★ 本記事は 走る結合定数の計算(2/5):Yang-Mills理論のくりこみ の続きです。前回の冒頭に示した表記の規約に従います。
Yang-Mills(YM)理論の走る結合定数を計算する記事の第3回です。
前回はYM理論におけるくりこみ定数の決定、および走る結合定数の計算に関して説明しました。今回はダイアグラムの計算・くりこみに使う公式をまとめます。ここでは主に次元正則化において用いる公式を示します。Ref.[1]およびRef.[2]を参考にした部分が多いです。証明は概略のみ示しています。
具体的なダイアグラムの計算は次回行います。
ダイアグラムの評価には、ゲージ群のインデックスに関わる群論的ファクターが現れます。これに関する公式をまとめます。
構造定数$f_{abc}$は、ゲージ群の生成子$T^a$を用いて
\begin{align}
[T^a,T^b]=if_{abc}T^c
\end{align}
で定義される。$f_{abc}$は添字の入れ替えに関し完全反対称。
$T^a_{bc}:=-if_{abc}$はSU(N)の生成子である。すなわちこの$T$に対して
\begin{align}
[T^a,T^b]=if_{abc}T^c
\end{align}
が成立する。この表現をadjoint表現と呼ぶ。
ゲージ群の生成子に関する公式:
\begin{align}
{\rm tr}\left(T^aT^b\right)&=\frac{\delta_{ab}}{2},\\
T^a_{ij}T^a_{kl}&=\frac{1}{2}\left(
\delta_{il}\delta_{jk}-\frac{1}{N}\delta_{ij}\delta_{kl}
\right),\\
(T^aT^b)_{ij}&=C_F\delta_{ij}, \ \ C_F=\frac{N^2-1}{2N}
\end{align}
構造定数に関する公式:
\begin{align}
f^{acd}f^{bcd}&=\delta_{ab}N,\\
f^{ade}f^{bef}f^{cfd}&=\frac{N}{2}f^{abc}
\end{align}
生成子に対するJacobi恒等式から導かれる等式:
\begin{align}
f_{bcd}f_{ade}+f_{cad}f_{bde}+f_{abd}f_{cde}=0
\end{align}
ループ積分の被積分関数のpoleを実軸からずらし、積分をwell-definedにします。以下の処方が典型的です。
以下のように、propagatorのpoleを実軸から微小にずらす($\epsilon$は微小な複素数):
$$
\frac{1}{q^2-m^2}\rightarrow\frac{1}{q^2-m^2+i\epsilon}
$$
このようにずらしたpropagatorのフーリエ変換は以下のようになる:
\begin{align}
D_F(x-y)&:=\int\frac{d^4q}{(2\pi)^4}
\frac{i}{q^2-m^2+i\epsilon}e^{-iq\cdot(x-y)}\\
&=
\begin{cases}
D(x-y) & \text{ for } x^0>y^0\\
D(y-x) & \text{ for } x^0< y^0
\end{cases}
\\
&=\theta(x^0-y^0)
\langle 0|\hat\phi(x)\hat\phi(y)|0\rangle
+\theta(y^0-x^0)\langle 0|\hat\phi(y)\hat\phi(x)|0\rangle \tag{2-1}
\end{align}
ここで
\begin{align}
D(x-y):=\left.\int \frac{d^3q}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_q}e^{-iq\cdot(x-y)}\right|_{q^0=E_q}
=\langle 0|\hat\phi(x)\hat\phi(y)|0\rangle, \ \ \
E_q:=\sqrt{\vec q^2+m^2} \tag{2-2}
\end{align}
である。
演算子$T$を
\begin{align}
T\hat\phi(x)\hat\phi(y)=
\begin{cases}
\hat\phi(x)\hat\phi(y) & x_0>y_0\\
\hat\phi(y)\hat\phi(x) & y_0>x_0
\end{cases}
\end{align}
(このような積をtime ordered productと呼ぶ)
で定義すれば
\begin{align}
D_F(x-y)=\langle 0|T\hat\phi(x)\hat\phi(y)|0\rangle
\end{align}
となる。$D_F(x-y)$はFeynman propagatorと呼ばれる。
Feynman propagatorの$q_0$積分のcontour
$\hat\phi(x)$は正準量子化で量子化された場の演算子であるが、説明を省略する。
ここでは$D_F(x-y)$が$D(x-y) \ (x^0>y^0)$および$D(y-x) \ (x^0< y^0)$となることを示す。
$D_F(x-y)$の定義において、$q_0$積分を実行する。そのために、$q_0$を複素平面に拡張し、留数定理を用いる(図1)。$q^0$平面上の積分経路として、実軸$C_1: -\infty\to\infty$と、極座標における上下半円の経路$C^{\pm}_2: (r=+\infty,\theta=0\to \pm \pi)$を考える。$x_0-y_0>0$なら、$e^{-ip\cdot(x-y)}$のファクターにより$C_2^-$の寄与は0なので$C_1+C_2^-$(青の経路)を、逆なら$C_1+C_2^{+}$(オレンジの経路)を採用する。すると、$x_0-y_0$の正負の違いにより、積分に効く$1/(q^2-m^2+i\epsilon)=1/(q^0+E_q-i\epsilon)/(q^0-E_q+i\epsilon)$のpoleが異なる。これを考慮して計算すれば、Eq(2-2)よりEq.(2-1)を得る。${}_\blacksquare$
このような処方を"Feynman prescription"とか"$i\epsilon$処方"と呼びます。
場の理論の摂動論はFeynman propagatorを使って構成します。
次元を$4$からずらします。YM理論の場合、この操作でループ積分は有限になります。
\begin{align}
4\text{ dim. }\rightarrow D:= 4-2\epsilon
\end{align}
ここで$\epsilon$は一般に複素数であり、微小なパラメータとして取り扱う。$\epsilon\rightarrow 0$が$D=4$の極限。これによりループ積分は
$$
\int\frac{d^4q}{(2\pi)^4i}\rightarrow \int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
$$
となる。
このような操作は一般に正則化と呼ばれます。次元正則化は理論の様々な対称性を保つため有用です。YMの場合この正則化でゲージ対称性が保たれることが重要です。
正則化をしたのち、ダイアグラムを計算し$\epsilon$でLaurent展開して、$\epsilon$の負ベキの発散部分をくりこみで除去します。
ループ積分を実行するため、被積分関数の分母をまとめます。ループ積分には、例えば以下のようなものがあります:
\begin{align}
\int \frac{d^D q}{(2\pi)^Di}
\frac{1}{q^2+i\epsilon}
\frac{1}{(q-p)^2+i\epsilon}
\end{align}
これは2つの分数関数の積ですが、これを1つにまとめます。
被積分関数の分母をまとめる:
\begin{align}
\frac{1}{A_1A_2}&=\int_0^1\frac{dx}{(xA_1+(1-x)A_2)^2},\\
\frac{1}{A_1A_2A_3}&=2\int_0^1 dx \int_0^{1-x}dy\frac{1}{(xA_1+yA_2+(1-x-y)A_3)^3}
\end{align}
下は
\begin{align}
\frac{1}{A_1A_2A_3}&=2\int_0^1 dx \int_0^1 dy\frac{y}{((A_1-A_2)xy+(A_2-A_3)y+A_3)^3}
\end{align}
とも書ける。積分範囲の違いに注意。
$1/(A^\alpha B^\beta)$の分母をまとめる:
$$
\frac{1}{A^\alpha B^\beta}=\frac{\Gamma(\alpha+\beta)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}
\int_0^1 dx dy \frac{x^{\alpha-1}y^{\beta-1}}{(xA+yB)^{\alpha+\beta}}
\delta(1-x-y)
$$
一般に以下が成立する:
$$
\frac{1}{A_1\cdots A_N}
=\Gamma[N]
\int_0^1 dx_1 \cdots dx_N\delta\left(1-\sum_{j=1}^N x_j\right)
\frac{1}{[A_1x_1+\cdots+A_Nx_N]^N}
$$
これはまた以下のようにも書ける:
$$
\frac{1}{A_1\cdots A_N}
\\
=\Gamma[N]\int_0^1 dx_1\cdots dx_{N-1}
\frac{x_2 x_3^2\cdots x_{N-1}^{N-2}}
{[(A_1-A_2)x_1\cdots x_{N-1}+(A_2-A_3)x_2\cdots x_{N-1}
+\cdots
+(A_{N-1}-A_N)x_{N-1}+A_N]^N}
$$
上に示した例
\begin{align}
\int \frac{d^D q}{(2\pi)^Di}
\frac{1}{q^2+i\epsilon}
\frac{1}{(q-p)^2+i\epsilon}
\end{align}
の場合、この作業で
\begin{align}
&\int_0^1 dx \int\frac{d^D\tilde q}{(2\pi)^Di}\frac{1}{(\tilde q^2-\Delta+i\epsilon)^2}\\
&\tilde q:=q-k(1-x), \ \Delta:=-k^2x(1-x)
\end{align}
になります。$\tilde q$への変数変換ののち、分母は$\tilde q^2$の関数になることは重要です。
ループ積分において、対称性を用いることで、積分変数のLorentzの足を縮約できる場合があります。
以下が成立する:
被積分関数の$f$は$f(q^2)$であり、引数の$q_\mu$のindexが自身と縮約されていることに注意してください。$q$と外線の運動量のindexが縮約されている項が存在する場合(=時空回転の基準が存在する場合)、上の式は成立しません。
以下は(次元正則化や対称性などより)ゼロになります:
1.は次元正則化において、ある操作を施すことで正当化される。自明に成立することではないので、定義のようなものだと思えば良い。詳しくは例えばRef.[1]P172参照。
Feynman parametrizationののち、被積分関数の分母は$\tilde q^2$の関数になります。すると、分子に$\tilde q$の関数があり、かつそのLorentzのindexが浮いている場合(または外線の運動量と縮約をとっている場合)、公式5を用いることで、その項を消す、またはindexを縮約することができます。これはこの後のWick rotationにおいて重要です。
次に、$q^0$を虚軸にもっていくことで、Euclid計量での積分に直します${}^{(*)}$。これにより極座標に移り、積分を実行します。
以下の変数変換: $q\to q_E$(Euclid化やWick rotationと呼ぶ)を行い、積分を極座標にする:
\begin{align}
q_0 &=i {q_{E}}_0 \ ({q_E}_0: \text{real}), \ \ {\vec q}={\vec q}_E\\
d^Dq &= id^D q_E, \ {q}^2=-q_E^2, \ q_E^2={q_E}_0^2+{\vec q}_E^2\\
\ \ d^Dq_E &=q_E^{D-1}dq_Ed\Omega_D
\end{align}
$d\Omega_D$は$D$次元における極座標の角度方向の積分測度。
この操作は、被積分関数のpoleが第1・第3象限になければ正当化される。
Wick rotation
被積分関数を$(-q^2)^b/(\Delta-q^2-i\epsilon)^a$とする。ここまで説明した操作を施した後、被積分関数はこの類の関数に帰着する。
複素$q^0$平面において、積分路を虚軸から実軸に移すため、図1の積分路で積分する。積分路内部にはpoleが存在しないこと、また無限遠の1/4円部分が消えることを用いれば
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dq^0}{(2\pi)i}
\int \frac{d^{D-1}q}{(2\pi)^{D-1}}
\frac{(-q^2)^b}{(\Delta^2-q^2-i\epsilon)^a}
=
-\int_{+i\infty}^{-i\infty}
\frac{dq^0}{(2\pi)i}
\int \frac{d^{D-1}q}{(2\pi)^{D-1}}
\frac{(-q^2)^b}{(\Delta^2-q^2-i\epsilon)^a}
\end{align}
を得る。$q_E^0:=-iq^0, q_E^i:=q^i, q_E^2=(q^0_E)^2+{\vec q}_E^2$とすれば
\begin{align}
&=
-\int_{\infty}^{-\infty}\frac{dq_E^0}{(2\pi)}
\int \frac{d^{D-1}q_E}{(2\pi)^{D-1}}
\frac{({q_E^0}^2+{\vec q_E}^2)^b}{(\Delta^2+{q_E^0}^2+{\vec q_E}^2-i\epsilon)^a}\\
&=
\int_{-\infty}^{\infty}
\frac{dq^0_E}{(2\pi)}
\int \frac{d^{D-1}q_E}{(2\pi)^{D-1}}
\frac{(q_E)^b}{(\Delta+q_E^2-i\epsilon)^a}\\
&=
\int\frac{d^Dq_E}{(2\pi)^D}
\frac{(q_E)^b}{(\Delta+q_E^2-i\epsilon)^a}
\end{align}
あとは積分を極座標にすれば、公式7のWick rotationの操作と一致する。
$D$次元の極座標への座標変換およびJacobianは以下のようになります:
$x\in \mathbb{R}^D$のとき,極座標への変数変換は以下:
\begin{align}
\begin{cases}
x_1&=r\cos\theta,\\
x_2&=r\sin\theta\cos\varphi_1,\\
x_3&=r\sin\theta\sin\varphi_1\cos\varphi_2,\\
&\vdots\\
x_{D-1}&=r\sin\theta\sin\varphi_1\cdots\sin\varphi_{D-3}\sin\varphi_{D-2},\\
x_{D}&=r\sin\theta\sin\varphi_1\cdots\sin\varphi_{D-3}\cos\varphi_{D-2}
\end{cases}
\end{align}
各変数の変化域は以下:
\begin{align}
0\le r\le +\infty, \ \ 0\le \theta,\varphi_1,\cdots,\varphi_{D-3}\le\pi, \ \ 0\le\varphi_{D-2}\le 2\pi
\end{align}
Jacobianは以下のように書ける:
\begin{align}
r^{D-1}\sin^{D-2}\theta\sin^{D-3}\varphi_1\cdots\sin\varphi_{D-3}.
\end{align}
よって
\begin{align}
\prod_i dx_i=r^{D-1}\sin^{D-2}\theta\sin^{D-3}\varphi_1\cdots\sin\varphi_{D-3}
drd\theta d\varphi_1\cdots d\varphi_{D-2}
\end{align}
ゆえに$d\Omega_D$は
\begin{align}
d\Omega_D=\sin^{D-2}\theta\sin^{D-3}\varphi_1\cdots\sin\varphi_{D-3}
d\theta d\varphi_1\cdots d\varphi_{D-3}d\varphi_{D-2}
\end{align}
$d\Omega_D$の角度積分(=$D$次元の半径1の超球の表面積):
\begin{align}
\int d\Omega_D&=
\int_0^\pi d\theta \int_0^\pi d\varphi_1\cdots\int_0^\pi d\varphi_{D-3}\int_0^{2\pi} d\varphi_{D-2}
\sin^{D-2}\theta\sin^{D-3}\varphi_1\cdots\sin\varphi_{D-3}
d\theta d\varphi_1\cdots d\varphi_{D-3}d\varphi_{D-2}\\
&=\frac{2\pi^{D/2}}{\Gamma(D/2)}
\end{align}
ループ積分の中心的な公式が公式9の2.,3.,4.です。
$B$関数の性質:
\begin{align}\displaystyle B(p,q) &:= \int^1_0 dx \ x^{p-1}(1-x)^{q-1}\\
\displaystyle &=\int_0^\infty \frac{t^{p-1}}{(1+t)^{p+q}}dt=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}\end{align}
$\displaystyle \int\frac{d^D q_E}{(2\pi)^D}\frac{1}{(q_E^2+\Delta)^a}=\frac{\Gamma(a-D/2)}{(4\pi)^{D/2}\Gamma(a)}\Delta^{D/2-a}$
$\displaystyle \int\frac{d^D q_E}{(2\pi)^D}\frac{q_E^2}{(q_E^2+\Delta)^a} =\frac{D}{2}\frac{\Gamma(a-D/2-1)}{(4\pi)^{D/2}\Gamma(a)} \Delta^{D/2-a+1}$
$\displaystyle \int\frac{d^D q_E}{(2\pi)^D} \frac{(q_E^2)^2}{(q_E^2+\Delta)^a} = \frac{1}{4}D(D+2) \frac{\Gamma(a-D/2-2)}{(4\pi)^{D/2}\Gamma(a)} \Delta^{D/2-a+2} $
1.の$B(p,q):=\cdots$の2行目の1つ目の等式は$t=1/(1-x)-1$と変数変換すれば直ちに得られる。
2つ目の等式は$\Gamma$関数の積分表示を用いて$\Gamma(p)\Gamma(q)=\int\int s^{x-1}t^{y-1}e^{-s} e^{-t} dtds$と書いておき、変数変換$s=uv, t=u(1-v)$を施すと、$\Gamma(p)\gamma(q)=\Gamma(p+q)B(p,q)$を得る。
2.は極座標へ変換したのち、$\displaystyle \int d\Omega_D=\frac{2\pi^{D/2}}{\Gamma(D/2)}$と1.より導ける。
3.,4.は2.と同様。
$D$次元では、4次元では質量次元0だった$g$が次元を持ちます。
次元正則化において、YM理論の$g$は質量次元$\epsilon$をもつ:$[g]=M^\epsilon$
($[A]$は$A$の質量次元を表す。$A$の質量次元が$\alpha$であることを$[A]=M^\alpha$で表す)
計算する際の前提は以下:
これらより結合定数$g$の質量次元が計算できる。
まずゲージ場の運動項より
$$
\int d^D x \ \partial_\mu A_\nu\partial^\mu A^\nu
$$
は次元なし。よって
$$
[\partial_\mu A_\nu\partial^\mu A^\nu]=M^D\\
\therefore [A]=M^{(D-2)/2}
$$
つぎにgluonの4点相互作用
$$
g^2A^4
$$
の項を考えると
$$
[g^2A^4]=M^{D}\\
\therefore [g]=M^{(D-2(D-2))/2}=M^{(4-D)/2}
$$
$D=4-2\epsilon$とすると
$$
[g]=M^\epsilon
$$
となる。
ここまで説明した手法・公式を使うと、以下のループ積分に関する公式が示せます(積分はWick rotationする前の表式です):
分子が1:
\begin{align}
&\int \frac{d^D q}{(2\pi)^Di}\frac{1}{(-q^2)^\alpha (-(q+k)^2)^\beta}\\
& \hspace{1cm} =(4\pi)^{-D/2}(-k^2)^{D/2-\alpha-\beta}
\frac{\Gamma(\alpha+\beta-D/2)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}
B\left(
\frac{D}{2}-\alpha,\frac{D}{2}-\beta
\right)\\
& \hspace{1cm} =(4\pi)^{-(2-\epsilon)}(-k^2)^{(2-\epsilon)-\alpha-\beta}
\frac{\Gamma(\alpha+\beta-(2-\epsilon))}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}
B\left(
(2-\epsilon)-\alpha,(2-\epsilon)-\beta
\right)
\\
\end{align}
分子が$q_\mu$:
\begin{align}
&\int \frac{d^D q}{(2\pi)^Di}\frac{q_\mu}{(-q^2)^\alpha (-(q+k)^2)^\beta}
\\
& \hspace{1cm} =-(4\pi)^{-D/2}k_\mu (-k^2)^{D/2-\alpha-\beta}
\frac{\Gamma(\alpha+\beta-D/2)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}
B\left(
\frac{D}{2}-\alpha+1,\frac{D}{2}-\beta
\right)\\
& \hspace{1cm} =-(4\pi)^{-(2-\epsilon)}k_\mu (-k^2)^{(2-\epsilon)-\alpha-\beta}
\frac{\Gamma(\alpha+\beta-(2-\epsilon))}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}
B\left(
(2-\epsilon)-\alpha+1,(2-\epsilon)-\beta
\right)
\end{align}
分子が$q_\mu q_\nu$:
\begin{align}
&\int \frac{d^D q}{(2\pi)^Di}\frac{q_\mu q_\nu}{(-q^2)^\alpha (-(q+k)^2)^\beta}\\
& \hspace{1cm} =(4\pi)^{-D/2}(-k^2)^{D/2-\alpha-\beta}
\frac{\Gamma(\alpha+\beta-D/2)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}
\left[
k^2g_{\mu\nu}
\frac{B(D/2-\alpha+1,D/2-\beta+1)}{2(\alpha+\beta-1-D/2)}\right.\\
& \hspace{10cm} \left.+k_\mu k_\nu
B\left(
\frac{D}{2}-\alpha+2,\frac{D}{2}-\beta
\right)
\right]\\
& \hspace{1cm} =(4\pi)^{-(2-\epsilon)}(-k^2)^{(2-\epsilon)-\alpha-\beta}
\frac{\Gamma(\alpha+\beta-(2-\epsilon))}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}
\Bigg[
k^2g_{\mu\nu}
\frac{B((2-\epsilon)-\alpha+1,(2-\epsilon)-\beta+1)}{2(\alpha+\beta-1-(2-\epsilon))}\\
& \hspace{10cm} +k_\mu k_\nu
B\left(
(2-\epsilon)-\alpha+2,(2-\epsilon)-\beta\right)
\Bigg]
\end{align}
つぎの公式も有用です(左辺はWick rotationする前の表式):
分子が$1$:
\begin{align}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{1}{(m^2+2q\cdot p-q^2)^a}
=
\frac{\Gamma(a-D/2)}{(4\pi)^{D/2}\Gamma(a)}
\frac{1}{(m^2+p^2)^{a-D/2}}
\\
\end{align}
分子が$q$1つ:
\begin{align}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{q_\mu}{(m^2+2q\cdot p-q^2)^a}
=
\frac{\Gamma(a-D/2)}{(4\pi)^{D/2}\Gamma(a)}
\frac{p_\mu}{(m^2+p^2)^{a-D/2}}
\\
\end{align}
分子が$q$2つ:
\begin{align}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
&\frac{q_\mu q_\nu}{(m^2+2q\cdot p-q^2)^a}\nonumber\\
&=
\frac{1}{(4\pi)^{D/2}\Gamma(a)}
\left[
\Gamma(a-D/2)\frac{p_\mu p_\nu}{(m^2+p^2)^{a-D/2}}
-\frac{1}{2}g_{\mu\nu}\Gamma(a-1-D/2)
\frac{1}{(m^2+p^2)^{a-1-D/2}}
\right]
\end{align}
分子が$q$3つ:
\begin{align}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
&\frac{q_\mu q_\nu q_\rho}{(m^2+2q\cdot p-q^2)^a}\nonumber\\
&=
\frac{1}{(4\pi)^{D/2}\Gamma(a)}
\left[
\Gamma(a-D/2)\frac{p_\mu p_\nu p_\rho}{(m^2+p^2)^{a-D/2}}
-\frac{1}{2}g_{(\mu\nu}p_{\rho)}\Gamma(a-1-D/2)
\frac{1}{(m^2+p^2)^{a-1-D/2}}
\right]
\end{align}
分子が$q$4つ:
\begin{align}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
&\frac{q_\mu q_\nu q_\rho q_\sigma}{(m^2+2q\cdot p-q^2)^a}\nonumber\\
&=
\frac{1}{(4\pi)^{D/2}\Gamma(a)}
\bigg[
\Gamma(a-D/2)\frac{p_\mu p_\nu p_\rho p_\sigma}{(m^2+p^2)^{a-D/2}}
-\frac{1}{2}g_{(\mu\nu}p_{\rho}p_{\sigma)}\Gamma(a-1-D/2)
\frac{1}{(m^2+p^2)^{a-1-D/2}}\\
&\hspace{3.5cm} +\frac{1}{4}g_{(\mu\nu}g_{\rho\sigma)}\Gamma(a-2-D/2)\frac{1}{(m^2+p^2)^{a-2-D/2}}
\bigg]
\end{align}
ただし
\begin{align}
g_{(\mu\nu}p_{\rho)}&:=g_{\mu\nu}p_\rho+g_{\nu\rho}p_\mu+g_{\rho\mu}p_\nu,\\
g_{(\mu\nu}p_\rho p_{\sigma)}
&:=g_{\mu\nu}p_\rho p_\sigma
+g_{\mu\rho}p_\nu p_\sigma
+g_{\mu\sigma}p_\nu p_\rho
+g_{\nu\rho}p_\mu p_\sigma
+g_{\nu\sigma}p_\mu p_\rho
+g_{\rho\sigma}p_\mu p_\nu,\\
g_{(\mu\nu}g_{\rho\sigma)}
&:=g_{\mu\nu}g_{\rho\sigma}
+g_{\mu\rho}g_{\nu\sigma}
+g_{\mu\sigma}g_{\nu\rho}
\end{align}
を行えば示せる。
ループ積分にはベータ関数が現れます。その性質をまとめておきます。
一番上の式は公式9の1.で示した。
残りの式は$B$関数の$\Gamma$関数による表示より導ける。
余談ですが、走る結合定数の計算では、特殊関数のベータ関数とは関係のない「ベータ($\beta$)関数=結合定数のエネルギースケールによる微分」を扱います。混乱しないようにしてください。
以下は一般的に必要な公式ではなく、Ref.[1]で行われる変形に必要なものです。本記事はこれに習います。
書き換えるだけ
以下は、ファインマン・ダイアグラムの表式に現れるさまざまな積分を、
$$P(k^2,\epsilon):=(4\pi)^{-(2-\epsilon)}
(-k^2)^{-\epsilon}\Gamma(\epsilon)
\frac{3-2\epsilon}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)$$
に比例した形で書き直す公式です。次回の記事ではこの表記を用います。
以下では次のnotationを用います: $\displaystyle M(\alpha,\beta; x):=\frac{x}{(q^2)^\alpha((q+k)^2)^\beta}$
たとえば次の例のようになります。
\begin{align}
\begin{cases}
\displaystyle M(1,1;1)=\frac{1}{q^2(q+k)^2},\\
\displaystyle M(1,2;q_\mu)=\frac{q_\mu}{q^2((q+k)^2)^2},\\
\displaystyle M(2,2;q_\mu q_\nu)=\frac{q_\mu q_\nu}{(q^2)((q+k)^2)^2},\\
\displaystyle M(1,1,;L_{\mu\nu})=\frac{q_\mu k_\nu+q_\nu k_\nu}{(q^2)((q+k)^2)^2}
\end{cases}
\end{align}
ただし$L_{\mu\nu}:=q_\mu k_\nu+q_\nu k_\nu$とします。
$M{\boldsymbol{(1,1;1)}}$の積分
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}\frac{1}{q^2(q+k)^2}
&=(4\pi)^{-(2-\epsilon)}(-k^2)^{-\epsilon}
\Gamma(\epsilon)
B\left(
-\epsilon,1-\epsilon
\right)\\
&=(4\pi)^{-(2-\epsilon)}(-k^2)^{-\epsilon}
\frac{2(3-2\epsilon)}{1-\epsilon}
\Gamma(\epsilon)
B\left(
2-\epsilon,2-\epsilon
\right)\\
&=2P(k^2,\epsilon),
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(1,2;1)}}$
\begin{align*}
\int \frac{d^D q}{(2\pi)^Di}
\frac{1}{q^2((q+k)^2)^2}
&=(4\pi)^{-(2-\epsilon)}(-k^2)^{-1-\epsilon}
\Gamma(\epsilon)
\frac{2(1-2\epsilon)(3-2\epsilon)}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=2(1-2\epsilon)
\frac{1}{-k^2}
P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(2,1;1)}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{1}{(q^2)^2(q+k)^2}
&=(4\pi)^{-(2-\epsilon)}(-k^2)^{-1-\epsilon}
\Gamma(\epsilon)
\frac{2(1-2\epsilon)(3-2\epsilon)}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=
2(1-2\epsilon)
\frac{1}{-k^2}
P(k^2,\epsilon)
\\
&\left(
=\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{1}{(q^2)((q+k)^2)^2}
\right)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(1,1;q_\mu)}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{q_\mu}{q^2(q+k)^2}
&=-(4\pi)^{-(2-\epsilon)}
k_\mu
(-k^2)^{-\epsilon}
\Gamma(\epsilon)
B\left(
2-\epsilon,1-\epsilon
\right)\\
&=-(4\pi)^{-(2-\epsilon)}
k_\mu
(-k^2)^{-\epsilon}
\frac{3-2\epsilon}{1-\epsilon}\Gamma(\epsilon)B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=
-k_\mu
P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(1,2;q_\mu)}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{q_\mu}{q^2((q+k)^2)^2}
&=-(4\pi)^{-(2-\epsilon)}
k_\mu
(-k^2)^{-1-\epsilon}
\Gamma(\epsilon)
\frac{2(3-2\epsilon)(1-\epsilon)}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=
2(1-\epsilon)
\frac{k_\mu}{k^2}
P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(2,1;q_\mu)}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{q_\mu}{(q^2)^2(q+k)^2}
&=-(4\pi)^{-(2-\epsilon)}
k_\mu
(-k^2)^{-1-\epsilon}
\epsilon\Gamma(\epsilon)
\frac{2(3-2\epsilon)}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=
-2\epsilon
\frac{k_\mu}{k^2}
P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(1,1;q_\mu q_\nu)}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{q_\mu q_\nu}{q^2(q+k)^2}
&=-(4\pi)^{-(2-\epsilon)}
(-k^2)^{-\epsilon}
\Gamma(\epsilon)
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\mu\nu}
-(2-\epsilon)k_\mu k_\nu
\right\}
\frac{1}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=
-\frac{1}{3-2\epsilon}
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\mu\nu}
-(2-\epsilon)k_\mu k_\nu
\right\}
P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(1,2;q_\mu q_\nu)}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{q_\mu q_\nu}{q^2((q+k)^2)^2}
&=-(4\pi)^{-(2-\epsilon)}
(-k^2)^{-1-\epsilon}
\Gamma(\epsilon)
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\mu\nu}
-(2-\epsilon)k_\mu k_\nu
\right\}
\frac{3-2\epsilon}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=\frac{1}{k^2}
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\mu\nu}
-(2-\epsilon)k_\mu k_\nu
\right\}
P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(2,1;q_\mu q_\nu)}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^Di}
\frac{q_\mu q_\nu}{(q^2)^2(q+k)^2}
&=-(4\pi)^{-(2-\epsilon)}(-k^2)^{-1-\epsilon}
\Gamma(\epsilon)
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\mu\nu}+\epsilon k_\mu k_\nu
\right\}
\frac{3-2\epsilon}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=\frac{1}{k^2}
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\mu\nu}
+\epsilon k_\mu k_\nu
\right\}
P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(2,2;q_\mu q_\nu)}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^D i}
\frac{q_\mu q_\nu}{(q^2)^2((q+k)^2)^2}
&=(4\pi)^{-(2-\epsilon)}
(-k^2)^{(2-\epsilon)}
\Gamma(\epsilon)
\left\{
\epsilon k^2 g_{\mu\nu}
-2k_\mu k_\nu(1-\epsilon)(1+\epsilon)
\right\}
\frac{3-2\epsilon}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=
\frac{1}{(k^2)^2}
\left\{
\epsilon k^2 g_{\mu\nu}
-2k_\mu k_\nu(1-\epsilon)(1+\epsilon)
\right\}
P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(1,1;L_{\mu\nu})}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^D i}
\frac{q_\mu k_\nu + q_\nu k_\mu}{q^2(q+k)^2}
&=-(k_\mu k_\nu + k_\nu k_\mu)P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(1,2;q_\rho L_{\mu\nu})}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^D i}
\frac{q_\rho(q_\mu k_\nu + q_\nu k_\mu)}{q^2((q+k)^2)^2}
&=\frac{1}{k^2}
\left[
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\rho\mu}
-(2-\epsilon)k_\rho k_\mu
\right\}k_\nu
+
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\rho\nu}
-(2-\epsilon)k_\rho k_\nu
\right\}k_\mu
\right]P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(2,1;q_\rho L_{\mu\nu})}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^D i}
\frac{q_\rho(q_\mu k_\nu + q_\nu k_\mu)}{(q^2)^2(q+k)^2}
&=\frac{1}{k^2}
\left[
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\rho\mu}
+\epsilon k_\rho k_\mu
\right\}k_\nu
+
\left\{
\frac{1}{2}k^2g_{\rho\nu}
+\epsilon k_\rho k_\nu
\right\}k_\mu
\right]P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
$M{\boldsymbol{(2,2;q_\rho L_{\mu\nu})}}$
\begin{align*}
\int\frac{d^Dq}{(2\pi)^D i}
\frac{q_\rho(q_\mu k_\nu + q_\nu k_\mu)}{(q^2)^2(q+k)^2}
&=\frac{1}{(k^2)^2}
\left[
\left\{
\epsilon k^2g_{\rho\mu}
-2(1-\epsilon^2) k_\rho k_\mu
\right\}k_\nu
+
\left\{
\epsilon k^2g_{\rho\nu}
-2(1-\epsilon^2) k_\rho k_\nu
\right\}k_\mu
\right]P(k^2,\epsilon)
\end{align*}
本記事に示した公式を用いて計算すれば導ける
くりこみではループ積分の$\epsilon$によるLaurent展開が必要です。以下に$\Gamma$関数、$B$関数、および前記の$P(k^2,\epsilon)$のLaurent展開を示しておきます。
$\epsilon\ll 1$のとき
\begin{align} \Gamma(\epsilon)=\frac{1}{\epsilon}-\gamma+\frac{1}{2} \left(\gamma^2+\frac{\pi^2}{6}\right)\epsilon+{\cal O}(\epsilon^2) \end{align}
\begin{align} \Gamma(-1+\epsilon)=-\frac{1}{\epsilon} +(\gamma-1)-\frac{1}{2} \left( \gamma^2-2\gamma+\frac{\pi^2}{6}+2 \right)\epsilon+{\cal O}(\epsilon^2) \end{align}
\begin{align}
\Gamma(-N+\epsilon)=\frac{(-1)^N}{N!}\left[\frac{1}{\epsilon}
+\psi(N+1)+{\cal O}(\epsilon)\right] \ \ \ (N: \text{positive integer})
\end{align}
ここで
\begin{align}
\psi(x)&\equiv \Gamma'(x)/\Gamma(x),\\
\psi(1)&=-\gamma, \ \ \psi(N+1)=-\gamma+\sum_{k=1}^N\frac{1}{k},\\
\gamma&=-\Gamma'(1)=0.5772\cdots
\end{align}
\begin{align} \Gamma(1+\epsilon)=1-\gamma\epsilon+\sum_{k=2}^\infty \frac{(-\epsilon)^k}{k!} \zeta(k) \end{align}
\begin{align} (1-\epsilon)B(1-\epsilon,1-\epsilon)=1+\gamma+O(\epsilon^2) \end{align}
$P(k^2,\epsilon)$のLaurent展開:
\begin{align}
P(k^2,\epsilon)&:=(4\pi)^{-(2-\epsilon)}
(-k^2)^{-\epsilon}\Gamma(\epsilon)
\frac{3-2\epsilon}{1-\epsilon}
B(2-\epsilon,2-\epsilon)\\
&=\frac{1}{2(4\pi)^2}
\left(\frac{1}{\epsilon}
+\log\left(\frac{4\pi}{-k^2}\right)
-\gamma
+2
+{\cal O}(\epsilon)\right)
\end{align}
$\Gamma$関数は${\rm Re}(z)\le 0$では収束しないが、部分積分をくりかえすことにより、${\rm Re}(z)<0$の領域に
$$
\Gamma(z)=\frac{\Gamma(z+n+1)}{z(z+1)\cdots (z+n)}
$$
のように解析接続することができる。これより$z=-n$のまわりでのLaurent展開が計算できる。
上の式より$\Gamma$関数は$z=-n$で1位の極をもつ。それぞれの留数は
$$
\lim_{z\to -n}(z+n)\Gamma(z)=\frac{(-1)^n}{n!}
$$
である。
quarkのようなFermionはspinorであり、そのループ積分にはDirac行列$\gamma^\mu$が現れます。これはLorentz変換に対するspinorとvectorの変換性を結ぶものです。この行列に関する性質をまとめておきます。
任意の$D$次元における公式(Ref.[3]より):
$\gamma^\mu$の反交換関係:$\{\gamma^\mu,\gamma^\nu\}=2g^{\mu\nu}{\bf 1}$(これは定義)、$g^{\mu\nu}g_{\mu\nu}=g^\mu_\mu=D$や${\rm tr}$の巡回置換不変性等から導ける。
詳細は略。
$D$次元の$\gamma^\mu$は何行何列なんだ?等のことは考えず、抽象的に$\{\gamma^\mu,\gamma^\nu\}=g^{\mu\nu}{\bf 1}$を満たすもので、縮約や${\rm tr}$等で足を潰したとき上記公式のように$D$への依存性が現れる量、と解釈してください。
今回は、次元正則化によるダイアグラムの計算、およびくりこみに必要な公式をまとめました。
次回は具体的なダイアグラムの計算を行います。
おしまい。${}_\blacksquare$
$\clubsuit$次の記事: 走る結合定数の計算(4/5): Yang-Mills理論におけるくりこみの具体的な計算
$(*)$ Euclidにおける運動量積分は正当化が難しいため、これをMinkowski時空で行う方法もあります。例えばRef.[2]のP79-を参照のこと。
$(**)$ Ref.[3]では${\rm tr}({\bf 1})=4$を採用していますが、${\rm tr}({\bf 1})=2^{D/2}$を採用している教科書が多いので、こちらを載せました。
改めて公式4の2.を記しておきます:
$$ \frac{1}{A_1\cdots A_N} =\Gamma[N] \int_0^1 dx_1 \cdots dx_N\delta\left(1-\sum_{j=1}^N x_j\right) \frac{1}{[A_1x_1+\cdots+A_Nx_N]^N} $$
以下Ref.[4]P86に従い証明します。
まず
$\displaystyle \frac{1}{A^N}=(\Gamma(N))^{-1}\int_0^\infty dt \ t^{N-1}e^{At}\tag{A-1}$
であることに注意します。
($\Gamma$関数の定義$\displaystyle \Gamma(N)=\int_0^\infty dt \ t^{N-1}e^{-t}$において$t=A\tilde t$と変数変換すると得られる)。
公式4の2.の右辺
\begin{align}
\Gamma(N)\int_0^1 dx_1\cdots dx_N \
\delta(1-\sum_{j=1}^Nx_j)
\frac{1}{(A_1x_1+\cdots + A_N x_N)^N}
\end{align}
は、Eq.(A-1)と$\displaystyle \delta(1-\sum_{j=1}^Nx_j)=\int_{-\infty}^\infty\frac{d\lambda}{2\pi}e^{i\lambda(1-\sum_{j=1}^N x_j)}$および$\displaystyle \int_0^1 dx_i\ e^{-A_i x_i t-i\lambda x_i}=\frac{1}{-A_i t-i\lambda}(e^{-A_i t-i\lambda}-1)$を用いて
\begin{align}
=\int_0^\infty dt \ t^{N-1} \frac{1}{2\pi i^N}
\int_{-\infty}^\infty \frac{d\lambda}{2\pi}
e^{i\lambda}
\prod_j \frac{1-e^{-A_jt -i\lambda}}{-iA_j t + \lambda}
\end{align}
となります。
以下$A_j>0$とします(負の$A_j$があるときは公式4の2.の左辺でマイナスをくくりだし正にして扱う)。このとき、被積分関数のpole $\lambda=iA_j t$は全て上半平面に存在します。
下半平面の経路による積分。$C_2^-$は半径無限大の半円の経路。オレンジのバツはpoleの位置。
ここで被積分関数の$\displaystyle e^{i\lambda}(1-e^{-A_1 t-i\lambda})\times\cdots\times e^{i\lambda}(1-e^{-A_N t-i\lambda})$を展開した項のうち、$e^{-ik\lambda} \ \ (k=1,\cdots, N-1)$がかかる項の積分は、図3のように下半面に積分を閉じたとき、半円$C_2^-$の寄与は0になります。また$C_1+C^-_2$の中にpoleはないので、結局$C_1$の積分は消えます。故に残る積分は
$$
e^{i\lambda}-\sum_{j=1}^N e^{-A_j t}
$$
の項のみです。よって
$$
=\int_0^\infty dt\ t^{N-1}\frac{1}{2\pi i^N}
\int_{-\infty}^\infty
d\lambda
\frac{e^{i\lambda} -\sum_{j=1}^N e^{-A_jt}}{(\lambda-itA_1)\cdots(\lambda-itA_N)}
$$
この積分を評価するため、次の事実を用います:
$$
\oint dz \frac{1}{(z-\alpha_1)(z-\alpha_2)\cdots(z-\alpha_r)}=0 \ \ \ (2\le r<\infty) \tag{A-2}
$$
ただし積分経路は全てのpoleを含むように閉じる。
帰納法を用いる。
以上より題意は示された。${}_\blacksquare$
定理1よりEq.(A-2)の$\displaystyle \frac{\sum_{j=1}^Ne^{-A_j t}}{(\lambda -itA_1)\cdots(\lambda -itA_N)}$の寄与は消えます。
ここまでをまとめると
$$
(\text{公式4の2.の右辺})
=
\int_0^\infty \ dt \ t^{N-1}
\frac{1}{2\pi i^N}
\int_{-\infty}^\infty d\lambda
\frac{e^{i\lambda}}{(\lambda-itA_1)\cdots(\lambda-itA_N)}
$$
が得られました。これを図4の経路で積分します:
上半平面の経路による積分。$C_2^+$は半径無限大の半円の経路。オレンジのバツはpoleの位置。
\begin{align} &\int_0^\infty \ dt \ t^{N-1} \frac{1}{2\pi i^N} \int_{-\infty}^\infty d\lambda \frac{e^{i\lambda}}{(\lambda-itA_1)\cdots(\lambda-itA_N)}\\ &= \int_0^\infty \ dt \ t^{N-1} \frac{1}{2\pi i^N} \oint_{C_1+C_2^+}d\lambda \frac{e^{i\lambda}}{(\lambda-itA_1)\cdots(\lambda-itA_N)} \ \ \ \ \ \ (\because\text{contribution from } C^+_2 \text{ vanishes})\\ &=\int_0^\infty dt \ t^{N-1} \frac{2\pi i}{2\pi i^N} \left[ \left.\sum_j\frac{e^{i\lambda}}{\prod_{i\neq j}(\lambda-itA_i)} \right|_{\lambda=itA_j} \right]\\ &=\int_0^\infty dt \ t^{N-1} (-1)^{N-1}\sum_j\frac{e^{-tA_j}}{\prod_{i\neq j}(A_j-A_i)}\\ &=\sum_j\frac{(-1)^{N-1}}{A_j\prod_{i\neq j}(A_j-A_i)} \end{align}
さらに以下が成立することを用います:
\begin{align} \sum_{j=1}^N\frac{1}{A_j}\frac{(-1)^{N-1}}{\prod_{i\neq j}(A_j-A_i)} = \frac{1}{A_1\cdots A_N} \end{align}
Eq.(A-2)において$\alpha_1\to 0, \alpha_2\to 1,\cdots, \alpha_r\to A_N$とすると
\begin{align}
\oint dz\frac{1}{z(z-A_1)\cdots(z-A_N)}=0
\end{align}
これを書き換えれば
\begin{align}
&2\pi i
\left\{
\frac{(-1)^N}{A_1\cdots A_N}
+
\frac{1}{A_1(A_1-A_2)\cdots(A_1-A_N)}
+
\frac{1}{A_2(A_2-A_1)\cdots(A_2-A_N)}
+\cdots
\right\}=0\\
&\leftrightarrow
\frac{(-1)^N}{A_1\cdots A_N}
+
\sum_{j=1}^N\frac{1}{A_j}\frac{1}{\prod_{i\neq j}(A_j-A_i)}
=0
\end{align}
これは定理2と等しい。
定理2の右辺は「公式4の2.の左辺」です。よって「公式4の2.の右辺=公式4の2.の左辺」が成立し、題意が示されました。${}_\blacksquare$