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アーベルの総和公式のとある一般化

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\Gamma} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{Im}[0]{\mathrm{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\mathrm{Ker}} \newcommand{l}[0]{\left} \newcommand{ndiv}[0]{\nmid} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\mathrm{ord}} \newcommand{P}[0]{\mathbb{P}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\right} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\mathrm{Re}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{vt}[0]{\vartheta} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

 この記事では数論とかでよくみる便利なテクニックを紹介します。
 アーベルの総和公式とは次のような公式のことを言うのでした。

アーベルの総和公式

 $f$$C^1$級関数としたとき、$A(x)=\sum_{0\leq n\leq x}a_n$とおくと、
$$\sum_{0\leq n\leq x}a_nf(n)=A(x)f(x)-\int^x_0A(t)f'(t)dt$$
が成り立つ。

 これを一般化したものとして以下の主張が成り立ちます。

一般化アーベルの総和公式

 $A\subset\R_{\geq0}$を任意の切片が有限となる集合、$g$$C^1$級関数としたとき、$F(x)=\sum_{\substack{a\in A\\a\leq x}}f(a)$とおくと、
$$\sum_{\substack{a\in A\\a\leq x}}f(a)g(a)=F(x)g(x)-\int^x_0 F(t)g'(t)dt$$
が成り立つ。

\begin{eqnarray} \sum_{\substack{a\in A\\a\leq x}}f(a)g(a) &=&\sum_{\substack{a\in A\\a\leq x}}f(a)\l(g(x)-\int^x_a g'(t)dt\r) \\&=&\sum_{\substack{a\in A\\a\leq x}}f(a)g(x)-\int^x_0\sum_{\substack{a\in A\\a\leq t}}f(a)g(t)dt \\&=&F(x)g(x)-\int^x_0 F(t)g'(t)dt \end{eqnarray}

応用例

その1

 例えば$A$を素数全体を$\P$とし$f(p)=1,\;g(x)=\log x$とおくと、素数計数関数とチェビシェフ関数
$$\pi(x)=\sum_{p\leq x}1,\quad\vt(x)=\sum_{p\leq x}\log p$$
との関係を示す式
$$\vt(x)=\pi(x)\log x-\int^x_2\frac{\pi(x)}xdx$$
が得られる。
 同様の例は この記事 にてまとめられている。

その2

 同様に
$$A=\{p^n\mid p\in\P,\;n=1,2,3,\ldots\}$$
とし$f(p^n)=\log p,\;g(x)=x^{-s}$とおくとゼータ関数とチェビシェフ関数
$$-\frac{\z'(s)}{\z(s)}=\sum_{p}\sum^\infty_{n=1}\frac{\log p}{p^{ns}},\quad \psi(x)=\sum_{p^n\leq x}\log p$$
との関係を示す式
$$-\frac{\z'(s)}{\z(s)}=s\int^\infty_1\psi(x)x^{-s-1}dx$$
が得られる。
 これは 素数公式 を導出するのに重要な式となっている。

その3

 少し変則的だが$A$をリーマンゼータ関数の非自明な零点のうち虚部が正のもの全体
$$A=\{\rho\in\C\mid\z(\rho)=0,\;\Im(\rho)>0\}$$
とし
$$N(T)=\sum_{0<\Im(\rho)\leq T}1$$
とおくと
$$\sum_{\Im(\rho)>0}\frac4{4\Im(\rho)^2+1}=\int^\infty_0N(t)\frac{32t}{(4t^2+1)^2}dt$$
といった等式が得られる。
 これはリーマン予想と同値な Volchkovの等式 を導出するのに重要な式となっている。

投稿日:20211110
更新日:125
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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