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微分するとスケールが変化する関数(f'(x)=f(ax))を考えてみたが・・・

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問題

aを実数とする。
f(x)=f(ax)を満たす関数f:RRにはどんなものがあるだろうか?

前回、tを実数として、f(x)=f(xt)を満たす実関数を考えてみました。
一般解は求めることができなかったものの、f(x)Rで解析的と仮定しても任意定数が無限に必要でした。
さらに、解析的でない関数もいろいろ考えられることがわかりました(前回記事内コメント欄参照)。

今回はf(x)=f(ax)を考えてみましたが、やはり一般解はわかりませんでした。。。
(もちろん、WolframAlphaも求めてくれません。)
それどころか、aの値によっては、定数関数f(x)=0以外の特殊解がさっぱりわからないものまで・・・

一旦、わかる範囲のことを以下に書きます。

f(x)は微分可能なので、f(ax)も微分可能で、したがってf(x)も微分可能です。
両辺微分してf(x)=af(ax)となり、f(ax)も微分可能なので、f(x)も微分可能です。
同様に繰り返せば、f(x)は無限回微分可能です。

具体的に一般解が求まる場合

a=0のとき

このときは、方程式はf(x)=f(0) ()となるので、両辺を積分し、
f(x)=f(0)x+C (C:)となりますが、
x=0を代入するとf(0)=Cになるので、
f(x)=C(x+1) (C:)が一般解となります。
これ、スケール変化というか、ただの1次関数です・・・

f(x)=x+1(青線)とf(x)(赤線)のグラフ

a=0 a=0

a=1のとき

これはスケールが変わらないやつです。
このときは、f(x)=f(x)となり、微分方程式の中でも一番基本的な変数分離の問題になります。
定数関数f(x)=0が特殊解になるのは明らかなので、
f(x)0を仮定して、両辺f(x)で割ると、
f(x)f(x)=1
両辺積分して
log|f(x)|=x+c (c:)
よって、f(x)=±ex+c
f(x)=0の場合も含めて定数を置き換えると
f(x)=Cex (C:)という一般解が得られます。

f(x)=ex(青線)とf(x)(赤線)のグラフ。2つの曲線は重なっている。

a=1 a=1

a=1のとき

このときは、f(x)=f(x)となりますが、 この微分方程式について、以前記事を作っています。
ざっくり説明すると、f(x)2階微分可能なので、
f(x)=f(x)を両辺微分して、
f(x)=f(x)=f(x)
これは2階斉次微分方程式で、解は
f(x)=Acos(x)+Bsin(x) (A,B:)となりますが、
これがf(x)=f(x)を満たすためにはA=Bでなければならず、結局は
f(x)=C(cos(x)+sin(x)) (C:)が一般解であることがわかります。

f(x)=cos(x)+sin(x)(青線)とf(x)(赤線)のグラフ

a=-1 a=-1

一般解がよくわからなかったやつについて解析的な解を調べる

a=1,0,1以外の場合はよくわかりませんでした。
ひとまず、f(x)は無限回微分可能なので、f(x)は解析的だと仮定して解を調べてみます。

f(0),f(0),f(0),を求めます。
f(x)=f(ax)より、f(0)=f(0)
f(x)=af(ax)=af(a2x)より、f(0)=af(0)
f(x)=a2f(ax)=a3f(a3x)より、f(0)=a3f(0)
f(4)(x)=a3f(ax)=a6f(a4x)より、f(4)(0)=a6f(0)
繰り返すと、f(n)(x)=an(n1)2f(anx)より、f(n)(0)=an(n1)2f(0)です。

したがって、
f(x)=n=0f(n)(0)n!xn=f(0)n=0an(n1)2n!xn
となります。(n=0,x=0ではxn=1a=0,n=0,1ではan(n1)2=1と約束します。)

|a|1のとき

|a|1のとき、ダランベールの判定法から、n=0an(n1)2n!xnは収束します。
f(0)=Cとすると、
f(x)=Cn=0an(n1)2n!xn (C:)が解になります。

この冪級数を何かの初等関数や特殊関数で表せないのかな?と思ってWolframAlphaで調べましたが、何も出てきませんでした。残念・・・
さらに、f(x)が解析的であることを仮定してこの解が得られているので、他に非解析的な解がある可能性があります。

f(x)=n=0(12)n(n1)2n!xn (C:)(青線)とf(x)(赤線)のグラフ。
ただし、GeoGebraに関数の無限和は扱えないので、n=50までの和にしている。

a=1/2 a=1/2

f(x)=n=0(12)n(n1)2n!xn (C:)(青線)とf(x)(赤線)のグラフ。
上と同様、n=50までの和にしている。

a=-1/2 a=-1/2

|a|>1のとき

|a|>1のとき、
f(0)=0ならば、f(x)=0が出ますが、
f(0)0のときはn=0an(n1)2n!xnの収束半径が0になります。
つまり、f(x)=f(ax)を満たす解析的な解はf(x)=0しかありません。

非解析的な解ってあるんだろうか・・・

0<|a|<1または|a|>1のときは非解析的な解がある可能性があります。
x=0で冪級数展開できない解を構成するには、色々と変なことを考える必要が出てくるわけです。

a=2のときの非解析的な解を構成しようとしてみた

とりあえず、a=2としましょう。
まず、[1,2]の区間で、無限回微分可能関数f(x)を決めます。
すると、[1,2]f(x)が決まり、f(2x)が決まり、
[2,4]f(x)が決まります。
同様に、[4,8],[8,16],と決まっていき、[1,+)まで決まります。
逆に積分を考えることで、[12,1],[14,12],も決まります。
最終的に(0,+)の範囲まで決定できます。
同じように[2,1]の区間でf(x)を決めることで、(,0)も決まり、f(0)は両側の極限で定義すればいいのです。
ただし、x=,4,2,1,12,14,,0,,14,12,1,2,4,でも無限回微分可能になるように、いい感じにくっつける必要があります。
そのため、どう構成しようかと悩んでるのが現状です。

その他わかること

0<a<1かつf(0)=0ならば、x0においてf(x)=0である。

(証明)
まず、閉区間[0,1]において、恒等的にf(x)=0であることを背理法で証明します。

f(x)が閉区間[0,1]f(x)0と仮定します。
すると、f(s)0となるs(0,1]がありますが、
f(x)=f(ax)の解f(x)に対して、定数倍Cf(x)、特に1倍のf(x)もまた解になっているので、
f(s)>0としても一般性は失いません。

次に、区間(0,s]の部分集合で、f(x)=f(s)を満たすxの集合を用意します。
この集合{x(0,s]|f(x)=f(s)}は、必ずsを要素に持つので空集合ではありません。

t=inf{x(0,s]|f(x)=f(s)}とすると、
f(x)は連続なので、t>0です。
さらに、0<u<tf(u)<f(t)を満たします。

さて、
f(x)=f(ax)は両辺積分して、
f(x)=f(0)+1a0axf(u)duと表すことができます。
ここではf(0)=0なので、f(x)=1a0axf(u)duとなります。

f(t)を不等式で評価すると、
f(t)=1a0atf(u)du<1a0atf(t)du (f(u)<f(t))=1a×atf(t)=tf(t)f(t) (t1)
つまり、f(t)<f(t)となって矛盾します。

したがって、閉区間[0,1]において、恒等的にf(x)=0です。

続いて、範囲を広げて[0,)上のxf(x)=0になることを証明します。

f(x)=1a0axf(u)duaxを改めてxとすることで、
f(xa)=1a0xf(u)duとなります。

x[0,1]ならば、0xf(u)du=0なので、f(xa)=0です。
これは、x[0,1a]においてf(x)=0であることを意味します。

変数の置き換えを繰り返すことで、f(x)=0が言える範囲が[0,1a2],[0,1a3],[0,1a4],と広がり、
最終的に[0,)上のxf(x)=0になることがわかります。

さいごに

自分の予想としては、
f(0)=0となる非解析的な解はなく、
f(0)0ならばa1,0,1のときに非解析的な解がある
と思っています。
どなたかご存じの方は教えてください。

投稿日:2021218
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  1. 問題
  2. 具体的に一般解が求まる場合
  3. $a=0$のとき
  4. $a=1$のとき
  5. $a=-1$のとき
  6. 一般解がよくわからなかったやつについて解析的な解を調べる
  7. $|a|\leqq 1$のとき
  8. $|a|>1$のとき
  9. 非解析的な解ってあるんだろうか・・・
  10. $a=2$のときの非解析的な解を構成しようとしてみた
  11. その他わかること
  12. さいごに