかるのでこの逆の不等号を示せばよい。
いま自然な準同型
を考えると
クンマー理論
より
が成り立つ。
または
と表せ、補題8よりつまりは高々指数のクンマー拡大となり、したがって
が成り立つのでに注意すると
を得る。
この事実により
クンマー理論の記事
の定理8と同じことが言える。
をの完全代表系とすると
は-線形独立である。特にとすると非自明な-線型結合
は無理数となる。