1
大学数学基礎解説
文献あり

代数学をやるその6 準同型の延長の個数

263
0

はじめに

今回はある条件を満たす準同型の個数を数えます.

その他の問題たちは こちらのまとめページ から見れます.よろしければリンクをご利用ください.

問題と解答

Gをアーベル群,HGの指数有限の部分群,φ:HC×を群準同型とする.このとき,準同型f:GC×Hへの制限f|Hφに等しいものの個数は(G:H)であることを示せ.(京大)

感想

G/Hが有限アーベル群なので,準同型G/HC×の個数が丁度(G:H)です( コチラの記事の補題3 ).どうにかしてこの事実を使うんだろうなと予想が立ちます.しかし,そもそもφの延長が実際に存在するのかどうかが気になるので,一旦存在を示します.この類の存在証明では部分群の位数とか指数とかに関する帰納法が有効な場合があるので,今回もその方針で行きます.延長の存在が示せたら,それを上手く使ってG/HからC×への準同型を作りますが,ヒントなしでは全然思いつかなくて大変でした.

以下,剰余群の元は上にバーを付けて表します.

証明を表示

まず,次の主張Aを部分群の指数に関する帰納法で示す.

(主張A)NGの指数有限の任意の部分群,ψ:NC×を任意の準同型とするとき,準同型f:GC×f|N=ψを満たすものが存在する.

まず,(G:N)=1のときはG=Nであるからf=ψとすればよい.n2以上の整数とし,(G:N)<nを満たすGの任意の部分群NNからC×への任意の準同型に対して主張Aが成り立つと仮定する.このとき,(G:N)=nとなるGの任意の部分群と準同型ψ:NC×に対して主張Aが成り立つことを示せばよい.
(G:N)=nとなるGの任意の部分群と任意の準同型ψ:NC×を取る.(G:N)=n2であるから,gNとなるgGが取れる.G/Nは位数が有限であるから,gkNとなる最小の正の整数k(2)が取れる.0でない複素数ααk=ψ(gk)を満たす値とする.写像f~:gNC×を任意のglh(lZ,hN)に対してf~(glh)=αlψ(h)を満たすものとして定める.任意のglh,glhgNに対して,
f~(glhglh)=f~(gl+lhh)=αl+lψ(hh)=αlψ(h)αlψ(h)=f~(glh)f~(glh)
が成り立つので,f~は群準同型である.このとき,(G:gN)<(G:N)=nであるから,帰納法の仮定により準同型f:GC×f|gN=f~を満たすものが存在する.このfは任意のhNに対して
f(h)=f~(h)=ψ(h)
を満たすのでf|N=ψを満たす.従って,Nψに対して主張Aが示された.ここでN,ψは任意に取っていたから,主張Aが示された.

主張Aを題にあるH,φに対して適用することで,準同型f0:GC×f0|H=φを満たすものが存在することが保証される.集合X,Y
X={f:GC×|ff|H=φ},Y={f:G/HC×|f}
とおく.|X|が求める数である.fXに対し,写像Ggf(g)f0(g)1C×を対応させるものとして写像F~を考える.任意のfXに対しF~(f)は,任意のgh(gG,hH)に対して
(F~(f))(gh)=f(gh)f0(gh)1=f(g)φ(h)φ(h)1f0(g)1=f(g)f0(g)1=(F~(f))(g)
を満たす.また,F~(f)は明らかに準同型である.よって,F~は写像
F:XfF(f)Y
を引き起こす
.ここで,F(f)Y
(F(f))(g)=f(g)f0(g)1(gG/H)
を満たす.
f,fXF(f)=F(f)を満たすとする.このとき,任意のgGに対して
f(g)f0(g)1=(F(f))(g)=(F(f))(g)=f(g)f0(g)1
が成り立つので,f(g)=f(g)(gG)となる.即ちf=fであるから,Fは単射である.
ψYとする.π:GG/Hを自然な準同型とし,θ:GC×
θ(g)=(ψπ)(g)f0(g)(gG)
を満たすものとして定める.θは明らかに準同型で,また任意のhHに対して
θ(h)=(ψπ)(h)f0(h)=f0(h)=φ(h)
を満たすのでθ|H=φである.即ち,θXである.すると,任意のgG/Hに対して
(F(θ))(g)=θ(g)f0(g)1=(ψπ)(g)f0(g)f0(g)1=ψ(g)
が成り立つから,F(θ)=ψである.よってFは全射である.以上よりFは全単射であるから,|X|=|Y|である.G/Hは有限アーベル群であるから|Y|=|G/H|=(G:H)であるので,|X|=(G:H)となり,題意は示された.(証明終)

今回用いた事実

Gを有限アーベル群,C×を複素数の乗法群とすると,準同型GC×の個数は|G|に等しい.

証明は コチラの記事の補題3 を参照して下さい.

最後までお読み頂きありがとうございました.

参考文献

[1]
永田雅宜, 復刻版 大学院への代数学演習, 現代数学社, 2021
投稿日:202263
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

certain
certain
32
18655
素朴な問題が特に好きです.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. 問題と解答
  3. 今回用いた事実
  4. 参考文献