今回は整数係数多項式と戯れてみます.
次の条件を満たす定数ではない整数係数多項式$P$を全て求めよ:
任意の素数$p$に対してある非負整数$n_p,N_p$が存在し, $x>y>N_p$かつ$x\equiv y\pmod p,\ x\not\equiv0\pmod p$なる任意の整数$x,y$に対して$v_p(P(x)-P(y))=v_p(x-y)+n_p$が成立する.
見てすぐ分かることはLTEっぽいということです. なので$P(x)=x^n$が条件を満たしそう. ただ$p=2$を考えると$n$は奇数であって欲しいです. あとは定数倍とか定数ずらすとか考えると$P(x)=ax^n+b$($a\neq0,\ n$は奇数)になりそうです. これを示していきましょう.
$x-y=z$として状況を見やすくすると$v_p(P(y+z)-P(y))=v_p(z)+n_p$となります. 式が微分っぽいのでマクローリン展開します. $P(y+z)-P(y)=zP'(y)+\dfrac{z^2}2P''(y)+\cdots$. ここで$v_p(z)$が十分大きい時$v_p(P(y+z)-P(y))=v_p(zP'(y))=v_p(z)+v_p(P'(y))$となります. よって$n_p=v_p(P'(y))$です. (こんな感じの議論は ISL2021N8の中盤の議論 でも出てきましたね)
いま示せたことは結局$v_p(P'(y))$が$y$が$p$で割り切れない十分大きい整数の時$y$の値に依らない事です. よってここから$P'(y)=ax^n$みたいに書けることを示します. この記事 に出てきたシューアの定理を使えば$v_p(P'(y))>0$なる$p$が取れて他の適当な$y$に対しては$v_p(P'(y))=0$となって矛盾するみたいに出来そうです. しかし$p\not|y$という条件が邪魔です. これは$P'(x)$の素因数で$x$で割り切れないものを使うことで解決出来ます. これはきちんと証明しましょう.
$P'(x)$の素因数は$x$のみである.
$Q(x)|P'(x)$をみたす$Q(x)$を$x$と互いに素な定数でない整数係数多項式とする. $x\not|Q(x)$より$Q(0)\neq0$. また, $Q$は定数でないのである正整数$a$が存在して$Q(a)\neq0$. シューアの定理よりある正整数$k$が存在して$Q(k)$は$Q(0),Q(a),a$より大きい素因数$p$をもつ. $y=pN_p+k,pN_p+a$とすると$p\not|y$かつ$y>N_p$なので上の議論より$v_p(P'(pN_p+k))=v_p(P'(pN_p+a))$. しかし左辺は正で右辺は$0$なので矛盾. よって補題は示された.
よって$P'(x)=ax^n$と書けるので$P(x)=bx^n+c$みたいに書けて後は条件を満たすかを適当にチェックして$P(x)=ax^n+b$($a\neq0,a,b\in \mathbb Z, n$は正の奇数)が得られる.
では多項式という条件を外したらどうなるでしょうか.
問題1で$P$が多項式であるという条件を$P$が一般の整数から整数への写像に変えても$P(x)=ax^n+b$に限られるのだろうか.
何か中国の剰余定理とか使って強引に反例構成できそうだけど解決しきれて無いです. 逆に ISL2015N8 が解けるならこれも解けたりするのだろうか. 解けたら教えてください()