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大学数学基礎解説
文献あり

赤げふ氏のζ(3)の予想の解決

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久しぶりに赤げふ氏の予想( https://mathlog.info/articles/509 ) に取り組んでみたらとりあえず解けたので, 記事にしたいと思う.

f(x):=1+1+32xとしたとき,
Re010101dxdydzf(f(f(x)y)z)=ζ(3)
ここで, Reは複素数の実部を表す.

これの同値な言いかえが彼の予想記事のコメントにおいて与えられている.

ω:=e2πi/3としたとき,
Re0<z<y<x<111+ωx+ω2y+z1xydxdydz=ζ(3)

まず, 用いる道具を用意していく.

Multiple polylogarithm

Lik1,,ka(z1,,za):=0=n0<n1<<nai=1azinini1nikiLik1,,ka(z1,,za):=0=n0<n1nai=1azinini1nikiLik1,,ka(z):=Lik1,,ka(z,,z)Lik1,,ka(z):=Lik1,,ka(z,,z)

Landen connection formula

k:=(k1,,ka)のHoffman双対インデックスをkとすると,
Lik(z)=Lik(zz1)

これに関して, Hoffmanの恒等式を用いて証明をつけておきます.

nk:=i=1anikiとする. Hoffmanの恒等式( https://mathlog.info/articles/114 を参照)の両辺にzNをかけて足し合わせると,
0<NzN0<n1naN1nk=0<NzN0<n1naN(1)na1nk(Nna)11z0<n1na1nkzn=11z0<n1naN(1)na1nkzna(1z)na
これを整理すればよい.

以下はKawashima-Tanaka-Wakabayashiによる論文, Cyclic sum formula for Multiple L-value( https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0021869311005424 ) において示されている式である. 詳細な条件は省略する.

Cyclic sum formula for Multiple L-value

λj{e2πik/n;k{0,,n1}},j{1,,a}とする.
j=1ai=1kj1Lii,kj1,,ka,k1,,kji+1(1,λj1,,λ1,λa,,λj)=j=1aLikj1,,k1,ka,,kj+1,kj+1(λj1,,λ1,λa,,λj)j=1a(1δλj,1)Likj1,,k1,ka,,kj,1(1,λj1,,λ1,λa,,λj)+j=1a(1δλj,1)Likj1,,k1,ka,,kj,1(λj,λj1,,λ1,λa,,λj)

命題1の証明

Re0<z<y<x<111+ωx+ω2y+z1xydxdydz=Re0<y<x<1[ln(1+ωx+ω2y+z)]0yxydxdy=Re0<y<x<1ln(1+ωx+(1+ω2)y)ln(1+ωx+ω2y)xydxdy=Re011x[Li2(ω2y1+ωx)Li2((1+ω2)y1+ωx)]0xdx=Re011x(Li2((1+ω)x1+ωx)Li2(ωx1+ωx))dx
ここで, x=y1+ωωyとして,
011xLi2((1+ωx)1+ωx)dx=01Li2(y)y(1+ω2y)dy=01(1yω21+ω2y)Li2(y)dy=ζ(3)+Li2,1(1,ω2)
また, Landen connection formulaより,
011xLi2(ωx1+ωx)dx=011xLi1,1(ωx)dx=Li1,2(ω)
よって,
Re(Li2,1(1,ω2)+Li1,2(ω))=0
を示せばよい. ρ=ωとする. ω2ρと共役であるから,
Re(Li2,1(1,ρ)+Li1,2(ρ))=0
を示す.
Cyclic sum formulaより,
Li2,1(1,ρ)=Li3(ρ)+Li2,1(ρ)+Li1,2(1,ρ)=Li2,1(ρ)+Li1,2(1,ρ)
Landen connection formulaより,
ReLi2,1(ρ)=ReLi1,2(ρ)=ReLi1,2(ρ)
だから, 示すべきことは
ReLi1,2(1,ρ)=0
に帰着されるが, これはx1z,y1y,z1xの置換により,
ReLi1,2(1,ρ)=Re0<x<y<z<111xρ1ρy1zdxdydz=Re0<x<y<z<111xρ1ρy1zdxdydz=ReLi1,2(1,ρ)
より示される.

参考文献

[1]
G. Kawashima, T. Tanaka, N. Wakabayashi, Cyclic sum formula for multiple L-values, Journal of Algebra
投稿日:202151
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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