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大学数学基礎議論
文献あり

col作用素

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こんにちは!的場 沙雪です.巷では三色関数を拡張した col関数 というのが流行っているみたいですね.これのテイラー展開表示を眺めていて,拡張出来るのではと思い至って記事にしました.

下準備

本題に移る前に,ちょっとだけ下準備をしておきます.またこの記事ではテイラー展開を主に扱うので00=1と規約しておきます.

複素関数

定義域がCの部分集合で,終域がCである写像を「複素関数」とよびます.

1の冪乗根

正整数nに対して,
ζn:=exp(2πin)
により複素数ζnを定義します.

col作用素

col作用素

正整数n,整数k,複素数a,複素関数fに対して,
zC, ((lZ, ζnl(za)+adeff)g(z):=1nl=1nζnlkf(ζnl(za)+a))
により定義される複素関数g:{zC:lZ, ζnl(za)+adeff}Ccoln,k[f;a]と表し,作用素coln,k:(DP(C)Map(D,C))×CDP(C)Map(D,C)を「col作用素」とよびます.

lZ, ζnl(za)+adeffを満たす複素数zが存在しない場合は,coln,k[f;a]は複素空関数coln,k[f;a]:Cとなります.

col関数との比較

col関数は,col作用素を用いてcoln,k=coln,k[exp;0]と表すことが出来ます.

周期性

以下の等式が成り立ちます.ただしnZ>0kZaCfは複素関数とします.
coln,k+n[f;a]=coln,k[f;a]

以下の等式が成り立ちます.ただしkZaCfは複素関数とします.
col1,k[f;a]=f

col関数で成り立っていたいくつかの定理の拡張が成り立ちます.

テイラー展開

以下の等式が成り立ちます.ただしnZ>0kZ[0,n[aCfは点a周りでテイラー展開可能な複素関数,rは複素関数fの点a周りのテイラー展開の収束半径,zCとし,
|za|<r
を満たすとします.
coln,k[f;a](z)=q=0f(qn+k)(a)(qn+k)!(za)qn+k

fが整関数(収束半径が無限大)のときはzに関する条件は特に無いとして読み替えてください.

大雑把な証明
解説
coln,k[f;a](z)=1nl=1nζnlkf(ζnl(za)+a)=1nl=1nζnlkm=0f(m)(a)m!(ζnl(za)+aa)m=m=0f(m)(a)m!(za)m1nl=1n(ζnmk)l=q=0f(qn+k)(a)(qn+k)!(za)qn+k
よりcoln,k[f;a](z)=m=0f(mn+k)(a)(mn+k)!(za)mn+kです.

以下の等式が成り立ちます.ただしnZ>0kZaCfは複素関数,zCとし,
lZ, ζnl(za)+adeff
を満たすとします.
l=1nζnlkcoln,l[f;a](z)=f(ζnk(za)+a)

大雑把な証明
解説
l=1nζnlkcoln,l[f;a](z)=l=1nζnlk1nm=1nζnmlf(ζnm(za)+a)=m=1nf(ζnm(za)+a)1nl=1n(ζnkm)l=f(ζnk(za)+a)
よりl=1nζnlkcoln,l[f;a](z)=f(ζnk(za)+a)です.

また,一次関数のずれはわざわざ一次関数を定義しなくても変数部分を弄れば表現できます.

以下の等式が成り立ちます.ただしnZ>0kZaCfは複素関数,Pは一次関数,zCとし,
lZ, P(ζnl(za)+a)deff
を満たすとします.
coln,k[fP;a](z)=coln,k[f;P(a)](P(z))

大雑把な証明
解説
α(ζnl(za)+a)+β=ζnl(αzαa)+αa+β=ζnl((αz+β)(αa+β))+(αa+β)
よりcoln,k[fP;a](z)=coln,k[f;P(a)](P(z))がわかります.

col関数はexpzを元に双曲線関数の拡張として作られていますが,これでexpizを元にcoln,k[exp;0](iz)(=coln,k(iz))により三角関数の拡張として作ることも出来ますね.具体的にはcol2,0(iz)=coszcol2,1(iz)=isinzです.まあ,これに関してはcol関数を調べれば変数を変えるだけで加法定理など簡単にわかりますね.

テイラー展開からすぐわかりますが,極限に関してこんなことがわかります.証明はテイラー展開とは異なる方法でしてみます(極限の交換とかよくわからんのと,個人的に面白い証明方法なので).

以下の等式が成り立ちます.ただしkZ0aCDは複素領域,fDで正則な関数,zCとし,
θR, eiθ(za)+aD
を満たすとし,limnnZ>0上を動くものとします.
limncoln,k[f;a](z)=f(k)(a)k!(za)k

大雑把な証明
解説
limncoln,k[f;a](z)=limn1nl=1nζnlkf(ζnl(za)+a)=limn1nl=1ne2πlknif(e2πlni(za)+a)=01e2πkixf(e2πix(za)+a)dx=(ζaza)kf(ζ)dζ2πi(ζa)=(za)k2πif(ζ)(ζa)k+1dζ=f(k)(a)k!(za)k
よりlimncoln,k[f;a](z)=f(k)(a)k!(za)kです.

ということは,こんな定義を考えるのが自然でしょう.

非負整数k,複素数a,点ak階微分可能な複素関数fに対して,
zC, g(z):=f(k)(a)k!(za)k
により定義される複素関数g:CCcol,k[f;a]と表します.

さらにcol関数にも定義しておきます.

非負整数kに対して,
zC, g(z):=zkk!
により定義される複素関数g:CCcol,kと表します.

col関数との比較

先程と同じくcol,k=col,k[exp;0]と表すことが出来ます.

テイラー展開を書き換えると,こうなります.自明ですがcol作用素とcol作用素が繋がっていて,何となく面白いかなと思ったので書いておきます.

定理 1

以下の等式が成り立ちます.ただしnZ>0kZ[0,n[aCfは点a周りでテイラー展開可能な複素関数とします.
coln,k[f;a]=q=0col,qn+k[f;a]

他にも,約数関数と絡めてこんなことも言えます(収束……条件……?とかいうのちょっとよくわからないので予想にしておきます…….なんか適当にダランベればいいんじゃないですか?).

以下の等式が成り立つと予想されます.ただしkZ[0,n[lZ0aCfは点a周りでテイラー展開可能な複素関数,rは複素関数fの点a周りのテイラー展開の収束半径,zCとし,
|za|<r
を満たすとします.
m=1σl(m)f(m+k)(a)(m+k)!(za)m+k=n=1nl(coln,k[f;a](z)col,k[f;a])

大雑把な証明
解説
m=1σl(m)f(m+k)(a)(m+k)!(za)m+k=m=1(nmn>0nl)f(m+k)(a)(m+k)!(za)m+k=m=1nmn>0nlf(m+k)(a)(m+k)!(za)m+k=m=1nmn>0nlf(mnn+k)(a)(mnn+k)!(za)mnn+k=q=1n=1nlf(qn+k)(a)(qn+k)!(za)qn+k=n=1nlq=1f(qn+k)(a)(qn+k)!(za)qn+k=n=1nl(coln,k[f;a](z)f(k)(a)k!(za)k)=n=1nl(coln,k[f;a](z)col,k[f;a])
よりm=1σl(m)f(m+k)(a)(m+k)!(za)m+k=n=1nl(coln,k[f;a](z)col,k[f;a])です.

col関数に適用してみるとこうなります.

以下の等式が成り立つと予想されます.ただしkZ[0,n[lZ0zCとします.
m=1σl(m)(m+k)!zm+k=n=1nl(coln,k(z)col,k(z))

他にも何かわかったら是非教えていただきたいです.

参考文献

投稿日:202148
OptHub AI Competition

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微分積分学,数理論理学,順序数解析が好きです.ここでは主に微積や級数の話題をすると思います.記事まとめは下のリンクからどうぞ.

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