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有理数体の冪根拡大についての雑記

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はじめに

 この記事では有理数体Qに有理数のn乗根anを添加した体
Q(a1n,a2n,,akn)
の振る舞いについて簡単に考察していきます。
 なお以下での議論は完全に個人的な考察となるのでより良い方法などがあるかもしれませんが悪しからず。
 以下anの偏角の取り方については特に気にしないものとします(anをどのように定めても以下の議論に影響はありません)。

冪根拡大の場合

 まずQのただ一つの冪根を添加した体Q(an)の振る舞いについて考える。

拡大次数

 正整数nと有理数aについて、aの(負の指数を認めた)素因数分解
a=±p1e1p2e2pkek(ej1)
において
gcd(e1,e2,,ek,n)n
が成り立つときanは無理数となる。

 anが有理数であるとするとa=(an)nおよび素因数分解の一意性より
gcd(e1,e2,,ek,n)=n
が成り立たなければならず矛盾。よって主張を得る。

 aの素因数分解において
gcd(e1,e2,,ek,n)=1
が成り立つときQ(an)/Qの拡大次数はnとなる。

 f(x)=xnaanQ上の最小多項式であることを示せばよい。
 いまf(x)1の原始n乗根ζnを用いて
f(x)=(xan)(xζnan)(xζn2an)(xζnn1an)
と因数分解できるので、fを割り切るようなモニック多項式gQ[x]に対し
|g(0)|=|a|deggn
が成り立つが、補題1よりこれが有理数となるのはdegg=0,nつまりg=1またはg=fのときに限る。
 したがってfQ上既約であることが示された。

正規性

 以下n,aは定理2の仮定を満たすものとする。

 Q(an)/Qが正規拡大であるときζnQ(an)が成り立つ。
 特にnn=2i (i0)またはn=2i3j (i,j1)と表せ
[Q(an):Q(ζn)]={1if n=12if n=2i(i1)3if n=2i3j(i,j1)
が成り立つ。

 anQ上の最小多項式はxna、つまりanの共役元は
ζnjan(j=0,1,2,,n1)
で尽くされることに注意すると、Q(an)/Qが正規拡大であるとき
ζn=ζnananQ(an)
が成り立つ。
 特に
[Q(an):Q(ζn)]=[Q(an):Q][Q(ζn):Q]=nφ(n)
は整数となければならず
nφ(n)=pnpp1
が整数となる条件を考えると

  • n3以上の素因数を二つ以上持つとき、この分母は4で割り切れることになり矛盾。
  • n3以上の素因数pをただ一つ持つとき、この分子は高々2pであり、またpp1は互いに素であるので(p1)2、つまりp=3および2nでなければならない。

つまりnn=2i (i0)またはn=2i3j (i,j1)と表せることがわかる。

 Q(an)/Qが正規拡大であるとき、aφ(n)Q(ζn)が成り立つ。
 またφ(n)の任意の約数mに対しQ(am)/Qも正規拡大となり、aφ(m)Q(ζm)が成り立つ。

 Q(an)/Q(ζn)Q(ζn)×/(Q(ζn)×)nの有限部分群
D=a(Q(ζn)×)n
に対応する クンマー拡大 であり、また
|D|=[Q(an):Q(ζn)]=n/φ(n)
が成り立つのでan/φ(n)(Q(ζn)×)nつまりaφ(n)Q(ζn)を得る。
 またQ(ζn)/Qはアーベル拡大なのでその部分拡大Q(am)/Qもアーベル拡大、特に正規拡大となる。

 Q(an)/Qが正規拡大となるのはn=1,2、またはn=6かつa3(Q×)2の場合に限る。

 いまn1,2においてQ(an)/Qが正規拡大ならば

  • n=2i3j(i1,j2)のとき、Q(a3)/Qも正規拡大となるがこれは補題3に矛盾。
  • n=2i(i2)のとき、aQ(ζ4)=Q(1)とならなければならないが、 クンマー理論 により(Q(1)×)2Q=(Q×)2((Q×)2)
    が成り立つことに注意するとこれはaの取り方に矛盾。
  • n=6のとき、aQ(ζ6)=Q(3)および
    (Q(3)×)2Q=(Q×)2(3(Q×)2)
    よりa3(Q×)2を得る。
    逆にa3(Q×)2が成り立つとき、ζ6Q(3)Q(a6)よりQ(a6)/Qは正規拡大となる。

以上より主張を得る。

アーベル性

 Q(an)/Qがアーベル拡大となるのはn=1,2の場合に限る。

 定理5からa3(Q×)2に対しQ(a6)/Qが非アーベル拡大となることを示せばよい。
 いま
σ(a6)=ζ6a6,τ(a6)=ζ3a6
によって定まるGal(Q(a6)/Q)の元σ,τを取ると、3aQ×より
σ(3)=ζ633=3τ(3)=ζ333=3
つまり
σ(ζ6)=ζ61,τ(ζ6)=ζ6
が成り立つのでσ,τの非可換性
τσ(a6)=ζ6a6ζ31ζ6a6=στ(a6)
を得る。

一般の場合

 次に複数の冪根を添加した体Q(a1n,a2n,,akn)の振る舞いについて考える。
 Q上の拡大
Q(a1n,a2n,,akn)/Q
の振る舞いを直接考えるのは難しいので、Q1の冪根を全て添加した体K=m=1Q(ζm)上のクンマー拡大
K(a1n,a2n,,akn)/K
を経由して考える(なお定理9を示すだけならK=Q(ζn)とすれば十分であり、他のζmも添加したのはただのおまけである)。

 円分体Q(ζm)に含まれる有理数の冪根は1の冪根(の有理数倍)と平方根に限る。

 Q(ζm)が冪根an (a(Q×)n)を持つときn,aは定理2の仮定を満たすものとしてよく、このときQ(ζm)/Qはアーベル拡大なのでその部分拡大Q(an)/Qもアーベル拡大となることに注意すると定理6よりn=1,2を得る。

(K×)nQ={(Q×)n(n:odd)(Q×)n/2(n:even)
が成り立つ。

 補題7より
(Q×)n(K×)nQ(Q×)n/2
が成り立つのでnが奇数のときは明らかであり、またnが偶数のとき逆の包含
(Q×)n/2(K×)nつまりQ×K×
が成り立つことは ルジャンドル記号のガウス和 から奇素数pに対し
(1)p12p=a=1p(ap)ζpaQ(ζp)
が成り立つこととQ(ζ8)=Q(2,1)に注意するとわかる。

 (Q×)nRQ×なる乗法群RであってR/(Q×)nを有限群とするものに対し
[Q(Rn):Q]=|R/(Q×)n|
が成り立つ。

 a1,a2,,arR/(Q×)nの完全代表系とするとQ-線形空間として
Q(Rn)=Qan1+Qa2n++Qarn
が成り立つことから
[Q(Rn):Q]|R/(Q×)n|
がわかるのでこの逆の不等号を示せばよい。
 いま自然な準同型
φ:R/(Q×)nK×/(K×)na(Q×)na(K×)n
を考えると クンマー理論 より
[K(Rn):K]=|Imφ|=|R/(Q×)n||Kerφ|
が成り立つ。
 またKerφ
Kerφ=S/(Q×)n(S=(K×)nR)
と表せ、補題8よりSnQ×つまりQ(Sn)/Qは高々指数2のクンマー拡大となり、したがって
[Q(Sn):Q]=|S/(Q×)n|
が成り立つのでQ(Sn)Kに注意すると
|R/(Q×)n|=[K(Rn):K][Q(Sn):Q][Q(Rn):Q(Sn)][Q(Sn):Q]=[Q(Rn):Q]
を得る。

 この事実により クンマー理論の記事 の定理8と同じことが言える。

 a0,a1,a2,,ar1R/(Q×)nの完全代表系とすると
a0n,a1n,a2n,,ar1n
Q-線形独立である。特にa0=1とすると非自明なQ-線型結合
x1a1n+x2a2n++xr1ar1n
は無理数となる。

投稿日:2024810
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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