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k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想(その2・厳密解との関係)

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はじめに

この記事は
k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想
の続きの記事になります。まだ読んでいない方はそちらを先に読んでみてください。

今回は、まず $k$-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項の厳密な表現を導出します。この部分は予想ではなく、ちゃんと証明します。

そのあとで、予想との関係を説明したいと思います。
また、これまでの記事と同じように次のように定義します。

$a_k(n)$$k$-ナッチ数列の第 $n$ 項として、
${\displaystyle S_k(n):=\sum_{i=0}^{n} a_k(i)}$

$\left\lfloor x\right\rceil$は四捨五入を表す関数です。すなわち
    ${\displaystyle \left\lfloor x\right\rceil=\left\lfloor x+\frac{1}{2}\right\rfloor}$

以下の記事では特に断りがない限り $k$ は 2以上の整数、$n$ は0以上の整数とします。

$k$-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項の厳密な表現の導出

母関数を考える

母関数を考えます。
$a_k(n),S_k(n)$ の母関数をそれぞれ

${\displaystyle G^{[k]}(x):=\sum_{i=0}^{\infty}a_k(i)x^i}$
${\displaystyle H^{[k]}(x):=\sum_{i=0}^{\infty}S_k(i)x^i}$

とします。

階差を考えれば、$i>0$ のときは $a_k(i)=S_k(i)-S_k(i-1)$ となりますから、
${\displaystyle \begin{align} (1-x)H^{[k]}(x)&=\sum_{i=0}^{\infty}S_k(i)(1-x)x^i\\ &=S_k(0)+\sum_{i=1}^{\infty}\left(S_k(i)-S_k(i-1)\right)x^i\\ &=a_k(0)+\sum_{i=1}^{\infty}a_k(i)x^i\qquad(\because S_k(0)=a_k(0)=0)\\ &=G^{[k]}(x) \end{align}}$

ところで $G^{[k]}(x)$ を閉じた式で表すとこうなるのでした。

 ${\displaystyle G^{[k]}(x)=\frac{x^{k-1}}{1-x-x^2-x^3-\cdots -x^{k}} }$

参考: フィボナッチ数を一般化したk-ナッチ数の一般項
これを使うと

${\displaystyle \begin{align} H^{[k]}(x) &=\frac{G^{[k]}(x)}{1-x}\\ &=\frac{x^{k-1}}{(1-x-x^2-x^3-\cdots -x^{k})(1-x)}\\ &=\frac{x^{k-1}}{1-2x+x^{k+1}} \end{align}}$

部分分数分解して無限級数化する

  $x$の方程式 $1-x-x^2-x^3-\cdots -x^{k}=0$$k$つの解を $\alpha_1,\alpha_2,\cdots,\alpha_k$ とし、さらに $\alpha_{k+1}=1$ とすると、
    ${\displaystyle \begin{align} H^{[k]}(x)&=\frac{x^{k-1}}{(1-x-x^2-x^3-\cdots -x^{k})(1-x)}\\ &=\frac{x^{k-1}}{(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)\cdots(x-\alpha_{k+1})}\\ &=\sum_{i=1}^{k+1} \frac{x^{k-1}}{x-\alpha_i}\cdot\frac{1}{\prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}(\alpha_i-\alpha_j)}\\ &=\sum_{i=1}^{k+1} \frac{-x^{k-1}}{1-\frac{x}{\alpha_i}}\cdot\frac{1}{\alpha_i\prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}(\alpha_i-\alpha_j)}\\ &=\sum_{n=0}^{\infty}\left(-x^{n+k-1} \sum_{i=1}^{k+1} \frac{1}{\alpha_i^{n+1}\prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}(\alpha_i-\alpha_j)}\right) \\ \end{align} } $

ここで ${\displaystyle H^{[k]}(x)=\sum_{n=0}^{\infty}S_k(n) x^n }$ だったことを思い出して上記の式と係数比較すると、

    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n)&= \sum_{i=1}^{k+1} \frac{-1}{\alpha_i^{n-k+2}\prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}(\alpha_i-\alpha_j)}\\ \end{align} }$

逆数で書き換える

ここまで$x$の方程式 $(1-x-x^2-x^3-\cdots -x^{k})(x-1)=0$$k+1$ つの解を $\alpha_1,\alpha_2,\cdots,\alpha_{k+1}$ として計算してきましたが、$x=\frac{1}{t}$と置換した $t$の方程式 $(t^k-t^{k-1}-\cdots-t^2-t-1)(t-1)=0$の解を $t=\beta_1,\beta_2,\cdots,\beta_{k+1}$ とすると、$\alpha_i=\frac{1}{\beta_i}$ と書き換えることができます。このとき $\beta_{k+1}=\frac{1}{\alpha_{k+1}}=1$ と対応させます。

すると、
    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n)&= \sum_{i=1}^{k+1} \frac{-\beta_i^{n-k+2}}{\prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}\left(\frac{1}{\beta_i}-\frac{1}{\beta_j}\right)}\\ &= \sum_{i=1}^{k+1} \frac{-\beta_i^{n-k+2}\cdot \beta_i^{k-1}\cdot\beta_1 \beta_2 \cdots\beta_{k+1}}{\prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}\left(\beta_j-\beta_i\right)}\\ &= \sum_{i=1}^{k+1} \frac{-\beta_i^{n-k+2}\cdot \beta_i^{k-1}\cdot(-1)^{k+1}}{(-1)^k\prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}\left(\beta_i-\beta_j\right)}\\ &= \sum_{i=1}^{k+1} \frac{\beta_i^{n+1}}{\prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}\left(\beta_i-\beta_j\right)} \\ \end{align} }$

これで、k-ナッチ数の部分和の一般項を表す式ができました!

k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項

    ${\displaystyle S_k(n) = \sum_{i=1}^{k+1} \frac{\beta_i^{n+1}}{\prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}\left(\beta_i-\beta_j\right)} }$

ただし、$\beta_1,\beta_2,\cdots,\beta_k$$t$の方程式 $t^k-t^{k-1}-\cdots-t^2-t-1=0$$k$ 個の解とし、$\beta_{k+1}=1$ とする。

別表現を作る

ところで、
$f(x):= x^k-x^{k-1}-\cdots-x^2-x-1$,
$g(x):=(x-1) f(x) $
とすると$g(x)=(x-\beta_1)(x-\beta_2)\cdots(x-\beta_{k+1})$ と因数分解できることと、ロピタルの定理を使うと、

        ${\displaystyle \begin{align} \prod_{\substack{j=1\\i\ne j}}^{k+1}\left(\beta_i-\beta_j\right) &=\lim_{x\to\beta_i} \frac{g(x)}{x-\beta_i}\\ &=g'(\beta_i) \end{align} }$
と書き換えることができます。
さらに、$\beta_{k+1}=1$ を使えば、

    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &= \sum_{i=1}^{k+1} \frac{\beta_i^{n+1}}{g'(\beta_i)}\\ &= \frac{1^{n+1}}{g'(1)} + \sum_{i=1}^{k} \frac{\beta_i^{n+1}}{g'(\beta_i)} \end{align} }$

ここで
$g'(x)=(x-1)f'(x)+f(x)$
$f(\beta_i)=0$
より
$\begin{align} g'(1)&=(1-1)f'(1)+f(1)\\ &=1-k \end{align}$
$\begin{align} g'(\beta_i)&=(\beta_i-1)f'(\beta_i)+f(\beta_i)\\ &=(\beta_i-1)f'(\beta_i) \end{align}$
ですから

    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &= \frac{-1}{k-1} + \sum_{i=1}^{k} \frac{\beta_i^{n+1}}{(\beta_i-1)f'(\beta_i)} \end{align} }$

k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項(別表現)

    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &= \frac{-1}{k-1} + \sum_{i=1}^{k} \frac{\beta_i^{n+1}}{(\beta_i-1)f'(\beta_i)} \end{align} }$

ただし、$f(x)=x^k-x^{k-1}-\cdots-x^2-x-1$ として $\beta_1,\beta_2,\cdots,\beta_k$$x$の方程式 $f(x)=0$$k$個の解とし、$\beta_{k+1}=1$ とする。 $f'(x)$$f(x)$ の導関数である。

予想との関係

以前の記事で確認したとおり、$x^k-x^{k-1}-\cdots-x^2-x-1=0$$1< x<2$ の範囲に1つの実数解をもち、残りの $k-1$個の(複素数範囲の)解の絶対値は1未満です。

参考: フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想(その2)

上記の式は等比数列の和の形になっていますから、公比の絶対値が1未満の項は $n$ が大きいときは計算結果にほとんど影響をあたえないことから、$n$ が大きいときには前の記事の予想(以下に再掲)が成立することがわかります。

k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想

    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &= \left\lfloor \frac{A_k^{n+1}}{C_k} -\frac{1}{k-1} \right\rceil \end{align} }$

ただし、$A_k,C_k$は次の定数である。
    $f_k(x)=x^k-x^{k-1}-x^{k-2}-\cdots-x^2-x-1$
として、

    ${\displaystyle A_k\cdots\cdots f_k(x)=0\text{ の正の実数解} }$

    ${\displaystyle \begin{align} C_k &=(A_k-1)f_k'(A_k) \end{align} }$

まとめるとこうなります。

証明できたこと
    
    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &\sim \left\lfloor \frac{A_k^{n+1}}{C_k} -\frac{1}{k-1} \right\rceil \end{align} }$

証明したいこと
    
    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &= \left\lfloor \frac{A_k^{n+1}}{C_k} -\frac{1}{k-1} \right\rceil \end{align} }$ が すべての $n$ について成立する

数値計算で実験したところでは、 $n$ が大きいときだけでなく、すべての $n$ に対してこの式が成立するのではないかと考えています。
引き続き何か情報等ありましたらコメント欄等へご連絡お願いします!

投稿日:202119

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