はじめに
この記事の目標は、以下の級数
や、さらに拡張された級数を級数変形で交代多重ゼータ値の-線形結合に分解することです。ここで
です。
表記
でインデックスの各成分に符号をつけて得られる個のAMZVのインデックス全体の集合を表す.
AMZVのインデックスに対してとし,とする.
本題
まず今回重要となるコネクターと連結和を導入します。
インデックス(は空でない)に対して
さらにをAMZVのインデックスとして
コネクター自体は双対性のコネクターですが、整数でない値も入れるところが通常とは異なります。
次に輸送関係式を作ります。
これの級数証明は
Wataru氏
に教えて貰いました。
証明(開く)
まず一つ目は望遠鏡和で示します.
二つ目は超幾何定理を使います.
なので,として定理の主張を得ます.
が整数のとき
となります。
の輸送関係式は以下の通りです。
証明(開く)
これによりの値は全てで書くことができるので、今度はの輸送を考えます。
証明(開く)
以上よりはAMZVの-線形結合で書けることがわかりました。
特にもAMZVに分解できます。
ところでこの記事を書き始めた当初の目標は、
iida_256氏の記事
にあるような
という形をした級数を級数によってAMZVに分解する方法を与えることでした。の積分表示(これは山本積分表示すると分かりやすいです)において、積分変数の大小関係によって積分を分解すると(poset分解)、の和に分解されますが、その分解を級数変形よって行うアルゴリズムを思い付くことができませんでした。
特殊な場合については分かりました:
積分表示を考えるとは二項係数が複数ついていてもAMZVに分解されることが分かります。この一般的な場合について示すためにの定義を以下の通り拡張します。コネクターのつかないも拡張します。
なるインデックス(ただし)とdepth sのAMZVのインデックスに対して
輸送関係式は以下のようになります。
証明(開く)
実はこの拡張したを用いるとの連結和を考える必要がなくなっていますね。そして境界条件より拡張されたやの値がAMZVに分解できることが示されました。
以上です。