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高校数学解説
文献あり

x^k-x^(k-1)-…x-1=0 の解の累乗の和についての予想(その2・予想の証明とk-リュカ数)

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はじめに

この記事は以前書いた記事

〇  x^k-x^(k-1)-…x-1=0 の解の累乗の和についての予想

の続きになります。まだ読んでいない方は先に上記の記事を読んでからこの記事を読むことをおすすめします。

予想の内容

あらためて予想の内容を書くと次のようなものでした。

$x^k-x^{k-1}-…-x-1=0$ の解の累乗の和についての予想

$k$ を自然数とする。また、$n$$k$ 以下の自然数とする。
$x$ の方程式 $x^k-x^{k-1}-\cdots -x^3-x^2-x-1=0$ の解を $\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3,\cdots,\alpha_k$ とすると
${\displaystyle \sum_{i=1}^{k}\alpha_i^n=2^n-1 }$
が成り立つ。

この記事をアップしてから、Mathlog のコメントや Twitter でたくさんの情報をいただきました。おかげさまで予想が正しいことを証明できました!皆様のご協力にこの場を借りて感謝いたします。
〇  kzaukzau さんのコメント
〇  iida_256 さんの記事 apu氏の予想に関する考察[2]
〇  おめ さんのツイート
〇  ババ。 さんのツイート
〇  たけのこ赤軍 さんのツイート

証明

解に $x=1$ を加える

式を簡単にするためにひと手間加えます。
$x^k-x^{k-1}-\cdots -x^3-x^2-x-1=0$
の両辺に $(x-1)$ を乗じると
$x^{k+1}-2x^{k}+1=0$
となります。
$f_k(x):=x^{k+1}-2x^{k}+1$
と定義し、$\alpha_{k+1}=1$ とすると、$x$ の方程式 $f_k(x)=0$ の解は
$\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3,\cdots,\alpha_{k+1}$
となります。こうすることで、
${\displaystyle \sum_{i=1}^{k+1}\alpha_i^n=2^n }$
を証明すればよいことになります。

ニュートンの恒等式

証明にはニュートンの恒等式を使います。
なお、ニュートンの恒等式についてはこれらのサイトを参考にしました。
高校数学の美しい物語 ニュートンの恒等式とその証明
Wikipedia(en) Newton's identities

説明の都合上、元記事とは $n$$k$ の文字を入れ替えています。

$x_1, \cdots , x_k$を変数とし、 $p_n(x_1, ... , x_k)$$n$ 乗和を表します。$(n\geq1)$

${\displaystyle \begin{align} p_{n}(x_{1},\ldots ,x_{k})&=\sum _{i=1}^{k}x_{i}^{n}\\ &=x_{1}^{n}+\cdots +x_{k}^{n} \end{align} }$

そして、 $e_n(x_1, \cdots, x_k)$ で基本対称式(つまり、$n$ 個の異なる変数の積すべての和)を表しまします。ただし、$n=0$ のときは $1$とし、$n>k$ のときは $0$ とします。 $(n\geq 0)$

${\displaystyle {\begin{aligned}e_{0}(x_{1},\ldots ,x_{k})&=1,\\ e_{1}(x_{1},\ldots ,x_{k})&=x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{k},\\ e_{2}(x_{1},\ldots ,x_{k})&=\textstyle \sum _{1\leq i< j\leq k}x_{i}x_{j},\\ \qquad\vdots\\ e_{k}(x_{1},\ldots ,x_{k})&=x_{1}x_{2}\cdots x_{k},\\ e_{n}(x_{1},\ldots ,x_{k})&=0,\quad {\text{for}}\ \ n>k.\\\end{aligned}}}$

そうすると、ニュートンの恒等式は次のようになります。$(k \geq 1$ , $k \geq n \geq 1)$

${\displaystyle ne_{n}(x_{1},\ldots ,x_{k})=\sum _{i=1}^{n}(-1)^{i-1}e_{n-i}(x_{1},\ldots ,x_{k})p_{i}(x_{1},\ldots ,x_{k})}$

また、次のようになります。$(n>k\ge1)$

${\displaystyle 0=\sum _{i=n-k}^{n}(-1)^{i-1}e_{n-i}(x_{1},\ldots ,x_{k})p_{i}(x_{1},\ldots ,x_{k})}$

証明

ではいよいよ証明に入ります。

${\displaystyle\sum_{i=1}^{k+1}\alpha_i^n=2^n}$ $(1\le n\le k)$ の証明

$f_k(x):=x^{k+1}-2x^{k}+1$
と定義し、$x$ の方程式 $f_k(x)=0$$(k+1)$ 個の解を
$\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3,\ldots,\alpha_{k+1}$
とする。解のうち1つは$1$であり、これを$\alpha_{k+1}(=1)$ とする。
基本対称式の定義より
${\displaystyle f_k(x)=\sum_{i=0}^{k+1} (-1)^{k+1-i} e_{k+1-i}(x_{1},\ldots,x_{k+1})\cdot x^i }$
であるから、係数比較して
${\displaystyle e_{i}(x_{1},\ldots,x_{k+1})= \begin{cases} 1&\qquad\text{i=0} \\ 2&\qquad\text{i=1} \\ 0&\qquad\text{1 < i < k+1}\\ 1&\qquad\text{i=k+1} \end{cases} }$

ここからニュートンの恒等式を使います。
ただし、 $e_{n}(\alpha_1,\ldots,\alpha_{k+1})$ は単に $e_{n}$ と、$p_{i}(\alpha_1,\ldots,\alpha_{k+1})$ は単に $p_{i}$ と、それぞれ省略して書きます。

(i) $n=1$ のときは
${\displaystyle \begin{align} 1e_{1}&=\sum _{i=1}^{1}(-1)^{i-1}e_{1-i}p_{i}\\ &=e_{0}p_{1} \end{align}}$
$\therefore p_1=2$

(ii) $2\le n\le k$ のときは
${\displaystyle \begin{align} ne_{n}&=\sum _{i=1}^{n}(-1)^{i-1}e_{n-i}p_{i}\\ \end{align}}$
${\displaystyle \begin{align} 0=(-1)^{n}2p_{n-1}+(-1)^{n-1}p_{n}\\ \end{align}}$
より
${\displaystyle \begin{align} p_{n}&=2p_{n-1}\\ &=4p_{n-2}\\ &\vdots\\ &=2^{n} \end{align}}$

以上より
${\displaystyle p_n=2^n}$ $(1\le n\le k)$
ここで ${\displaystyle p_n=\sum_{i=1}^{k+1}\alpha_i^n}$ であるから、
${\displaystyle \sum_{i=1}^{k+1}\alpha_i^n=2^n}$ $(1\le n\le k)$

あとは $x=1$ の解を除外すれば完成です。

${\displaystyle\sum_{i=1}^{k}\alpha_i^n=2^n-1}$ $(1\le n\le k)$ の証明

${\displaystyle \sum_{i=1}^{k+1}\alpha_i^n=2^n}$
${\displaystyle \alpha_{k+1}^n+\sum_{i=1}^{k}\alpha_i^n=2^n}$
${\displaystyle 1+\sum_{i=1}^{k}\alpha_i^n=2^n \qquad\because \alpha_{k+1}=1}$
${\displaystyle \therefore\sum_{i=1}^{k}\alpha_i^n=2^n-1}$

これで証明の完成です。
予想は正しかった!

$x^k-x^{k-1}-…-x-1=0$ の解の累乗の和についての予想

$k$ を自然数とする。また、$n$$k$ 以下の自然数とする。
$x$ の方程式 $x^k-x^{k-1}-\cdots -x^3-x^2-x-1=0$ の解を $\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3,\cdots,\alpha_k$ とすると
${\displaystyle \sum_{i=1}^{k}\alpha_i^n=2^n-1 }$
が成り立つ。

k-リュカ数列について

実は、この予想はリュカ数列を一般化した$k$-リュカ数列というものを考えられないだろうか、と試行錯誤していて思いついたものです。

知らない方のために説明すると、リュカ数列というのはフィボナッチ数列と深い関係のある数列で、次の漸化式で定義されます。

リュカ数列 $(L_n)$の漸化式による定義

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} L_0 = 2,\\ L_1 = 1,\\ L_{n+2} = L_n + L_{n+1} (n \ge 0). \end{array} \right. \end{eqnarray}$$

漸化式はフィボナッチ数と同じで、初項だけが違います。

フィボナッチ数列 $(F_n)$の漸化式による定義

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} F_0 = 0,\\ F_1 = 1,\\ F_{n+2} = F_n + F_{n+1} (n \ge 0). \end{array} \right. \end{eqnarray}$$

以前、フィボナッチ数列を一般化した$k$-ナッチ数列というものを考えましたので、今度は、それに対応するリュカ数列を一般化した$k$-リュカ数列というものを考えてみたい、というわけです。

参考: フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想(その4・証明完成)

今回証明した式は、$k$-リュカ数 と呼んでもよい性質を持っていると考えています。そのことについてはあらためて記事を書こうとおもいます。
今日はここまでです。今後にご期待ください!

参考文献

投稿日:2021124

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