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直交多項式と超幾何関数(9)〜二項分布とKrawtchouk多項式(その2)〜

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記事の書き溜めが4つくらい既にあるのに
細かい計算が合わないのでなかなか投稿ボタンが押せない件について。
そもそもまともに計算を追っている文献も見つからない定期。
結果を書いてある文献はそれなりにはあるんだけどね。
ぼちぼち。

ぼちぼち。計算が仕上がってきたので。
ほんと気の遠くなる計算でございましたわ。
(根本の原因は差分演算子の計算間違いだろ)


前回の記事 では
二項分布に関して直交する多項式列である
Krawtchouk多項式を導入し
それについての超幾何表示を得た。
第九回目の今回は
残りのKrawtchouk多項式の性質について見ていきたい。

まず最初は三項間漸化式から。

Krawtchouk多項式の三項間漸化式(1)

Krawtchouk多項式kN(n)(X)は、次の三項間漸化式を満たしている。
(N+1)kN+1(n)(X)={X+p(Nn)N(1p)}kN(n)(X)+p(1p)(Nn1)kN1(n)(X)k0(n)(X)=1,k1(n)(X)=Xnp

母関数と三項間漸化式の間には強い関係があり、実は母関数を微分した式から求められる。

まずはKrawtchouk多項式の母関数の式から始める。
N=0nkN(n)(X)YN={1+(1p)Y}X(1pY)nX
この式をYで微分し、左辺の添え字を1つずらす(NN+1)と
N=0n1(N+1)kN+1(n)(X)YN=(1p)X{1+(1p)Y}X1(1pY)nXp(nX){1+(1p)Y}X(1pY)nX1={(1p)X(1pY)p(nX){1+(1p)Y}}{1+(1p)Y}X1(1pY)nX1={(Xnp)+np(p1)Y}{1+(1p)Y}X1(1pY)nX1
この式に{1+(1p)Y}(1pY)を掛けることで
(左辺)={1+(1p)Y}(1pY)N=0n1(N+1)kN+1(n)(X)YN=N=0n1(N+1)kN+1(n)(X)YN+(12p)YN=0n1(N+1)kN+1(n)(X)YNp(1p)Y2N=0n1(N+1)kN+1(n)(X)YN=N=0n1(N+1)kN+1(n)(X)YN+(12p)N=1nNkN(n)(X)YNp(1p)N=2n+1(N1)kN1(n)(X)YN(右辺)={(Xnp)+np(p1)Y}{1+(1p)Y}X(1pY)nX={(Xnp)+np(p1)Y}N=0nkN(n)(X)YN=(Xnp)N=0nkN(n)(X)YN+np(p1)N=1n+1kN1(n)(X)YN
よって左辺と右辺が等しいという式を立てることで
N=0n1(N+1)kN+1(n)(X)YN+N=0n{N(12p)X+np}kN(n)(X)YNN=1n+1p(1p)(Nn1)kN1(n)(X)YN=0
の式を得る。YNの係数を取り出すことで、1Nn1及び0Xnに対し
(N+1)kN+1(n)(X)+{N(12p)X+np}kN(n)(X)p(1p)(Nn1)kN1(n)(X)=0
という式が成立する。
この式のXに関する次数は高々N+1n以下であるが、n+1個の異なるXについて成立する。
よって多項式として等しい式であることが示された。(証明終わり)

正規化された場合については、次のようになる。
三項間漸化式の係数はこちらの方が見栄えが良い。

Krawtchouk多項式の三項間漸化式(2)

Krawtchouk多項式k~N(n)(X)に関して、次の三項間漸化式が成立する。
p(Nn)k~N+1(n)(X)={X+p(Nn)N(1p)}k~N(n)(X)+N(1p)k~N1(n)(X)k~0(n)(X)=1,k~1(n)(X)=1n1p1X

等式kN(n)(X)=(1)N(nN)pNk~N(n)(X)を前の定理の三項間漸化式に代入すると
(N+1)(1)N+1(nN+1)pN+1k~N+1(n)(X)={X+p(Nn)N(1p)}(1)N(nN)pNk~N(n)(X)+p(1p)(Nn1)(1)N1(nN1)pN1k~N1(n)(X)
である。適切に係数を割ることで
p(Nn)k~N+1(n)(X)={X+p(Nn)N(1p)}k~N(n)(X)+N(1p)k~N1(n)(X)
を得る。(証明終わり)

次に差分方程式について。
今は離散多項式なので、二階の微分方程式の代わりに二階の差分方程式が成り立っている。
実はこの場合(他にもdualityが綺麗なMeixner多項式も)三項間漸化式と差分方程式の式の形は一致する。

Krawtchouk多項式の差分方程式

Krawtchouk多項式k~N(n)(X)について、次の差分方程式が成立する。
p(Xn)k~N(n)(X+1)={N+p(Xn)X(1p)}k~N(n)(X)+X(1p)k~N(n)(X1)p(Xn)Δk~N(n)(X)+X(1p)k~N(n)(X)=Nk~N(n)(X)X(1p)Δk~N(n)(X)+{p(Xn)+X(1p)}Δk~N(n)(X)=Nk~N(n)(X)k~N(n)(0)=1,k~N(n)(1)=1n1p1N
ここでΔf(X):=f(X+1)f(X)及びf(X):=f(X)f(X1)という記号を導入する。

Remark: Krawtchouk多項式kN(n)(X)についても、上と全く同じ差分方程式が成立する。
ただし、初項は(p)N(nN)倍ずれていることに注意する。(変数Xにはよらない)

まず、三項間漸化式の式でXNの文字を入れ替えると
p(Xn)k~X+1(n)(N)={N+p(Xn)X(1p)}k~X(n)(N)+X(1p)k~X1(n)(N)
という等式を得る。ここでdualityk~N(n)(X)=k~X(n)(N)を用いると
p(Xn)k~N(n)(X+1)={N+p(Xn)X(1p)}k~N(n)(X)+X(1p)k~N(n)(X1)
が従う。同値変形の式はほぼ自明に従う。(証明終わり)


ここでこれら演算子に関する幾つかの式を用意しておく。

Δf(X)=f(X+1)Δf(X)=Δf(X)=f(X+1)2f(X)+f(X1)Δ[f(X)g(X)]=f(X)Δg(X)+g(X+1)Δf(X)

下の関数の積に関する差分の式だけ簡単に示しておくと
Δ[f(X)g(X)]=f(X+1)g(X+1)f(X)g(X)=f(X+1)g(X+1)f(X)g(X+1)+f(X)g(X+1)f(X)g(X)=f(X){g(X+1)g(X)}+g(X+1){f(X+1)f(X)}=f(X)Δg(X)+g(X+1)Δf(X)
のように示すことができる。(証明終わり)

最後の式は次のように書くこともできる:
Δ[f(X)g(X)]={Δg(X)+Δf(X)f(X)g(X+1)}f(X)


さて微分方程式と類似である2階の差分方程式が出てきたので、Rodriguesの公式の類似が成り立つと考えるのは自然なことである。
そのRodriguesの公式を導く前に、Krawtchouk多項式の一階差分についての計算をしておく。
(Rodriguesの公式を導くには不要かもしれないが、私は知らないし、使う方が簡明)

Krawtchouk多項式の一階差分

Krawtchouk多項式kN(n)(X)及びk~N(n)(X)の一階差分について、以下の等式が成立する。
ΔkN(n)(X)=kN1(n1)(X),Δk~N(n)(X)=Nnpk~N1(n1)(X)

この結果を見ると、定数項を1に正規化したk~N(n)(X)より元のkN(n)(X)の方が性質が美しく見える。

正規化されたKrawtchouk多項式k~N(n)(X)については、一般項による表示から一階差分を計算すると
Δk~N(n)(X)=Δ[k0(N)k(X)kk!(n)k(1p)k]=k0(N)kΔ(X)kk!(n)k(1p)k
ここでΔ(X)kを計算する必要があるが、上昇階乗の定義を思い出すと
Δ(X)k=(X1)k(X)k=(X1)(X)k1(X)k1(X+k1)=k(X)k1(これは k=0 の時も値 0 を返し正しい)
と計算できることから、上の式に代入すると
Δk~N(n)(X)=k0(N)k(k)(X)k1k!(n)k(1p)k=k1(N)k(X)k1(k1)!(n)k(1p)k=k0(N)(N+1)k(X)k(k)!(n)(n+1)k1p(1p)k(k=k1)=Nnpk0(N+1)k(X)k(k)!(n+1)k(1p)k=Nnpk~N1(n1)(X)
のように計算することができる。
同様に正規化されていない元のKrawtchouk多項式kN(n)(X)に対しても
ΔkN(n)(X)=(1)N(nN)pNΔk~N(n)(X)=(1)N(nN)pN(Nnpk~N1(n1)(X))=(1)N(nN)pN(Nnp){(1)N1(n1N1)1pN+1kN1(n1)(X)}=kN1(n1)(X)
のように綺麗に割り切れ、計算結果を得ることができる。(証明終わり)

これを用いることで、いよいよRodriguesの公式の導出に取り掛かる。

Krawtchouk多項式のRodriguesの公式

Krawtchouk多項式k~N(n)(X)は次のRodriguesの公式で特徴づけられる。
(nX)pX(1p)nXk~N(n)(X)=N[(nNX)pX(1p)nX]
また、Krawtchouk多項式kN(n)(X)に関しても次のRodriguesの公式で特徴づけられる。
kN(n)(X)=(p1)NN!{(nX)pX(1p)nX}1ΔN[(X)N(nX)pX(1p)nX]
ただし(X)N=X(X1)(XN+1)は下降階乗。

Remark: 下の式の方がKrawtchouk多項式のRodriguesの公式としてはよく知られている。
(式としては同値な式)
下の式だと、2階ODE型の直交多項式同様に重さ関数(この場合二項分布)が出てきているのと対応がつく。

(上の式の証明)

Step 1: Sturm-Liouville型の差分方程式への書き換え

突然だがf(X)=X(nX)pX(1p)nX及びg(X)=k~N(n)(X)とおき、Δ[f(X)g(X)]を計算する。
上の計算を踏まえてΔf(X)を計算すると
Δf(X)=(X+1)(nX+1)pX+1(1p)nX1X(nX)pX(1p)nX=X(nX)pX(1p)nX{X+1XnXX+1p1p1}=p(nX)X(1p)X(1p)f(X)
と計算することができるので、Δ[f(X)g(X)]の計算は
Δ[f(X)g(X)]={Δg(X)+Δf(X)f(X)g(X+1)}f(X)={Δk~N(n)(X)+p(nX)X(1p)X(1p)k~N(n)(X+1)}f(X)=f(X)X(1p){X(1p)Δk~N(n)(X)+{p(Xn)+X(1p)}Δk~N(n)(X)}=(nX)pX(1p)nX1Nk~N(n)(X)
とすることができる。まとめると、Krawtchouk多項式k~N(n)(X)の満たす差分方程式は
Δ[X(nX)pX(1p)nXk~N(n)(X)]=N(nX)pX(1p)nX1k~N(n)(X)
という形の差分方程式に書き換えることができる。

Note: このf(X)は、差分方程式や重さ関数から係数を計算することができる(後の記事予定)が、それを知らずとも
Δf(X)f(X)=p(nX)X(1p)X(1p)f(X+1)f(X)=p(nX)X(1p)
の条件から(差分方程式と合わせるために)自動的に決定されるものであることに注意。


Step 2: 後の都合でΔ及びを両方反転させておく。

まず中のΔに変えるためにXを1つ下げて
Δ[X(nX)pX(1p)nXΔk~N(n)(X1)]=N(nX)pX(1p)nX1k~N(n)(X)
次に外のΔに変えるためにXを1つ上げて
[(X+1)(nX+1)pX+1(1p)nX1Δk~N(n)(X)]=N(nX)pX(1p)nX1k~N(n)(X)
としておく。


Step 3: 帰納的に差分方程式を使う
さてKrawtchouk多項式の一階差分の公式Δk~N(n)(X)=Nnpk~N1(n1)(X)を使い代入することで
[(X+1)(nX+1)pX+1(1p)nX1(Nnpk~N1(n1)(X))]=N(nX)pX(1p)nX1k~N(n)(X)[(n1X)pX(1p)nXk~N1(n1)(X)]=(nX)pX(1p)nXk~N(n)(X)
となり両辺の関数が全く同じ形になっていることに注意する。
この操作をN回繰り返すことで
(nX)pX(1p)nXk~N(n)(X)=N[(nNX)pX(1p)nX]
となりk~N(n)(X)に対するRodriguesの公式が与えられた。(証明終わり)

(下の式の証明)

上の式と同値なので、今示したばかりのその上の式から導く。
まず、形を揃えるために、XNずらしてNΔNにする:
(nX)pX(1p)nXk~N(n)(X)=ΔN[(nNXN)pXN(1p)nX+N]
さらに正規化を元に戻してkN(n)(X)の式にすると
(nX)pX(1p)nX{(1)N(nN)pN}1kN(n)(X)=ΔN[(nNXN)pXN(1p)nX+N]kN(n)(X)=(1)N(nN)pN{(nX)pX(1p)nX}1ΔN[(nNXN)pXN(1p)nX+N]kN(n)(X)=(p1)N{(nX)pX(1p)nX}1ΔN[(nN)(nNXN)pX(1p)nX]
である。あとはこの二項係数部分を整理しておく。
(nN)(nNXN)=n!N!(nN)!(nN)!(XN)!(nX)!=n!N!(XN)!(nX)!=n!X!(nX)!X!N!(XN)!=(nX)(XN)=(nX)(X)NN!
と書くことができるので、以上より題意の式
kN(n)(X)=(p1)N{(nX)pX(1p)nX}1ΔN[(nX)(X)NN!pX(1p)nX]=(p1)NN!{(nX)pX(1p)nX}1ΔN[(X)N(nX)pX(1p)nX]
を導くことができた。(証明終わり)

Note: ここまででKrawtchouk多項式と差分演算子に関して出てきた2つの式を並べておく。
Δk~N(n)(X)=Nnpk~N1(n1)(X)[(n1X)pX(1p)nX1k~N1(n1)(X)]=(nX)pX(1p)nX1k~N(n)(X)
これら2つの式は量子力学などでも出てくる昇降演算子とも関係がある。
(多分後の記事でこれらについてもまた改めて記述する予定)

まとめ

この記事では、Krawtchouk多項式に対して、
二階の差分方程式が成り立つことを紹介し
それに関連するJacobi多項式類似の性質が成立することを見た。

二階の差分方程式が成り立つ多項式は他にも存在し
Hahn多項式系と呼ばれる多項式族として知られているが、
それらを紹介する前に
次はKrawtchouk多項式に関係するある行列について紹介する。

投稿日:2024101
更新日:2024101
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投稿者

整数論を研究中。 本音は組合せ論がやりたい。 最近は直交多項式・超幾何級数にお熱。 だけど幾何と解析は鬼弱い。

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