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ガロア理論⑦ 中間体の拡大次数

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はじめに

今回は,中間体の拡大次数を調べることでもとの拡大の様子がわかるという話をしたいと思います。
そして最後に,その事実を踏まえた上で(2+3)について考察してみます。

目次

1.中間体の拡大次数
2.実用例

中間体の拡大次数

L/M/Kに対し,L/M,M/Kが有限次拡大ならば[L:K]=[L:M][M:K]

[L:M]=m,[M:K]=nとし,{a1,,am},{b1,,bn}をそれぞれの基底とすると,任意のαLに対し,α=i=1maixiを満たすxiMが存在し,かつxi=j=1nbjyij(1im)を満たすyijKが存在する。
このときα=i=1mai(j=1nbjyij)=i=1mj=1naibjyijであるから,S={aibj|1im,1jn}K上でL生成する。
また,α=0とするとxi=0(i)であり,xi=0とするとyij=0(j)であるから,α=0yij=0(i,j)
ゆえにSの元は線形独立でもあるから,SLK-線形空間としての基底となる。
したがって[L:K]=|S|=mn=[L:M][M:K] □

定理1から直ちに次の系が従う。

L/M/Kに対し,[L:M],[M:K][L:K]約数である。

これらの事実を用いることで,拡大次数の候補をかなり絞ることができます。詳細は後の考察パートで述べます。


次の命題と系も重要です。

L/Kに対し,LK[L:K]=1

は明らかなので,逆を示す。
基底を{α}とし,LKを真に含むと仮定するとαLK
一方でα2=αxを満たすxKが存在するが,α0よりα=xK を得るから矛盾。□

命題 2

L/Kに対し,[L:K]が素数ならば,その中間体はL,Kに限る

[L:K]を素数とし,ML/Kの任意の中間体とすると,定理1から[L:M]=1または[M:K]=1
命題2よりM=LまたはM=Kである。□

実用例

さて,これらの事実のいくつかを用いて(2+3)について考察してみる。

考察

まず,x410x2+12+3を根にもつから, ガロア理論⑥ 定理1から[(2+3):]4
また,(2)(2,3)/の中間体であるから,定理1より
[(2+3):]=[(2,3):]1=[(2,3):(2)][(2):]=2[(2,3):(2)]
とくに,[(2+3):]偶数である。
また,(2+3)(2)を真に含むから,命題2より[(2+3):(2)]1
したがって,[(2+3):]=4

1(2+3)=(2,3)である。証明は ガロア理論② を参照せよ。


このように,中間体を考えることで拡大次数を容易に求めることができます。この例では愚直にx410x2+1の既約性を調べることもできてしまうので困りはしないのですが,この考え方は生成元が具体的でないときにより威力を発揮します。
次回は,「多項式が既約であるための十分条件」を与える判定法を扱います。

投稿日:2023316
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Qualtagh
Qualtagh
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数学徒 じゅけんせいのすがた 扱う分野:位相空間論 群論 環論 体論 位相幾何

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