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大学数学基礎解説
文献あり

代数学をやるその6 準同型の延長の個数

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はじめに

今回はある条件を満たす準同型の個数を数えます.

その他の問題たちは こちらのまとめページ から見れます.よろしければリンクをご利用ください.

問題と解答

$G$をアーベル群,$H$$G$の指数有限の部分群,$\varphi : H \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$を群準同型とする.このとき,準同型$f : G \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$$H$への制限$f|_H$$\varphi$に等しいものの個数は$(G:H)$であることを示せ.(京大)

感想

$G/H$が有限アーベル群なので,準同型$G/H \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$の個数が丁度$(G:H)$です( コチラの記事の補題3 ).どうにかしてこの事実を使うんだろうなと予想が立ちます.しかし,そもそも$\varphi$の延長が実際に存在するのかどうかが気になるので,一旦存在を示します.この類の存在証明では部分群の位数とか指数とかに関する帰納法が有効な場合があるので,今回もその方針で行きます.延長の存在が示せたら,それを上手く使って$G/H$から$\mathbb{C}^{\times}$への準同型を作りますが,ヒントなしでは全然思いつかなくて大変でした.

以下,剰余群の元は上にバーを付けて表します.

証明を表示

まず,次の主張Aを部分群の指数に関する帰納法で示す.

(主張A)$N$$G$の指数有限の任意の部分群,$\psi : N \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$を任意の準同型とするとき,準同型$f : G \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$$f|_N=\psi$を満たすものが存在する.

まず,$(G:N)=1$のときは$G=N$であるから$f=\psi$とすればよい.$n$$2$以上の整数とし,$(G:N)< n$を満たす$G$の任意の部分群$N$$N$から$\mathbb{C}^{\times}$への任意の準同型に対して主張Aが成り立つと仮定する.このとき,$(G:N)=n$となる$G$の任意の部分群と準同型$\psi : N \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$に対して主張Aが成り立つことを示せばよい.
$(G:N)=n$となる$G$の任意の部分群と任意の準同型$\psi : N \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$を取る.$(G:N)=n \geq 2$であるから,$g \notin N$となる$g \in G$が取れる.$G/N$は位数が有限であるから,$g^k \in N$となる最小の正の整数$k \, ( \geq 2)$が取れる.$0$でない複素数$\alpha$$\alpha^k=\psi(g^k)$を満たす値とする.写像$\widetilde{f} : \langle g \rangle N \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$を任意の$g^lh \, (l \in \mathbb{Z}, \, h \in N)$に対して$\widetilde{f}(g^lh)=\alpha^l\psi(h)$を満たすものとして定める.任意の$g^lh, \, g^{l'}h' \in \langle g \rangle N$に対して,
$$\widetilde{f}(g^lh \cdot g^{l'}h')=\widetilde{f}(g^{l+l'}hh')=\alpha^{l+l'}\psi(hh')=\alpha^l\psi(h) \cdot \alpha^{l'}\psi(h')=\widetilde{f}(g^lh)\widetilde{f}(g^{l'}h')$$
が成り立つので,$\widetilde{f}$は群準同型である.このとき,$(G:\langle g\rangle N)<(G:N)=n$であるから,帰納法の仮定により準同型$f : G \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$$f|_{\langle g \rangle N}=\widetilde{f}$を満たすものが存在する.この$f$は任意の$h \in N$に対して
$$f(h)=\widetilde{f}(h)=\psi(h)$$
を満たすので$f|_N=\psi$を満たす.従って,$N$$\psi$に対して主張Aが示された.ここで$N,\psi$は任意に取っていたから,主張Aが示された.

主張Aを題にある$H,\varphi$に対して適用することで,準同型$f_0 : G \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$$f_0|_H=\varphi$を満たすものが存在することが保証される.集合$X, Y$
$$X=\{f : G \rightarrow \mathbb{C}^{\times} \, | \, f \, は準同型 \, かつ \, f|_H=\varphi\}, \hspace{0.2in} Y=\{f : G/H \rightarrow \mathbb{C}^{\times} \, | \, f \, は準同型\}$$
とおく.$|X|$が求める数である.$f \in X$に対し,写像$G \ni g \longmapsto f(g)f_0(g)^{-1} \in \mathbb{C}^{\times}$を対応させるものとして写像$\widetilde{F}$を考える.任意の$f \in X$に対し$\widetilde{F}(f)$は,任意の$gh \, (g \in G, \, h \in H)$に対して
$$(\widetilde{F}(f))(gh)=f(gh)f_0(gh)^{-1}=f(g)\varphi(h) \cdot \varphi(h)^{-1}f_0(g)^{-1}=f(g)f_0(g)^{-1}=(\widetilde{F}(f))(g)$$
を満たす.また,$\widetilde{F}(f)$は明らかに準同型である.よって,$\widetilde{F}$は写像
$$F : X \ni f \longmapsto F(f) \in Y$$
を引き起こす
.ここで,$F(f) \in Y$
$$(F(f))(\overline{g})=f(g)f_0(g)^{-1} \hspace{0.2in} (\forall \overline{g} \in G/H)$$
を満たす.
$f,f' \in X$$F(f)=F(f')$を満たすとする.このとき,任意の$g \in G$に対して
$$f(g)f_0(g)^{-1}=(F(f))(\overline{g})=(F(f'))(\overline{g})=f'(g)f_0(g)^{-1}$$
が成り立つので,$f(g)=f'(g) \, (\forall g \in G)$となる.即ち$f=f'$であるから,$F$は単射である.
$\psi \in Y$とする.$\pi : G \rightarrow G/H$を自然な準同型とし,$\theta : G \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$
$$\theta(g)=(\psi \circ \pi)(g) \cdot f_0(g) \hspace{0.2in} (\forall g \in G)$$
を満たすものとして定める.$\theta$は明らかに準同型で,また任意の$h \in H$に対して
$$\theta(h)=(\psi \circ \pi)(h) \cdot f_0(h)=f_0(h)=\varphi(h)$$
を満たすので$\theta|_H=\varphi$である.即ち,$\theta \in X$である.すると,任意の$\overline{g} \in G/H$に対して
$$(F(\theta))(\overline{g})=\theta(g)f_0(g)^{-1}=(\psi \circ \pi)(g) \cdot f_0(g) \cdot f_0(g)^{-1}=\psi(\overline{g})$$
が成り立つから,$F(\theta)=\psi$である.よって$F$は全射である.以上より$F$は全単射であるから,$|X|=|Y|$である.$G/H$は有限アーベル群であるから$|Y|=|G/H|=(G:H)$であるので,$|X|=(G:H)$となり,題意は示された.(証明終)

今回用いた事実

$G$を有限アーベル群,$\mathbb{C}^{\times}$を複素数の乗法群とすると,準同型$G \rightarrow \mathbb{C}^{\times}$の個数は$|G|$に等しい.

証明は コチラの記事の補題3 を参照して下さい.

最後までお読み頂きありがとうございました.

参考文献

[1]
永田雅宜, 復刻版 大学院への代数学演習, 現代数学社, 2021
投稿日:202263
OptHub AI Competition

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certain
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素朴な問題が特に好きです.

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