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再訪:Legendre(ルジャンドル)変換について

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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{Exists}[0]{{}^{\exists}} \newcommand{Forall}[0]{{}^{\forall}} \newcommand{lla}[0]{\Longleftarrow} \newcommand{lra}[0]{\Longrightarrow} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{O}[0]{\Omega} \newcommand{p}[0]{\partial} \newcommand{ph}[0]{\varphi} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前回の記事 でも紹介した Legendre変換 について, 定理(= convex duality of Hamiltonian & Lagrangian)の証明とその例を与える.

以下, $n\in \mathbb{N}$, $|\cdot|$$\R^{n}$ に於けるEuclid ノルムとする, $B_{r}(x)$ を点 $x\in \R^{n}$ に於ける半径 $r>0$ の開球を表す.

前回の振り返り.

前回の記事でも定義したが, $v\in \R^{n}$ のみに依存する Lagrangian $L:\R^{n} \to \R$ を, 凸かつ強圧的なものとする. 但し, $L$ が強圧的であるとは,
\begin{align*} \lim_{|v|\to \infty}\frac{L(v)}{|v|} = +\infty \end{align*}
をみたすことである. この $L$ に対して, Legendre(ルジャンドル)変換 $L^{*}$ を定義する.

Legendre変換 と Hamiltonian

$L$ の Legendre変換 $L^{*}$ を,
\begin{align} L^{*}(p) = \sup_{v \in \R^{n}} \bigl\{ p\cdot v -L(v) \bigr\}, \quad p \in \R^{n} \end{align}
で定義する. $\sup$ は実際には $\max$ となる. (これは前回の記事で証明した.)
また, $p\in \R^{n}$ のみに依存する Hamiltonian $H:\R^{n} \to \R$ を, $H(p)=L^{*}(p)$ で定義する.

Convex duality of Hamiltonian & Lagrangian について.

上で定義した Lagrangian $L$ とHamiltonian $H$ に対して, これらの関係を考える.

convex duality

$L$$H=L^{*}$ に対して, 次の (i),(ii) が成り立つ:
(i) $\ $ $H$ は凸函数かつ強圧的,
(ii) $\,$ $H^{*}=L.$ $\, ({\rm i.e.,} \ L^{**}=L.)$

この定理によって, $L$ が凸函数かつ強圧的の仮定をみたすLagrangian が与えられれば, そのLegendre 変換で Hamiltonian $H$ が導けることを示している. また, (ii) からLegendre変換を2回施すと元に戻ることが言える. ここではこの性質を, "convex duality" と呼ぶ.
前回の記事では証明まで紹介できなかったので, 今回はこの定理をきちんと示すことにする.

(i): まず, 凸性について. $\Forall \theta \in [0,1],\Forall p,\hat{p} \in \mathbb{R}^{n}$ に対して,
\begin{align}
H(\theta p + (1-\theta)\hat{p})
&= \sup{v \in \mathbb{R}^{n}}\bigr{(\theta p + (1-\theta)\hat{p})\cdot v -L(v) \bigl} \nonumber \
&= \sup
{v \in \mathbb{R}^{n}} \bigl{ \theta p \cdot v - \theta L(v)+(1-\theta)\hat{p}\cdot v - (1-\theta)L(v) \bigr} \nonumber \
&\leq \theta \sup{v \in \mathbb{R}^{n}}\bigl{ p\cdot v -L(v) \bigr} +(1-\theta)\sup{v \in \mathbb{R}^{n}}\bigl{ \hat{p}\cdot v -L(v) \bigr} \nonumber \
&= \theta H(p) + (1-\theta)H(\hat{p})
\end{align}
となる. 従って, $H$ は凸函数である.
次に, $H$ が強圧的であることについて. $ \lambda>0$ を任意に固定する. $p \in \R^{n}\backslash{0}$ とする. このとき,
\begin{align}
H(p) = L^{}(p)
&= \sup{v \in \mathbb{R}^{n}} \bigl{ p \cdot v -L(v) \bigr} \nonumber \
&\geq p \cdot \frac{\lambda}{|p|}p - L\Bigl(\frac{\lambda}{|p|}p\Bigr) \qquad (v = \frac{\lambda}{|p|}p とした.) \nonumber \
&= \lambda |p| -L\Bigl(\frac{\lambda}{|p|}p\Bigr) \nonumber \
&\geq \lambda |p|- \sup
{v \in \overline{B}{\lambda}(0)} L(v) \qquad (L は \overline{B}{\lambda}(0)で連続より) \nonumber \
&= \lambda |p| - M{\lambda} \qquad (M{\lambda}:=\sup{v \in \overline{B}{\lambda}(0)} L(v) とおく)
\end{align}
となる. 従って, $\Forall p \in \R^{n}\backslash {0}$ に対して, $\frac{H(p)}{|p|} \geq \frac{\lambda |p|-M{\lambda}}{|p|} = \lambda - \frac{M{\lambda}}{|p|}$ が成り立つので,
\begin{align}
\liminf{|p|\to \infty}\frac{H(p)}{|p|} \geq \liminf{|p|\to \infty} \biggr( \lambda - \frac{M{\lambda}}{|p|} \biggl) = \lambda
\end{align}
となる. ここで, $\lambda>0$ は任意なので, $\lambda \to +\infty$ とすると,
\begin{align}
\lim
{|p| \to \infty} \frac{H(p)}{|p|} = +\infty
\end{align}
が成り立つ. 従って, $H$ は強圧的である. 以上より, $H$ は凸かつ強圧的である.
(ii): (i)より, $H$ に対して Legendre変換 $H^{*}$ を定義することができる事に注意する. ここで, $v \in \mathbb{R}^{n}$ を任意に固定する. このとき,
\begin{align}
H^{
}(v)
&= \sup{p\in \mathbb{R}^{n}} \Bigl{ p\cdot v -H(p) \Bigr} \nonumber \
&= \sup
{p\in \mathbb{R}^{n}} \Bigl{ p\cdot v -\sup{r \in \mathbb{R}^{n}}\bigl{ p\cdot r -L(r) \bigr} \Bigr} \nonumber \
&= \sup
{p\in \mathbb{R}^{n}} \Bigl{ p\cdot v +\inf{r \in \mathbb{R}^{n}}\bigl{ L(r)-p\cdot r \bigr} \Bigr} \nonumber \
&= \sup
{p \in \mathbb{R}^{n}}\inf{r \in \mathbb{R}^{n}} \Bigl{ L(r) +p\cdot(v-r) \Bigr} = (\ast) \nonumber
\end{align}
となる. ここで, $L$ は凸函数なので, $v \in \R^n$ に対して, $ \Exists s \in \R^{n} \ {\rm s.t.}$
\begin{align}
L(r) \geq L(v) + s \cdot(r-v) , \quad r \in \mathbb{R}^{n}
\end{align}
とできる*. よって, $r \in \mathbb{R}^{n}$ に関して $\inf$ をとると,
\begin{align}
\inf
{r \in \mathbb{R}^{n}}\Bigl{ L(r)+s\cdot(v-r) \Bigr}
&\geq L(v)
\end{align}
を得る. 他方, $r=v$ とすれば $\displaystyle{L(v) \geq \inf{r \in \mathbb{R}^{n}}\Bigl{ L(r)+s\cdot(v-r) \Bigr} }$ は常に成り立つ. 従って,
\begin{align}
\inf
{r \in \mathbb{R}^{n}}\Bigl{ L(r)+s\cdot(v-r) \Bigr} = L(v)
\end{align}
が成り立つので, $(\ast)$ より, $p=s$ と取れば,
\begin{align}
H^{
}(v) = (\ast)
&= \sup{p \in \mathbb{R}^{n}}\inf{r \in \mathbb{R}^{n}} \Bigl{ L(r) +p\cdot(v-r) \Bigr} \
&\geq \inf{r \in \mathbb{R}^{n}}\Bigl{ L(r)+s\cdot(v-r) \Bigr} = L(v)
\end{align*}
を得る. よって, $H^{}(v)\geq L(v), v \in \R^{n}$ が示された. 逆の不等号は $H^{}$ の定義より, 任意の $v \in \R^{n}$ に対して,
\begin{align}
H^{*}(v) = \sup
{p \in \R^{n}} \bigl{ p\cdot v-H(p) \bigr} \leq \sup_{p\in \R^{n}}L(v) =L(v)
\end{align}
が成り立つ. 従って, $H^{*}=L$ を得る.

Legendre変換について, 最も典型的な例を挙げる:

簡単の為, $n=1$ とする. $L(v)=\frac{v^{2}}{2}, v \in \R $ とする. このとき, Hamiltonian $H$ は,
\begin{align} H(p) = L^{*}(p) = \frac{p^{2}}{2}, \quad p \in \R \end{align}
で与えられる.

この例の証明は 前回の記事 で述べた.

このLegendre変換について,より詳しい内容は, [1] の3章及び10章を参考にして欲しい. そこではある型のHamilton-Jacobi方程式の初期値問題との関連についても述べられている.

[参考文献]
[1] L.C. Evans, Partial Differential Equations, GSM 19, Amer. Math. Soc., 1998.

投稿日:2021110
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偏微分方程式論/その他,備忘録

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