$$$$
Def.
分布関数
$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とし、$X:\Omega\to\mathbb R$ を実数値確率変数とする。
$X$ の分布関数、または累積分布関数とは、関数 $F_X:\mathbb R\to[0,1]$ を
$$
F_X(x):=\mathbb P(X\le x)
$$
で定めたものである。
ここで、
$$
\{X\le x\}:=\{\omega\in\Omega\mid X(\omega)\le x\}
$$
である。
可測性について
$X$ は実数値確率変数であるから、任意の $x\in\mathbb R$ に対して、
$$
\{X\le x\}\in\mathcal F
$$
である。したがって、
$$
\mathbb P(X\le x)
$$
が定まる。
増大列
$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とする。
事象列 $(A_n)_{n\in\mathbb N}$、すなわち任意の $n\in\mathbb N$ に対して $A_n\in\mathcal F$ を満たす列が増大列であるとは、任意の $n\in\mathbb N$ に対して
$$
A_n\subseteq A_{n+1}
$$
が成り立つことをいう。
$\subseteq$ を使う理由
増大列では、各段階で集合が真に大きくなる必要はない。
例えば、ある $n\in\mathbb N$ に対して
$$
A_n=A_{n+1}
$$
となってもよい。
そのため、増大列の定義では
$$
A_n\subseteq A_{n+1}
$$
を用いるのが自然である。
減少列
$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とする。
事象列 $(A_n)_{n\in\mathbb N}$、すなわち任意の $n\in\mathbb N$ に対して $A_n\in\mathcal F$ を満たす列が減少列であるとは、任意の $n\in\mathbb N$ に対して
$$
A_{n+1}\subseteq A_n
$$
が成り立つことをいう。
$\subseteq$ を使う理由
減少列では、各段階で集合が真に小さくなる必要はない。
例えば、ある $n\in\mathbb N$ に対して
$$
A_{n+1}=A_n
$$
となってもよい。
そのため、減少列の定義では
$$
A_{n+1}\subseteq A_n
$$
を用いるのが自然である。
Prop&Proof.
確率測度の下からの連続性
$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とする。事象列 $(A_n)_{n\in\mathbb N}$ が増大列であるとする。
すなわち、任意の $n\in\mathbb N$ に対して、
$$
A_n\subseteq A_{n+1}
$$
が成り立つとする。さらに、
$$
A:=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n
$$
とおく。このとき、
$$
\mathbb P(A)=\lim_{n\to\infty}\mathbb P(A_n)
$$
が成り立つ。
- 次の事象列 $(B_n)_{n\in\mathbb N}$ を定める。
$$
B_1:=A_1
$$
また、$n\ge2$ に対して、
$$
B_n:=A_n\setminus A_{n-1}\ (=A_n\cap A_{n-1}^{c})
$$
と定める。
各 $A_n$ は $\mathcal F$ の元であり、$\mathcal F$ は $\sigma$ 代数であるから、任意の $n\in\mathbb N$ に対して、
$$
B_n\in\mathcal F
$$
である。
$ $ - まず、$B_1,B_2,B_3,\ldots$ は互いに素であることを示す。
$m< n$ とする。このとき、
$$
B_m\subseteq A_m\subseteq A_{n-1}
$$
である。一方、
$$
B_n=A_n\setminus A_{n-1}
$$
であるから、
$$
B_n\cap A_{n-1}=\varnothing
$$
である。したがって、
$$
B_m\cap B_n=\varnothing
$$
である。よって、$B_1,B_2,B_3,\ldots$ は互いに素である。
$ $ - 次に、任意の $N\in\mathbb N$ に対して、
$$
A_N=\bigcup_{n=1}^{N}B_n
$$
が成り立つことを示す。
i) $\bigcup_{n=1}^{N}B_n\subseteq A_N$ を示す。
任意に
$$
x\in\bigcup_{n=1}^{N}B_n
$$
をとる。このとき、集合族の和集合の定義より、ある $n\in\{1,2,\ldots,N\}$ が存在して、
$$
x\in B_n
$$
である。$B_n\subseteq A_n$ であり、増大列の仮定より $A_n\subseteq A_N$ であるから、
$$
x\in A_N
$$
である。よって、
$$
\bigcup_{n=1}^{N}B_n\subseteq A_N
$$
である。
$ $
ii) $A_N\subseteq\bigcup_{n=1}^{N}B_n$ を示す。
任意に $x\in A_N$ をとる。
■ $x\in A_1$ の場合
このとき、$B_1=A_1$ より、
$$
x\in B_1\subseteq\bigcup_{n=1}^{N}B_n
$$
である。
■ $x\notin A_1$ の場合
仮定より $x\in A_N$ であるから、
$$
\{k\in\{1,2,\ldots,N\}\mid x\in A_k\}
$$
は空でない有限集合である。したがって、その最小元を $m$ とおくことができる。
このとき、$x\notin A_1$ であるから、
$$
m\ge2
$$
である。また、$m$ の最小性より、
$$
x\notin A_{m-1}
$$
である。一方、
$$
x\in A_m
$$
である。したがって、
$$
x\in A_m\setminus A_{m-1}=B_m
$$
である。よって、
$$
x\in\bigcup_{n=1}^{N}B_n
$$
である。
以上より、いずれの場合も、
$$
x\in\bigcup_{n=1}^{N}B_n
$$
である。したがって、
$$
A_N\subseteq\bigcup_{n=1}^{N}B_n
$$
である。
i) と ii) より、
$$
A_N=\bigcup_{n=1}^{N}B_n
$$
である。
$ $ - さらに、
$$
A=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n
=
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
$$
である。実際、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
\subseteq
\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n
$$
は $B_n\subseteq A_n$ より従う。
逆に、任意に $x\in\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n$ をとる。このとき、集合族の和集合の定義より、
ある $N\in\mathbb N$ が存在して $x\in A_N$ である。すでに示した等式より、
$$
A_N=\bigcup_{n=1}^{N}B_n
$$
であるから、
$$
x\in\bigcup_{n=1}^{N}B_n
\subseteq
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
$$
である。
したがって、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n
\subseteq
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
$$
である。よって、
$$
A=
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
$$
である。
$ $ - $B_1,B_2,B_3,\ldots$ は互いに素であるから、確率測度の可算加法性より、
$$
\mathbb P(A)
=
\mathbb P\left(\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n\right)
=
\sum_{n=1}^{\infty}\mathbb P(B_n)
$$
である。
一方、任意の $N\in\mathbb N$ に対して、
$$
\mathbb P(A_N)
=
\mathbb P\left(\bigcup_{n=1}^{N}B_n\right)
=
\sum_{n=1}^{N}\mathbb P(B_n)
$$
である。
したがって、
$$
\lim_{N\to\infty}\mathbb P(A_N)
=
\lim_{N\to\infty}\sum_{n=1}^{N}\mathbb P(B_n)
=
\sum_{n=1}^{\infty}\mathbb P(B_n)
=
\mathbb P(A)
$$
である。
-以上より、
$$
\mathbb P(A)=\lim_{n\to\infty}\mathbb P(A_n)
$$
が成り立つ。
$$ \Box$$
$B_n$ を導入する意味
増大列 $(A_n)_{n\in\mathbb N}$ は、一般には互いに素ではない。
そのため、そのまま
$$
\mathbb P\left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n\right)
=
\sum_{n=1}^{\infty}\mathbb P(A_n)
$$
とはできない。そこで、
$$
B_1=A_1,\quad B_n=A_n\setminus A_{n-1}
$$
とおき、増大していくときに新しく追加された部分だけを取り出す。
このとき、$B_1,B_2,B_3,\ldots$ は互いに素になるため、可算加法性を使うことができる。
「下から」という意味
$A_n\uparrow A$ とは、事象列 $(A_n)_{n\in\mathbb N}$ が包含関係について増大し、
その極限にあたる事象が $A$ であることを表す記法として用いられる事がある。
具体的には、
$$
A_1\subseteq A_2\subseteq A_3\subseteq\cdots
$$
であり、
$$
A=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n
$$
である。このとき、各 $A_n$ は $A$ の一部分であり、
$$
A_n\subseteq A
$$
が成り立つ。
したがって、$A_n$ は $A$ より小さい側から、包含関係の意味でだんだん $A$ に近づいていく。
このため、$A_n$ が $A$ に下から近づく、と表現する。
確率測度の上からの連続性
$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とする。事象列 $(A_n)_{n\in\mathbb N}$ が減少列であるとする。
すなわち、任意の $n\in\mathbb N$ に対して、
$$
A_{n+1}\subseteq A_n
$$
が成り立つとする。さらに、
$$
A:=\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n
$$
とおく。このとき、
$$
\mathbb P(A)=\lim_{n\to\infty}\mathbb P(A_n)
$$
が成り立つ。
$\mathcal F$ は $\sigma$ 代数であり、各 $A_n$ は $\mathcal F$ の元であるから、
$$
A=\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\in\mathcal F
$$
である。
- 次の事象列 $(B_n)_{n\in\mathbb N}$ を定める。
$$
B_n:=A_1\setminus A_n
\ (=
A_1\cap A_n^c)
$$
と定める。
各 $A_n$ は $\mathcal F$ の元であり、$\mathcal F$ は補集合と有限交叉で閉じているから、任意の $n\in\mathbb N$ に対して、
$$
B_n\in\mathcal F
$$
である。
$ $ - $(B_n)_{n\in\mathbb N}$ は増大列であることを示す。
任意の $n\in\mathbb N$ をとる。減少列の仮定より、
$$
A_{n+1}\subseteq A_n
$$
である。したがって、補集合を考えると、
$$
A_n^c\subseteq A_{n+1}^c
$$
である。よって、
$$
A_1\cap A_n^c
\subseteq
A_1\cap A_{n+1}^c
$$
である。すなわち、
$$
B_n\subseteq B_{n+1}
$$
である。したがって、$(B_n)_{n\in\mathbb N}$ は増大列である。
$ $ - 次に、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
=
A_1\setminus A
$$
を示す。
i) $\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n\subseteq A_1\setminus A$ を示す。
任意に
$$
x\in\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
$$
をとる。このとき、集合族の和集合の定義より、ある $n\in\mathbb N$ が存在して、
$$
x\in B_n
$$
である。したがって、
$$
x\in A_1\setminus A_n
$$
である。よって、$x\in A_1$ かつ $x\notin A_n$ である。
ここで、集合族の共通部分の定義より、
$$
x\in\bigcap_{k=1}^{\infty}A_k
\Longleftrightarrow
\forall k\in\mathbb N,\ x\in A_k
$$
したがって、
$$
\exists n\in\mathbb N,\ x\notin A_n
\Longrightarrow
\neg\left(\forall k\in\mathbb N,\ x\in A_k\right)
\Longleftrightarrow
x\notin\bigcap_{k=1}^{\infty}A_k
$$
ゆえに、
$$
x\notin\bigcap_{k=1}^{\infty}A_k=A
$$
である。よって、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
\subseteq
A_1\setminus A
$$
である。
$ $
ii) $A_1\setminus A\subseteq\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n$ を示す。
任意に $x\in A_1\setminus A$ をとる。
このとき、$x\in A_1$ かつ $x\notin A$ である。また、
$$
A=\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n
$$
であるから、集合族の共通部分の定義より、ある $n\in\mathbb N$ が存在して、
$$
x\notin A_n
$$
である。したがって、
$$
x\in A_1\setminus A_n=B_n
$$
である。よって、
$$
x\in\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
$$
である。したがって、
$$
A_1\setminus A
\subseteq
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
$$
である。
i) と ii) より、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
=
A_1\setminus A
$$
である。
$ $ - 確率測度の下からの連続性を用いる。
$(B_n)_{n\in\mathbb N}$ は増大列であるから、確率測度の下からの連続性より、
$$
\mathbb P\left(\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n\right)
=
\lim_{n\to\infty}\mathbb P(B_n)
$$
である(直前に示した命題)。すでに
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}B_n
=
A_1\setminus A
$$
を示したので、
$$
\mathbb P(A_1\setminus A)
=
\lim_{n\to\infty}\mathbb P(B_n)
$$
である。
$ $ - $\mathbb P(B_n)$ を $\mathbb P(A_n)$ で表す。
任意の $n\in\mathbb N$ に対して、減少列の仮定より、
$$
A_n\subseteq A_1
$$
である。したがって、
$$
A_1=A_n\cup(A_1\setminus A_n)
$$
であり、この和は互いに素な和である。有限加法性より、
$$
\mathbb P(A_1)
=
\mathbb P(A_n)+\mathbb P(A_1\setminus A_n)
$$
である。すなわち、
$$
\mathbb P(B_n)
=
\mathbb P(A_1\setminus A_n)
=
\mathbb P(A_1)-\mathbb P(A_n)
$$
である。また、$A\subseteq A_1$ であるから、同様に、
$$
\mathbb P(A_1\setminus A)
=
\mathbb P(A_1)-\mathbb P(A)
$$
である。したがって、
$$
\mathbb P(A_1)-\mathbb P(A)
=
\lim_{n\to\infty}\{\mathbb P(A_1)-\mathbb P(A_n)\}
$$
である。右辺を整理すると、
$$
\mathbb P(A_1)-\mathbb P(A)
=
\mathbb P(A_1)-\lim_{n\to\infty}\mathbb P(A_n)
$$
である。
また、$A_{n+1}\subseteq A_n$ であるから、確率測度の単調性(
証明はコチラ
)より
$$
\mathbb P(A_{n+1})\le \mathbb P(A_n)
$$
である。
したがって、$(\mathbb P(A_n))_{n\in\mathbb N}$ は下に有界な広義単調減少列であるから、極限
$$
\lim_{n\to\infty}\mathbb P(A_n)
$$
が存在する。
両辺から $\mathbb P(A_1)$ を引き、さらに両辺に $-1$ を掛けると、
$$
\mathbb P(A)
=
\lim_{n\to\infty}\mathbb P(A_n)
$$
を得る。
-以上より、
$$
\mathbb P(A)=\lim_{n\to\infty}\mathbb P(A_n)
$$
が成り立つ。
$$ \Box$$
$B_n$ を導入する意味
減少列 $(A_n)_{n\in\mathbb N}$ は、集合がだんだん小さくなる列である。
上からの連続性を直接示す代わりに、
$$
B_n:=A_1\setminus A_n
$$
とおくことで、$A_1$ から取り除かれた部分だけを取り出す。このとき、$(B_n)_{n\in\mathbb N}$ は増大列になる。
したがって、すでに証明した確率測度の下からの連続性を使うことができる。
「上から」という意味
$A_n\downarrow A$ とは、事象列 $(A_n)_{n\in\mathbb N}$ が包含関係について減少し、
その極限にあたる事象が $A$ であることを表す記法として用いられる事がある。
具体的には、
$$
A_1\supseteq A_2\supseteq A_3\supseteq\cdots
$$
であり、
$$
A=\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n
$$
である。
このとき、$A$ は各 $A_n$ の一部分であり、
$$
A\subseteq A_n
$$
が成り立つ。
したがって、$A_n$ は $A$ より大きい側から、包含関係の意味でだんだん $A$ に近づいていく。
このため、$A_n$ が $A$ に上から近づく、と表現する。
分布関数の左極限
$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とし、$X:\Omega\to\mathbb R$ を実数値確率変数とする。
$X$ の分布関数 $F_X:\mathbb R\to[0,1]$ を
$$
F_X(x):=\mathbb P(X\le x)
$$
で定める。
このとき、任意の $c\in\mathbb R$ に対して、$F_X$ の点 $c$ における左極限が存在し、
$$
\lim_{x\uparrow c}F_X(x)=\mathbb P(X< c)
$$
が成り立つ。
- まず、分布関数 $F_X$ が広義単調増加であることを確認する。
任意に $u,v\in\mathbb R$ を取り、$u\le v$ とする。
このとき、
$$
\{X\le u\}\subseteq\{X\le v\}
$$
である。
したがって、確率測度の単調性(
証明はコチラ
)より、
$$
\mathbb P(X\le u)\le \mathbb P(X\le v)
$$
である。
よって、分布関数の定義から、
$$
F_X(u)\le F_X(v)
$$
である。
したがって、$F_X$ は広義単調増加である。
$ $ - 次に、$c$ に左から近づく数列を取る。
各 $n\in\mathbb N$ に対して、
$$
x_n:=c-\frac{1}{n}
$$
と定める。このとき、$x_n\in\mathbb R$ であり、
$$
x_n< c,\quad x_n\uparrow c
$$
である。$X$ は実数値確率変数であるから、任意の実数 $t\in\mathbb R$ に対して
$$
\{X\le t\}\in\mathcal F
$$
である。
特に、$t=x_n$ とおくと、
$$
A_n:=\{X\le x_n\}\in\mathcal F
$$
である。
したがって、$(A_n)_{n\in\mathbb N}$ は事象列である。
また、$x_n\le x_{n+1}$ であるから、
$$
A_n\subseteq A_{n+1}
$$
である。
したがって、$(A_n)_{n\in\mathbb N}$ は増大列である。
$ $ - 次に、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n=\{X< c\}
$$
を示す。
i) $\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n\subseteq\{X< c\}$ を示す。
任意に
$$
\omega\in\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n
$$
を取る。このとき、集合族の和集合の定義より、ある $n\in\mathbb N$ が存在して、
$$
\omega\in A_n
$$
である。よって、
$$
X(\omega)\le x_n
$$
である。また、$x_n< c$ であるから、
$$
X(\omega)< c
$$
である。したがって、
$$
\omega\in\{X< c\}
$$
である。ゆえに、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n\subseteq\{X< c\}
$$
である。
$ $
ii) $\{X< c\}\subseteq\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n$ を示す。
任意に
$$
\omega\in\{X< c\}
$$
を取る。このとき、
$$
X(\omega)< c
$$
である。よって、
$$
c-X(\omega)>0
$$
である。アルキメデス性より、ある $n\in\mathbb N$ が存在して、
$$
\frac{1}{n}\le c-X(\omega)
$$
が成り立つ。したがって、
$$
c-\frac{1}{n}\ge X(\omega)
$$
である。すなわち、
$$
X(\omega)\le x_n
$$
である。よって、
$$
\omega\in A_n
$$
である。したがって、
$$
\omega\in\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n
$$
である。ゆえに、
$$
\{X< c\}\subseteq\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n
$$
である。
以上より、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n=\{X< c\}
$$
が成り立つ。
$ $ - 確率測度の下からの連続性を用いる。
$(A_n)_{n\in\mathbb N}$ は増大列であり、
$$
\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n=\{X< c\}
$$
である。したがって、確率測度の下からの連続性($2$つ上で示した命題)より、
$$
\mathbb P(X< c)
=
\mathbb P\left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n\right)
=
\lim_{n\to\infty}\mathbb P(A_n)
$$
である。
また、$A_n=\{X\le x_n\}$ であるから、分布関数の定義より、
$$
\mathbb P(A_n)
=
\mathbb P(X\le x_n)
=
F_X(x_n)
$$
である。よって、
$$
\mathbb P(X< c)=\lim_{n\to\infty}F_X(x_n)
$$
である。
$ $ - 最後に、この極限が左極限に一致することを示す。
$$
L:=\mathbb P(X< c)
$$
とおく。$4.$ より、
$$
L=\lim_{n\to\infty}F_X(x_n)
$$
である。
任意に $y< c$ を取る。このとき、$x_n\uparrow c$ であるから、十分大きい $n\in\mathbb N$ に対して、
$$
y\le x_n< c
$$
が成り立つ。
$F_X$ は広義単調増加であるから、
$$
F_X(y)\le F_X(x_n)
$$
である。
また、$x_n< c$ であるから、
$$
\{X\le x_n\}\subseteq\{X< c\}
$$
である。
したがって、確率測度の単調性(
証明はコチラ
)より、
$$
F_X(x_n)
=
\mathbb P(X\le x_n)
\le
\mathbb P(X< c)
=
L
$$
である。ゆえに、
$$
F_X(y)\le F_X(x_n)\le L
$$
である。
したがって、任意の $y< c$ に対して、
$$
F_X(y)\le L
$$
である。よって、
$$
\sup_{y< c}F_X(y)\le L
$$
である。
一方、各 $n\in\mathbb N$ に対して $x_n< c$ であるから、
$$
F_X(x_n)\le \sup_{y< c}F_X(y)
$$
である。
$n\to\infty$ とすると、
$$
L\le \sup_{y< c}F_X(y)
$$
である。
したがって、
$$
L=\sup_{y< c}F_X(y)
$$
である。
$F_X$ は広義単調増加であるから、点 $c$ における左極限は
$$
\lim_{x\uparrow c}F_X(x)=\sup_{y< c}F_X(y)
$$
で与えられる。
ゆえに、
$$
\lim_{x\uparrow c}F_X(x)=L
$$
である(補足を参照)。
すなわち、
$$
\lim_{x\uparrow c}F_X(x)=\mathbb P(X< c)
$$
が成り立つ。
$$ \Box$$
数列だけで左極限といえる理由
一般の関数では、$x_n\uparrow c$ を満たす $1$ つの数列に沿った極限だけから、点 $c$ における左極限全体を決めることはできない。
なぜなら、左極限
$$
\lim_{x\uparrow c}f(x)
$$
が存在するとは、$c$ より小さい実数 $x$ が任意の近づき方で $c$ に近づくとき、$f(x)$ が同じ値に近づくことを意味するからである。
したがって、$1$ つの数列 $(x_n)_{n\in\mathbb N}$ に対して
$$
x_n< c,\quad x_n\uparrow c
$$
かつ
$$
\lim_{n\to\infty}f(x_n)=L
$$
が成り立っても、それだけでは
$$
\lim_{x\uparrow c}f(x)=L
$$
とは結論できない。
別の近づき方をする数列 $(y_n)_{n\in\mathbb N}$ に対して、$f(y_n)$ が別の値に近づく可能性があるからである。
$ $
しかし、分布関数 $F_X$ については状況が異なる。
分布関数 $F_X$ は広義単調増加である。すなわち、任意の $u,v\in\mathbb R$ に対して、
$$
u\le v
\Rightarrow
F_X(u)\le F_X(v)
$$
が成り立つ。
この広義単調増加性により、点 $c$ の左側における値は、$c$ に近づくにつれて下がることはない。
したがって、点 $c$ における左極限は、左側の値全体の上限として記述できる。すなわち、
$$
L:=\sup\{F_X(y)\mid y< c\}
$$
とおくと、
$$
\lim_{x\uparrow c}F_X(x)=L
$$
が成り立つ。
ここで、$F_X(y)\in[0,1]$ であるから、集合
$$
\{F_X(y)\mid y< c\}
$$
は上に有界である。また、$c$ より小さい実数は存在するので、この集合は空でない。したがって、上限 $L$ は実数として存在する。
$ $
上の証明では、
$$
x_n:=c-\frac{1}{n}
$$
とおいた。このとき、
$$
x_n< c,\quad x_n\uparrow c
$$
である。この特別な数列に沿った極限が、左極限全体と一致することを確認する。
まず、各 $n\in\mathbb N$ について $x_n< c$ であるから、
$$
F_X(x_n)\le \sup\{F_X(y)\mid y< c\}=L
$$
が成り立つ。
次に、任意に $\varepsilon>0$ を取る。
$L$ は集合 $\{F_X(y)\mid y< c\}$ の上限であるから、上限の性質より、ある $y_\varepsilon< c$ が存在して、
$$
L-\varepsilon< F_X(y_\varepsilon)\le L
$$
が成り立つ。
一方、$x_n\uparrow c$ であるから、十分大きい $N\in\mathbb N$ が存在して、任意の $n\ge N$ に対して
$$
y_\varepsilon\le x_n< c
$$
が成り立つ。
したがって、$F_X$ の広義単調増加性より、任意の $n\ge N$ に対して
$$
F_X(y_\varepsilon)\le F_X(x_n)
$$
である。
よって、任意の $n\ge N$ に対して、
$$
L-\varepsilon
<
F_X(y_\varepsilon)
\le
F_X(x_n)
\le
L
$$
が成り立つ。したがって、
$$
|F_X(x_n)-L|<\varepsilon
$$
である。ゆえに、
$$
\lim_{n\to\infty}F_X(x_n)=L
$$
である。すなわち、
$$
\lim_{n\to\infty}F_X\left(c-\frac{1}{n}\right)
=
\sup\{F_X(y)\mid y< c\}
$$
が成り立つ。
$ $
一方、$F_X$ は広義単調増加関数であるから、点 $c$ における左極限は左側の値全体の上限で与えられる。すなわち、
$$
\lim_{x\uparrow c}F_X(x)
=
\sup\{F_X(y)\mid y< c\}
$$
である。以上より、
$$
\lim_{n\to\infty}F_X\left(c-\frac{1}{n}\right)
=
\lim_{x\uparrow c}F_X(x)
$$
と結論できる。
$ $
つまり、この場合に $x_n:=c-\frac{1}{n}$ という $1$ つの数列だけを使ってよい理由は、
単に数列が $c$ に左から近づくからではなく、$F_X$ が広義単調増加であり、
その数列が $c$ の左側全体の上限に近づく値を捕まえているからである。
具体例
一般の関数では、$x_n\uparrow c$ を満たす $1$ つの数列に沿った極限だけから、点 $c$ における左極限全体を決めることはできない。
具体例として、関数 $f:(-\infty,0)\to\mathbb R$ を
$$
f(x):=\sin\left(\frac{1}{x}\right)
$$
で定める。点 $c=0$ における左極限を考える。
- まず、数列 $(x_n)_{n\in\mathbb N}$ を
$$
x_n:=-\frac{1}{2\pi n}
$$
で定める。
このとき、$x_n<0$ であり、
$$
x_n\uparrow 0
$$
である。また、
$$
\frac{1}{x_n}=-2\pi n
$$
であるから、
$$
f(x_n)
=
\sin(-2\pi n)
=
0
$$
である。したがって、
$$
\lim_{n\to\infty}f(x_n)=0
$$
である。この $1$ つの数列だけを見ると、左極限は $0$ であるように見える。
$ $ - しかし、別の数列 $(y_n)_{n\in\mathbb N}$ を
$$
y_n:=-\frac{1}{2\pi n+\frac{\pi}{2}}
$$
で定める。
このときも、$y_n<0$ であり、
$$
y_n\uparrow 0
$$
である。
一方、
$$
\frac{1}{y_n}
=
-\left(2\pi n+\frac{\pi}{2}\right)
$$
であるから、
$$
f(y_n)
=
\sin\left(-2\pi n-\frac{\pi}{2}\right)
=
-1
$$
である。したがって、
$$
\lim_{n\to\infty}f(y_n)=-1
$$
である。
-つまり、同じように $0$ に左から近づく数列であっても、
$$
\lim_{n\to\infty}f(x_n)=0
$$
となるものと、
$$
\lim_{n\to\infty}f(y_n)=-1
$$
となるものが存在する。したがって、
$$
\lim_{x\uparrow0}f(x)
$$
は存在しない。
この例から、$x_n\uparrow c$ を満たす $1$ つの数列に沿った極限だけでは、一般の関数の左極限全体を決めることはできないことが分かる。
分布関数の連続点における端点の扱い
$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とし、$X:\Omega\to\mathbb R$ を実数値確率変数とする。
また、$F_X:\mathbb R\to[0,1]$ を
$$
F_X(x):=\mathbb P(X\le x)
$$
で定める。実数 $a,b$ が $a< b$ を満たし、$F_X$ が点 $a$ および点 $b$ で連続であるとする。
このとき、
$$
\mathbb P(a< X< b)
=
\mathbb P(a\le X\le b)
=
\mathbb P(a< X\le b)
=
\mathbb P(a\le X< b)
$$
が成り立つ。
- 事象
$$
A_1:=\{a< X< b\},\quad
A_2:=\{a\le X\le b\},\quad
A_3:=\{a< X\le b\},\quad
A_4:=\{a\le X< b\}
$$
を考える。
このとき、集合の関係として
$$
A_2=A_1\cup\{X=a\}\cup\{X=b\}
$$
が成り立ち、右辺の和集合は互いに素である。
また、
$$
A_3=A_1\cup\{X=b\},\quad
A_4=A_1\cup\{X=a\}
$$
が成り立ち、これらの和集合も互いに素である。
したがって、確率測度の有限加法性より、
$$
\mathbb P(A_2)=\mathbb P(A_1)+\mathbb P(X=a)+\mathbb P(X=b)\cdots①
$$
$$
\mathbb P(A_3)=\mathbb P(A_1)+\mathbb P(X=b)\cdots②
$$
$$
\mathbb P(A_4)=\mathbb P(A_1)+\mathbb P(X=a)\cdots③
$$
である。
$ $ - 次に、任意の $c\in\mathbb R$ に対して、
$$
\mathbb P(X=c)=F_X(c)-\lim_{x\uparrow c}F_X(x)
$$
が成り立つことを示す。まず、
$$
\{X=c\}=\{X\le c\}\setminus\{X< c\}
$$
であり、
$$
\{X< c\}\subset\{X\le c\}
$$
であるから、
$$
\mathbb P(X=c)=\mathbb P(X\le c)-\mathbb P(X< c)
$$
である(
差集合の公式 証明はコチラ
)。
i) ここで、累積分布関数の定義より
$$
F_X(c)=\mathbb P(X\le c)
$$
である。
$ $
ii) また、分布関数の基本性質より、
$$
\lim_{x\uparrow c}F_X(x)=\mathbb P(X< c)
$$
が成り立つ(直前に示した命題)。
したがって、
$$
\mathbb P(X=c)=F_X(c)-\lim_{x\uparrow c}F_X(x)\cdots④
$$
である。
$ $ - i) ここで、仮定より $F_X$ は点 $a$ で連続である。
したがって、点 $a$ における左極限も関数値 $F_X(a)$ に一致する。すなわち、
$$
\lim_{x\uparrow a}F_X(x)=F_X(a)
$$
である。
よって、上の式④に $c=a$ を代入すると、
$$
\begin{aligned}
\mathbb P(X=a)
&=
F_X(a)-\lim_{x\uparrow a}F_X(x)\\
&=
F_X(a)-F_X(a)\\
&=
0
\end{aligned}
$$
である。
$ $
ii) 同様に、仮定より $F_X$ は点 $b$ で連続である。
したがって、点 $b$ における左極限も関数値 $F_X(b)$ に一致する。すなわち、
$$
\lim_{x\uparrow b}F_X(x)=F_X(b)
$$
である。
よって、上の公式に $c=b$ を代入すると、
$$
\begin{aligned}
\mathbb P(X=b)
&=
F_X(b)-\lim_{x\uparrow b}F_X(x)\\
&=
F_X(b)-F_X(b)\\
&=
0
\end{aligned}
$$
である。
$ $
以上より、
$$
\mathbb P(X=a)=0,\quad \mathbb P(X=b)=0
$$
が成り立つ。
$ $ - これを先の等式(式①, 式②, 式③)に代入すると、
$$
\mathbb P(A_2)=\mathbb P(A_1),\quad
\mathbb P(A_3)=\mathbb P(A_1),\quad
\mathbb P(A_4)=\mathbb P(A_1)
$$
を得る。
-したがって、
$$
\mathbb P(a< X< b)
=
\mathbb P(a\le X\le b)
=
\mathbb P(a< X\le b)
=
\mathbb P(a\le X< b)
$$
が成り立つ。
$$ \Box$$