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優しい解説を心掛けるリーマン幾何学~1. ベクトルとテンソル 1.1 ベクトル空間(1)~
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優しい解説を心掛けるリーマン幾何学~1. ベクトルとテンソル 1.2 双対ベクトル空間(1)~
前回はベクトル空間において基底の取り換えに対するベクトルの成分の変換性をなぜ学ぶのかのモチベーションを説明しました。今回はベクトルの成分の変換性を説明します。と言っても実に単純な話です。
$V$を$n$次元実ベクトル空間とします。微分幾何ではベクトルの成分の番号を上付きで表示します。つまり基底$\{e_1,\cdots,e_n\}$に対して、$v\in V$を
$$ v=v^1e_1+v^2e_2+\cdots+v^ne_n $$
と表示します。上付きの添え字をべき乗の指数と勘違いしないように注意してください。べき乗したいときは$(v^i)^2$のように表します。成分の番号を上付き添え字で表すのは理由がありますが、それは今後説明します。
$v\in V$が2つの基底$\{e_1,\cdots,e_n\},\ \{e'_1,\cdots,e'_n\}$に関して、それぞれ
$$
v=(e_1,\cdots,e_n)\begin{pmatrix}v^1\\ \vdots \\ v^n \end{pmatrix}=(e'_1,\cdots,e'_n)\begin{pmatrix}v'^1\\ \vdots \\ v'^n \end{pmatrix}
$$
と表されているとします。
2つの基底の間には、ある$A=(a^i_{\ j})\in GL(n,\mathbb{R})$があり、
$$
(e_1,\cdots,e_n)=(e'_1,\cdots,e'_n)\begin{pmatrix}a^1_1&\cdots&a^1_n \\
\vdots& \ddots & \vdots \\ a^n_1 & \cdots & a^n_1 \end{pmatrix}
$$
という関係があります。
なのでこのとき
$$ (e'_1,\cdots,e'_n)\begin{pmatrix}a^1_1&\cdots&a^1_n \\ \vdots& \ddots & \vdots \\ a^n_1 & \cdots & a^n_1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix}v^1\\ \vdots \\ v^n \end{pmatrix}=(e'_1,\cdots,e'_n)\begin{pmatrix}v'^1\\ \vdots \\ v'^n \end{pmatrix} $$
となるので、成分どうしは
$$ \begin{pmatrix}v^1\\ \vdots \\ v^n \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a^1_1&\cdots&a^1_n \\ \vdots& \ddots & \vdots \\ a^n_1 & \cdots & a^n_1 \end{pmatrix}^{-1}\begin{pmatrix}v'^1\\ \vdots \\ v'^n \end{pmatrix} $$
という関係になっています。これがベクトルの基底の変換に対する成分の変換規則です。
この書き方は、スペースを取り、書くのが面倒で、tex打ちもしずらいなど、視覚的に分かりやすいという以外にはメリットがありません。視覚的に分かりやすいというのは非常に重要なメリットですが、今後のことも考えると
$$ v^i=(a^{-1})^i_{\ j}v'^j $$
のように成分表示で一行で書くことに慣れておくことが望ましいです。
ではこの記事のまとめです。
実ベクトル空間$V$において、$v\in V$が2つの基底$\{e_1,\cdots,e_n\},\ \{e'_1,\cdots,e'_n\}$に関して、それぞれ
$$ v=\sum_iv^ie_i=\sum_iv'^ie'_i $$
と表されているとする。基底の関係が
$$ e_i=\sum_j e'_j a^j_i $$
であるとき、成分の関係は
$$ v^i=(a^{-1})^i_{\ j}v'^j $$
となる。
次回は双対ベクトル空間についてです。
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