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大学数学基礎議論
文献あり

積分の続き

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前回の記事( https://mathlog.info/articles/1752 ) では, Don@ld氏の問題,
I=eπ/2(2tcos(eπt/2+π4)+(t2+3)sin(eπt/2+π4))(t2+1)(t2+9)dt

I=π220sinxln2x+(π/2)2dxπ2e2
まで, 変形しました. 今回こそはこれを解いていきたいと思います. どうやらマイナーな定数が使われているらしいということが分かったんですが, まず, 前回の定理3を強くしていきたいと思います.

以下のように関数ηを定義する. 定義域は右辺の積分が収束する範囲とする.
η(α,z):=0eiαxlnxzdx

0<αRのとき,
η(α,z)+η(α,ziπ)={2πiez+iαez,(0<Imz<π)0,(otherwise)

これは前回の定理3とまったく同様なので証明は省略する.

0<Re{α},Im{α},0<βπ2のとき,
η(α,z)eiβη(αeiβ,ziβ)={2πiez+iαez,(0<Imz<β)0,(otherwise)

被積分関数
eiαxlnxz
に対し, 以下のような積分路を考える.

積分路 積分路
先にR1とするとして,
R3+iR2+iR2eiαxlnxzdx
R20に収束することを示せば, あとは同様に留数定理から従う.
R3+iR2+iR2eiαxlnxzdx=eαR2R3eiαxln(x+iR2)zdx
0<Im{α}ならば積分は収束し, R2のとき, 0に収束する. また0<Re{α}より, eαR20に収束する. よって, 定理は示された.

0<αRのとき,
0sinαxln2x+(π/2)2dx=0eαxln2x+π2dx+eα

定理1でz=iπ2として,
0lnxcosαxπ2sinαxln2x+(π/2)2dx=πeα
また, 定理2でβ=π2,z=iπ2として, その実部をとって,
0lnxcosαx+π2sinαxln2x+(π/2)2dx=π0eαxln2x+π2dx
2つ目の式から1つ目の式を引くことにより, 定理を得る.

ここで, 補題を用意しよう, と思ったんですが, 以下は証明ができなかったので予想としておいておきます.

0<αR,βRのとき,
01xyeαxsinβydxdy=10xyeαxsinβydydx001xyeαxsinβydxdy=010xyeαxsinβydydx

予想が成立するならば, 0<αR,nNのとき,
0eαxln2x+(nπ)2dx=1n0αx1Γ(x)sinnπxsinπxdx+(1)nne(1)n1α

まず, よく知られたラプラス変換により,
1nπ0xysinnπydy=1ln2x+(nπ)2,(1<x)1nπ0xysinnπydy=1ln2x+(nπ)2,(0<x<1)
よって,
0eαxln2x+(nπ)2dx=01eαxln2x+(nπ)2dx+1eαxln2x+(nπ)2dx=1nπ(010xyeαxsinnπydydx+10xyeαxsinnπydydx)
ここで, 予想の式を用いると,
010xyeαxsinnπydydx+10xyeαxsinnπydydx=001xyeαxsinnπydxdy+01xyeαxsinnπydxdy
ここで, 0<yに対し,
01xyeαxdx=0r(α)rr!(r+y+1)1xyeαxdx=αy1Γ(1y)0r(α)rr!(ry+1)
であるから,
001xyeαxsinnπydxdy+01xyeαxsinnπydxdy=00r(α)rr!(r+y+1)sinnπydy+0(αy1Γ(1y)0r(α)rr!(ry+1))sinnπydy=r+10r(1)(r+1)n(α)rr!sinnπyydy+r+10r(1)(r+1)n(α)rr!sinnπyydy+0αy1Γ(1y)sinnπydy=(1)nsinnπyydy0r((1)n1α)rr!+π0αy1Γ(y)sinnπysinπydy=π0αy1Γ(y)sinnπysinπydy+(1)nπe(1)n1α
よって,
0eαxln2x+(nπ)2dx=1n0αx1Γ(x)sinnπxsinπxdx+(1)nne(1)n1α

さて, 定理はそろったので問題を解いていきます. 定理3において, α=1として用いることにより,

I=π220sinxln2x+(π/2)2dxπ2e2=π220exln2x+π2dx
定理4において, 特にn=1として,
0eαxln2x+π2dx=0αx1Γ(x)dxeα
が成り立ちます. 上の式において, α=1として,
π220exln2x+π2dx=π22(01Γ(x)dxe)

ここで,
F=01Γ(x)dx
はFransén–Robinson constant( https://en.wikipedia.org/wiki/Frans%C3%A9n%E2%80%93Robinson_constant ) として知られているので(いや, この定数は知らんかったわ), それを用いて,

I=π22(Fe)
と表すことができました. あの予想がそもそもあってるのかはおいといて, まあまあうまくいったと思いました.

参考文献

投稿日:2021217
OptHub AI Competition

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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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