初めに
新年あけましておめでとうございます。今年の目標は睡眠・運動・食事・生活習慣・時間管理です。
この記事では、ぱるちさんの記事
逆関数が導関数になるとき
に関するちょっとしたお話のつもりです。実数上での多変数多項式環および有利関数体の定義・代入と一変数実解析の初歩知識を仮定しています。この記事に出てくる記号や用語にはおそらく独自のものがいくつか含まれているので注意してください。
本題
これから話す内容は、
を実数とする。関数方程式に対し、を満たすを中心とする冪級数解は各に対して近傍で一意に存在する。
についての考察です。
以降自然数はを含むものとし、を以上の自然数とする。上の変数多項式環を、変数有理関数体をで表す。
多重指数の省略記法
と略記し、さらに、各に対し、のとき、をとも表記することにする。
定義より、であるから、のときを示せば十分である。
1.定義より、のとき、のときは省略。
写像を次で定義する。
に対し、これはの取り方によらない。すなわちwell-definedである。
に対し、を示せばよい。の両辺にを作用させる。命題1より、
両辺で割る。
を代入して第2項同士を移行すると、を得る。
と置く。このとき、任意の以上の自然数に対し、であり、
ただし、のとき、総和記号の項はと約束する。
まず、任意の以上の自然数に対し、であることを数学的帰納法で証明する。は定義より成立。のときに成立すると仮定すると、したがって、であり、と置くと、したがって、であるから、である。したがって、のときも成立する。
よって、数学的帰納法より任意の以上の自然数に対し、であり、これと証明途中の計算により、および
を得る。
数学的帰納法で証明する。のときはなので成立。のときに成立することを仮定すると、したがって、仮定より、に対し、 であり、である。特に、
したがって、のときも成立する。
が偶数のとき、常にであり、が奇数のとき、常にである。また、となるものが存在する。
数学的帰納法で証明する。のとき、より成立。のときに成立すると仮定すると、のとき、したがって、各は、の形の項の有限個の和に等しい。
命題3より、 であり、仮定より、であるから、常にが成立することがわかる。特に、仮定によりとなるものが存在するので、で
を含むものが存在し、それはにはならないことがわかる。についても全く同様。
以降、とする。に対し、 と略記する。
は命題4より得られる。また、の両辺をで割ると、したがって、を得る。
および、命題7よりである。よって、の両辺のをとることで得られる。
命題4より、
である。したがって、
より、命題8から、
したがって、
開区間上の関数を、
で定義する。これは命題9によりwell-definedである。
さらに、に含まれる上の開区間で、
が上狭義単調増加であるものが存在する。
上二式は定義による。
より、ある開区間上では狭義単調増加である。
これとの連続性から、は上の開区間である。より、は上の開区間である。
冪級数
の収束半径をとする。としたとき、が以下の二条件
を満たすとき、が成立する。
まず、命題11を証明するための準備をする。以降は命題11の二条件を満たす冪級数とする。
の狭義単調増加性より、からはの内点である。よって、の連続性よりはを含む開区間である。
次に、と置く。より、は上級なので、を、を含むの連結領域の内部として定義すると、はを含む開区間であり、任意の開区間に対し、となる。は上単調増加なので、任意の開区間に対し、となる。したがって、とすると、これは開区間であり、であるから、である。定義よりである。
2以上の自然数に対し、を以下で再帰的に定義する。
ただし、定義域はとする。補題よりこれはwell-definedである。
逆関数の微分法より
数学的帰納法で証明する。のとき、合成関数の微分法より、
であるから成立する。のときを仮定すると、のとき、
したがって、のときも成立する。
まず、に対し証明する。
の線形性により、について示せば十分である。
よって成立。次に、に対し、とすると、
よって成立。
数学的帰納法で証明する。
のとき、
であるから成立する。のときに成立すると仮定すると、のとき、
よって、のときも成立する。
命題11を証明する。
命題15より、であるから、
となる。したがって、であり、が成立する。
以上の結果により、最初の予想は以下の予想
が成立すれば良いことがわかります。が、合成関数の高階導関数は結構複雑なのでごり押しは厳しそうです。しばらくの間数学している時間が全然とれないのでこの予想の真偽は未来の私か他人に任せます。
追記
予想をの係数について書き下し、漸化式に落とし込むことを考える。以降とする。
漸化式の導出 1
以降、冪級数による関数を複素数に拡張して考え、と区別して書く。に対応する開円盤をと置く。
Lagrange inversion theorem
はを含む領域で解析的かつとする。このとき、以下が成立する。
1.のある開近傍が存在して、上では逆関数を持つ。このときは開集合であり、は間の同相写像となる。さらに、はで解析的である。
2.上のに対し、を中心とするTaylar展開は、の形をとる。
1.は参考文献[1]
解析入門(下) (松坂和夫 数学入門シリーズ 6)
、30・31頁の定理4およびその証明、2.は参考文献[2]
ラグランジュの反転公式
等に記載がある。ここでは証明しない。
に対し、 と置く。このとき、である。特に。は除去可能特異点である。
以降を定義に含める。これにより上で上式が常に成立する。特に、上では解析的である。
これらは命題17より得られる。
Faa' di Bruno の公式
の定義域をそれぞれとし、とする。は回連続微分可能であるとき、合成関数の階導関数は以下の公式で与えられる。
ただし、は の三条件を満たす全てのについて和をとるものとする。
証明は参考文献[3]
合成関数の高階微分の公式について
等を参照のこと。
証明手法(任意)
一致の定理より、 である。およびより、Tayler展開の一意性から、 を得る。補題18の1.において、として、定理19を適用し、補題18の2.を代入して、となり、求める式を得る。 および
より、議論を逆にたどることで同値性が示される。
漸化式の導出 2
Fischer内積
変数多項式環に対して、写像を次で定義する。
このとき、以下が成立する。
1.は上の内積である。
2.は内積空間の直交基底である。
1.双線形性は偏微分演算子の線形性より得られる。また、の各元に対しては、であり、に対し、となるものが一つとれ、これに対応するに着目すると、 を得る。
に対し、線形性および上の計算により、が成立する。これにより、正値性、正定値性が示された。対称性も同様の計算で示せる。2.は1.の証明の途中式および多項式環の定義から示される。
と置く。これはからへの線形写像であり、以下が成立する。
1.ある自然数が存在して
のとき、である。 2. 1.以外のとき、
線形性については、命題1と掛け算写像の線形性による。値域がに含まれることについては、命題2の途中式と全く同様の計算で示せる。
であるから、両辺をそれぞれに代入し、定義10の2.および
のときであること用いれば、1.および2.を得る。
の両辺をに代入して定義10と補題20を適用すれば良い。
最後に
と定義する。定理16系および命題21より次の命題を得る。
以下の1.と2.は同値である。
1.
2.漸化式
によって定義される数列は、に対して以下の変数についての恒等式
が成立している。。
2.使い物にならなそうですね...(一応での成立は確認済み。)
参考文献
[1]
岩波書店 解析入門(下) (松坂和夫 数学入門シリーズ 6) 松坂 和夫 著 018/11/06
[2]
ラグランジュの反転公式
[3]
合成関数の高階微分の公式について
[4]
日本評論社 球面調和関数と群の表現 野村 隆昭 著 2018.07