はじめに
今回は,中間体の拡大次数を調べることでもとの拡大の様子がわかるという話をしたいと思います。
そして最後に,その事実を踏まえた上でについて考察してみます。
目次
1.中間体の拡大次数
2.実用例
中間体の拡大次数
とし,をそれぞれの基底とすると,任意のに対し,を満たすが存在し,かつを満たすが存在する。
このときであるから,は上でを生成する。
また,とするとであり,とするとであるから,
ゆえにの元は線形独立でもあるから,がの-線形空間としての基底となる。
したがって □
定理から直ちに次の系が従う。
これらの事実を用いることで,拡大次数の候補をかなり絞ることができます。詳細は後の考察パートで述べます。
次の命題と系も重要です。
は明らかなので,逆を示す。
基底をとし,がを真に含むと仮定すると
一方でを満たすが存在するが,より を得るから矛盾。□
を素数とし,をの任意の中間体とすると,定理からまたは
命題よりまたはである。□
実用例
さて,これらの事実のいくつかを用いてについて考察してみる。
考察
まず,はを根にもつから,
ガロア理論⑥
定理から
また,はの中間体であるから,定理より
とくに,は偶数である。
また,はを真に含むから,命題より
したがって,
である。証明は
ガロア理論②
を参照せよ。
このように,中間体を考えることで拡大次数を容易に求めることができます。この例では愚直にの既約性を調べることもできてしまうので困りはしないのですが,この考え方は生成元が具体的でないときにより威力を発揮します。
次回は,「多項式が既約であるための十分条件」を与える判定法を扱います。