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ガロア理論⑫ 最小分解体の一意性

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$$\newcommand{bs}[0]{\backslash} \newcommand{ol}[0]{\overline} $$

はじめに

前々回( ガロア理論⑩ ),任意の体は最小分解体をもつことを示しました。今回はその一意性を示します。これを示すと嬉しい点は,最小分解体が一意に存在することを認めれば,適当な$1$つの最小分解体のなかで議論すれば十分ということにあります。

目次

1.最小分解体の一意性
2.代数閉体・代数閉包

最小分解体の一意性

$K,K'$を体とし,同型$σ_0:K\to K'$が存在するとする。$f∈K[x]$に対し,$f,σ_0(f)$の最小分解体を$L,L'$とすると,$σ_0$の延長$σ:L\to L'$が存在する。

$\deg f=n≥1$とし,$n$に関する帰納法で示す。

  • $n=1$のとき
    $L=K,L'=K'$であるから$σ=σ_0$が存在する。
  • 次に$n≥2$とし,$n-1$での成立を仮定する。
    $f$の根$α∈L$を任意にとり,その最小多項式を$p$とする。また,$β∈L'$$σ_0(p)$の任意の根とする。このとき,前回の命題( ガロア理論⑪ )から$σ_0$の延長$σ':K(α)→K'(β)$が存在する。
    また,$g∈K(α)[x]$を用いて$f(x)=(x-α)g(x)$とすると,$g,σ'(g)$の最小分解体もまた$L,L'$であり$\deg g=n-1$であるから,帰納法の仮定より$σ'$の延長$σ:L→L'$が存在する。明らかに,この$σ$$σ_0$の延長である。▢

$ \xymatrix@R=48pt@C=48pt{ L \ar@{-}[d] \ar[r]^{\sim}_{^\existsσ} \ar@{}[rd]|\circlearrowleft & L' \ar@{-}[d] \\ K(α) \ar[r]^{\sim}_{^\existsσ'} \ar@{}[rd]|\circlearrowleft& K'(β) \\ K \ar@{-}[u] \ar[r]^{\sim}_{σ_0} & K' \ar@{-}[u] } $


この事実から,直ちに次の系を得る。

$K$を任意の体とする。$K$の最小分解体は同型を除いて一意である。

前命題において$K'=K$とすると,自明な自己同型$\mathrm{id}_K$が存在する。よって,$L_1,L_2$$K$の任意の分解体とすると,前命題から$\mathrm{id}_K$の延長$σ:L_1\to L_2$が存在する。▢

最小分解体
  • $ℂ$$x^2+1∈ℝ[x]$の同型を除いて唯一の最小分解体である。

代数閉体・代数閉包

最後に,次の記事の準備として代数閉体代数閉包を定義しておきます。定義は難しくありません。

代数閉体

$K$を体とする。$1$次以上の任意の$K$係数多項式が$K$上にすべての根をもつとき,$K$代数閉体であるという。

代数閉体
  • $ℂ$は代数閉体である(代数学の基本定理)。
  • $ℝ$は代数閉体でない。たとえば,$x^2+1∈ℝ[x]$の根は実数ではない。

代数学の基本定理は,「$ℂ$が代数閉体であること」を保証する定理です。今後,この定理を認めて話を進めます。が,証明は与えません(解析的な手続きが必要になるため)。


代数閉包

$L/K$を代数拡大とする。$L$が代数閉体であるとき,$L$$K$代数閉包という。

代数閉包
  • $ℂ$$ℝ$の代数閉包である。

例にあげたように,$ℝ$$ℂ$という代数閉包をもちます。実はこれは$ℝ$に限った話ではなく,任意の体は代数閉包をもち,しかもそれは同型を除いて一意であることがいえます。次回はまず,代数閉包が存在することを示します。

投稿日:202341
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数学徒 じゅけんせいのすがた 扱う分野:位相空間論 群論 環論 体論 位相幾何

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